東方魔剣術少年   作:mZu

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第13話

ここは月に来た際に利用した筒のような場所、先程ここに通る際に会った人によれば夢の中の世界らしいが怪しいかその辺りはどうでもいいとして疑いが晴れる事はなかった。そもそも概念がわからない。

 

その事はともかく、本能的に逃げて来た僕を含めた五人は一時の安心感を感じていた。その度合いは違うが僕が一番浅いと自負しておく。ここで大人しく返してくれるとは思えない。僕は常に後ろを警戒していた。

 

「気になる?私たちが守るから問題ないわよ。」

霊夢さんは僕の緊張しているのあろう右肩に軽く触る。その感触は確かに柔らかく、女性として意識するには十分なものだった。それだけにどうして軽く叩いてしまった。

 

「それはどうでしょうか?来ますよ、あの人。」

 

「おやおや、先ほども会ったことのある人が揃っているね。」

先程この筒の中であった人物が僕たちに話しかけてきていた。この人も今回の異変には関与している訳だがどこまでなのかは、何も分からない。それにその先であったサグメという人物も気になる。

 

「逃げているのよ。あまり話しかけないで。」

 

「これは辛辣な。良いでしょう。相当面倒なことが起こりそうです。せめて幻想郷にたどり着くまではその命、燃え尽きないでください。」

 

「分かってるわよ。いちいちそんな事言われなくても良いわよ。」

 

「取り敢えず、霊夢。今は帰ることが優先だぜ。」

魔理沙さんはきっと霊夢さんにはあまり感情を表に出さないでおいて欲しいのだろう。一番安心感に浸っているのは魔理沙さんなのだろう。

 

「そうですね。まだ不安な事はありますがきっと大丈夫です。」

早苗さんも同様な感じはする。僕はこの場では黙っていた。そして見ることもなかった。

 

僕の剣の刀身が弾かれる。そして目の前にはさも当たり前のように純狐と誰かが居た。その人は球体を三つ持っている人でそれぞれが鎖で繋がれている。右手には月のようなもの、左手には青いものが乗っているが自分達のいる世界のことだろう。そして頭上に乗っている赤く燃え盛るそれはきっと地獄なのだろう。詰まる所、三界の女神を示しているのではないか、と僕はマイナス方向に考える事にした。そうでもしないとやっていられない。

 

肩を出した黒いシャツには白い文字で何かが描かれている。それは遠い上に読みにくいので何が書いてあるのかはよく分からない。チェックの濃い緑と赤と青に均等に分かれているスカートをはいている。靴はない。

 

「殺す為なら弾は少ない方が良いわよね。」

強力な一撃で確実に当てる。こんなに遠距離から狙ってくるとは思わなかったが予想外れという事はなかった。

 

「誰?普段は人間なんて相手にしないんだけど。」

 

「待ってください、何ですかあの変なTシャツは?」

早苗は吹き出しそうなのを堪えるようにしていた。僕にはその価値観はあまり分からない。

 

「確かにそうですけど。状況、考えましょ。」

僕は鼻で笑うしかなかった、敵を目前にしてそれを侮辱するのを。どうしてこうなった?

 

「月の民を夢の世界に逃がしているのは二人ということで間違い無いわよね。」

 

「めんどーだね。先に正解だよ。ちょうど面白いから遊んであげるよ。」

その人はとても楽しそうだった。お父さんも偶にする、強者の浮かべる余裕の笑みだった。

 

「一体だけでお願いしますよ。」

 

「そーだねー、ありがとうね。」

 

「どうも。」

 

「私達、結構仲良いよねー。」

 

「この変T野郎!」

 

「いつまで待たせるつもりよ。」

 

「そうだぜ。こっちは臨戦態勢だぜ。」

 

「やるしかないようね。」

 

「辞めません?」

 

「オーケーオーケー、よーく分かったよ。これから貴方達には暴言を吐いたと言う理由で地獄に堕ちてもらうよ。精々、後悔すると良い。」

そこから、その人の弾幕は始まった。最初は単調な波のあるだけの小さな弾が低速で飛んでくるだけだった。僕は勿論、後ろの人も普通に難なく避けている。その辺りから察するに、腕を試しているだけなのだろう。どこまで近づけるのかが鍵になりそうだ。

 

「単純ね、そんな程度なの?」

 

「ただの腕試しだよ。純狐、援護よろしく。」

軽い口調で言われた本人は本気で構えていた。流石に弾幕はまだ優しくてもここまで来ると何処か違うものを感じる。

 

そこから純孤さんが先ほど放った殺人用の弾を一発僕を狙って放った。止められたからと躍起になっているのか、それともまた別の理由があるのかは知らないがそれなりの威力のあるもので一気に後ろまで押し込まれた。

 

「あの弾は危険です。気をつけて下さい。」

僕は何となく皆さんに注意を促す感じで話しているが自分の実力がどこまで通用するのかは全く予想出来ない。僕が奇襲を仕掛けられたのはかなり油断していたから、そして標的が分散していた事、それに起因して成功を収めたが今回はどうなるのか、は検討はつかない。

 

「良いねー、素晴らしい判断だよ。」

褒め称えている黒いTシャツを着ているその人は弾幕を放ちながら話していた。本当に遊びの域は超えていないと言うのはそれだけでよく分かる。紅蓮の炎が渦巻く彼女に喉元を掴まれているような感覚になる僕はどうしても首筋が気になって仕方がなかった。

 

「とても楽しそうですが、危険ですよ。」

 

「だろうねー、見てれば分かるよ。」

 

「流石ね、さぁ、月の民が仕向けた者を打ちのめしましょう。」

 

「それは初めて聞いたけど。まぁ、良いね。楽しそう。」

純狐とその人が連れてきた人は軽快に話を続けている。それだけの余裕があるのだろう、と僕は思いながら絶対なる力を見せられているようだった。この間、攻撃は止むことはなかった。其処に何も壁などと言うものはなく、しっかりと誰もが狙っていた。だが、これだけの余裕を見せているのがとても気になる。何をしに来ているのか、それとも時間というものに甘えているのか。

 

突如として弾幕の形相が変わった。弾幕が筒に当たると反射して無差別に襲い始めた。まだ剣で止めればなんとかなるとは思うのだが微弱な魔法でなんとか位置を移動させていた。不毛な戦いだと感じたからだ、それだけなのだが僕の他にそう思っている人は誰もいない。お互いの目の前にいる人に弾を当てることしか考えていなさそうだった。それだけで虚しくなってくる。

 

「お互いの利益にならない事は辞めませんか?」

僕はついに口を滑らせた。

 

「うーん、それは考えても良いけどね。後ろの人に聞いてみると良いよー。」

呼び出された人は最早やる気というものは感じる事はできなかった。

 

「どうですか?霊夢さん。」

 

「こんなもん倒すしかないでしょ。」

さも当たり前のように答える霊夢さんだが勝算など無いに等しい。ここからどうやって勝てば良いのかは全く分からない。

 

周りには反射した弾とその帯が周りには展開されている。止まれば純狐の殺すための弾幕が動いていれば当たる可能性だってないとは限らない。それに加えて速度と量はそれなりにある。次には繋げられない状況、これでどう勝てと言うのか。

 

「そんな簡単に倒れてくれるような人では思えないのですが。」

 

「諦めたら其処で終了よ。早く攻撃に加わりなさい。」

霊夢さんは冷たくそういった。それだけなのだが僕の心にはぽっかりと穴が開いてしまったかのようでどうしようもない状態になっていた。しかし、一つやってみたい事がある。

 

「誰か、狂気に堕とさせてください。」

後ろを向いて僕はここにいる全員に行った。僕の声を聞いて一番挙動がおかしかった人の元へと向かった。その人は手から弾幕を放っている鈴仙さんだった。

 

「出来ますか?」

 

「私の目は見ないで。」

冷戦は目を隠して必死に蹲っていた。戦闘中ではあるがこうなるとは相当な事であると思われる。僕は気を悪くしたのでそれ以上は何もしなかった。

 

「霊夢さん、僕も戦います。少し不安ですがやるしかありません。せめてここを抜けるまでは耐え抜きましょう。」

 

「自信を持てよ。私たちが付いているだろ?」

こう元気付けてくれたのは魔理沙さんだった。しかし、霊夢さんにはどうしても劣る。僕はここまで見ていてそう思えた。

 

「実力の差はそんな簡単には埋まりませんよ。」

 

「誰かに似てるな。」

僕は純狐と連れられている人を同時に相手にすることにした。数の利はこちらにあるが実力からすれば彼方にある。使った事もないがやるしかない。僕は月を想像した。そして陰を作り出す。その中で大きくうねりを見せる風を起こしておく。

 

「弾の打ち方はまだ知らないので白兵戦してきます。」

 

「そう。いってらっしゃい。」

空気としてはとても軽かった。霊夢さんは僕の事なんて眼中にはないようだったが逆に考えてみる事にした。

 

僕は風で移動を始めた。反射する弾が厄介なので直線で向かうことにした。勿論そうすれば相手からすれば一点を狙っていれば良い。要は度胸試しだ。僕がどこまで近づけるか、そして相手がどれだけ冷静でいられ続けられるか。

 

僕は直線的な動きでギリギリまで近づいてからその人の前で止まる。

 

「止まるのは分かった。君はとても実力があるようだ。」

 

「そうですか。今は聞きたくない言葉ですね。」

 

「そうなんだねー。ま、勝てるのかと言われると微妙なところだよねー。」

 

「やっぱりですか。本気の三割も出してないくらいですよね。」

 

「君、いい目をしているよ。あれだったら地獄においで。」

 

「少し口数が多くないか?」

 

「良いよ、別に。今は倒す気ないようだし。」

 

「勝てませんからね。」

 

「流石だよ、地獄の女神に勝とうなんて無理なんだけどまだ諦めてない人がいるから結構困っているんだよねー。」

 

「説得したいんですが、一番下の僕の言葉に耳を貸してくれなさそうですね。もっと本気見せてください。六割ぐらいなら諦めるでしょう。」

 

「良いよー、その向上心。純狐、此処からは二人で一緒にやるよ。」

 

「それでは、一時休戦といきましょう。こちらから攻撃を仕掛けて再度始めましょうか。」

 

「即興で考えたとは思えないけど。」

 

「お父さんがいつもそうなんですよ。」

 

「分かった分かった。今は帰りなさい。」

 

「ヘカーティアが良いなら。早く行きなさい。」

 

「はい。」

僕はそう答えてその場からは離れた。

 

此処からは本気の戦闘となる。

 

「霊夢さん、一時休戦です。攻撃を辞めて作戦を練りましょう。」

 

「要らないわよ。」

 

「霊夢さん。」

お祓い棒を下ろした霊夢さんに続いて次々と武器を下ろしていった。僕は何となく作戦を提示する。

 

「このまま何もせずに幻想郷に辿り着きましょう。」

 

「そんな事はしないぜ。勝って帰りたいだろ。」

 

「僕たちで勝てるとでも?無理ですよ。」

 

「どうしてもう諦めているんですか?頑張りましょう。私がついてますよ。」

 

「絶対なる女神には対抗するには力不足です。」

 

「もしかしてヘカーティア・ラピズラリですかね?」

鈴仙がここで始めて口を開いた。だいぶ身を縮こませて言っているあたり、どうにも自信はないらしい。

 

「何も確証はありませんのでその名前であっていると思います。」

 

「そういえば、先程はどうして狂気になろうと考えたんですか?」

 

「霊夢さん曰く、とても強かったそうです。」

 

「それに賭けたという事ですか?それは随分と自信があるようですね。」

鈴仙はそう言っている。僕も正直なところではそう思っているので下手に反論はできない状態である。何もしようとも何も変わらないのはここで終わらせたい。

 

「自信なんてものはありません。僕はただ、無力であるとは思われたくなかった。何もしていませんので少しくらいはみなさんの助けになりたいです。」

僕には未知数の可能性と大きな溝となる経験の浅さがある。その事はよく分かっているがそこで諦められるほど僕も頭は良くない、と思う。鈴仙さんは何か隠していることがあるのかもしれない。そして少しだけ意見の食い違うところがあるが今更修正は難しい。

 

「早くやりなさい!鈴仙。」

霊夢さんの怒号にも似た声が辺りに響く。きっと向こうにいる敵にも聞こえているだろうが攻撃を仕掛けてくるようなことはない。ずいぶんと余裕を持って接している二人にとって雑魚が5匹集まったところで何か変わりそうとは思えないのだろう。しかし、なんらかの攻撃は仕掛けてくると思っているはず。僕は逃げ道が塞がったと思えた。

 

「は、はい!」

恐る恐る目を見開いた鈴仙は僕の頬を掴んでじっくりと僕の目を見た。何かいけない事をしているような雰囲気があるが周りがそうはしてくれなかった。これが個室とかだったらまるでそうなるんだけど。

 

それから僕の中で徐々に変化が訪れるのだろうと思った。しかし、あまりそうでもないらしく僕の中では疑問の二文字ぐらいしか浮かんでこなかった。だからと言って、僕が此処で何かしようとすれば鈴仙さんの優しさを無下にする、と思えた。

 

あれからはしばらく経った。鈴仙さんの指から伝わってくる温もりが僕の頬を染めているが一切の変化が訪れなかった。

 

「少し、離します。」

鈴仙さんがゆっくりと僕の頬から指を離していく。か細く柔らかい指が離れたが僕の頬はまだ熱を持っていた。鈴仙さんの眼はとても綺麗だった、という今は如何でもいい記憶だけが残っていた。

 

「何か変化はあるんですか?」

 

「いいえ、何もしていません。」

 

「これは如何反応したらいいんでしょうね。」

僕はてっきり狂気に堕としてくれているものだと思えた。これ故に鈴仙さんのこの言葉には心を抉られる。

 

「本当に私の度胸がないから。本当にごめんなさい。」

だが、怒る気になれるかと言われると別に、となる。こう謝れて僕は辛い事をさせたと思えた。

 

「良いです。怖いものは誰にもありますよ。気が変わったらまた実行してください。」

 

「はい。」

 

「時間稼ぎは終わったかしら?」

霊夢さんが鈴仙さんに威圧をかける。僕はとっさにその間に入った。

 

「その言い方はやめましょう。喧嘩している場合ではないです。」

 

「良いわ。そういう事にしてあげる。」

霊夢さんはそれからこちらを見るようなことはなかった。それこそ冷静さを欠く、そんな行動だったのだと僕は思う。

 

「一回お前に賭けてみるのも面白いだろうぜ。」

魔理沙さんは自分の魔法道具を手の中で転がしていた。その手の中に何があるのかは僕には詳しくは分からない。それでも大切にしていることだけは何となく伝わってくる。

 

「私達も援護しますよ。」

早苗さんは優しくも楽しそうに答えてくれた。僕にとっては賛同者を得られただけだがそれで満足である。

 

「鈴仙、後はアンタ次第よ。」

 

「ふぇぇ。」

 

「大丈夫ですよ。安心してください。」

 

「はい。では、もう一度。」

鈴仙さんは僕の頰にゆっくりと指を触れさせる。温かく、柔らかい感触のあるそれは僕の心を掴まれているようで離れられないように感じた。そして離れていくと追いかけていきたくなるほど。

 

「何か切ない気持ちになりますね。」

僕はぼそっ、と呟いた。口の動きは見えただろうが鈴仙さんにしか聞こえない程度の声の大きさである。誰にも聞こえていない。そこからは何か体から込み上げてくるものがあってそうあまり覚えていない。

 

 

 

少年は夢で繋げられた月から帰るところで1番厄介と思われる敵に出会った。その人はヘカーティア・ラピズラズリと言われる地獄の女神。今の人数で勝てるはずもなく、時間稼ぎを行う事にした。

 

どうせ、倒されるなら爪痕を残そうといったところである。所詮は負け犬の抵抗であり、焼け石に水であるのは言うまでもない。

 

少年は天を駆ける。ここまでの比ではないような勢いのある感じです何処か楽しんでいるようだった。

 

目はほんのりと赤く何処かこの世に生きていないような目をしている。

 

「何か姿が変わっているね。」

ヘカーティアは言った。

 

「全く。」

隣に居る純狐は目の前は特に見ていなかった。

 

「まだ始めませんよ。」

少年は二人の近くで堂々と答えた。その真意は何があるのかは全くと言って分からない。

 

「ほぉー、中々興味深いねー。」

 

「興味を抱くなんて少し悔しいわね。」

 

「まぁ、そうは言いつつ、どう思っているのかな?」

 

「それは辞めなさい。」

 

「はいはい。」

ヘカーティアにとってみれば目の前で起こっていることは遊び以外の何でもなかった。しかし、確実に興味をそそられるものであることは確か。

 

少年は動き出した。左手に持っていた剣は弧を描いてヘカーティアの元へと向かう。ヘカーティアは反射的に動いているのだがその意味は全くなかった。少年は当たる直前で剣を止める。

 

「これでもまだ始めていない、と。良いねー、何が起こるのか楽しみになってきたよ。」

ヘカーティアにとってこれは遊び。少年達にとってこれは死闘。そもそも概念が異なる。

 

「何が起こったら楽しいんですか?」

少年は不意に脚を広げていた。その動きには少し追いつけていないような感じがある。

 

視点を急に二つに分裂させられたヘカーティアにとってどちらをみたら良いのかは検討もつかなかったらしい。

 

少年は上から覆いかぶさるように動き、後ろから剣を振る。それは一瞬の出来事である。

 

「開始だねー。」

 

「余裕そうですね。」

 

「まぁー、少しくらいは度肝を抜かれたけど、まだまだよ。」

 

「そうですか。」

 

「そうそう。」

お互いの背面を狙うように行動を始める。

 

剣を振り、斬撃を飛ばした少年。

 

手を振り、赤い弾を放ったヘカーティア。

 

双方はそれぞれ避けてまた時の止まったような動きのない空間を作り上げた。

 

その空間に誰も介入などできない、正に二人の世界。

 

「攻撃対象は僕だけです。」

 

「まー、屁理屈だけど仕方がないからそういうことにしてあげるよ。」

 

「申し訳ないです。」

 

「良いの良いの、私に勝てるとは思ってないから。君は知らないけどね。」

二つの弾。赤い弾と少し橙色に傾きかけている赤色が少年の周りに付き纏う。その弾は確実に少年を狙っていて、まるで意思のある生き物のようなものであった。そして何をされようとも消えることのないタトゥーのようなその弾には驚かされるがまだ序の口であった。

 

そこに加えて波状の細長い明るめの赤色の弾が等速で放たれていた。その球の軌道は直線的で避けるのは見ているだけで簡単に行える。そのはずだが、そんな簡単にいくような話ではないのはもう分かっている。

 

立ち止まる事は獣のように追いかけてくる弾によって難しい。相手の弾を見ている余裕などはなかった。

 

其処へ追い討ちをかけるような大弾が現れる。避けさせる気のないそれは今居る場所をほぼ全てを覆った。これが月の流儀と言うのならまるで先ほどの戦闘はただの遊び、又は手抜き。少年はそれを目の前にして何も行動は起こさなかった。

 

立ち止まれば弾が、動いていれば直線に飛ばされる弾が、そもそも大きな避けさせる気のない弾が悠然とした態度で胸を張りながら歩いてきている。

 

其処で踵を返した少年は少しだけ口角を上げていた。恐怖の前に人間は少しだけ笑みをこぼすという。

 

全速力で逃げた少年は仲間たちの元へと辿り着いた。

 

「逃げます。」

少年の言葉はそれだけだった。そして言葉を置いていった少年は素早く飛び去っていた。その逆らえない脅威から逃げ出した少年はもはや滑稽に映る。

 

「何度でも立ち上がれ、少年。」

 

少年もとい、ヒカルの幻想郷に来てからの異変はここで幕を閉じる。

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