花鬼の少女   作:サボテンダーイオウ

1 / 8
序章

雪深い山の奥、一軒家の家族が殺された。

 

また罪もなき犠牲者が出た。何度見ても胸糞悪くなる光景に青年は僅かに顔を顰めて白い息を吐いた。

 

もう息を吹き返す者はいまい。

 

踵を返してその場から立ち去ろうとした。だが気の迷いからか、はたまた気まぐれか。青年はこれも何かの縁かと一家を埋葬してやることにした。普段の青年ならば考えられない行動だが、そうこれは気まぐれ。それに出入口から血の痕が点々と雪道へ続いている。負傷したものを誰かが担いで出ていった可能性が高い。

 

だがそう遠くには行くまいと、とりあえず家の中へ入った。

母親らしき者とその子供。まだ幼い子供も犠牲になった。

 

「…………」

 

鼻腔に入り込む血の匂い。

 

袖口で鼻先を覆うくらいに血が蔓延していた。

それはピクリと一度痙攣を起こした。先程まで心の臓が止まっていたというのにそれは二度、三度と手を痙攣させる。それどころか呻き声を上げた。

 

「うぅ、……あぁ、……ぁあ……」

 

まさか鬼に変貌したのか。

 

青年は腰元の刀の鍔に手を掛け刀身を少しだけ抜き出し、静寂の中一人、いや一匹呻く者を見据えた。

 

その者は、少女の形をしていた。いや、生前は少女だったはず。全身を血に染め肩口で切りそろえられた髪にも血がこびりついていた。

 

ゆっくり、ゆっくりと獣のように四つん這いになり這いずりながら徐々に体を起こす。

 

「……ぁぁ」

 

前髪の間から見せる怪しく光り輝く目はまさしく鬼そのもの。

 

(変化したか……、憐れな)

 

せめてのもの慈悲であると、青年は愛刀をスラリと引き抜いた。

 

「死ね」

 

一言告げ、青年は腰を低くして少女へ走り出す。

 

「グァァアアア」

 

少女は鬼の証である長い爪と鬼特有の八重歯をむき出しにして唸り声をあげ、迫りくる青年を迎え撃つ。

 

青年の予想では首ごと胴体と真っ二つになる『予定』だった。

 

だが青年は驚愕する。

 

ガギィイイインン!!

 

金属同士が激しくぶつかる音と火花が飛び散る。

 

「なんだと……!?」

 

そう、青年が驚くのも無理はない。

 

少女の手にはいつの間にか立派な刀が握りしめられていたのだ。それと相打ちの形で留まっている。

 

つまり少女は青年の刀を刃で受け止めたのだ。

目を見張る青年を前に少女は歯をむき出しにして食って掛かった。血走った目でぎろりと睨み付ける。そして人間らしい言葉で威勢よく言い返した。

 

「……二度も死んだのに、三度も殺されてたまるか!」

 

「二度?」

 

青年は怪訝そうに呟いた。

 

「アンタを殺してでも生きてやる。生きてやるっ!」

 

鬼として生きるのか、人として生きるのか。

 

そんなこと少女にはどうでもよかった。境界線なんかない。

 

生きるか死ぬか。重要なのはそれだけ。

 

「私の、平々凡々の為に!」

 

「…………」

 

そして少女はハッキリと言い切って突然白目向いて気絶した。しっかりと刀を握ったままで。

 

青年はしばし考えあぐねいて白目の少女を見つめながら吐息のように呟いた。

 

「とりあえず………埋めるか」

 

臭いものには蓋をする。

というわけじゃないが青年も混乱していた。

 

だから気絶した少女を引きずって外の雪の中にぎゅっぎゅっと埋めた。

 

それから家族を埋葬することも頭から忘れさって少女と出会った事を頭から削除して雪道に続く血の痕を追うことを再開した。

 

◇◇◇

 

その後、しばらくして雪埋めにされた少女の双子の兄が鬼となった妹を連れて家へ戻って来た。

 

とある青年から狭霧山の麓に住んでいる老人を訪ねろと指示され妹を鬼から元に戻す術を見つける為、狭霧山へ向かうことにしたのだ。その前に家族を弔ってやらなきゃと泣いて赤くなった目で必死に雪を掻きわけて土を掘った。

そして家族を丁寧に埋葬した。運ぶ途中で遺体が一体いない事に気づき、あれ?なんでと首を傾げた時、なんだかぽっかりと大きく降り積もっている部分がブワッ!と盛り上がり少年は

 

「うわ!?なんだ!」

 

と驚いて雪に尻餅ついた。妹はぼーとした顔でその盛り上がった方向を見つめた。

 

もりもり。

 

ついにその盛り上がった所からニョキッ!と手が生えた。

 

「えぇ!?」

 

少年は二度目の驚きの声を上げた。

 

妹はまったく動じず相変わらずぼーとしている。

 

反対側の方からニョキッ!とまた二本目の手が生えた。

 

そして最後に

 

「ざぶいっ!!」

 

と鼻先を真っ赤にした少女が首を出した。

 

「えぇぇええええ!?」

 

少年は三度目の叫び声を上げた。

 

妹はゆっくりと指先を生首状態の少女へ指示した。一応認識しているようだ。

 

「ええ、えー?花、だよな?」

 

一応確認を取ってみる少年。少女はぶるると頭の上に乗っている雪を振り払って恨みがましい視線を向ける。

 

「そうだよー!他に何があるんだよ!?おにぃのあほんだらー!さっさと引っ張り出してよー」

 

「あ、ああ」

 

少年、炭治郎は夢でも見ているのかと自分の頬を抓りながら立ち上がる。

 

ぎゅぅぅ。

 

「痛い」

 

「何してんの」

 

「………夢じゃない……、生きてた!生きてた花!」

 

炭治郎は嬉しくて勢いよく駆けだし花を抱きしめようと体当たりをした。だが動けない花は急にタックルを受けてそのまま雪と炭治郎の間でプレスされる。

 

「だはぁ!?」

 

「うぅ、よかった、よかった、花~花~!」

 

冷たくて今にも死にそうなのに炭治郎の重さでさらに冷たさが増している。ぎゅうぎゅうと頬擦りされても痛いだけだしおまけに炭治郎の感激の涙と鼻汁が花の顔にこすりつけられる。

 

「お・も・い~~~!炭治郎!!」

 

「よがっだよぉ~~~」

 

最終的に妹、禰豆子が腕力で引っ張り上げてくれて助かった二人。

 

炭治郎は改めてじっくりと自分の双子の妹、花を見つめた。着物も血がこびりついたままだが、傷らしい傷は既に治っているようで、本人はただひたすら寒いらしい。

 

「濡れてない着物、着なきゃ……風邪引くわ……」

 

鼻水垂らしてクション!と可愛らしいくしゃみを連発していて可愛いと思った。その後、ブエェクション!と激しいくしゃみだったがそれでも可愛いと思った。

花は自分に寄りかかってくる禰豆子をナデナデしながら炭治郎に尋ねた。

 

「それでなんでおにぃはこんなとこにいるの?」

 

「それは、皆を埋めてあげなきゃって……」

 

そう言って炭治郎が悲しそうにある方向を見つめた。花がモリモリ雪の中から出てきたので作業が途中で終わってしまっていたのだ。花もすぐに事情を理解して何度も頷いた。

 

「……ああ、そうだね。私も着替えたら手伝うよ。この時期は備えるお花がないのが悔しいね」

 

「……うん……」

 

切なそうに炭治郎は笑って二人で作業を再開した。その間禰豆子はぼーと家族が地中に埋まっていくのを見守っていた。

 

大体の事情を理解した花はきっぱりと

 

「私も一緒に行くよ。おにぃだけじゃ心配だからね」

 

と二人に付いて行くことを決めた。

 

「うん。一緒に行こう」

 

炭治郎も置いて行く気はさらさらなく禰豆子と花の手を握って必要なものだけを背負って雪道を走り出した。

 

(そういえばなんで花は雪の中に埋まってたんだ?)

 

(いや気絶したからわからないけどたぶんアイツだ)

 

(アイツ?)

 

(大丈夫。顔は覚えてるから次会ったらおにぃ、後は任せた!)

 

(えぇー、俺が何かしなきゃいけないのか?)

 

(だって私平凡愛してるもん。復讐なんて卑怯な真似できないよ)

 

(それ真顔で言うのか)




※設定※

竈門花

炭治郎の双子の妹。平凡を愛するがゆえに奇天烈な行動を取ることもある。本人の中の平々凡々と世間でいう平々凡々とはズレが生じていることに気がつかないお馬鹿さん。

前世はしがないOLだった。あだ名はくのいちさん。影があまりにも薄く頼んでいた仕事がしっかりと知らない内に終わっている完璧さからそう名付けられた。しかも気配なく背後に立ったりとかマジで現代のくのいちじゃないと真顔で尋ねられたこともある。

容姿は普通だと思っている。炭治郎を女の子にした感じ。
笑うと八重歯が覗いて見えて可愛い。半分鬼ですから。

炭治郎の事は『おにぃ』と呼ぶ。たまに呼び捨て。
禰豆子は可憐な天使だと思ってる。鬼でも天使だよと力説して相手の言い分をゴリ押しで否定させてしまうくらいに大好き。

強制転生により、戦う術として心を刀として具現化して戦う特殊スタイルを得た。心が強ければ強いほど刀も強くなる。
その反対も然り。半分鬼であることもチート能力。

鬼としての再生能力と身体強化が備わっているが、初期段階ではまだ十分に使い慣れていない。

人を襲うのは平凡に反するので襲わないが平々凡々をなじられたり、炭治郎と禰豆子の悪口を言われたら襲う。
平凡じゃないじゃん!とツッコミされたら正当防衛だと主張する。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。