東方魔剣術少年   作:mZu

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第54話

明日の光は地面には降り注がない。だからこそ、私がその光の代わりとなる。天に昇るは太陽。その下で皆を従えるが私、そう約束した。確かにそう言って、その本人は未だに帰ってはこない。素晴らしいお方をを失った、そう私は決め込んでいた。さすれば、どうだろうか。偶然にも現れたではないか。その光を私にくれた人が、導いてくれた人が。

 

 

やっとの事でたどり着いた。やはり、あの人の言う事は聞いておくべきだったのかもしれない。僕は一応の後悔と大きめな期待を胸にその場所へとたどり着いた。

 

法界と皆からは呼ばれている幻想郷とつながっている場所。そう伝えられたがそのような穴や扉というものはなかった。人に聞けば何かしら分かるのだろう。僕は楽観的に考え、最終的にそのようになると思った。確かな自信なのだが、僕には根拠はない。ただの気分だ、そう伝えておく。

 

目の前には白い真四角の石が敷き詰められている広い場所があり、その奥には湾曲した階段があり、その先にはお堂のような場所がある。大きな屋敷で木造、特に説明のいらないような簡素な作りをしている。デザインという意味では紅魔館の方が大きく、豪華なのだろう。しかし、守矢神社のような建物と考えると静を司っているようで穏やかな場所であった。

 

僕は周りを見渡してそのように感じた。特に何もない、それが僕の抱いた率直な感想だった。

 

「ここどこ?」

竹の色にも似ている髪の色をしている舞さんが話しかけてきた。

 

「法界だと思います。」

 

「行こうよ。」

明るい茶色にも見えなくもない髪の色をした里乃さんが僕たちを置いて先に行こうとしていた。それほど気になるのだろうか、それともここで居続けても何も変わらないと背中で語っているのか。この際、どちらでも良かった。

 

「分かりました。」

 

「ご主人が敬語はおかしいよ。」

少し怒り気味に里乃さんが言うが、僕もある意味では雇われている身であり、偉そうな口は叩けない。

 

「僕も同じ人に雇われている人だから立場は変わりないよ。」

 

「いやいや、僕達には命令しても良いんだよ。」

 

「僕がこうしているだけだから。気にしないで。」

僕は相当困った。

 

「ここで何をしておる?」

キョトンとした表情で僕たちのことを見ていた。その人は銀色白色を混ぜたようなキラキラとした髪の上に烏帽子のつけている。後ろが何となくボリュームがあるので後ろで上の方に一つにまとめていると思う。意外と背は小さく、僕を少しだけ見上げている。腰には鞘が見えるのだが何用なのかは検討はつかない。

 

「いえ、特に。」

僕は本当にその通りである事を話した。だが、何処か疑わしいらしく、僕のことを覗き込むようにしていた。その時に、白装束を纏った体が傾き、手の出ていないが袖は腰のあたりを触れていた。紺色のスカートを履いている。靴は黒に紫色を少し混ぜたような色で綺麗にされている。

 

「何じゃ、お主ら。怪しいのう。曲者か⁉︎」

腰から抜いた直刀を引き抜くと僕の方に向けていた。どうやら早とちりをしてしまう人らしいが流石に僕も反応に困る。これは、どう反応したら良いのやら。

 

「違うよ。私達は幻想郷に帰りたいのよ。」

 

「その言葉、ここの信徒ではないな。」

全員が異なる服装をしているのだからそうなるのだろうが仕方がない事だと思う。僕は率直にそう思った。

 

「そうです、ね。」

 

「しかもここから現れるなんてますます怪しい。」

 

「いやいや、少しくらい考えてくださいよ。此処が何処なのか全く知らないですよ。」

 

「うーむ。よく分からない。」

 

「まずは落ち着いてください。それからゆっくりと話をしましょう。」

 

「我は落ち着いている。」

 

「まず、呼吸してください。」

その人が一気に吸って、一気に吐いた。まるで運動した後の呼吸のようなものである。

 

「よし、した。」

 

「いや、それは駄目です。」

 

「何故じゃ、と言うかこんな事をさせて何を企んでいる。怪しいから斬るぞ!」

その人は僕に向けて剣を振り下ろす。だからと言って慣れているのかと言われるとあまりにも鈍っていたか、何もやってこなかった人のようになっていた。

 

僕は半身になって避けていた。そこから跳ねたりしないあたり、まだ優しい。

 

「平和に解決しましょうよ。」

 

「それは無理な相談じゃ。」

 

「何故ですか?」

正直、聞く必要はどこにもなかった。ただ、何か気になる事があるとすればここが法界であっているのかどうかと言う点だがこの人はとても聞けなかった。

 

「怪しいからじゃ!」

その人が地面に打ち付けた剣を振り上げていた。僕はその上を飛び越えた。本当に分かりやすい。腕の差は相当あるのだと感じざるを得なかった。

 

「そんな理由で。怖いです。」

 

「いや、お主。あの剣を避けるとは同類じゃな。」

 

「分かりやすいだけです。」

僕は疲れた。誰か通訳を頼みたい。

 

「何を。言ってくれるではないか。」

 

「言いたくもなりますよ。」

その人は僕の言葉に怒りを示したのか、力一杯に振る。全身を硬くしてから振るだけなので受けても軽いものである。受けはしないが。

 

「何故当たらぬ。と言うか、抜かぬか⁉︎恥ずかしいではないか。」

 

「良いですか。弾き飛びますよ。」

 

「良かろう。」

何処からその自信が来るのか、僕の中で謎は謎を呼んでどうしようもないことになった。

 

「行くぞー!」

景気よく叫んでいるが、僕にはそうする理由は何も分からなかった。

 

相手の剣は僕の胸のあたりを通る。だからこそ、僕は通り抜ける前に抑えた。左腕には相手からの力が籠られるはずだが特に何か感じることもなく、軽く受け止めれた。何故かは全く分からない。

 

「お主、中々強いな。」

 

「ええ、まぁ、有難く頂戴します。」

冷静に考えればどれ程の実力の差があるのかは言うまでもないが下手に動くと傷口が開く可能性がある。それだけは避けたい。

 

「まだ行くぞ。」

一歩後ろへ離れたその人は後ろに結んだ髪を揺らしながら僕に向かって突きを放つ。あまりにも単純で剣で止めて傾けた向きに逃がした。その人は僕の右側を体勢を崩しながら横切っていた。だからこそ、僕は素早く右足で相手の膝裏を蹴り、剣を地面に振り下ろした。

 

「その首、そのうち落ちますよ。このまま続けるなら。」

 

「ふん。手を抜いたのがお主の敗因よ。」

 

「辞めなさい。布都。」

 

今度は誰なのだろうか。また血気盛んな人でも来たのだろうかと思ったが見る限りでは特にそのような事はない。獣の耳かのように立っている薄い金色の髪をしている人で耳あてをつけている。何か文字は書いてあるがそれが何であるのかは特に検討はつかない。

 

「お騒がせしました。」

 

「いいや、私の部下が迷惑をかけた。」

肩を見せた薄紫色の腰に黒いベルトをつけた服装でスカートが紫色をしている。ベルトの先には太陽をかたどったと思われる柄頭をした直刀を携えている。強そうではあるが、抜くためではなく、牽制するのものなのだろう。

 

お互いがお互いの失態を詫びると言う極めて異例な光景をしていたのだと思う。太子様がどういうこうの、と布都と呼ばれた人は言っている。

 

「一つお聞きしたいのですが、此処は法界という場所で間違い無いですか?」

 

「ああ、間違いない。何故、そのような事を聞く。」

 

「幻想郷に帰りたいんですがどうやって帰ればいいのか。」

 

「ああ、それなら問題ない。後、三日もすれば船が来る。それに乗って帰ればよい。」

 

「それまではどうすれば良いでしょう。」

 

「休んでいくといい。丁度、今は人が少なくてね。その腹の怪我も治すといい。」

 

「どうしてそれを?」

 

「私は人の欲を見ることが出来る。何が足りないかなど知るのは造作もないことだよ。」

 

「へぇ。便利な能力ですね。」

 

「そういう人間はとても珍しいよ。大方、気味が悪いと言われるのが筋だ。」

 

「自分の事が見透かされていると思うと、その気持ちも分からなくないですね。」

 

「だから、人の悩みを聞いてあげている。有効的な使い方だろう。」

 

「たしかにそうですね。」

 

「立ち話もあれだ。後ろの二人も連れて来るといい。彼女らからはとても好かれているようだ。とても短い関係には思えん。」

 

「何ででしょうね。」

僕は分からないのではぐらかす事にした。

 

「さて。私にはそこまでは見透かせないのでな。布都、まずは男の方を風呂に入れさせてください。」

 

「はい。」

布都さんは少し苛ついた表情をしながら僕のことを見ているのだが、それが何故だかは知らなかった。まだ、怪しまれているのだろうか。それぐらいだろう。

 

ともかく、人の優しさを感じながらこの法界という場所で三日ほど暮らす事にした。

 

そのついでと言うのは何だが、一日付き添う事にした。どうやら僕の欲を除いて見透かしていたのは豊聡耳 神子という名前の方でこの世界の創始者であるらしく、此処で人の悩みを聞いているらしい。その際、命蓮寺という場所から往来の船があるのでそれに乗れば帰る事はできるらしい。

 

神子さんの生活と同じ事をして三日が経った。意外にも時は早いものだと感じる。それほど充実した事でもあったのだろう。特に何かした訳でもないが。神子さんに話を聞いてもらったくらいだろうか。

 

「元気で過ごすのじゃ。」

布都さんは相変わらず、と言いたいがどうやら疑いは晴れたらしく、僕に対して敵対心を見せなかった。

 

「達者で。」

神子さんは意外にも淡白な言葉で僕たちを送ってくれた。それはそれで構わないのだが何か物足りない。

 

「機会があったらまた来ます。」

僕は一礼しながら命蓮寺という場所へ向かう船に乗った。正直なところ、船という乗り物は紅魔館で借りるまでは乗った事はなかったが、空も飛べるものだとは思わなかった。何か浮かせる力でもあるのだろうか、ふと考えることもあるが今は甲板の上で寝転がるのが一番気持ちが良かった。その横で気持ちよさそうに横になる二人の表情を見ながらゆっくりとした時間を過ごした。

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