少年、ヒカルは人里を歩く。その目的は何もなく、ただただ放浪するだけ。
冬のように冷え切った身体と腕に残るなにかを成し遂げたような気がするその感覚に僕は達成感を覚えた。その根拠は何もないがそれだけでも構わなかった。
前に来たよりも人里は何となく物騒な空気感を感じる。その理由は意外とすぐに分かった。霊夢さんと誰かが交戦している。その誰かは何となく見覚えのある姿をしている女性の人で何処から現れたのかは全くと言って知らない。そしてその人が誰であるのかも。
少しだけ言い争いのようなものをして相手が何かを飛ばした。その時にその場に居た何かは姿を変えていた。そして立ち止まっている金色の髪をしている人は霊夢に話しかける。誰が味方なのかはさて置き、僕は何が起こったのか、頭の中で整理するので精一杯だった。
慌てふためく相手に罵声を加えているようにも見える霊夢達はついに相手の琴線に触れたらしい。怒りに身を任せた相手がその身からオーラを出した時にはもう既にこの世のものとは思えないほどの強大な力を手に入れていた。その正体は何かは分からないが僕は好奇心が掻き立てられた。
それから大きな声で叫び、怒りを露わにしているその人2札を投げつける霊夢。それを軽々しく弾いたその人は余裕そうな表情を浮かべていた。所詮はこの程度、気の緩みがしっかりと出ているようにも感じる。
僕はゆっくりとその様子を観察しながら相手の出している謎の青色のオーラがどのような効果のあるものなのかを観察しようと思った。
が、ここで一旦僕の記憶が途切れる。内に秘めていた存在が目を覚ました為である。
こうなっているのには理由がある。数分前ぐらいだろうか。何となく気晴らしに人里まで歩いていたその道の途中で知り合いに出会った。
その人は服装を大きく変えて青色長い丈のある布を巻きつけていた。
「可愛い格好ですね。」
僕は出会って早々、そのように話を切り出した。
「仕方がない。貸してくれるものは使おうと思ってな。」
「それなら仕方がないですね。」
「何か人里に用でもあるのか?」
ケプリさんは僕に聞いてきた。僕は何も持っていないがケプリさんは手提げ袋を持っている。
「何もないですね。」
「俺は買い出しを頼まれたので人里に向かっていたのだが途中で方向を間違えたらしい。」
前回、紅魔館の位置を教えたのでそこから推測したのだろう。確かに間違えてはいる。
「その辺りは気にしないでください。」
「まぁ、そう言うことにしよう。」
「そういえば、人里では完全憑依異変とかが起こっているみたいですね。」
「軽くないか?」
ケプリさんは少し呆れているように感じた。
「何か、犯人は既に分かってみたいなので捕まえたら良いらしいです。」
「それは今は置いておくとしてその異変はどのようなものなんだ。」
ケプリさんが僕に聞いてきたので知り得る情報を大体話した。
「二人で一人を演じるようなものか。その時の記憶は共有されない、と。まるで守護霊の役目をしているようだな。」
「僕たちでやってみませんか。」
「やり方は知っているのか?」
「自信はないですけど、実際にやったことがあるので問題ないと思います。」
「ほう。もうやってやろうではないか。」
「では、僕の手を握って。引っ張りますので来てくださいよ。」
「その辺りは任せる。」
「行きますよ。」
僕はケプリさんの手を引っ張りながらスゥ、と何かが入ってくるのを感じた。
「何となく力が伝わってきますよ。」
「では、行きましょうか。」
まぁ、遊び半分である。そして切り替え方は出る時に何らかの信号があるのでそこで出てこれるということになっているらしい。要は記憶はないが体は共有していて二重人格を味わえる機会となるわけである。いつかは解除されるだろうし、戻ろうと思えば簡単に出来る。
と、そんな所である。
僕だけの視界が開けた時にはメモ書きが置かれていた。もう出ていってもいい、とケプリさんの文字で書かれていた。