朝起きてから、椛さんと共に朝食を食べた後に二人は別々の場所へと出かけることにした。椛さんは山の山頂付近にある集会所へ向かい、僕は幻想郷の南側にある魔法の森へと向かった。何かとあり得そうな話ではあるが、それは本当に合っているのかはどうかは定かではない。何となくだ、興味が湧いたからこそ向かってみるだけで他の理由は何もない。
そんなわけで魔法の森。此処の空気は妖怪の山程薄くはないが、魔法に扱う植物が生えているおかげである意味では空気は薄かった。人が笑っているように見える木や色とりどりのキノコ、植物、薄気味悪いと妖怪も近づかないとされているこの場所のとある開けた場所にある黒い屋根と六角形の塔がある一軒家がある。この場所には昔からの馴染みととある人形遣いが住んでいる。ある意味では僕と変わらない生活をしているわけだ。いい加減、自分で生活をしたいと思うが、後で相談でもしてみようか……。
「こんにちは。いや、おはようございます?」
扉を叩く前に一旦声を出してみた。ただ、時間帯が昼前だとは思うが薄暗い上にそれほど時間帯が把握できるものでもなかった。
「いっらしゃい。別にこんにちはでいいわよ」
金色の髪に赤いカチューシャをつけ、綺麗な瞳を持つ彼女はアリス・マーガトロイドさんで偶に人里に人形劇をしている人だった。家の中にはこれまで作ってきた人形が置かれている。人形は青いドレスを着用していてひらひらとしたフリルをつけているスカートを履いている。それは丁度主人にも似た身格好をしている。最近では1枚だけ灰色の肌をしている人形もいる。
「何か用か?」
白い肌に白色の髪をしているその人は僕からすると懐かしい人だった。
「ケプリさん、お久しぶりです」
「一ヶ月もしないうちに会っているとは思うが。いや、違うか。すまない、最近な感覚がおかしいんだ、気にしないでくれ」
そう言われるとそうするしかないのでそれ以上は掘り下げないことにした。
「それで、何か用があるの?」
「用と言うほどではありませんが、気になったことを一つだけ聞こうと思いまして」
「何でも良いわよ」
アリスさんはすごく良い笑顔をしていた。それ故にこれ以上何かを言うのも嫌な気はするが背に腹は変えられないので聞いてみることにした。
「昨日の話ですが、大きな人形を操っていたりしますか?」
僕がいった瞬間に空気は凝り固まった。何かいけないことを聞いたような気がするが何があるのだろうか。僕は静かに二人の口から出てくるのを待っていることにした。
「それはね、私の失敗作なのよ」
アリスさんは慌てている様子でいた。僕は何もする気はないが何を気にしているのだろうか?それがとても気になった。
「どうしてそんなに怯えているんですか?」
「アリス、正直に話してはどうだ?此奴ならそんな大きなことにもならないと思う」
「そうよね。なら、話すわね」
「はい」
気合を入れたような様子のアリスさんは取り敢えず僕を家の中へ招き入れた。あまり聞かれたくない話なのだろう。
「前から構想していたのだけど、とても大きな人形を制作していたのよ」
僕が座るなり、急に話を始めたアリスさんは気合が入っている、とは言えど焦っている様子は前面に出ていた。いつもなら冷静で事を済ませそうな気がするのだが……。僕も変に口出しはしないことにした。
「それで二人で頑張って素材を集めたり、縫い合わせたり綿を入れたりしていたのよ。それで一昨日完成したから早朝に操ってみようとしたのよ」
この辺りでなんとなく察したが何も言わないことにした。ケプリさんもアリスさんの話を聞いていた。
「それで操ってみたら、変に体勢が悪くて少しだけ動いて倒れたのよ」
両肘をテーブルの上に置いて顔の上半分を隠しているアリスさんはその事態について落胆するしかないと言う感じだった。僕も傷口をえぐろうなんて考えはないので何も言えなかった。何かと軽い気持ちにはなれそうになかった。
「それで少し前まで解体作業をしていた。そう言うことだ」
「だからですか」
いつもよりも白く感じれたのはつまるところ、それだったらしい。昨日からの長い作業、お疲れ様ですと言いたいが変に遮られた。
「どうしましょう。大量の素材が余ってしまったわ」
見るからに落胆しているアリスさんと裏腹に何も感じ取れてなさそうなケプリさんと言う何となく段差のあるような空間が此処には充満していた。
「それなら、また別の人形を作りましょうよ」
「そう上手くいくかしら」
「そこはお二人の技量次第ということで」
「それは一理ある。まだ諦めるには早いうちにやるからにはとことんやろう」
「若いわね。何処からそんなやる気が湧いてくるのよ」
「そんなもの、創作意欲だろう」
何故か元気よく答えたケプリさんにはアリスさんも少しばかりか不満げだった。僕はあまり此処の事情は知らないのでどこまで口を挟んで良いのかは分かっていない。少しの間、黙っている事にした。
「それに、アリスと一緒に作業できるのは楽しい」
「へぇ、それなら仕方ないわね」
ケプリさんの言葉に驚き半分、嬉しさ半分で顔を上げたアリスさんはまるで挑戦状を受け取ったかのようにやる気になっていた。
「まずは今回の反省から始めよう。まず何か良かった点はあったか?」
僕はふと思った。ケプリさんには反省した上で次に進んでいることに、そしてそれは僕には出来ていないことに。今まで逃げていたように思えていた。それだからと言ってそれで終わりというわけでもない。それなのに、僕はそこで立ち止まっているように思えた。
「大きさやあのぐらいで良かったと思うわ」
ケプリさんの熱意に食いついているアリスさんも僕からすれば転んでもただでは起き上がらない精神を見つけた。僕にはこのようなところが足りていなかったように思える。まだまだ回答は見つからなさそうに思うがもう少しくらいは頑張ってみても良さそうに思えた。
「そうなるとやはり足腰の部分に比重を置いてみよう」
「それだと脚が太くなるから嫌なのよ」
「それなら体の方を軽くさせよう。だが、そうするとバランスが悪くなりそうだ」
「それなら最初から絞ってみましょう。細身にして立ちやすくしましょう」
もう、僕には程遠い世界だった。言い合いにも聞こえてくるその言葉の連鎖は僕には到底出来ないものだった。本心と本心がぶつかるこの場に僕はいる必要はなかった。
「では、此処らへんでお暇させて頂きます」
「済まない。熱くなるといつもこうなってしまう」
「これは失態だわ」
「お二人の人形に対する熱い気持ちは伝わりました。それで僕は満足です」
そんなわけで僕はこの場所から離れることにした。これで早苗さんが見た謎の人影の正体も分かったし、自分に足りないものも何となく分かった。それで今日は良かったと思う。