東方魔剣術少年   作:mZu

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第120話

僕は一旦帰る事にした。何となく僕の中では吹っ切れたような気もしたのでこれまでの事は椛さんに謝る事にしよう。そう思いながら、家路に着く。

 

外から分かるようにご飯の炊き上がる良い香りが辺りには漂う。まるで僕を誘い込んでいるような気はしたが、その気持ちのままで近付きはしなかった。一旦足を止めて、戸に手をかけてゆっくりと開けた。

 

「迷惑かけました」

 

「元気そうで何より。さ、もう少しで出来ますから座って待っていてください」

白い髪の上には赤い山伏の帽子をかぶった椛さんは釜のところでご飯を炊いていた。白い服装と黒色に赤い紅葉が描かれているその服装で腰に携えているはずの大剣と左手に持っている盾は囲炉裏の近くに置かれていた。乱暴とは思うがそれでもそれくらいしか置く場所はなかった。

 

「幻想郷では当たり前なんですよね。殺したりするのは」

 

「昔はそうでした。ですが、今は少なくなっていきました。人里にいる限り、人間が妖怪に食べられる事は無くなりましたから」

僕の衝突な問いにも普段通り答えてくれる。こうやって背中越しだからこそ話せる内容なのかもしれない。

 

「僕が守矢神社でやった事は正しかったでしょうか?」

 

「あれは確かに酷いものでした。私も懐かしくあのような光景は見ていません。ですが、貴方の活躍は幻想郷に良い影響を与えました。そこは誇ってください。貴方は幻想郷を救った英雄なのだと」

 

「それで同等になるとは思えません。この世に生まれた命を吹き消した事には変わりありません」

 

「それは同意します。だからと言って貴方は其処に立ち止まっているままで良いのでしょうか?」

 

「反省は必要ですよ」

 

「反省なのならば、もっと動いてみたらどうでしょう?その人の残りの命も生きるのだと、強い意志で」

 

「ちょっと僕には難しいです」

 

「誰しもが難しいものですよ。嘘ならいざ知らず、貴方は本当にやろうとしますから」

 

「椛さんもそれは変わりませんか?」

 

「私も最近、過去の自分の過ちについて少しばかりか反省しています。けどもし本当にそれをやろうとすると何万年と言う話になりそうなのでとても無理なんですよね」

 

「そんなんですか」

 

「だから、これからは違う視点を持つことにしました。ある人の言葉も思い出しましたので」

 

「ある人とは?」

 

「とある青年ですよ。あの人は強者は自分の能力をしっかりと見定め、正しい方向に自分の力量に合った努力を積んだ人。でも、皆の助けがなければ強さは続かないと言いました」

とある青年とは僕からするとお父さんのことなのだろう。椛さんからすれば単なる隣にいた人なのだろうが僕からするといつも上にいる人でしかなかった。今はそれほど嫌悪感はない。

 

「つまり、強者となる過程で様々な困難が立ちはだかるでしょうが、皆と協力して乗り越えようと言う意味だと思います。勝手な私の想像ですが」

 

「とりあえず、自分の懐に落ちるまではその言葉は覚えておく事にします」

兎に角、一人で悩んでいても何も変化はなさそうだったのでもう何も考えない事にした。取り敢えず目の前の食事には感謝して食する事にしよう。

 

「この言葉の解釈に答えはありません。自分なりの答えが見つかるまで覚えておくと良いでしょう」

 

「分かりました。そうしておきます」

 

「それで、守矢の巫女が今朝方大きな人影を見かけたと言う事で報告されています。なので、食べ終えてから少しこの家を空けることになりそうです」

 

「居ればいいですか?それなら簡単そうですね」

 

「それで頼みたい事がありまして。食器だけ洗っておいてほしいです。見様見真似で構いませんので頼まれてくれますか?」

 

「はい。それぐらいなら」

 

「では、食べ終わり次第向かいますので。貴方はゆっくりと」

今日の椛さんの食べ方はあまり良い方ではなかった。それほどに急いでいるのだろう。けど、気になるので聞くことにした。

 

「その人影はどのようなものでしたか?」

 

「聞いた話では短めな髪と西洋風の服装だとか。髪は黄色っぽかったと聞いてます」

椛さんは口の中に入っていたもの一気に飲み込んで僕に話してくれた。その特徴から何となく明日行こうと思う場所は決まった。それにしても、そこまでして僕の質問に答えなくても良かったのに。

 

「あまり分かりませんね」

 

「それにしても気になるものですかね?」

 

「何だったら僕も探してみようかと。此処でなら、情報交換も出来ますし、良さそうではないですか?」

 

「否定はしません」

カチャッ、と茶碗とお椀と箸をその場に置いた椛さんは足早に出かけて行った。もう少しくらい、ゆっくりしていても良さそうなものだが、椛さんの立場を考えるとそれも難しいのかもしれない。なので僕は静かに見送ることにした。

 

それにしてもある意味では僕の悩みは消えた。人を殺めた事は消えない事実ではある、けどそのような事は大小を含めずに言うと誰しもが超えるところであって。お父さんはそれをいくつも超えていたからこそあのような強さを手に入れたのかもしれない。椛さんはそこで協力してくれると言っているのだろうか。でも、なんか違うと思ってしまう僕がいた。どちらにしてもすぐに片付けられそうなものではなかった。

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