とある日、とある場所。
この場所ではとある危ない話が繰り広げられた。
「こうなったら、幻想郷の全戦力を叩き込むわよ」
金髪の女性は張り上げた大きな声でそう言う。年齢には似つかないほとはしゃいでいる。それをもう一人は静かに聞いている。
「そして、博麗大結界を復活させるわけね」
「英雄として遠くからでも崇めてもらえるわ」
「そうなれば本来の目的は達成ね」
黒髪の女性はちゃぶ台に片肘をつけて満足そうに笑った。
「前回は誰かさんのせいで失敗したんだから。今度は私も参加するわ」
「それは仕方ないでしょう。でも、これで出来る」
二人の笑みは何を企むのか。
○
お父さんが居なくなったから、幻想郷にいる理由は特になくなった。ただ、向こうに戻る理由もない。王子という立場はあるが、それを迎えてくれるのかといわれると少しだけ難しかった。それだったら、げんそうきょうに居た方が楽しいような気はする。
「今回は本当にお世話になった」
「良いですよ、慧音さん。こちらこそ、僕たちの約束に巻き込んでしまったのは悪かったです」
僕は今は慧音さんの営む寺子屋の一室でこの前のことを話していた。あの時、僕は重傷を負っていたらしく、少し遅れていれば失明もあり得たとの話だ。そして、骨は複雑骨折をしていて修復は不可能と思われたが永琳さんと鈴仙さんの手腕で事なきを得た。前にも使ったことのある薬で即効で治して退院をしてきた。それから僕は事の顛末を聞こうとここに寄った。
「それで、慧音さん。他の三人はどのようにしていますか?」
「あまり話は聞いていないが元気にしているとは思う」
「取り敢えず安心しました」
「今度からあんな無茶はしないでくれ」
「もう無いですよ。あそこまで痛めつけられるような事は」
それは僕には分からない。将来的に子供に何かを託す時、それは起こるかもしれない。野蛮な伝承であるがそれは仕方のない事だ。
「それなら良いのだが。暫くは休んでなさい」
「それは分かってます」
幾ら、戻ったからと言ってそれは完全ではない。それは承知している。
「それでは僕はこれで失礼します。わざわざ話してくれて有難うございます」
「気を付けて帰りなさい」
僕はそれにはい、と答えて寺子屋を出た。妖怪の山には向かわず、紅魔館、魔法の森、博麗神社を経由してから椛さんの家に辿り着いた。それから僕は二日ほど身体を休めたのち、とある場所へと向かった。
○
「訃報ではあるが、念願は達成したようだ」
「良かったわね。それでもあの青年がまさかこんな終わり方をするなんて」
「あの二人はそれを望んだ。どうであれ、俺たちは見守るのが一番だろう」
「そうだけど、少しだけ悲しいのよ」
「それは分かっている。俺も恩が無いわけではない」
「私はこの気持ちをどうしたら良いのよ」
「泣く顔よりも笑う顔が見たい。それがアリスには似合う、人形劇を見てくれた子供に向けるあの顔が」
「何よ、急に?」
「俺が思っている事を伝えたまでだ。あの横顔を見るために俺は毎日過ごしていると言っても過言ではない」
「急に恥ずかしいこと言うものではないわよ」
「時間は俺たちを待ってくれない。何があろうとも笑って過ごしたい」
「誰からの言葉よ」
「彼奴からの手紙の締めの言葉だった。俺たちは子供を楽しませる仕事がある。何にせよ、やる事はあるだろう」
「いいわよ。やってやろうじゃない」
「俺も負けてられんな」
男は微笑む。女は口を結ぶ。それでも意思は一つ。