ザラザラとした表面とさらさらとした砂がアクセントとして散りばめられている地面を僕は自身の足元で確認したわけだが実際のところ、本当にそうなっているのは本当によく分からない。それは先ほどの人が夢の管理者からそれに等しい存在であると感じたから。霊夢さんが話していた夢の世界というキーワードがどうしても気になると言うことだ。
「お父さんは元気にしているのかしら?」
「突然ですね。」
率直に言葉を返してしまった僕は何となくまずい事を言ったような気分になってしまった。
「今は敵の気配は、なさそうだわ。と言うわけで聞いてみたいのよ。」
霊夢さんの目は確かに輝いている。それだけにどうしても何かいつもと違うと僕の本能が言っているわけだがその言葉は無視する事にした。
「お父さんは元気にしてますよ。」
「そうなの。あの人はとても強かったわ。それは今でも変わらなそうね。」
その時の霊夢さんの哀愁漂う表情が気になるが言葉に出して聞くほどでもなかった。言葉を交わしていくうちに何か分かることもあるだろう。
「確かに強いです。僕はまだ足技だと拮抗出来るくらいで。」
「得手は剣よね。それで足で勝てるなんて彼奴は何者なのよ。」
「本当にそうですよね。でも、あれに勝てないと刀を抜いてもくれないです。何とか抜かせてやりたいです。」
「その意気込みはお父さんには似なかったらしいわね。」
霊夢さんは少し考えるように顎の辺りを触る。
「教育に関してはお母さんから教わっています。もしかするとそちらの影響が強いかもしれません。」
僕はそう答えた。
「そうらしいわね。」
何故か地雷を踏んだように霊夢さんは不満そうな態度を取り始めた。
「お父さんとはどのような関係なんですか?」
「彼奴とは何て言うのかしらね。結局何も分からないわ。そんなに関わっていたわけでもないし。でも、孤高の剣士である事には変わりないでしょうね。」
「今の状況については相応しくない、と。」
「そうでしょうね。何故王なんていう器に入り込んでしまったのか。それはどうしても直接聞いてやりたいものね。」
「険悪な関係ではないことが知れただけでも良かったです。」
兎に角、お父さんの今の地位については不満はあるものの、それ以外には特に何もなさそうだった。そもそもどうして僕をここに連れてきたのかはまだ分からないがきっと何か意味があると思っているしかない。
「にしても、目の前にあるのが月の都であっているのかしら?昔とは随分と雰囲気が違うけど。」
確かに目の前にというよりかは僕たちが歩いている先には何やら建物があるわけだがそれが何かは分からない。それよりもその前にいる誰かがとても気になる。
「こんにちは。」
相手は何も話さない。まるで屍のようだが立っているので表現としては不適切なのだろう。兎に角、反応に困った僕は妙に縮こまってしまったのかもしれない。
「生きてますかー?」
僕は再度話しかけてみたが特に反応は見せる事はない。その人は赤い瞳を持っていて銀色の髪でセミロングだがハーフアップさせている。トライバルのような模様の入った白色のジャケット、その下には紫色のワンピースと思わしき服装をしている。スカートの裾は矢印になっていて首元には赤い蝶ネクタイを付けていた。何より、特徴的なのは翼に生えているが右側だけという堕天使のような見た目である事だろう。そして口元は手で隠している。
「えーっと、」
霊夢さんはとても反応に困っているというのだけはよくわかった。
「ほう、人間か。」
やっとのことで出した言葉はそれだけだった。何というか生きているのかはとても怪しいものである。
「それだけなのね。」
霊夢さんが少し流れに乗せられているように感じるのは僕の勘違いであってほしいがきっとそのような事はない。
「貴女は?」
僕は聞いた。
「私はサグメ。君たちの計画はきっと侵略を止めに来たのだろう。だが、残念だ。私も止めたいと感じているが到底無理だよ。だから君には月の都を救ってほしい。それと同時に幻想郷へと侵略は失敗する。案ずる事はない。」
「随分と話すじゃない。どういう風の吹き回し?」
「詮索はやめようではないか。もう運命の動きは変わってしまった。さぁ、行ってくるといい。」
「何処によ。」
「敵の本拠地、静かの海へ。」
サグメと名乗った後は人が変わったように話を続けたので僕はあまりの情報量に唖然とした。勿論、話の内容を理解する前に何が何だがわかっていないのだがある意味今やる事は決まったようた気はする。
「霊夢さん、大分話が大きくなってますね。」
「そうらしいわね。何が何だか。」
霊夢さんは本当に困ったような表情を浮かべていた。その辺りは意外と分かりやすいと思われる。感情の起伏が激しいというのか。
「兎に角、向かいませんか?」
「もう、行ってやるわよ。」
霊夢さんの怒り気味の不満気な表情はどうしても心が安らいでしまう。どうしてなのかは自分でも説明がつかないが一緒に来てくれた安心感というのが大きいのかも知れない。
「ありがとうございます。」
かくして、月の都を救う事になったのだが、話の流れについていけない。