東方魔剣術少年   作:mZu

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第110話

 それからと言うもの、椛さんと萃香さんは昔のことを半ば楽しむように話している。ちょっとし自慢話や妖怪としての地位の話など僕にはいささかついていくのが難しい話題ばかりで頭の中は混乱してきた。其処で僕はこの場から逃げるように立ち去る事にした。

 

 辺りは見た事がありそうなそうでもなさそうな人たちで囲まれていた。幻想郷にはこれぐらいの人が住んでいるのだと思うと壮観なものだが、それを言い続けるのはどうかと思う。あらゆる種族がいる中で人間という種族は最底辺に近いところに居る。その事実は幾ら人間と妖怪が共存出来る世界になったとはいえど、帰るところは出来そうになかった。霊夢さん、魔理沙さん、そして自分と片指で数えられそうな数しか居なかった。一人は妖怪と共に暮らしているので一番環境に溶け込んでいると思う。

 

「久しぶりです。皆さんにはかなり迷惑をかけているのに何も返せなくて申し訳ないです」

「元気そうで何よりだわ。今は犬走 椛のところで居候しているらしいけれど、随分と痩せているようだけど大丈夫かしら?」

 

「はい、前よりも気分が冴えているような気がします」

 確かに椛さんとの食事は少ないがその分、余分なものを摂らないので身体が引き締まっているようにも感じる。でも、それは僕だけなのかもしれないと思っていたが他人から言われると確証へと変わるのだろう。

 

「それは良かったわね。此方も変わりないわ。一つあるとすればあの二人でしょうね」

 紅魔館の主人、レミリア・スカーレットは静かに目線をそちらへと向けていた。ちらり、と僕は見ただけだったがその二人に気付かないわけはない。サイドが長めで後ろの方は短めに切り揃えた髪型をしている人で僕の事を慕ってくれているのは確かなようだが、今はそうでもない。長く会っていないのが原因だろうとは思う。紫色の服装をしているのが里乃さんで緑色の服装をしているのが舞さんである。

 

「「そうですよ。私(僕)達に何も言わずにどこに行ってたの?」」

 

「何も言わなくてごめんなさい。実はあれから色々あって」

 本当に色々とあった。それこそ、地獄に向かってからは妖怪の山で何かをやったりする間に随分と時間が経ったようで何も何か違うことがあったかのようだった。そう考えると何ヶ月は経っているような気さえする。

 

「「良いです。ご主人様の活躍は耳に入っていますので」」

 不貞腐れていると思われるがその表情には何かと混在しているようなものだった。確かに僕の不始末に怒っている事には変わりないがそれとはまた別の感情。僕は少し考えてから無言で二人の目を見て、そのまま抱きしめた。二人はその僕の行動に目に見えて挙動を可笑しくさせた。それでも僕の何かを感じてくれたのか、優しく抱擁をし返してくれた。それだけでも嬉しかった。

 

「ただいま。今まで待たせていたことは謝る。けど、僕もやる事はある。だから二人は影から応援してくれないかな」

 僕も昔のように身体がガッチリしているわけでもない。少しながら、細くなった中で何かを感じてくれたらそれで良い。暫く待ってくれると言うのならば、それは嬉しいものだった。

 

「罪な男」

 

「「はい」」

 二人の返事をもらったところで僕は頭を軽く撫でる事にした。ご褒美など言うつもりはないが僕の事に理解を示してくれたのは純粋に僕が嬉しかった、それだけの理由だ。それに応えるように二人は更に強い力で、僕を離さないようにしっかりと掴まれていた。

 

「皆さん、暫くこのままでも良いですか?」

 

「好きにしなさい」

 

「お嬢様がそのようにおっしゃるなら」

 咲夜さんはあまり納得してなさそうだった。僕には関係ある事なのかと言われるとそうでもないとは思いたいのだが、どうやらそうでないらしい、のかもしれない。

 

「僕の事はどのように伝わっているんですかね」

 

「異変に顔を出しているのは知っているわ。それと、貴方がそのような事に巻き込まれ易い事もね」

 

「そうですね。ここの所、色んな異変に巻き込まれているような気がします」

 

「それで済めば良いけれどね。それは良いわ。この機に聞きたいのだけれど、いつになったら紅魔館には来てくれるのかしら?」

 

「まだ未定ですね。今は妖怪の山でやりたい事がありますので。一通り、学んだらいつでも訪れることができると思いますよ」

 別に間違いではないが紅魔館に帰ったところで何かすることと言えば、魔法の研究だろうか。まだまだやり残している事があるからこそ、あそこにはかなりの価値があると思っている。まだまだ目を通した程度で何も進展はない。それだけはどうしても変えないといけないことだった。それでもやっと行く道が分かった程度、これからどうしようか、それを見据えただけで状況は何も変わらないのだろう。

 

「それは時間がかかりそうね。良いわ、それまでは待ってみる事にするわ」

 周りは結構騒がしいのだが、レミリアさんだけは何処か違う世界線を歩いているようだった。そして、それについてこれる僕もある意味では別世界の住人なのだろうか。少しだけ不安にはなってくる。

 

「すみません。後でパチュリーさんにもよろしく伝えておいてください」

 

「了解したわ。フランとも遊んであげてね、退屈してると思うから」

 

「そうですか。僕に出来る事ならやってみるのも悪くないです」

 とは言いつつ、その時間はあるのだろうかと僕は思う。そうやって誰かと慣れ親しんでいる時間が無駄であったと思えてはこないだろうか。今の僕には判断が難しいが全てを見据えた僕ならそれは如何なのだろうか。実際のところ、お父さんはどのようにしていたのだろうか。それはどうしても気になるところだった。

 

「私からはもう言いたい事はないわ。異変の解決者の一人として他の所にも行ってあげなさい」

 レミリアさんの気遣いで僕はこの場から離れる事にした。その後は色んなところを回りながら、挨拶をしていくうちに日も暮れたので早めに帰る事にした。此処からは本当の大人の時間で僕が巻き込まれないように椛さんが早めに退室する事を勧めていたからそれに僕は乗っかる事にした。その帰り、僕はある事を聞いてみた。

 

「萃香さんはどのような能力を持っているんですか?」

 椛さんだとどのような遠い場所も見通す千里眼、では鬼の四天王と呼ばれた萃香さんはどのようなものを持っているのだろうか。

 

「あの人は密と疎を操ります。物体や現象の密度を変える能力を持っています」

 

「それは例えばどのような事に?」

 

「自分の身体を大きくしたり、逆に小さくしたり、人を集めたり散らしたり。そんなところでしょうか」

 椛さんは意外にも軽く教えてくれたが僕には少し理解が追いつかなかった。自分の身体の大きさを変えるような事があれば上から踏み潰すような事も出来るのだろう。だが、今日見た限りではそのような事はなかった。

 

「詳しく教えてくれませんか?」

 

「萃香さんの能力ですが、自分の身体の密度を小さくする事で身体を大きく見せています。なので大きさは変わっても重さは変わりません。人を集める時でも何処かで調和が取れる形になっています」

 

「あんまり良くわかりませんね」

 

「それもそうでしょう。私達とはやっている事が違いますから」

 

「確かにそうですね」

 

「さて、明日から普通にやりますので覚悟してくださいね」

 

「今日は何となく疲れましたからね。早めに横になりましょうか」

 

「そうするのが良いでしょう。私も今日は疲れました」

 椛さんの表情は少しも変わりはしない。しかし、そうと言い切るには少しだけ難しいような気もした。なので、僕は何となくこれ以上詮索するのをやめる事にした。僕も連日の宴会に疲れている、早めに横になる事にしよう。

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