蝋燭と木製の扉が続く。その連続した事象にうんざりとしているそんな頃にようやく光というものが見出せた。この館の主人に使えるメイドである十六夜 咲夜によって僕は主人さまのいる部屋へとたどり着いた。
三回、ノックを入れてから相手の応答を待ってから部屋の中へと僕を入れてくれた。その一部始終を後ろで見ていた僕は自分の知らないことがあるのを知れた。声音的には小さな女子の声であるが、何処か威厳のあるそんな感じのする声だった。
「お嬢様、お客様が来ています。」
「全く自由に出入りされたのはいつぶりかしらね。」
水色のショートで少し癖のある髪型をしている。頭には薄いピンク色のナイトキャップを被っている。背中からは小さめな黒い翼が生えていて一見すると異種であるがそれ以外は別に何ら変わらないとさえ思えた。服装は上品なドレスで頭の上のものと色は変わらない。
「お父さんが何かしたのでしょうか?」
「お父さん?私の推測が正しければ色んな事をされたわよ。」
その人はそのように答える。本来ならすぐに謝るところなのだが何処かにこやかなので僕は行動の手順を行使する回路が壊れてしまったらしく、動けなかった。
「でも、楽しい事もあったわ。助けられた事もあった。色々と引っくるめれば居た時は楽しく日々を過ごせていたわ。」
「話がよく分かりません。詳しく聞かせてはくれませんか?」
「別に何か話すこともないわよ。」
ふふ、と不気味に笑うその人はどうしても悪魔としか思えなくなってきた。僕は幻想郷の暗い一面の片鱗を見ているような気がした。
「お嬢様、客人が困っていますよ。」
「そうね。まぁ、座りなさい。そのお父さんの代わりをしてちょうだい。」
その人は僕を対面にある空いている椅子に座らせようとしていた。フカフカの椅子で白色のカーペットのようなものが施されている高級感のあるものだった。
「咲夜、人数分の紅茶を淹れてちょうだい。それと二人で話をしてみたいわ。」
「分かりました。」
咲夜がそれだけを言ってこの場から居なくなるとすぐに戻ってきた。そして僕が座ろうとしている椅子の前にある円形のテーブルにはポットと二人分の白い陶器で出来ているカップが置かれている。線の交差したシンプルな模様だけだがこれが美なのか、と僕は思った。
「さぁ、腰掛けなさい。本当に合っているのか教えて頂戴。」
この人はきっと悪魔なのだろう。お父さんよりも怖いと思えた新鮮な切り傷が心の側面についた。それでも僕は座ることを決めた。別に悪意があるわけではないと思えたからだ。
「僕には何が何だか分からないです。」
「そうでしょうね。私はレミリア・スカーレット。紅魔館の主人よ。」
「紅魔館、ですか。それはレミリアさんが主人だからですか?」
「そうよ。」
「へぇ。ぴったりですね。」
僕はたしかにそう言った。その言葉にきっと悪い意味はなかったはずだ。
「本当に息子なのよね。全く似てないわね。」
「言葉などはお母さんに教えてもらってます。お父さんには武術を教えてもらっているのですが何か関係ありますか。」
「そう言うことね。全く彼奴の何が気に入ったのやら。」
レミリアさんが呟くように言っていた。其処にはため息もセットである。僕はその言葉は流しておくことにした。反応に困る。
「それは置いておきましょう。今は関係ないと思います。」
「そうなんだけどね。少し気になるのよ。」
「気になりますか?」
「そうは言っていないでしょう。」
「そうですか。」
「ところで何処か目星はつけるの?」
「住む場所も此処がどの辺りなのかも知りません。」
「そう。暫く部屋を貸してあげるわ。丁度空いている部屋があるのよ。」
レミリアさんは少し面白そうなものを見つけた子供のような表情で僕のことを見つめていた。その真意はよく分からないが何かあるのだろう。
「使ってもいいんですか?」
「別に良いわよ。誰もその部屋は使えないもの。」
「そうですか。」
「今日はもう少し話しましょう。ただの談笑しかしないから緊張なんていらないわ。」
僕はそう言われたのでその言葉通りにした。レミリアさんの口車に乗るつもりはないが今は別に問題ない。
「そう言えば、お父さんから聞いていたんですけどレミリアさんって主人として向いていない人と聞いたんですけどそうでもなさそうです。」
「いきなり話すのね。やっぱり聞いているのね。」
レミリアさんはそれからお父さんのことについて話してくれた。僕は咲夜さんから淹れてくれた紅茶を飲みながら茶菓子を食べて時間を過ごした後に部屋を紹介された。その部屋は本当に人が使えるような状態ではなかった。
ベットは綺麗にされているが置かれているテーブルの上には段重ねの紙が置いてある。その数は何十ではなくて、何百、何千とあるように感じる。そして何が書いてあるのかは全く分からない。僕は嫌な場所に来てしまったものだと勝手に思っていた。それでも今日は有難くベットを借りることにした。