泡沫の夢、それは短い間に起こった儚いもののこと。
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あれからと言うもの、各地でそのような事件は耳にする機会があった。それだけの事件性がありながら調査に乗り出せないのには一つ。姿が未だ三人しか確認されておらず、いずれも何らかの形で召されている。口を割らせようにもそれができるような人はその世には居ない。
被害の分布は満遍なく。しかし、人里が一番多かった。人数も多い上に密集しているのは向こうからすると都合がいいと捉えても構わないと言う考えは通説となっている。
「これは月の民の侵攻と捉えて構わないでしょうね」
「そうでしょう。それでどうするのか決めてるの?」
「この状況を加味して月の方が何かを仕掛けてくるのは目に見えているわ」
長いストレートの金髪で白い柔らかい帽子を被った中華風の服装をしている彼女が八雲 紫。幻想郷の管理を任されている八雲家の一番上の存在。
「それで。此方は何も仕掛けないの?」
黒髪を後ろで一つの小さな尾になるように結んでいる赤いリボンをつけている巫女。博麗 霊夢はその人の話に疑問を呈す。紫にタメ口で話すのは彼女ぐらいだろう。
「前も言ったでしょう。これは良い機会なのよ」
「博麗神社の信仰の復活には失敗したものね」
「だから今回はしっかりと取り戻す。爪痕を残せばそれで良いのよ」
「月からの侵攻は食い止められました、これでしばらく安泰ですって言うつもり?やるからにはちゃんとやりたいわ」
「それなら安心なさい.ちゃんと決めてあるから」
「任せるわ。私は札を使って戦うだけだから」
「でも、少しは力を蓄えておきなさい」
紫はその言葉を巫女に残してこの場を去ることにした。霊夢自身も自分の実力不足なのは知るところなのでどちらかと言えば身に染みる一言であった。
「分かってるわ」
その言葉も紫にはもう届かない。
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そして、動き出した。
数にして、三千。様々な種族をかき集め、己が利益のためにこの戦いへと挑んでいく。その言葉で、その態度で紫はこれだけの数を集めた。
月の民は一人でも強い。だからこそ、数で押し潰す。そうする事にした。どれだけの数が必要なのかはもう憶測で語るほか無い。
集めれるだけ集めてからどのように流れるかはやってみるだけ。その先は特に考えていなかった。
「月の民からの侵攻があったのは知っているでしょう。だから今度は私たちが同じことをする。これは幻想郷を守るために行うわ。自分が生きるために、そして帰る場所を守るために全力で戦って頂戴」
その言葉に皆は歓喜する。その声を聞いて満足そうに大きなスキマを展開させた。紫の能力である空間超越によって月面と幻想郷を無理やりつなげた。そして、そこから流れ込む三千もの幻想郷を守る戦士達。
此処に幻想郷を守るための闘争が始まったと思われた。
が、それは違う。幻想郷を守るためではなく、二人にとっては博麗神社の信仰を回復させるための作戦。それ以外の何ものでもなかった。
「霊夢、後の三人を連れて大将を叩いてきなさい。後ろは数で抑えるわ。もし必要なら、私も動くわ」
紫はそれだけを小言で霊夢に伝える。それ以外の作戦についても同様。
「任せるわ。いきましょう、魔理沙、レミリア、咲夜」
「おう」
「ええ」
二人は答える。もう一人は静かに頭を縦に振る。
「今から大将を叩きにいく。四人いればどうとでもなるわ」
「そうだな、行こうぜ」
「面白そうじゃない」
二人はそのように反応した。
「じゃ、付いてきなさい。紫はどこら辺にいるのかは観測しているから」
ここから月と幻想郷の全面戦争は幕を開けた。
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それから時を過ぎて数刻が経っていた。月の民と此方の戦力は拮抗していた。紫の目測は当たらずも遠からずと言う感じであった。だからこそ、大将を取ることの重要性はわかっていた。
「今からでも参加できますか?」
一人の少年はが紫に話しかけた。その少年の風貌はボサボサの黒髪と借りてきたのであろう白装束でとても不謹慎なものだった。だが、着方は異なる。
「ええ。構わないわ」
「大体の話は聞いてますので。大将のところに行きます」
「待ちなさい。着替えはしていきなさい」
紫はスキマから男性の衣服を取り出す。白色の少しだけダボっ、としたズボンに着やすそうな長袖のシャツ。少年はそれ以外は受け取らなかった。
「行きますか」
少年はそれだけを言って特に何も言わずに走り出した。その後ろ姿に紫は何も言わなかった。