東方魔剣術少年   作:mZu

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第146話

 今日は雨の日だった。いつもなら、鍛錬を積むのだが環境はそうさせてはくれなかった。

 

 屋根に当たる雨粒が音を立てている。その音は屋根が破れるのではないかと思うほどでとてもではないが心は休まらなかった。

 

 今日は椛さんも哨戒にはいかなかった。逆を言えば行く必要もないのだろう。千里眼だけなら山の周りくらいは容易く見ることができるらしい。鍛錬を積むことで何とかする事はできるらしいが視界を曲げるという時点でどういう原理なのかは聞かないほうがいい、と思えるほど。僕には理解出来なかった。

 

 僕としては何処かに出掛ける必要もないので仕方なく家の中に籠る事にした。

 

 何もする事はないが何か違う意味でいいものがあることを切に願う。

 

 と言ってもやはりやるような事はなかった。

 

「暇な時、どうでもいい話をしたくなるのですが、お付き合いお願いできますか?」

 椛さんは突然話を切り出した。それはまるで空を切るナイフのよう。鋭い刃が空気を切り裂くようだった。

 

「良いですよ」

 その切れ味に僕は参った。

 

「私、実は寺の方と縁がありまして」

 椛さんは確かにそのように切り出した。僕としては椛さんの交友関係について全くと言って興味がない訳ではなかった。しかし、幻想郷で寺、と言えば命蓮寺を思い出す。どうして、あそこに縁があるのかは僕にはみえてこなかった。

 

「少し前に矢文で貰ったのですが、体験入会というものをやっているそうで興味はありませんか?」

 僕はすぐには返答はしなかった。別にそれをする事については何も反論はない。ただ、どうしてこの時期にそのようなことを言い出したのかは理解は出来なかった。

 

 人里での復興も終わり、寒い時期となってきた。時折、お邪魔する事はあれどそれ以上の関係は今のところはない。三ヶ月は過ぎたとは思うが。

 

「それは構わないですけど、どうしてこの時に?」

 

「簡単な話、住職が興味を持ちまして。一度訪れてはきてくれないか?と言われました。断ると面倒なので行って欲しいのです」

 

「断るとどうなるのですか?」

 

「話だけでもしたいという事で総動員でこちらに来るそうです。二人でちょうど良いくらいなので何人も入れないと思うのです」

 確かにそれはそうだった。来客用に予備の座布団はあれど、数は二つ。囲炉裏の四方向を一人ずつ囲無事はできる。が、命蓮寺の関係者が来るとなると四人から五人になる。とてもではないが入れそうになかった。

 

「少し話は変わるのですが、来てくれたら文字通り少しだけ寺での生活をさせてあげたいとの事です」

 僕は迷った。別に行きたくないという訳でもなかった。しかし、その間、僕は何をするのだろうか。剣の腕が鈍るのでないかと思った。

 

「ここまで熱烈に歓迎されていて行かないなんて選択、あると思いますか?」

 こういう時、脅しにも似た椛さんの言い方は怖かった。だけど、絶対に行かないと心に決めていた訳でもない。行かない理由はなさそうに思う。

 

「行きます」

 

「でしたら雨が止み次第、出発しましょうか」

 椛さんはそのように言うが僕は肯定の返事はしたけれど、それほど乗る気ではなかった。

 

 中途半端な気持ちの狭間で僕は外の雨の音を聞きながら茶を啜るのだった。

 とある少年は家の中で時間を過ごす一方、深刻な問題としてとある巫女は頭を悩ませていた。

 

 それは詰まるところ、巫女が一人でなんとかできるような問題ではなかった。この数年、詳しく言うと二年ぐらいはそれについて悩ませていた。

 

 幻想郷を覆う博麗大結界は博麗神社の信仰の薄さにその効力を弱めつつあった。前々に起こった吸血鬼の異変からその動きは顕著だった。

 

 それは巫女とその支援者が強硬手段に出るほど。幻想郷を守るためにその殺戮は必要なことだった。

 

「今から寺と仙界の連中を追放するわ。そしたら、少しは博麗神社にも信仰が向くはずよ」

 

「ふふ。それも辞さない程……。必要な犠牲よ」

 そんな巫女の動きを助長させる支援者。

 

 この場所に止める人は居なかった。

 

「そうしたら、博麗の巫女として幻想郷を救い出すことが出来るわ。これでやっと、博麗大結界は元通りにできるわ」

 

「そうね。早めにやっておいて頂戴」

 扇子で口元を隠す。金色に輝くそれは光を反射し、小さな光を灯す。その奥では黒色の思念が浮かび上がっていた。

 

「全力で叩くわ」

 

「私はこれでお暇するわ」

 

「そうして。私は持てる限り全て、それを用意したいわ」

 それから巫女は一人、札を作ることに専念した。

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