花ちゃん節でこれらかも頑張らせていただきます!ではどうぞ!
花がそう簡単に禰豆子と離れることを許すわけがない。
普段から我が天使!と溺愛するくらいに撫でまくっているのに、一時でも離されたら正真正銘の鬼に変化してしまうかもしれない。
なんだかんだ夜が明けて人食い鬼に殺された人たちをお堂の近くへ埋葬した左近次は義勇から頼まれていた鬼殺の剣士候補が二人になってしまった事実に困惑してしまった。
(竈門炭治郎、竈門花……か)
同じ顔の性別が違う男女の双子。
一人は優しそうな顔立ちで左近次と共に埋葬を手伝ってくれた。
もう一人は日に当たるのを嫌がって籠の中に収まっている妹の傍にへばりついて涎垂らして寝ている。
豪胆なのか、それともふてぶてしいだけなのか。すぐに左近次が判断を下すには時間が掛かった。もしかしたら手違いで義勇が少年と書いてしまった部分が少女だったかもしれないと考えた左近次はとりあえず二人まとめて試練を与えてみることにした。
左近次は炭治郎へ鬼となった妹を連れて行く覚悟を問うことにした。
「炭治郎、もし妹が人を喰ったらどうする」
「え、…あ」
迷いを見せた炭治郎の頬を左近次は引っ叩いた。
スパァアーンと小気味よい音と共に左近次は叩かれた頬を抑えて呆ける炭治郎を鋭く突くように言った。
「判断が遅い。鬼になった妹を殺しお前は腹を切る。お前は甘すぎる。その鈍さが命取りともなり妹をも失うことになる。お前が歩もうとしている道は修羅の道だ。決して生半可な覚悟では歩めぬことを努々(ゆめゆめ)忘れるな。いいな!」
「……はい!」
炭治郎は目が覚める想いで必死に返事を返した。
左近次はお堂の中で寝ているはずの花の所へ向かうことにした。ひょこひょことその後ろを付いてくる炭治郎を伴ってお堂の中へ入る。
相変わらずすぴーと寝息を立てて寝ている花の姿があった。
禰豆子はその隣で頭の上に大きめの布を被って籠の中から目元だけを出して左近次を興味深そうに見つめていた。
「花、花、起きろ」
左近次が花の前のしゃがみ込んで肩を揺らす。花はうーだのあーだの呻いて少し瞼を薄く開いた。
「……あれ、あさ?……」
ぺちぺちと遠慮なく左近次は花の頬を軽く叩いた。
「そうだ。起きろ。お前にも質問せねばいけない」
「………起き抜けに質問するとか、強引じゃない…?」
楽しい夢でも見ていたのか、左近次を視る目が据わっている。
あれは機嫌が悪い証拠だと炭治郎はさっと顔を青くさせた。
やや怯んだ左近次もコホンと咳ばらいをしてその場をごまかした。花は目元をこすぐってふわぁ~と大きな欠伸を一つした。
「……どちら様でしたっけ?」
「……鱗滝左近次だ」
「そうでした。それで何ですか?質問って」
「花、お前は鬼となった妹がもし人を喰ったらどうする」
「はぁ?私の天使が不味そうな人喰うわけないでしょ?食べるとしたら、あれだよ……。loveだよlove。特に私からの愛とか」
左近次はゆっくりと後ろに立つ炭治郎を見やって、言った。
「………お前の妹は変わっていると言われないか?」
「言われません!」
キッパリと答えた炭治郎の笑顔があまりにもアレで、つい左近次は目頭を押さえた。天狗の目にも涙ってやつだ。
あまりに個性的すぎだ。今まで育て上げた剣士の中で特に強烈なのが来てしまったと悲観してしまいそうになる。
だが逆に考えればこれは個性=強さと取れるのではないかと多少前向きに慣れた。
気を取り直して自分の家に連れて行くことにした。
「では二人共行くぞ」
「はい!」「はーい」
禰豆子in籠を背負った炭治郎と間延びした返事をする花は常人の動きではない速さで歩き続ける左近次の後を喰らい付くように必死に追いかけて左近次の家までたどり着いた。
家の前に辿り着く頃にはすっかり息が上がっていた二人。
ハーハーと荒い呼吸を繰り返し膝をつく炭治郎と半分屍と化して地面に寝転んでいる花。女の子がそんなに足を広げるなとつい左近次は窘めた。
だがまだ試練ではないと虫の息の二人二人を強引に立たせて山の中へ連れて行った。しっかりと禰豆子は家のなかへ運び込んで寝かせてから。その作業の間、花は禰豆子とのしばしの別れを全力で悲しんだ。
「禰豆子~禰豆子~!可愛い産まれたての赤子のような寝顔をしてまぁお姉ちゃんとの別れを悲しむことなく眠りにつく姿がたまらなく可愛い!待っててね?す~ぐ光の速さで帰ってくるから~」
うりうりと頭をこすり付けて大げさに悲しむ花は鼻水垂らして大泣きしていた。
呆れたように左近次は花の奇行を引きながら見守った。
「……毎回花はこんなことをしているのか」
「あんまり離れた事ないですから。仲良かったんですよ」
炭治郎は苦笑しながら説明した。
左近次は仕方ないとしばしの別れをじっと見守った。でも一向に離れようとしないので最終的には首根っこ引っ掴んで引き摺って問答無用で連れて行った。
「鬼~!悪魔~!天狗~!ダンディ~!」
「なんだそれは」
「褒め言葉らしいです」
◇◇◇
霧深い山中の奥までやってきた三人。
空気が薄いのか呼吸が荒くなる。ここまで一切休みなしに歩いてきたが炭治郎はかなり堪えているようで肩で荒く息をしているし、花に至っては口から魂を半分飛ばしている。体力がない花がよくここまで頑張れたものだ。半分鬼のお陰である。
「……はぁ、はぁ……」
「じぬ、……しぬ……ちぬ……しぬ。あれ?酸素って……なんだっけ?…」
「ああ、花!まともに喋ろうとするなって」
炭治郎はパシッと素早い動きで口から飛び出しかけている花の魂を掴んで無理やり口に押し込んだ。
「むぎゅ」
「ほら戻して戻して」
ぐいぐい押し戻して無事に魂は花の中へ帰還した。鱗滝は無言で幻と見たと勘違いをしてその場を流した。
「いいか、ここから山の麓の小屋まで戻ってこい。今度は夜明けまで待たないぞ」
「え!?」
驚く炭治郎とまだはっきりと意識が戻っていないのかなぜかひょっとこの顔になりきっている花を残して鱗滝は踵を返して霧の中へ消えて行った。呆然と残された炭治郎はしばし固まっていたがすぐに我に返りとにかく小屋を目指さなきゃと後ろにいるはずの花に振り返った。
「花!大丈夫だ、俺が絶対花の手を離さないから………っていない!?」
まるで漫画の切り抜き線が囲むように花の姿が何処にもいないのだ。忽然と消えてしまった花を探して炭治郎は四方に向かって叫ぶが、まったく反応は返ってこない。
「花―――!花―――!?」
濃い霧の中、一人で降りれたとも考えられず、もしやと最悪な展開を予想してしまう。さぁと顔を青ざめて炭治郎は花の腹具合を案じた。
「きっとこの寒さで腹を下してしまったんだ。それで急いで一人厠を目指して……!あぁ、こんなことならちゃんと腹巻をさせておくべきだった……!」
兄として妹の健康管理に気を配るべきだったと自己嫌悪に陥るがすぐに復活して得意とする己の優れた嗅覚を利用して花の痕跡を辿ることにした。きっと鱗滝家の厠を目指して山を下りたに違いないと考えた炭治郎は覚悟を決めて霧の中へ走り出した。
炭治郎は知らなかった。
この山に張り巡らされている罠がその行く手を待ち受けていると。
そして腹を下して山を下山しているであろうと予測された花は鬼の身体能力を使って軽々とまるで猿のように『木の上に登って禰豆子の気配を感じ取っていた』。
「うひょー、高いな~」
暢気に気持ちよさそうな声を出しているが、きっと炭治郎が見たらムンクの叫びのような顔になってパニックなること必衰である。それくらい高い場所だ。以前の花なら怖がっているかもしれないが、半分鬼となってからテンションがさらにハイテンションとなっている。考え方も突発的で独創的。
「さて、禰豆子はどこだろう……」
濃い霧で視界は遮られていえど鬼の気配を消すには効果がなかった。というか鬼同士感じ取れるアンテナがある。
花の場合は独特で禰豆子と波長が合っているらしく、その気配を感じ取れば余裕で合流することができる。たとえ山の中に置き去りにされようと問題はない。
見えない視界を鬼の目でよく凝らして見る。
見えない姿を探し、見えない気配を探す。
常人では到底真似できないであろう芸当を花は自然にやってのけた。そして見つけた。
嬉しさから口角が上がり、八重歯を覗かせる。
「よし、後は……山を下り……」
ずるっ。
「え」
嘘だと思った瞬間、足元が滑ってバランスを崩した花はそのまま間抜けにも地面へ全力ダイブした。
「うそ~~~~ん!?」
鬼の身体能力が上がったとは言え、元々は貧弱な花が忍法宙返りの術で華麗に着地できるわけもなく、悲惨な結果になってしまう。
「ふぎゅぅ!」
ドサッと終わらずにごきっめきっと嫌な音を立て花は地面に倒れた。しかもそこが傾斜の厳しい所で落ちたで終わらずそのままゴロゴロと転がりだしてしまう。
「ぎょぇぇえええええええ!!」
まるで見事なコントのように花はぐるぐると転がり続けた。しかもその勢いがドンドン早くなり高速で転がっていく。
鱗滝が設置した罠など華麗に無視して花はドンドン転がって行った。すでに花は意識を手放しておりとまる意思はない。
というか、止まれない。
だが驚くことに花が転がり始めたポイントは丁度鱗滝の小屋の真後ろへ一直線に繋がっており、そのまま転がり続ければたどり着くという見事な計算となっていた。仮に狙っていた場合の話ではあるが。
炭治郎が花の腹具合を心配しながら全力で鱗滝の罠に引っ掛かっていたりしていた同時刻———。
鱗滝が小屋に辿り着こうとしていた矢先、小屋の後ろ側の壁に何かが高速でぶつかる音が盛大に辺りに響いた。
ドガシャーン!!
「なんだ!?」
鱗滝はすぐに裏手に回り音の原因を調べにいった。
すると小屋の壁が人型に綺麗にくりぬかれていた。
「なぜ、こんなことに……?」
というか一体どうやってこのようなやり方になったが分からないが、その穴から中の様子を伺うと多少腕がよじれて可笑しな方向になっている目を回した花が仲良く禰豆子と寝ていた、というか伸びていた。
「ほへ~~」
周りには突き破って壊したであろう木壁の破片が散乱していた。
「……まさか、儂と同じ時刻に辿り着くとは……」
どういう下り方をしたらこんな状態になるのか知りたくもなかったが、花の潜在能力は確かに感じた鱗滝はこれは合格としなければいけないかと悩んだ。
とりあえず花を介抱しようとしたが、かなり重症と見た骨折も見る見るうちに回復していく姿に、やはり花が話していた話が本当なのだと驚きつつもほっとした。やはり少女の痛々しい姿をみるのは胸が痛むのだ。
だが約束は約束。
その後、遅れてやってきたボロボロの炭治郎が凄い形相で中に入って来た途端叫んだ
「厠はどこですか!!(花は無事にたどり着いたんだろうか!?)」
という台詞に鱗滝は
「……あっちだ」
と冷静に対応しつつ、問題児な双子がそろったところで二人を育てることを決めた。
(お前達を認める。竈門炭治郎、竈門花)
(え、何が?何を認めるんですか?)
(何がって……え?今更?今更なのか?)
(ねぇ、おにぃ。私何か認められるようなことした?)
(俺と一緒に鬼殺隊の剣士になる為の見極めをされたんだよ)
(そうなの!?平凡じゃないじゃん!?お断りします!!)
(即答だと!?)
(そうだ!花!そんなことより腹は!?腹は大丈夫か!)
(なんで腹なの?)
(クッ、何なのだこの双子は…!)