東方魔剣術少年   作:mZu

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第40話

幻想郷の中ではここは一番季節があっていなかった。夏と秋の天候を感じてからここへと来ると流石に頭がおかしくなってくる。

 

吹雪の吹いている極寒の森の中で僕はそんな事を考えていた。何となくの興味だ。妖怪の山から見えた白い景色が僕の目に止まった。それが何かはよく知らないが何もないと言えばそんな事は絶対になかったのだと思う。

 

「寒い。」

凍える体を剣から出る熱気で暖めようと思ったがどうも上手くいかない。ここはどうやらそんな簡単にいくようなところではないらしい。

 

これなら地蔵に頼りたくなる。

 

「もしかして、力に選ばれた人なのかな?派手にやったつもりだけど出てくるのが遅かったね。」

 

横から謎の声が聞こえてきた。もっと熱気を強めるか、何とかしてこの状況を打破しないとこの吹雪に飲み込まれてしまう。僕にはもう帰り道なんてものは残されていないらしい。

 

「ついに幻聴まで。僕は一体どうなってしまうのでしょう。」

 

「そんな事は知らないけど。相手はこいつにさせてもらいなさい。じゃあねー。」

僕はその声に手を振って答えた。見えているのかはどうかは分からないが、気配だけするので幻聴でも何でもないらしい。姿は気が散っているのか、吹雪で見えないのか、元々見えない位置から話していたのか僕には何も検討がつかなかった。もしかすると全部、もっと要因があるのかもしれない。

 

「みなぎるわー。これは試してみるしかないわね。」

 

「僕にですか。」

 

「吹雪が私に力を与えてみるみたいだわー!」

意外にもテンションの高いその人は僕からはただの地蔵のようにしか見えなかった。それでも何となく人相はわかる。

 

伸びた黒い髪をしていて笠を被っているところを見ると地蔵なのだろう。赤い前掛けと灰色のロングコートを着込んでいて、赤い足袋に草鞋を履いている。寒くはないのだろうかとは思うが自分が言えたものではない。

 

「可愛らしくて元気そうな方ですね。」

 

「ありがとうね。」

その人は何となく愛嬌のある人なのだろう。人影だけ見ると小さく感じるが僕に対するやる気というのはただならぬものがある。やるとは殺すという意味と同義であると付け加えておく。きっとこの異変で暴れ出しているだけなのだろう。うっすらとした視界からは何となくそんな事を考え出した。

 

「いえいえ。」

 

「じゃあ、行くよ。」

景気のいい声が出ていた。元気そうでなにより、と言いたいがこれは他人事ではない。自分で何とかしないといけない。動いて身体を温めようか。そんな事を考えていた。

 

相手は札のような黄色の弾幕をゆっくりと展開していた。その間にどの道で近づこうか考えている事にした。体は凍えているが中身はそうでもないらしい。動けるようになるまでは自分のことを過信しないでおこう。

 

直線的、そして簡単にも思える。罠かもしれない。僕は移動しない事にした。それがどのような事になるのかは全くと言って分かったものではない。

 

後ろへと向かったそれは段々消滅していた。お父さんの弾幕を気にし過ぎたのかもしれない。それだけは簡単に言える。

 

「どんどん行くよー。」

相手はどうにも上機嫌であるらしい。こういう人ほど普段はおとなしい人なのだろうと思う。何となくの気分でやらかしてしまう真面目な人なのだろう。

 

今度は螺旋状になった。その軌道も螺旋であるらしく右回りの移動しにくいものだった。僕は少しだけ前に進んでみる事にした。あまりにもこの場は足元が悪すぎる。止まっていると簡単に凍りそうで怖い。それがどうなるのかは全くと言って分かったものではない。

 

僕はその場で回転してみる事にした。見様見真似だ。斬波というもので単純なものだがこの吹雪を乱雑にさせるにはそれで良い。そして周りの雪を払う為にも。

 

「やるね。まだまだ。」

本当に元気のいい人だった。これがきっと異変でもなければ人当たりのいい人なのだろう。

 

後ろから不意に魔力の流れを感じた。円形に飛ばされた赤くて丸い弾が前後から現れた。正に業火に焼かれそうにる罪人の気分だった。落ちれば焼かれる、這い上がっても落とされる。しかし、まだ抵抗できる程度。殺さず、生かさずな中途半端な延命をされた気分だった。何も変わりがない。

 

前に進んだ。ここで止まっていても何も変わらない。それに変えられる可能性を潰しかねない。僕には前に煤しか選択肢はないように思えた。

 

足元に積もっている雪は淡々に吹き飛ばしていった。微量の雪は僕が地面を滑る際に何となく使わせてもらう。所詮はその程度だ。斬波によって弾を相殺させながらゆっくりと前に進んだ。視界は特に晴れる様子はない。そして相手もそれは同じなのだろう。見当違いな弾もいつくかある。それともそれは罠なのだろうか。つくづく僕は考えてしまう。

 

斬撃なんて何に使えるのだろうか。僕は思った。この件だからこそ、できる何かはないだろうか。業火に対抗する術はないのか。

 

水流を思いついた。僕は妖怪の森で見たあの清流を想像した。それに応えるように足元に水滴が垂れてくる。それは量が増えていき、いつからか何か違うものへと変わっていった。

 

濁流とも言える、その水の流れを周りにぶちまける事にした。全てを洗い流して無に帰す自分の技。その水は恵みの雨としてこの森の中に流れていった。そして巻き込んでいった。

 

「驚いたわよ。まさかここまでやるなんて。私と実力差がかなりあるようね。」

 

「そうかもしれません。」

 

「降参よ。」

 

「とても綺麗な人ですね。」

僕はどうやら勢いでかなり近づいていたらしい。そして背中から何やら光が見えるのを感じた。それが何かは僕には分からないが聞かない事にした。もしかしたらこの人の体の一部なのかもしれない。

 

「えへへ。」

 

「そういえば、もう一人誰かいるような気はしたのですが。ご存知ですか。」

 

「森の中で私は一人よ。え、」

 

「幻想郷で幽霊に怖がる人なんているんですね。」

 

「普通怖いでしょう。」

 

「怖いと言えば、その背中にある光は何ですか?」

 

「そう言えば背中が暑いのよね。何か理由は分かるかしら。」

 

「僕は知らないです。暑いと感じるのは気になりますね。」

僕は後ろへと回ってみる事にした。

 

「何かあるんですか?」

 

「扉がありますね。手も、なぜか入ります。」

 

「何故でしょうね。」

 

「頭入れますね。」

僕は好奇心でしかなかった。白い部屋のような場所に二人が立っていた。一瞬だけこちらを向いていたようだが僕の方から抜けた。

 

「誰か居ましたよ。」

 

「え?何それ、怖い。」

 

「僕、行ってみます。」

僕は容赦なく飛び込んだ。その中に何があるのかは分からないが、好奇心に煽られたのなら行くしかない。いつになく、根拠のない自信を持つ僕はそう思った。

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