東方魔剣術少年   作:mZu

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第38話

今日はおつかいを頼まれた。どうやらお嬢様と呼んでいるレミリア・スカーレットのわがままであるらしいが人里での食材を買いに行くらしく、妖怪の山へはいけないらしい。それでこちらに矢先が向いているわけである。少し話を聞くと人里ではまず出回らないものであるらしく、白い細長いキノコであるらしい。名前は何だったかは忘れてしまった。

 

現在、幻想郷では謎の四季が同時に訪れる異変が起きていて丁度秋の気候であるのでもしかしたら生えているのかもしれない、と言う根拠のないものである。僕は話を聞いた上で特に断る理由もないので何となくの気分で受けてみる事にした。本当はそのようなことはいけないのだが、気分転換にはちょうど良い。僕はそう考えた。

 

そして現在、道に迷った。妖怪の山であるのは間違いない。だが、ここが何処であるのかは僕は知らない。もしかしたら、妖怪の山に前から住んでいる人は知っていて当然かのように道なのかもしれないが。そんな知識は僕の頭には入っていない。途方にくれた僕に話しかけてくれたのは少し年老いた声をしている女性だった。

 

「何だ?ここはうちの縄張りだべ?」

この人は一体。僕には何が何やら分からなかった。白いガサガサの髪で布を巻きつけただけのような身なりをしている。黄色を基調としている。僕には本当に誰なのかは分からなかった。

 

「妖怪の山の住民ですね。」

 

「ああ、そうだべ。よそ者が入ってくるな。」

 

「あの、道を聞きたいんですんですが。ここは何処ですか?」

 

「何だー、迷子か。全くそんな事でここに来るなんて運がないな。」

じゃり、と後ろから包丁のような刃物を取り出した。僕はちょうどその時にここがどのような場所であるのかをおおよそ理解した。本当は理解したくなかったが、こうなってしまえばどうしようもないのかもしれない。

 

「穏便に事を進めましょうよ。そちらの方が幾分か楽しいと思いますよ。」

 

「それは無理な相談だべ。妖怪の山とは不可侵の条約を結んでいる。そこへ入ってきたのなら、分かるだろう。」

やはり包丁をしまう気は無いらしい。もはや戦うしかないのだろうか。確かにここで逃げかえれば良いのだが、道がわからない上に帰れば咲夜さんに怒られるだろう。正座でお叱りを受けるくらいで済めば良いのだが。でも、ここで戦う事については有用性が何となく見えにくい。

 

「分かりますが。実は、あるキノコを探しているだけなんです。それを見つけたら帰りますのでどうか協力してもらえませんか?」

 

「駄目だべ。あんたに渡せるものはないべ。とっと、と保存食になるべ。」

その人はすぐに包丁を振るった。それが何かあるというわけではない。急な出来事に心臓が跳ね上がった。それが何を示すのかは何も言わなくても問題ない。もう自分の中で答えは出ている。

 

「わかりました。それに抵抗します。」

僕はそれを避けてから自分の剣を抜いた。

 

「ほう、魔力を大分感じる。それなりの力は持っているようだ。」

 

「魔法陣も刻んだので何でも出来ると思いますよ。」

数日前ぐらいだがパチュリーさんに魔法陣を刻んでもらった。その後、自分の体に馴染ませるために何時間も効果を出し続けていた。そんな矢先のことで少しだけ、体は動いてこない。

 

「ただの人間ではないな。面白いべ。」

その人は再度包丁を振るう。直線的で何か芸のない妖夢さんのような剣だった。しかし、粗暴で倒すことしか考えていない点では獰猛であり、それよりも少しだけ怖いものである。

 

「そうですかね。もっと上はいると思いますよ。」

 

「さて、どうだか。まず、一旦黙ってもらうかね。」

 

「そんな物騒な。そこを何とかで決めませんか?」

 

「もう遅いべ。」

ギュン、と振り下ろすそれは何処か狂気なんかを包み隠しているようで微妙に怖いものだった。それが何かはもういう必要もない。

 

太い身している刃物が僕を狙って振り下ろされる。僕は空を後ろに避けながら右側へと同時に逃げた。

 

その時に思ったのだろう。中々やれるかもしれない、と。勝手な想像なのでこちらの肉付け以上の何物でもない。

 

「もう少し話し合える点はあると思います。」

 

「こっちにはない。」

 

「そこを何とか。」

 

「私は強い奴は好きだ。だが、そんな腰を引けている奴には何とも思わん。」

 

僕にはもう言い返そうな点はなかった。相手の言う通りなのかもしれない。僕は傷つけないように怖じ気付いていただけであり、何も変えようとはしていない。

 

「分かりました。全力で、行かせてもらいます。」

僕はその場でステップを踏んだ。軽いジャンプから葉を踏む音がカサカサとしている。そして脚が地面に着く時になるタン、タンなんて音も。

 

僕の世界はその音と上から聞こえてくる葉の音色と目の前の人の息遣いと、そして自分の息遣い。それ以外の音は何もなかった。

 

「んだべ。来てみろ。負ける気はせん。」

僕は両手に剣を握っている事を確認した。その後、その中で剣を回しておくと手に馴染ませておいた。それぐらいしか今はやる事がない。

 

相手にとっては僕はただの獲物に過ぎないらしい。何も表情の浮かんでこないその目にどのように映っているのか、それは聞く必要もないだろう。その目には最早人とも見ていない冷徹な無感情が見えてくる。その中で僕に何が出来るのかは聞くまでもない。戦うのみだ、いや抵抗と言うべきか。

 

相手の刃は単純に僕のことを見ていた。

 

僕の上から押しつぶす、それだけの作業をしていた。

 

僕は左腕を伸ばしてそれを受け止める。持っている力なんて微々たるものだった。だからこそ、右腕に切っ先を乗せた。力の向きを変えたのが功を奏したのか簡単に隙を見せた。

 

僕は流れるような体の動きで左腕を外側へ振り抜いた。戻ってきた刃は逆手持ちにしていた右腕に任せる事にした。

 

そして風の力を借りて弾く。パツン、と言う音がした。少しだけ歪な音がしている。それだけまだ完成などしていなかった。まだやれることがあるという証だった。

 

「僕には欲しいものがあります。それがあれば僕はここからは居なくなります。ですが、それを探す手助けがなければ無駄に痛めつけ合う事になります。どうか、協力していだだけませんか?」

 

「無理な相談だべ。不可侵の条約を破った者はこちらの処分を待つしかない。それにどれだけわがままだべ?」

 

「世間なんてそんなものしか蔓延っていませんよ。正義と悪なんて言い方がありますが混沌とした考えでしかない。お互いにわがままを言っているんです。両方とも叶えましょうよ。」

 

「ふっ、無理だべ。言い分は分からんでもない。それなら、私を屈服させてみろ。」

 

「気が進みませんが仕方がないです。」

 

「良い目だべ。」

相手から今度は仕掛けてきた。僕は後方に避けて左側へと転がり込んだ。

 

一瞬見失ったっぽいがそこまで有効かと言えば無駄な動きだったのではないかと思う。足音がどうしても鳴ってしまった。

 

「そこか。」

冷徹な刃は地面と平行にやってきた。空振りとなるのだろうが果たして本当にそうなのだろうか。

 

僕は更に回り込む事にした。少しだけあの刃が何処まで向かうのかが気になる。僕の中には一つだけ思案があった。やってみる価値はあるのかもしれない。

 

周りは木に囲まれている。そして今は相手の背後に近いところにいる。上手く行動して何とかならないだろうか。

 

僕は相手の周りを回っておく事にした。その間にクルクルと刃は回りながら振り下ろされていく。それだけだった。その中で相手が段々と集中力が切れていた。

 

「うまく回り込んでいるようだが、小賢しいだけだべ。」

ん?

 

その言葉は僕は背後で聞いていた。僕の足裏には木のほんの少し柔らかい感覚がある。

 

壁際でよくやられたものだ。お父さんは此処から意味不明な動きをしてくる。僕にはまだそこまでの力はない。

 

単純明快な動きしかしなかった。

 

横薙ぎ。

 

僕がしたのかはそれだけだった。

 

だが、意外にも効果はあるらしい。それだけは何となく理解できた。今のところはそれだけでも問題ない。

 

「危なかったべ。」

相手の息は確実に上がっていた。急な出来事には対応しきれないらしい。それが見ていて思えた。あともう少し。あと一押し。

 

「やるな。もう辞めよう。私の降参だ。」

 

「良かったです。」

 

「あんた、何物だ?」

 

「ただの修行の身です。」

 

「名前は?」

 

「ヒカルです。」

 

「私は坂田 ネムノだべ。好きに呼ぶと良い。」

 

「それじゃあ、ネムノさん。僕と一緒に探して欲しいものがあるんです。お願いできますか。」

 

「任せろ。この辺りは案内してやる。」

僕には凶悪な妖怪であると思えた。だが、単純に人との関わりを嫌っているだけなのかもしれない。話せば、別に問題のあるような事はなかった。ただ、僕が不用意に近づいたのが少し悪かったかもしれない。

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