花鬼の少女   作:サボテンダーイオウ

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意外とイケた。

山道へ登る途中、すでに周囲は薄暗くなってきた。炭治郎と花は禰豆子IN籠を交互に代わりばんこで背負いながらえっちらおっちらひたすら狭霧山を目指した。

だが現代社会とは違い、己の足のみで進まなければならない。

 

花はあまり体力がない方だがこれも我が天使の為ならば!と褌は女の子なのでしていないが、褌を絞めるつもりで挑み歩いた。

 

かなり背中に重心が追加され正直に打ち明ければ重たかったが、はなは微塵も顔に出さなかった。

天使が重たいはずがないと自分に言い聞かせて歩き続けた。

だが途中で足を縺れさせて顔面から地面に転びダラダラと鼻血を流してもさっと親指で縫って

 

「おっと!心の汗が鼻から出ちまったぜ。いけねぇいけねぇ」

 

と格好よく決める姿に炭治郎は男らしい妹に

 

(俺の妹が段々男化してる!?俺より恰好いい!)

 

と胸キュンとさせた。実に仲の良い兄妹である。

 

そんな三人も夜道まで流石に山の中を歩くのは危険だ。

山中の上り道にすれ違った母子に狭霧山への道を尋ねると

 

「最近この付近で人が行方不明になっているんだよ。それでも行くのかい?良かったら家に泊まって行ってもいいんだよ」

 

と親切に一泊を勧めてくれたが炭治郎と花は少しでも先に進みたくてその申し出をありがたくも丁重にお断りした。

炭治郎がペコリと行儀よく頭を下げて礼を言った。

 

「いえ、大丈夫です。急いでいるのでありがとうございました」

 

「サンキュー姐(ねえ)さん!」

 

と花も手を上げて礼を言った。男気な気分なので口調もそれっぽくなっている。母子は手を振って心配そうに三人を見送った。特に女の子の方は頭大丈夫かしら?と心配されていた。

 

◇◇◇

 

すっかり夜になった頃、ガサゴソと活動を始めた禰豆子IN籠から禰豆子を下して三人仲良くはぐれないように手を繋いで月明りが出始めた頃、古ぼけたお堂へたどり着いた。外から灯りが漏れていたので炭治郎が鼻穴に布を突っ込んで鼻血を止めている花と禰豆子に声をかけた。

 

「灯りがあるぞ。あそこで休めるかもしれない。花は血が止まったか?」

 

「あたぼうよ、こんなの屁でもないぜ」

 

未だに男気に溢れている花はワイルド風に布を取った。意外と影響されやすい花である。禰豆子は花の鼻血に若干涎を垂らして興奮している様子だったが、手を出すことはなかった。半分人だが半分は鬼である花を同族と認めているからか。それとも血には反応するが花は不味そうだからか。理由は不明である。

花は涎を垂らしている禰豆子をみては、まったく仕方ない妹だと満面の笑みで懐から布を取り出して涎を拭いてあげた。そこで初めて、妹の口元に口枷がされていることに気づいた。今更ながらに気づいた。

花は視力は良いが禰豆子にセットされているものは全て禰豆子と同化してみえるので仕方ないといえばしかたない。

 

「ねぇ、おにぃ。禰豆子の口枷って……」

 

自分よりも先に事情を知っている炭治郎に禰豆子の口枷のことを尋ねようと質問をしている最中に炭治郎の鼻が血の匂いを嗅ぎつけ

 

「血の匂いだ!怪我してる人がいるのかもしれない。行こう!」

 

と人助け魂に火が付いたらしく、炭治郎にゾロゾロと引っ張られるまま仲良くお堂の中へ突入した。

そこで衝撃的なモノを見てしまった炭治郎は凍り付いた。

 

複数の死体が折り重なるように床に転がされていて、その血を啜る音がお堂の中に響く。男がその血を啜っていた。

 

ふと、炭治郎達の気配に気づき、ゆっくりと振り返る。

男の口元は血で真っ赤っかだった。

 

「ん、何だ。お前ら」

 

炭治郎は表情を凍り付かせ男が人食い鬼だと直感し、後ずさる。花はまったく気にした様子はなく、クイクイと炭治郎の袖口を引っ張っては

 

「ねぇねぇ、禰豆子の口枷ってさぁ」

 

と質問を続ける。今はそれどころではないと炭治郎は花と禰豆子を自分の後ろへ下がらせようとする。

 

「妙な気配が、二つ?……人間か?」

 

そう問いかけるな否や、男は炭治郎の方が素早い動きで襲い掛かった。お堂の入口を飛ばして炭治郎を外へ吹き飛ばす。

 

ついでに花も「あうちっ!」と悲鳴を上げて転がった。

 

禰豆子は無事だった。

 

「………」

 

だがお堂の中の死体に物欲しそうにダラダラと大量の涎を口元から流した。だがすぐに襲われている炭治郎と転がっている花へ視線を向け動いた。炭治郎は喰われかける寸前腰元の斧で鬼の喉元を掻っ捌いた。だがその攻撃は浅く首を落とすまでは届かなかった。鬼は小馬鹿にしたように笑いながら

 

「斧じゃ俺の首は落とせねぇぞ」

 

と目を見張るほどの再生能力を見せつけた。炭治郎がつけた傷は見る見るうちに再生していく。花は兄の危機よりも転がされたことに腹を立てた。着物の汚れを払って立ち上がり、偉そうに腰元に両手を当てて胸を反らす。

 

「ちょっと今大事な質問してるところなんだから邪魔するなんてデリカシーに欠ける男ね!」

 

「ん?コイツは妙な気配の……まぁ、喰ってみれば分かるか」

 

人食い鬼は一つ首を傾げて不思議そうな顔をしたが、ターゲットを炭治郎から花に変えたらしく、視線を花へ固定させる。だが人食い鬼が動く前に禰豆子が大きく跳びあがり人食い鬼の頭をサッカーボールを蹴るようにふっ飛ばした。

 

「なに!?」

 

驚愕する人食い鬼の頭は胴体から蹴り飛ばされ木へぶつかりバウントする。炭治郎は目を見張りひとく人食い鬼の頭は自分が攻撃を受けたことをすぐに理解できず地面へ転がる。

花は自分を庇ってくれた禰豆子に対して急に体をくねらせ乙女モードになった。

 

「やばい私の天使がカッコイイ!」

 

「今そういう問題じゃない!?」

 

さすがの炭治郎もツッコミをした。それに反応した花は思い出したように唇を尖らせて拗ねて見せた。

 

「あ、そうだ。おにぃ、さっきから質問してるけど禰豆子の口枷が気になって気になってしょうがないの」

 

「今は後にしろ!」

 

つい条件反射で怒鳴り返してしまった炭治郎は勢いで出た言葉にしまったと顔を青くさせた。普段可愛い花だが自分に反抗する者に対しては情け容赦なく厳しくなるのだ。

 

案の定、みるみる内に表情を失くしていくはなはついには無表情になりまるで掃き溜めを見るような視線を向けた。

 

「おい」

 

低い声で声掛けをされ、炭治郎はビクッと体を震えさせた。

 

「ソイツ、始末したら答えるのかよ」

 

「答えます」

 

ビシッと直立不動に立ち花へ敬礼して炭治郎は答えた。

 

「よし」

 

花は深く頷いて「来い」と一声かけて自分の右手を前へ翳した。するとフッと現れる一振りの刀。黒い鞘から刀を抜きだして腰を低くして素早く駆けだした。人食い鬼の胴体目指して。

 

「よっと!」

 

待ち構える人食い鬼の攻撃範囲から体を低くして一撃を交わしまるでスウングするように人食い鬼の足を斬りつけた。というか、片足を完全に斬り落とした。

 

「ギャァアア!?」

 

頭の方が悲鳴を上げ胴体がバランスを崩し前のめりになって地面に倒れ込んだのを確認して背に回り込み足で力強く踏みつけ抑え込む。人食い鬼が苦痛に顔を歪めても追及の一手は逃さずすかさず禰豆子を呼びつけた。

 

「禰豆子ォぉお!」

 

「!」

 

「その頭こっちに投げろっ」

 

荒い命令に驚きつつも禰豆子はいわれるがまま人食い鬼の頭を鷲掴みにし大きく振って投げた。花に向かって。

 

「なにを!」

 

「決まってんじゃん」

 

しっかりと胴体を抑えつつ、まるで野球のバットのように刀をしっかりと握りしめ構えた花はニヤリと笑って大きくフルスイングした。

 

「ギャァァアアアア!!」

 

高速で投げつけられた人食い鬼はバッサリと花の刀に斬りつけられ一刀両断され断末魔の悲鳴をあげて霧散していく。

 

「よし!倒したっ」

 

フンッと鼻息荒くさせて満足そうな顔をした花を見て炭治郎は花が殺人犯になってしまったとこの世の終わりのような青白い顔になってしまった。

 

そして、木の陰でハラハラドキドキしながら見守っていた人物が出鼻をくじかれ登場する機会を失ってしまい、狼狽えていた。それだけではない。知らされていた内容よりもずっと濃ゆい人物がいるなんて聞いてないよぉ!?と叫びたいくらいツッコミしたかった。

 

その人物とは炭治郎達が目指していた鱗滝左近次本人であった。

 

(何なのだ何なのだ何なのだ)

 

左近次の頭の中はこの言葉で一杯だった。

 

手紙の中の人物では鬼殺の剣士になりたいと申していたのは少年だったはず。

なのに人食い鬼を前にしてなんの躊躇いもないどころか、殺すことに躊躇いもなく見た事もない動きで刀を振るう少女がいる。

 

初めて目にした左近次が震えあがるくらいの覇気を放ち、人食い鬼の胴体を片足一つで抑え込む力を秘めている少女。

だが左近次はハッと我に返り考えを改めた。

 

もしかしたら、あの少女は恰好が女の子のだけであって本当は男の子で着物の下は筋肉モリモリマッチョマンかもしれない。そうだ、義勇が言う少年とはあの子の事を示すのだと自分に言い聞かせる。

 

左近次は乱れた呼吸を落ち着かせようと胸に手を当てて深く深呼吸をする。

 

よし、出るぞ。

 

自分に言い聞かせ、足音を、気配を消して少女の後ろに回り込んだ。

 

「おい」

 

だが花はまったく無視して炭治郎へ近寄り話しかけた。

 

「おにぃ!邪魔者はいなくなったんだからちゃんと教えて!」

 

先ほどまでの覇気はすっかりなくなりまた普段の花に戻っては炭治郎を困惑させた。

 

「花が花に戻った……!?」

 

「おい、お前達!」

 

声を荒げる左近次に対して花はさらに無視を決め込んだ。

 

「ほら、おにぃさっきみたいにシャキッとして」

 

「いやなんかそこの人が俺達に話しかけてるよ」

 

無視できない優しい炭治郎が花に教えてあげるも花は聞く耳を持たず自分が聞きたかった質問を続けた。

 

「だから禰豆子の口枷ってなんの意味があるの?」

 

「教えてやるから儂の話を聞けェ―――!!」

 

たまらず左近次が叫ぶと、

 

「よろしくお願いしまーす」

 

花はコロリと態度を変えて初めて左近次に向き直り頭を下げてお願いをした。

 

「………」

 

凄く疲れた気がして帰りたくなった左近次であった。




(なるほど~、禰豆子が鬼だから必要なんだね~)

(納得言ったか。それでは……)

(それじゃあ私も必要じゃん。だって私も半分鬼だし)

(は?)

(だから私鬼なんですよ。半分、ハーフ?)

(……小僧、お前の妹は何者だ。いや、なんだ?っていうか、なに?)

(とりあえず怒らせると怖い双子の妹です!)

(………帰りたくなった………)

【どっちか分からないからとりあえず二人に試練を与えてみた】
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