花鬼の少女   作:サボテンダーイオウ

8 / 8
指摘してもらった部分を補完するわけではありませんが、アフターストーリー的なものを書きました。
原作では鱗滝さんの元へ帰ってきたと表現されていますが、私の解釈にしてみればそれは未練があるからこそ残ってしまった者。

もし、花が原作通りにあの鬼の話を最後までしっかりと訊いていたらこのような出会いはなかったと思います。
錆兎と真菰の敵と知っていたら余計に感情移入し炭治郎の危機に花は鬼に変化していたかもしれません。

原作通りの面白味はないかもしれない。けど無限の可能性があるからこそこのような別れ方があってもいいのではないか。
そう解釈して出来上がった作品です。賛否両論はあるかと思いますが読む際は自己責任でお願いします。


ささやかな宴を

―——緑豊かなに手入れが行き届いた庭先を眺められる縁側に正座する男性が一人いた。清廉とした佇まいから気品が溢れていた。その男性の手には一羽の鴉がいた。伝達用の鴉なのか、男性は満足そうに頷いて一人嬉しそうに喋った。

 

「そうか、『六人』も生き残ったのかい。優秀な子ばかりだね。私の剣士(子供たち)は。しかも……その内の少女は…鬼子とは……どんな剣士に育つのか楽しみだな」

 

男性は自分の事のように嬉しそうに呟いて空へ鴉を飛ばした。

 

「さぁ、私の想い(気持ち)を伝えておいで」

 

彼の口元には始終微笑みが絶やされることはなかった。

 

◇◇◇

 

一生藤重山から出られないかと思ったが、意外な方法であっさりと脱出することができた炭治郎と花はえっちらおっちらと左近次と禰豆子の元へ急ぎ帰った。それなりに怪我をしたものの、重症というわけではなくお互いしっかりと大地を踏みしめて胸を張って帰れた。

 

支給された隊服が入ったカバンをしっかりと肩から下げて仲良く手を繋いで歩く姿に通行人は微笑ましい笑みを浮かべて通り過ぎていく。

 

「花、もうすぐだ」

 

「うん。早く禰豆子と師匠に会いたいね」

 

花の肩には啄木鳥がしっかりと乗っていて始終興味深そうに辺りを見回していた。その度に鋭い口先がぐさっ!と花に刺さりそうになるがその度に花はタイミングよく首を横に傾げて避けていた。鋭い鬼の感覚が成せる技である。

でもたまにグサッ!と刺さって花は

 

「痛いっ!!」

 

と叫ぶこともある。啄木鳥は申し訳なそうに鳴いて柔らかな羽毛をこすり付けてくるので花も怒るに怒れず、

 

「……いや、悪いと思ってるならいいよ」

 

と歯切れ悪い言い方をしてなあなあに終わる。これを一時間に一回は必ずしていて炭治郎は心の中で、

 

(ああ、俺の妹はこんなに優しく育ったんだな)

 

と感慨深い気持ちに浸っていた。

そんな似た者双子はようやっと狭霧山、左近次と禰豆子が待つ懐かしき小屋に辿り着いた。外は夕暮れ時で涼しい時間帯となった。

 

花は小屋を視界に入れた途端、炭治郎の手を離してたったかったかと瞳を輝かせて走り出した。

 

「禰豆子!師匠ー!」

 

「花!急に走り出して転ぶぞ」

 

炭治郎が慌ててそう声をかけるも花は顔を少しだけ振り返らせへへーん!と余裕そうに言い返した。

 

「大丈夫だって!」

 

だが炭治郎が何かに気づき慌てて花に注意を促した。

 

「っ!?花、危ないっ前!」

 

「へ?なに……がっ!!」

 

炭治郎の慌てっぷりに何事かと前を向き直せば何者かに胸部分へ強烈な頂肘一食らい、花はその誰かを確認することができずにその痛みと衝撃で仰け反り背中から倒れ込む。しかもそれだけでは終わらなかった。一目散に啄木鳥が飛んで逃げていく中、さらなる重荷が花に覆いかぶさった。

 

どすっ。

 

「ぐぇ」

 

まるで蛙が潰れたような声が花の口から漏れ、花の上に全体重を賭けて覆いかぶさる人物はこれでもかというくらい花に抱き着いて見せた。

 

「………」

 

その人物、禰豆子はぎゅうぎゅうと花に抱き着き、炭治郎も禰豆子が起きた事に瞳を揺るがして二人に覆いかぶさるように抱き着いた。

 

「禰豆子禰豆子!良かった良かった!」

 

「ぐぇぇえ」

 

さらに重さがプラスされ花は窒息しそうだった。

だがそれだけでは感動の再会は終わらない。なんと花のうめき声を聞きつけた左近次が小屋から飛び出してきて三人を抱きしめるように包み込んだ。

 

「炭治郎!花!よく帰って来たっ!!」

 

声を震わせ、仮面の下で歓喜の涙を流す左近次に釣られて炭治郎も泣き出した。さらに圧迫される花。

 

「鱗滝さん!」

 

「炭治郎!花!」

 

「………!」(ぎゅぅぅうう)

 

「………」(へんじがない、ただのしかばねのようだ。)

 

こうして四人は感動の再会を果たした。のちにぐったりとした花に気づいた二人が慌てて禰豆子を引きはがして介抱されたことで意識を取り戻した花。

その際、プンスカプンスカ機嫌悪く怒った。

 

「禰豆子の一撃はいいけど二人とも重たいから!」

 

べったり引っ付いて離れない禰豆子をナデナデしながらそう抗議した。

 

「禰豆子の一撃はいいのか。逞しくなったな、花」

 

左近次は軽いツッコミを入れ、相変らずの花節に恐れをなした。

 

「そうですよ!なんせ花は藤重山から一生出られないところを頑張って出てこれましたからね」

 

炭治郎は言わなくてもいい情報を得意げに胸を張って言った。

 

「何余計なこと言ってんの!?」

 

「どういうことだ?」

 

「いやぁ、それが……もごもご」

 

間一髪花が炭治郎の口元を抑えた為、余計なことを言われるまえに阻止できた。花としては余計な心配を掛けたくないという行動だったのだが、左近次としては面白くない。誤魔化されるのは嫌いなので禰豆子に

 

「禰豆子、花を捕まえていてくれ」

 

とお願いをした。禰豆子はコクッと頷いて花に近づき炭治郎の口を塞ぐ手を取って両手でぎゅっと握って可愛く捕まえた。花は卑怯だと叫んだ。

 

「姑息すぎます師匠!」

 

「お前の弱点は大概知っている。それで炭治郎、藤重山で何があった」

 

「実は、帰りがけ花が結界から出られなくなったんです。何が原因がよく考えたら花は半分は鬼なのですんなり入れるけど出るのは容易ではなかったんです」

 

「……すっかり失念していた」

 

「知ってたんですか!?」

 

「いや、そうではない。そういう可能性もあるかもしれないと危惧はしていたが、まさかな」

 

顎に手をやって感心したように何度も頷く左近次に花は少々不貞腐れた顔になった。

 

「私一生禰豆子や師匠に会えないかと思いました。まぁ会えたんでいいですけどぉ~?」

 

「そう拗ねるな。花」

 

「つーん!」

 

ぷいっと頬を膨らませて拗ねる花に対して左近次は立ち上がって釜戸の所へ向かった。その際、慈愛に満ちた声で

 

「腹が減っただろう?二人共まずは手を洗って来い。今日はささやかながら馳走だ」

 

と二人の為に久しぶりの手料理を披露してくれるようだ。

 

「やった!」「はい!」

 

二人は大喜びで我先にと外へ手を洗いに出た。その際、とととっと禰豆子も小走りに走って付いて行ったのを微笑ましく見送った左近次だった。

 

◇◇◇

 

夕飯は左近次の手ずからの料理に舌つづみを打ちつつ、藤重山で会った鬼の事など二人は熱く語った。左近次は何度も相槌を打って二人の話に熱心に耳を傾けた。

左近次は嬉しかったのだ。二人が帰って来たことが。

何より、自分の送り出した者が帰って来た事実が。

 

何度天狗の仮面の下で瞳を涙で濡らしたことだろうか。

数えきれない。数えたくもない。

自分の手で掘った御面は全く厄除けになっていないではないかと毎度自分自身を責めた。それでも帰ってきて欲しいという意味を込めて毎回掘っている自分がいる。

きっと、次なら無事に!と願いを込めれば込めるほどその想いは無残に裏切られる。

 

何度、絶望したことか。何度、もう育てるのはやめにしようと考えたことか。義勇の手紙がなければ出会わなかった三人の子供達。

 

今までとは違う何か煌めくような強さを感じる。

その考えは今も変わらない。

改めて左近次は二人に心から伝えた。

 

「お帰り、炭治郎、花」

 

二人はハヒハヒと熱がりながらぼたん鍋を食べている最中で不思議そうに首を傾げた。ちなみに禰豆子は花の隣でお鍋の匂いだけ嗅いでいた。

 

「……はい?」「急にどうしたの師匠?」

 

その動作がまったく同じで左近次はついつい笑ってしまった。

 

「ハハッ、いや、なんでもない。なんでもないさ」

 

笑って誤魔化す左近次はどこか憑き物が落ちたような顔をしていた。

 

◇◇◇

 

二人を出迎えたのは左近次だけではなかった。四人で川の字で眠りについた頃、何やら炭治郎の耳元で誰かが囁く声を耳にした。

 

『炭治郎……炭治郎、起きて……』

 

「……ん……?」

 

何処かで聞いたことがある声で、炭治郎は眠たい眼を少し薄めで開き、隣に眠る花の足が自分の腹の上に乗っているのを横にずらして体を起こす。

 

寝相が悪い花は大概布団から飛び出て朝になっていると布団から離れて寝ていることはざらである。早めに起床する左近次か炭治郎が毎日花を寝床に戻してあげるのが日課だ。

 

さて、炭治郎を呼ぶことは外から聞こえてくるようで炭治郎はふらふらと招き寄せられるように戸口を開けて外へ出た。

まだ夜明けには早く薄暗い周囲には人気の気配はない。

 

気のせいかと炭治郎はまた寝なおそうとして踵を返したが、今度はハッキリと炭治郎を呼ぶ声がした。

 

『炭治郎』

 

「……その声は……真菰?」

 

そう、ゆっくりと振り返った先には炭治郎に様々な指摘をして指導してくれたほわっとした少女が立っていた。

炭治郎が気づいてくれたことに笑みを浮かべて嬉しそうに手を振って言った。

 

『良かった、気が付いてくれた』

 

「真菰!」

 

炭治郎は恩人の姿に瞳を輝かせて真菰の元へ小走りで走った。すると真菰のすぐ傍には錆兎も立っていた。

 

「錆兎もいたのか!わからなかったよ」

 

『元気そうだな、炭治郎』

 

以前よりも雰囲気が柔らかくなった錆兎は真菰と同じく頭の横に狐の御面をつけていた。

 

『炭治郎。妹と一緒によく無事に帰ってきた』

 

『本当。アイツを倒してくれたんだね。ありがとう』

 

「アイツ?」

 

感謝の言葉を伝えられても炭治郎は何の事を示しているのかさっぱり分からない様子だった。すると真菰は思い出したように手をぽんっ!と打った。

 

『ああ、そっか。炭治郎は知らなかったっけ?』

 

「なにを?」

 

『私達、もう死んでるんだよ。幽霊ってやつ』

 

「……え、?」

 

炭治郎は目を瞬かせて固まった。

 

『その顔は信じてないね~。でも冗談じゃないんだよ。錆兎もだし』

 

『まぁな』

 

「………」

 

炭治郎は信じられなくて自分の頬を抓ろうとした。だが先に炭治郎よりも小さな手が頬に伸ばされた。

 

「おにぃ、抓ってあげるよ」

 

「いだいっ!!」

 

炭治郎は夜中であることを忘れて思わず痛みから叫んでしまった。そう、炭治郎の隣にはなんといびきをかいていたはずの花がしっかりと起きて来たのだ。

涎の痕が若干残っているが気にしていないようだ。

気を利かせて炭治郎の頬を抓っているがまったく加減がないので炭治郎はつい涙目になり体を引いた。

 

「花!痛いって!?」

 

「ああ、ごめんごめん。なんか抓って欲しそうだったから」

 

「そりゃ自分で抓ろうとは思ってたけどさ……」

 

ジト目で抓られた頬に手をあてがう。多少赤くなってしまったようだ。花はちゃんと謝りつつ視線を鋭くさせて炭治郎に紹介を促した。

 

「それより、こちらのお二人さん。誰?あ、涎付いたままだった」

 

ゴシゴシと手の甲で拭きつつ視線は決して二人から逸らさない。

 

「ああ、錆兎と真菰だ。俺に色々教えてくれたんだ」

 

花の声が普段よりも低くなっていることに気づかず炭治郎は頬を撫でつつ笑顔で紹介を始めた。

 

『お前が、鬼子の花か』

 

『中々鋭そうな妹さんだね』

 

錆兎の鬼子という部分はあえて花はスルーしにぱっと人懐っこい笑みを浮かべて二人に礼を伝えた。

 

「どーも、おにぃが大変お世話になりました。それで、お二人は幽霊なんですか?」

 

「花!いきなり確信をついちゃ失礼だろう」

 

「なんで失礼になるの。それにさっきおにぃだって確かめる為に頬を抓ろうとしたでしょうに」

 

「それは!」

 

同じ顔に同じテンションで喧嘩を始めた双子に真菰は可笑しそうに笑った。

 

『ふふ、仲が良いんだね。そうだよ、花ちゃん。私達、貴方達が倒してくれた鬼に殺されたの。だから敵(かたき)取ってくれて嬉しかった、ね?錆兎』

 

『ああ、炭治郎ならやってくれると信じていた。なんせ俺に勝てたのだからな』

 

まるで自分の事のように錆兎は喜んでいる様子で腕を組み語った。

何やらこの三人の間ににしかない絆を感じ取り花は、感心したように何度も頷いた。

 

「さすがおにぃだわ。友達100人できるかな?を的確に実現できそうな人だと思ってた。幽霊とも友達になれるとは」

 

『お前の妹は不思議な事を口走るな』

 

『個性的だよね、花ちゃんって』

 

「それが花の良いところなんだ」

 

とびっきりの笑顔で炭治郎は答えた。

 

「それじゃあ敵打ったからには成仏するとか?」

 

『うーん、それもそうだね。なんだかずっと鱗滝さんを傍で見てきたけど今の鱗滝さんはなんだか幸せそうだし』

 

『……俺達もそろそろ輪廻へめぐる頃かもしれん』

 

「え、二人はどこかに行ってしまうのか?」

 

炭治郎は慌てて二人に尋ねた。

 

『元々未練を残して成仏はできん。だが俺達にはもう楔は必要ない』

 

『炭治郎と花ちゃんがアイツを倒してくれた。鱗滝さんを笑わせてくれた。それで私達の重みも取れたの』

 

「錆兎、真菰……」

 

満足そうに言われてはこの場に留まらせることもできない。

何より、元々彼らは未練があって成仏できなかったもの。敵を取った上で鱗滝の傍にもう自分達は必要ないと判断したら心の枷が取れたのだ。

 

そんな彼らの思いを汲むように花はしっかりと決意を固く誓った。

 

「大丈夫、私達は死なない。私が、死なせない」

 

「花……?」

 

普段の妹の顔と今の凛々しい顔つきになっている花は同一人物かと疑ってしまうくらい炭治郎には別人になってみてて戸惑ってしまった。

 

『その言葉、しかと胸に刻もう』

 

『炭治郎、花ちゃん。鱗滝さんのこと、お願いね』

 

錆兎と真菰だけではない、鱗滝の元へ魂となって帰って来た仲間達が次々と顔を見せ、皆未練を断ち切った清々しい笑顔を浮かべて淡い光となって夜空へ立ち上り星と同化するようにスゥゥっと消えて行った。最後に錆兎と真菰だった。

 

『じゃあな』『ありがとう』

 

二人は光となって同じく夜空へ上がって行った。

炭治郎は花の手に触れてしっかりと握りしめた。

花もそれに答えるように自分の指を炭治郎に絡めた。

 

お互いの手をしっかりと握りしめてしばらく夜空の星を見上げた。花が想いを込めてぽつりと呟く。

 

「…皆、次はきっとイイ人生送れますように」

 

「……星、綺麗だな」

 

「うん。………寒いね。戻ろう」

 

「ああ」

 

二人はゆっくりと自分達が帰るべき場所へ戻って行く。

 

そんな二人に期待を寄せるように天上の星々はより一層輝きを増した。

 

【輪廻転生】

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。