少年は身を低くして相手の周りを乱立的に飛び回る剣を見ていた。別に法則性なんてものはないが、少年は自分なりの攻め方を構築しているようだった。
少年は相手の陣形を崩した瞬間を狙って走り出した。
相手である白い肌をした少年はそれを迎え撃つ。乱立させていた剣を自分の前で円を描くように仕向ける。丸い筒のようにさせた剣を前へと押し出すようにさせた。その先には少年がいる、黒髪の少年だ。
少年はその勢いを変えないままその切っ先の前へと辿り着いた。
筒のように一体性のあった剣はそこから突然形を変えた。全本位を包み込むように剣を動かし、地面に突き刺すようにした。
少年はそれを見込んでいたのか、飛び上がり身体を小さくさせて筒がほんの少しだけ崩れた状態のところを通り抜けた。そして変わらない速度で走り出す。
後もう少し、少しで届くところで白い肌をした少年は大剣を振るう。下から上へと持ち上げるように迎撃をする。そして脚を広げて蹲み込んだ。
少年は下からくるそれに合わせて剣を地面と平行にさせて相手の剣の力を利用して跳び上がる。その間を八本の剣が真っ直ぐに翼を広げた鳥のように優雅に通り抜けていった。
二人は目を見つめ合いながら、牽制をしあう。その間に八本の剣は戻っていくことはなく、お互いの上空で待機させている。動きに関連性はなく自由に飛んでいた。だが、お互いがぶつかるような事はなかった。
少年が走る。
少年は構える。その周りには一本の剣がいるだけで後は向かってくる相手の対処に使われた。
七本は地面の近くで踊り続ける。
その合間を通り抜けていく。それはまるで風のようだった。緩急のある動きで剣の動きを彷徨わせながら近づいて来る。
白い肌をした少年はそれでも動く事はしなかった。全てを八本の剣に任せている。そして自分の実力というものに。
黒髪の少年は七本の剣の舞を避けながら徐々に間合いを詰めていく。風に吹かれた燃え盛る蝋燭を思わせるその動きは目に捉える事は難しかった。
だからこそ、目を増やした。それが回答となるのだ。
黒髪の少年が左側へと一気に方向を変えた。ぐるり、としたところで一気に右側へと、真反対を思わせるほど進ませた。そして振りかざす、剣を。
目では見ていない。しかし、その動きは捉えられていた。大剣で受け止め、弾いて一振り。
黒髪の少年が瞬時に離れて、一振りを空振りにさせ、もう一度近づく。届くと思われるその一撃も剣によって防がれた。
大剣ではない。既にこちら側に持っておいた糸で操っている方だった。そして振り戻すように来た道を戻る。これには流石に当たると思ったがそうはならなかった。
地面の方に吸い付けられるように脚を曲げて体勢を低くしてからめり込むように大きく移動した。高さはほぼなく、軽々しく下を通り抜けていった。
道は遠い。
この道を通るには七人の目を掻い潜る必要がある。その先に待っているのはそれなりの実力を有する剣士。
黒髪の少年が腰に携えていた剣を抜いた。双剣となり、低く構えたその姿に八本の剣を操る少年は正面からそれを見据える。
トン、トン。
足踏みを挟んだ後で激流のように動き始める。前へ、左へ、右へーー。決して後ろには下がらない。
それを八本と自分の体で迎え撃つ少年は乱雑となり易い剣を統制しつつ、向かって来る相手をねじ伏せるための一振りをする。
向かう少年は地面すれすれを進む足裏で急に方向を変える。その速さは正に神速、姿を消したと言っても過言ではなかった。
ーーそのはずだったが、白い肌をした少年はそれを捉えていたかのように剣を真横に振るう。
後ろから来る刃に刃を合わせ、相手の力を利用してくるり、と一回転するとその場で着地してから一気に走り出した。
それは操っていた剣二本が防ぐ。寸前で止まった剣と少年の体は真下から振り上げられる剣によって体勢を大きく変えざるを得なかった。
そして真上に打ち上がった黒髪の少年は空中で体勢を整える。とっさの判断で移動させた膝の下にある二本の剣を持ちながら、軽く両腕を広げる。そこから左手に持つ剣を逆手にして腰を左側へと捻る。
そこから自由落下が始まった。少年は体勢を変えるつもりはないらしい。
地上に居る少年もその姿を眺めている。剣を真上に構え、静かに再開するのを待っていた。
緊張の糸は最大限に張られている。
来る。
空中に居る少年が右腕を思い切り振るう。それによって起こった風の刃が地上へと落ちていく。
少年は構えを変えなかった。
地面に当たり、大きな音を出した。逃げていた人にも聞こえそうな程、それほどでありながら家屋への被害は何もなかった。街道を大きく削る、とある岩が起こした剣に比べると優しいものだった。
音共に打ち上がった煙が晴れないうちに二人は再度刃を合わせる。当たったか、当たっていないかその事については二人にとってそれほど重要な事ではない。立っているからまだやれる、それだけだ。
左腕を下げ、地面と平行にさせる。右腕は切っ先が相手に向くように腕を上げていた。実際のところ、肘の方が上がっている。片腕だけ操られているように不自然であった。
「もう、辞めないか?」
「まだ楽しめますよ」
「もう治ってるだろ」
「そうですね」
「やるなら誰も居ないところでやろう」
白い肌の少年は操っていた剣を納める。そして大剣を背中に背負っていた。黒髪の少年は仕方なく剣を納める。
「またいつか」
「楽しみにしている」
その後、少年二人は同時に迷惑をかけたことを謝った。その事について褒める事はあれど、責めるところは特にないので至って普通に許された。恐らく、二人で復興の手伝いをすると明言した事も考慮されたのだろう。
その後、二人の保護者は手紙を見て驚いた、とか。