花鬼の少女   作:サボテンダーイオウ

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お気に入り等ありがとうございます!
中々クセ(個性)の強い花ちゃんですが、これからもよろしくお願いします。

注意点です。

竈門 炭治郎の双子の妹という設定ですが、原作でいう花子がいない代わりに夢主が双子になっています。
なので花子ちゃんはでないので悪しからず。


過去を振り返ってみる。

「あ~、ラジオ体操したい」

 

お留守番させられ花はげんなりした顔をして地べたに座り込んで外を眺める。

外でラジオ体操したいが炭治郎から目立っちゃ駄目だぞ!と釘を刺されているのでこのウズウズを何処へぶつければいいのか。

 

ラジオ体操。大正時代には存在しないがなぜか花は知っている。

 

炭治郎と禰豆子と共に山を下りたまでは良かったが、禰豆子は日ノ下では動くことができず、とりあえずの避難場所に穴倉の中に逃げ込むことになった。炭治郎は花が鬼から襲われたことで花も鬼化しているのではないかと心底心配したが、花はお日様の下でも消えることはなかった。むしろ、お日様に向かってぐーんと伸びをして怪しいを動きをし始めた。

 

それは花曰く、ラジオ体操と言って昔から家族に強制させて行っていた。平々凡々への道は健康寿命からくるのと力説しては家族の中で率先してのびのびと体を動かしていた。割と炭治郎も好きだったりする。

 

さて、花とお留守番している禰豆子はさっきから穴をほりほり掘っている。すでに禰豆子の体が隠れるくらいに深い穴だ。最初は何掘ってんの!?と花も驚いたが、顔を顰めて無言の訴えをしてくる禰豆子が相当陽の光が嫌らしいことに気付き、花も一緒に掘った。掘って何かが解消されるのならいくらでも掘ってやろうとの気概だった。

 

だがまさか潜りたいから掘っているとは知らず、途中で飽きた花はほげ~と体育座りをして妹の微笑ましい動きを見守った。せっせと掘って禰豆子はその穴に身を潜ませた。

 

「可愛いなぁ禰豆子~」

 

花はオッサンのように鼻の下をデレデレさせひょっこりと穴から頭を覗かせる禰豆子の頭をヨシヨシと撫でた。禰豆子もまんざらでもない様子でされるがままの状態で受け入れる。そして撫でられて満足したのか、また穴の中に潜り込んだ。鬼となってしまった禰豆子だが意思疎通は不自由せずにやりとり出来るのが唯一の救いか。

 

せっかく禰豆子も引きこもりを満喫しているようなので、ここで花もこれまでの自分の人生プレイバックしてみることにした。

 

まず花は瞑想することにした。瞼を閉じて意識を集中させる。

 

思い浮かんだのは………自分を殺そうとした男。

 

「ないわ。マジでないわ」

 

ブンブンと激しく手を振って頭からたたき出す。

次こそ、今花がこの世界に至る経緯を思い出すのだ。

 

―——そう、あれはまだ花がしがないOLだった頃。

世はまだ令和ではなく平成で花は中小企業に勤めていた。幼少時より煌びやかな両親の影響で反対に慎ましく生きることを美徳と感じていた変な子供時代を過ごしそのまま青春時代を影のように生きてそのまま大人の仲間入りを果たした結果、花は同僚の仲間からくのいちさんと親しみを込められてあだ名をつけられた。

 

まるでくのいちみたいよねと揶揄われたのが始まりである。

 

そのあだ名の由来の通り、花に頼んだ仕事はまるで風のように素早く処理されてしっかりと片づけられているという彼女の仕事ぶりからきている。それと花自身が目立つことを極端に嫌い、徹底して気配を潜めて会社内で仕事をこなしていることからもついている。

 

こんな花に恋の一つや二つあるわけない。

彼氏いない歴云年である。そんな花にも春は到来した、と勘違いした。

 

「今日も影のように働いたわ……」

 

一人暮らしの花は買い物を終えてのそれなりに年数が経っているアパートへの帰り道だった。

普段使い慣れている道は昼間は人通りがあるものの一歩路地へ入るとピタリと人気が少なくなり、街灯が少ないことから近所の人軽減してその道を使うことはあまりなかった。

 

だが花はアパートまでの近道とよく利用していた。それがそもそも間違いだったことに気づくのは随分後の事。

 

電柱に付けられてる街灯の灯りが時々ついたり消えたりとくり返している薄暗い道路を一人買い物袋ぶら下げてへたってきたパンプスで歩いている時、その男は唐突に目の前に現れた。

 

「やぁ、ちょっといいかな」

 

「………」

 

人の好さそうな好青年で知的な印象を与える笑顔を顔に張り付けているが目は獲物を求める獣のように花を値踏みしている。花は勘からろくな人物ではないと感じ取り後ずさった。

 

「いやいやそう警戒しないでくれ。私は少し探し物をしているだけだよ」

 

男は笑みを深くして一歩踏み進んできた。花はじりじりと足を引く。

 

「こんな暗いところで、ですか?」

 

隙をついて回れ右しようとした。だがどうしてか視線が逸らせない。男に吸い寄せられるように視線が、釘付けになる。

 

「そう。やっと見つかった。君だよ」

 

「は?」

 

「君のその強く輝き放つ魂を私にくれないか」

 

男は手を差し出した。その手には何も存在していない。

だがゾワリと背筋が寒くなるだけの威力はあった。

 

「変人!」

 

花は全速力で回れ右をして走り出した。だが男の声はすぐ後ろから聞こえた。

 

「ああ、逃げても無駄なのに」

 

「!?」

 

花はまるで地面に足を縫い付けられたように動けなくなった。後ろからひやりとした手が花の首元に回る。

 

「実は生きのイイ魂を……『柱』に相応しい魂を探していたんだ。中々癖の強い個性的なものが見つからない中、君がいた」

 

「柱?一体何の話……離して!警察を呼びますよっ!?」

 

「うーん、無理だろうね。だって君の足元を見てみるといい」

 

「え」

 

男に言われるがまま足元を見下ろすと不思議な陣が描かれていた。理解できない文字でいくつも羅列されている円陣の中で花はその中央に位置していた。

 

まるで漫画に出てくる生贄の儀式のように思えて花は泣きそうになった。

 

「やだなにこれ……、気持ち悪い……」

 

倦怠感から花はズルズルとその場に膝をついてしまう。

ばさりと買い物袋が落ちた。呆然と自分の目の前に回り込んでくる男を見上げた。

 

男は眼鏡を人差し指でクイッと上げてどこか愉快そうに口端を吊り上げて言った。

 

「これは君と私との契約だよ。無論、タダでとは言わない。君が理想の為に生き残れるよう特殊武器と能力をあげよう。それで足掻いてくれ。より君の魂は強く輝き放つだろう」

 

「意味が分からない!なんなの、アンタは!」

 

花は涙目交じりに睨み付けて怒鳴った。

花は理解できないことが恐ろしかった。自分の領域を壊されることを何より嫌った。この男は確実に自分の敵だ。

 

そう決めて花は精一杯睨み付けた。

 

男の背後に眩い強烈な光が現れて花は手で光を遮りながら目を細めた。プップーと車の警笛がけたたましく鳴らされる音が耳に連続して入る。

 

男は花に向かって和やかに手を上げた。

 

「行っておいで」

 

その言葉と共にフッとかき消すように男は姿を消した。その代わりにしゃがみ込む花の目の前に飛び込んできたのは自分に迫りくる車体とくり返される警笛の音だった。

 

「―————!!」

 

声にならない悲鳴が口から漏れ、花は反射的に目を瞑った。

 

……体に降りかかるとてつもない衝撃と跳ね飛ばされる感覚。

そこら中に鋭い痛みが走って花は飛ばされた。そう、飛ばされてひしゃげった自分の腕や足。全身からあふれ出る血の海で花は最後の意識を手放した。

 

花という女は平成の世で平々凡々という最後に相応しくない死に方をしてしまった。

 

(あー、今思い出しても胸糞悪くなる。あの似非インテリ眼鏡野郎)

 

女の子なのにげぇと露骨に顔を顰めてはブサイクな顔になる花。それにぷらすヤンキー座りをさせメンチ切っている状態ならきっと炭治郎が目撃した場合、

 

『ヤバイ!?俺の妹が男気ありすぎて格好いいんだけど』

 

と胸どきゅーん☆と高鳴らせることだろう。

 

一方花はとことん炭治郎をこき使う算段である。

もし今後顔を会わせることがあるなら一発炭治郎に殴ってもらうつもりでいる。だが自分では決して手を出す気はない。なぜなら平凡を目指す花がむやみやたらに暴力を奮っては正当性に欠けるからだ。

 

そういう考えがまさに平凡からかけ離れていることに気づかないお馬鹿さんは考えが脱線していることに気づいた。

 

「は!?いけないいけない」

 

とにかくくのいちさんと親しまれた花は車に撥ねられて死に、次に転生した世界はなぜだが大正時代を模した自分の知る歴史とは異なる世界だった。ずばり、鬼という存在が人々の陰に潜むように暗躍していたこと。

人食い鬼は夜になると活動して無差別に人を喰う。

 

なんて平凡とは程遠いデンジャラスな世界なのか。

 

産まれておぎゃーと叫ぶまでの時間が先に産まれた炭治郎と比べて遅すぎたことで死んでるのかと心配されたほどだったが、ただ単に世界観の違いから驚いて泣き声が出なかっただけなのだ。

 

だが産婆さんが花のぷりちーなお尻を精一杯叩いて生きさせようと努力してくれたことで花は痛さから大泣きすることができたので両親はほっと一安心できた。

産婆さんのお陰である。花が意識をハッキリと覚醒できたのも産婆さんのお陰である。だがその張り手の威力は大きくなった今でも忘れることはない。小さい頃に受けた衝撃というのは中々覚えているものなのだと花は身をもって体験した。

 

……しかし、あれは本当に産婆さんかどうか花は不安になってきた。女の人の張り手にしては恐ろしいほど痛かったし、何より手もデカかった。

本当に不安になってきて赤ん坊のころの記憶を遡ろうとしたが無理だった。というか無謀である。もし産婆さんが男性だったら花はもうお嫁にいけない。

女の大事な部分丸見えどころか全て見られているということになるのだから。

元より結婚などと夢見がちな性格ではないので仮に行き遅れになろうとも問題はない。

 

なので花は潔く忘れることにした。

 

気を取り直して、竈門家の長女として生を受けた花はスクスクと可愛げのない女の子へ成長していった。

愛想もよく面倒見のいい炭治郎とは反対に気に入らない相手にはメンチ切るという歪んだ幼少時代を過ごし、町の皆には可愛げもなく愛想もなく、大人顔負けの値切り交渉術に長けていてせこいが働き者で良い子だよと複雑に褒められる子だった。

ただメンチ切るのは良くないよと何度も注意されるも癖なのか中々直らなかった。というか本人は直す気が一切なかった。これも個性なのでと真顔で言われては相手は何も言えなくなるのだ。

 

竈門家の中でも個性的なはなだが、弟妹達からは慕われていた。

主に兄妹たちの勉強の面倒をみていた。

 

『ねーちゃん!算術教えてくれよ』

 

『いいよ。竹雄は勉強が好きだね』

 

『だってねーちゃんの教え方が上手いんだよ。スルスルと頭に入ってきちまう』

 

それにつられて禰豆子や茂も花の傍へやってくる。皆がそろいだした頃に花先生の授業が始まるのだ。

微笑ましい光景に大家族の母葵枝は自分の事の様に嬉しそうに語った。

 

『本当に花は勉強が好きだね。将来が楽しみだわ』

 

『母さん、私は慎ましい生活が送れればいいの。都会に出て一発当ててやろうなんて考えてないから』

 

『誰もそこまで言ってないけど花ならできそうな気がするわ』

 

コロコロと上品に笑う母を花は好きだった。父も大切だったが、亡くなってしまった時はさすがに泣いた。

それから炭治郎が父の代わりをするように兄妹達と接して生活費を稼ぐために時間を惜しんで働きだした。まだ幼い六太に寂しい生活をさせられないと奮起する姿は頼もしくもあった。花も負けてられないと家族を力を合わせて生きていけるように、町へ降りる時は炭治郎を手伝ったし自分でもできそうな仕事を見つけ出してお金を稼いでいた。

 

前世で自分の為に磨き上げた能力を家族の為に使えることが幸せだった。疎遠だった両親の事は嫌いではなかったが、今の両親の方が距離が近いというか自然体でいられた。

 

花を花として受け入れてくれて愛してくれる。

 

その真っすぐに注がれる愛に応えようと花も真っすぐに歩いて行こうと決めた。たとえ、見知らぬ男に与えられた人生であろうと。

 

だがその幸せは花が13歳になったことで一気に崩れ去るとは予想もしなかった。今まで小馬鹿にしてきた鬼とやらに一晩で家族を奪われ、自分の命さえも喰われてしまうのだから。

 

鬼に喰われ、一度絶命し死の淵から生還してからあの男が別れ際に語っていた話が本当であったことを思い出す。

 

奴曰く特殊武器と能力と言っていた。

 

その特殊武器というのが自分の武器というもの。

花以外扱えない、花だけの刀。それも魔法かよとツッコミしたくなるくらいに自分が今手に欲しいと念じたら手の中に現れるという便利機能付き。

 

今も、念じれば出てくるはず。

 

「……我が手に現れよ!」

 

ちょっと格好良く叫んでみた。

 

「………」

 

だが刀が花の手に現れることはなく、シーンと静寂が穴倉に満ちる。

 

「………」

 

禰豆子がどうしたの?と言わんばかりに穴から顔を覗かせて花をガン見する視線がいたたまれず花は視線を逸らした。

 

「………にわかか?にわかなのか?」

 

つい動揺してしまうが可愛い妹の前で取り乱すわけにはいかないので心の中であの男のマネキン人形を思い浮かべ思いっきりアッパーかましてふっ飛ばし憂さ晴らしした。

 

………いたって花は平凡なので急に侍になれるわけじゃない。そうだ。たかだか子供に刀が扱えるわけがない。きっとそうだ。だから急遽誰かに師事を乞う必要がある。

 

もう一つ。

鬼に喰われた花が禰豆子のように鬼化しているわけじゃなく、鬼の再生能力と身体能力を維持したまま、人として生活できる体であるということ。

 

これが奴がいう能力ではないかとはなは考えている。

つまり、元からあるわけではなく自分が喰われることを前提で与えたのならたちが悪い。それもかなり。

まぁ、今更驚いたことじゃない。そもそも男との出会いが最悪だったのだ。性格も最悪であることは想定内である。

 

だが男に唯一感謝するならば人としての人格が残されていることだ。禰豆子のようになっては炭治郎への負担が多くなるばかりか、もしかしたら禰豆子のように制御ができず、自分の意思とは関係なく人を襲っているかもしれないのだ。

 

上手くこの力を利用して炭治郎と禰豆子を護れるような力を身につけなくてはいけない。それも平々凡々に相応しいやり方で。

 

「おーい、花、禰豆子ー」

 

色々考え込んでいる間に炭治郎が帰って来たようだ。地面に膝をついて此方を覗き込む顔が見えた。

 

「おにぃ、お帰り」

 

「うん、ただいまー。禰豆子はどうしたんだ?」

 

「ここ」

 

すぐ横にある穴を指さすとひょっこりと禰豆子が顔をだした。炭治郎はまるでモグラみたいだと言わんばかりに驚いた。

どうやら禰豆子を運ぶため即席の背負い籠を用意するようだ。穴あきの籠に藁と竹を何処からか調達してきた炭治郎は器用に穴を修理しつつ禰豆子のために器用に編み込んでいく。

 

「ほら禰豆子、この中に入れるか?」

 

そう言って籠に中を指し示す炭治郎だが花が率直な意見を述べた。

 

「今の背丈じゃ無理じゃない?」

 

「あ」

 

今ので今更気が付いたとハッとする炭治郎だが、急に何かを思い出したようで禰豆子に言い聞かせるように言った。

 

「そういえば禰豆子は大人の女の人みたいに大きくなったことがあったんだ。それなら小さくなれるかも」

 

「へぇ」

 

「というわけで禰豆子、小さくなれ。小さくな~れ~」

 

「なれって言われて小さくなれるもんなの?ほら、素直に籠に頭から突っ込んでるじゃないって小さくなった!?」

 

花が驚くほどに禰豆子は徐々に体を縮ませて籠の中にすっぽり収まるくらいの身長に変化した。未来の猫型ロボットもびっくりの芸当である。

 

「えらいえらい」

 

炭治郎が禰豆子を褒めて撫でると花も負けじと手を出して

 

「可愛いぞマジで可愛いぞ!そして偉いさすが私の天使!」

 

と絶賛して禰豆子の頭をガクガクさせるくらいに撫でまわした。双子の兄と姉に撫でまわされても嫌な顔一つしない禰豆子はちょっと嬉しそうだった。

 

というわけで禰豆子IN籠を背中に背負った炭治郎と共に狭霧山を急ぎ目指すべく、花はまた歩き始めた。




(次背負わせてよ)

(えー?花体力ないだろ)

(あるよ!禰豆子の為なら首のない鬼の胴体でも遠慮なしに切ってみせるよ!)

(なんか具体的すぎじゃないか?)

(わからん!急に思いついた!)

(わかんないんじゃ仕方ないな!)

(じゃ背負わせて)

(えーだから花体力ないだろ)

【これでしばらくエンドレスする二人】
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