大体更新しない日は、必死に執筆してるかネタに苦しんでるか現実逃避しているかの三パターンです。
応援のほどよろしくお願いします。
そういえば二宮金次郎ネタはどこから仕込んだかというと、よく通る道から見える豪華なお宅の庭先に見える二宮金次郎像から思い浮かびました。
個人の庭にある二宮金次郎像って誰トク?っていうかなんで置いてあるの?
謎は深まるばかり―――。
【鬼殺隊】とは文字通り鬼を殺すための先鋭部隊である。
政府公認『ではない』組織は古よりその存在をひた隠しながら鬼と闘い続けてきた。
いつ、どこからかやって来たのか不明である鬼を殺す唯一の刀は特別製で簡単に入手することは不可能である。その他に鬼の弱点としては太陽の光があげられる。
強靭的な肉体と目を疑うような再生能力を所持する鬼と対峙する隊士は生身の人間であり、その命を戦闘で落とすことも多々ある。だがそれでも彼らは刀を振るい続けるのだ。
人々の幸福の為に……、と花は左近次から説明を受けたが最後の言葉には納得がいかなかった。それは模範的な回答であり隊士一人一人の戦う理由はきっと違うだろう。それをさも正当な答えであると見せかける言葉が気に入らなかった。無論、左近次もそれは承知である。
これは建前上の説明でしかない。隊士達が戦う理由を知る機会を得ることもなかなかないので仕方ないのだ。だがまだ隊士になる前、育手の元で戦う術を学ぶ炭治郎と花には分かりやすく説明する必要がある。
「わかったか?」
「はい!」「はーい」
元気よく返事を返す炭治郎とその隣でむーんと気に入らなそうな顔をする花はこれから左近次の指導の元、藤重山(ふじかさねやま)で行われる最終選別目指して修行を受けることになった。まずは基礎体力をつけること。
炭治郎はひたすら毎日山下りさせられた。
「はぁ、はぁ……」
最初こそ、体が続かなかったもののその内息が上がらなくなった。だがその分仕掛けられる罠に殺気度が増し毎日殺される勢いで山を下りた。
その間花は炭治郎とは別に特別メニューを組まれた。動きやすい恰好になった花は憮然とした顔で師匠である左近次に問いかけた。
「あの、なんでコレなんですか?」
「お前は落ち着きがない。だからコレだ」
左近次は腕を組んでハッキリ言い切った。
花は背中から聞こえてくる声に不満そうに言い返した。
「だからって、なんで左近次さん背負わなきゃならんのですか」
そう、今花は左近次を背負っている。
所謂二宮金次郎スタイルで薪の代わりに左近次である。
「お前は体力も落ち着きもない。だからと言ってただの重しを背負わせただけでは意味がない。ならば儂自らが重しとなりお前を鍛えるのだ」
これが左近次が一晩考え抜いて出した結論だった。
炭治郎は最初こそ一人でもやれる。だが花は目を離せばすぐに禰豆子の元へ跳んで行く。私の天使~と叫びながら逃げるので左近次は何度眉間にしわを寄せて花の首根っこ引っ掴んで捕まえに行ったことか。数えていないが数えたくもないほどげっそりになるくらいは逃走された。なのでいくら反論されようとも左近次は譲らない姿勢だった。もはや育手の意地でもある。
「いや正論っぽいけど絶対意味違うでしょ」
「いいからやれ」
「横暴!」
と言いつつ花は不承不承に山を登っていく。
花とて理解しているのだ。すぐに刀が扱える状態ではないことを。鬼の身体能力のお陰で動きこそスムーズであるが、体力がなければ話にならない。鬼との戦いだって持久力がものをいう。ならば花は一番に脱落してしまうだろう。
それは花の思い描く平々凡々への道を閉ざすことに繋がる。
それは駄目だ。それはいけない。なぜなら花は平凡を愛しているからだ。自分の人生の目標なのだ。
それを諦めてしまったら花という少女に意味はない。
だから何があっても諦めない。
確実に這いずってでも進む。それが竈門花という存在なのだ。
花は左近次を背負って山を登る。たとえ、絵面的に可愛くなかろうともそんなこと百も承知である。
「……ふっ……ふっ……」
しっかりと二本の脚を踏ん張らせ、一歩一歩確実に進み続ける。額に浮かび上がる汗が幾度となく顔筋を沿ってしたたり落ちていくことか。空気も薄いことが相まって花を苦しめる。
酸素が足りない。
呼吸が苦しい。
だったらそれに慣れる為に呼吸法を取ればいい。
もっと楽にできるようなやり方で。
花は自然と楽な呼吸法を学んで行った。もっと負荷のかからないように角度を変えて、鬼の能力を存分に発揮できるように。
花は愚痴を一言も漏らすことなくひたすら無言で上り続けた。左近次はただ無言で花に背負われ続けた。一度として花の背から降りることはなかった。
ただ、たまに花が
「ウガァァアアアアア!!」
とまるで中ボスキャラ如くキレて衝動的に斜面を転がってしまいたくなる時は左近次があわてず騒がず後ろから、こう叫んだ。
「お前の天使が見ているぞ!」
「ハッ!?ごめんよ禰豆子ぉぉぉおお―――!!」
これこそ花の暴走を止める唯一の言葉であると学んだ左近次は明らかに花に毒されていた。本人は真面目なつもりでもきっと義勇が見たら別人ではないかと疑ってしまうだろう。
こんなノリで修行をこなしつつ炭治郎と花は修行をこなしていった。
家に待つ禰豆子は不思議なことにあれからずっと眠り続けた。心配する双子が左近次が呼んでくれた医者からの診断でただ寝ているだけだと言われた時には、ほっと胸を撫でおろした。
「あれだ!禰豆子は清い存在だからこの世の穢れを身に受けちゃったから今眠って一生懸命に清めてるんだよ」
「そうなのか!?」
ガビーンと全力でショックを受ける炭治郎に左近次は「いやいや」と手を振って否定したが無駄だった。炭治郎は正直なので花の思い付きともいえる言葉に納得してしまった。
家に帰ると見た目ボロボロな炭治郎は禰豆子が寝ている間、日記をつけることを日課としていた。
「よし!」
同じく見た目ボロボロな花は毎晩毎晩炭治郎が書いた日記を朗読することを日課としていた。
「全くここの文章おかしいでしょ?ほら、ただの禰豆子じゃなくて花の天使でしょ!?訂正訂正!」
さらに精神的にボロボロな左近次は不眠がしばらく続いた。
「なんなのだコイツらは」
でもその内もし、仮に花の天使(禰豆子)が人を喰ったら自分も腹を切ろうと決めているくらいには二人に毒されていた。花の日記を朗読する声が子守歌にように聞こえた来た時にはもう末期である。
二人共それぞれ罠を軽々と避けられるようになると刀を持たされた。炭治郎は刀を持つと途端に動きが鈍くっった。
花は左近次の用意した刀ではなく自分の刀がいい!と我儘を言った。
「では出して見ろ」
と左近次に言われて踏ん張って手の中に出してみようとしたが出せなかった。中二病的な台詞を叫んでみたが駄目だった。やけっぱちになって、
「カモンベイビー!!」
と言ってみたらあっさりと手の中に現れた時にはつい癇癪を起しそうになった。
「もっと普通な言葉で出て来いつーの!」
「これが花のいう刀なのか、……面妖だな」
「スゴイな~」
左近次と炭治郎がそれぞれ驚嘆している側で花はさっきの言葉以外で出すことはできないか実験してみた。
「現れろ!来て!」
消えろと念じればフッと消えるのに出す時はやっぱりさっきの言葉じゃないと駄目なようでこの世の終わりのような沈んだ顔で次なる修行へ移った。
◇◇◇
容赦ない素振り大会から際限なく転がされては起き上がり転がされては蹴とばそうと襲い掛かったりと全く性格が真逆なら行動もまるっきり違った双子はそれぞれのペースで修行をこなしていった。
そして炭治郎は呼吸法と型を習い、花は刀の持ち方から始まった。どうしても野球をやるような握り方になってしまうからだ。スイングで決められた快感が抜けないらしい。
「違う!なんだその構えは!?」
「スイマセン!」
左近次が花の手の握り方を変える。
「こうだ、こう!」
「スイマセン!」
だが花の手はまた元に戻る。
「だから違うっ!」
「スイマセーン!!」
最後にはスパーンと後頭部を叩かれた。
ようやっとそれらしい握り方になった時には夕方になっていた。
それからあっという間に狭霧山に来てから一年が過ぎ、左近次は炭治郎に教えることはないと言った。
「え」
呆ける炭治郎に左近次は大きな岩を指し示し、
「この大岩を斬れたら最終選別へ行くことを許可する」
と言い残して炭治郎をその場に残し立ち去った。
それから炭治郎の葛藤が始まった。どれだけ鍛錬を積もうが身に着けようが大岩を斬れることはなかった。だがそんなもやもやとした炭治郎の前にある協力者二人が現れてから焦り続けていた日々とはおさらばとなった。
対して花はというと――――。
左近次にある難題を提示された。
「人としての形を保ちながら鬼となれ」
「……は?……なんですか、それ」
花はすぐに理解できず不審そうに尋ね返した。
「お前は最初の頃よりも逞しく成長した。禰豆子の元へ逃走することも少なくなり、刀の握り方も構え方も普通になった。儂が教えずとも呼吸法を会得し、体の動かし方それらすべてを自然の内に学んだ。だがお前の存在は奇異なる者だ。もし、鬼と遭遇した場合、お前は我ら人の側に回るだろう。太陽の下で共に動く姿は他の鬼から見れば異端扱いとなるはずだ。その時、貴重なお前の存在に奴が気づかぬはずがない……。その時お前は鬼として抗うことができるか?人としての花でいられるか?儂はそれを危ぶんでいる。だからこそ、お前には強靭な精神が必要なのだ。今以上に」
左近次なりに花の身を案じての言葉だったが、花はそう受け取らずに視線を険しくさせ顔を顰めた。
「……私が鬼になるって思ってるんですか」
「そうならんようにこれからお前に暗示をかける」
「暗示?」
「そうだ。花、儂の暗示を自力で解いてみせろ。それがお前が最終選抜へ行くための最後の試験だ」
左近次は花の前へ立ち、視界を手でふさいだ。
「よく聞け、花」
暗くなる視界と共に左近次の吐息交じりの声がよく耳に響く。五感が鋭くなっている。
自分以外の鼓動の音が聞こえてくるようだ。
「………」
花は何を言われるのかまったく予想できなかった。
ただきっとろくでもないことだろうなと考えていたが。
『お前は………今から鬼となるのだ』
まったくその通り。
ドクンッ!
離れて行く左近次の手と開ける視界。
花の鼓動が大きく跳ね上がり体全身がカァと熱くなり、花はその場に膝をついてしまう。両腕で自分の中にある何かを必死に抑え込もうと声を漏らす。
「くっ、うぁぁあ……!!」
駄目、出てきちゃ駄目!
皮膚に爪を立て抑え込もうとするが、その指先の爪がドンドン尋常ではないほど伸びていく。皮膚に食い込んでいき食いしばる口元から歯が伸びてゆっくりと露わになる。
肩口で揃えられていた髪がスルスルと伸びて行く。
「……駄目、駄目ぇぇえええ」
段々と【鬼化】していく己を抑え込むことは不可能で今、ここには左近次がいる。まだ逃げておらず、花の鬼化を見ている。
(左近次さん、左近次さんがいるっ)
花はまだ意識があった。いや飲み込まれようとしていた。
いつもの花なら余裕だがこれは不意打ちだった。
己を保てない。
自分の手で左近次を殺すかもしれない恐怖が花を襲う。
(誰がそんなこと、するか。してたまるかっ!)
花は頭を振り乱してその場から駆けだした。できるだけ左近次から離れる為に、無我夢中で走った。
走った。その場から全力で立ち去った。
それからの毎日は花にとって絶望に満ちた日々だった。
炭治郎と禰豆子と左近次の元へ帰られるはずがない。
人ではなく鬼としての己を受け入れられず、花の人格が保てない日もあった。ハッと我に返り気が付けば血に飢えて獣を食い殺している日もあった。自分の口元は血で真っ赤に染まり、獣臭くて花は大粒の涙を流して山の中を駆けて滝場まで走った。そこで溺れて死んでしまいたいとさえ願った。
だが花は鬼だった。
どんなに悲しんでも、どんなに苦しんでも。
そう、花は鬼であることから逃げられないのだ。
鬼としての花。
可哀想に。可哀想に。
時間だけが残酷に経過していき、花は徐々に鬼であることを受け入れた。鬼として振舞おうともした。
「うぐ、ぐ……!」
だが花はその度に強烈な吐き気に襲われ、何も受けつけなくなってしまった。だが何かを食べなければ花は生きていけない。だから泣きながら獣を襲った。出来るだけ生で食べないように焼いて食べた。美味しくはなかった。
帰りたい。帰りたい!
花は一人寂しく体を丸めて眠った。
寂しくて悲しくて、苦しくて。
一人は心細かった。誰かと一緒にいたかった。
なんであんな暗示なんかと花は左近次を恨んだ。心底恨んだ。恨んで恨んで………気が付いた。
花は、暗示を掛けられている。
そうだ、暗示だ!
花は飛び起きた。
「解けばいいんだ!」
鬼であると暗示を掛けられているのだ。ならばその暗示を解けば花は人に戻れる。歓喜が荒んだ心に充満すると共にそのやり方を模索した。
だがいくら考えてもその方法は見つからない。
花は途方に暮れた。このままでは炭治郎が一人で藤重山に行ってしまう。それが最後の別れになるかもしれない。
そんなこと嫌だ!
花は迷いに迷ったが、辛うじて意識が残っている内に左近次の元を訪れることを決めた。きっと鬼である花を左近次は受け入れないかもしれない。でも元に戻る方法を、人として再び炭治郎や禰豆子に会う為には左近次の協力なしでは叶わない。討たれる覚悟で恐る恐る小屋の近くへ近づいた。
そこは以前と変わりなく静かだった。
まだ禰豆子は寝てるのかな。
おにぃはまだ修行に行ってるのかな。
幸いにもまだ日は落ちていない。
日の下の元、花はそろりそろりと忍び足で小屋の入口付近へ向かった。
(なんだか静かすぎる……)
妙な胸騒ぎを抱きつつ、花は戸口に手を掛けた。勇気を出して一気に開けてみる。
するとそこには―――息を呑む光景が広がっていた。
「やぁ、遅かったな」
血まみれで倒れている炭治郎と禰豆子と左近次。
その三人の丁度真ん中に朗らかに微笑むあの男が立っていたのだ。
「すでに息絶えた後だ。残念だったね」
なぜ、アイツが。
なぜ、コイツが。
生前の自分を殺した男。あの胡散臭い笑みをこれでもかと顔に貼り付けて鬼である花を見つめてくる。
どうして、皆が。
どうして、炭治郎、禰豆子、左近次さん。
血まみれなの。どうして、母さん達と同じ格好なの。
嘘だ、嘘だ、嘘だ嘘だ嘘だウソウソうそうそ!!
何も考えられず、花はただ叫んだ。叫ぶしかなかった。
「ぁぁぁ、ぁぁあああああああああ――――!!」
花は顔を引きつらせて絶叫を迸った。
【醒めない悪夢】