それからは何時間とかかる事はなく、僕たちを乗せた船は命蓮寺らしき場所へとたどり着いた。その場所は先ほどいたところはまた違う風情のある場所で何か神聖な雰囲気を感じるところだった。それだけに僕は終始黙っている事になった。
その時だったが、黙って降りていた時に手を振っている人がいた。その人は命蓮寺の主人であるらしき人である、雰囲気で何となくだが伝わって来る。僕は固唾を飲んでその人の前へと向かった。
金色の髪に紫色のグラデーションを加えた癖のある髪型で黒色の上着を纏っていてその下に白色の布を羽織っている。黒くて白色の紐がついた光沢感のある膝下くらいまでのブーツを履いている。
その人が命蓮寺の主人なのか、は兎も角僕は普通に話しかける事にした。
「こんにちは。」
「こんにちは。挨拶が出来るなんて偉いわ。」
僕の事をかなり下で見ているような気はするが正直なところ、自分の力を見せたらいいのでそこで文句は言わない事にした。言っても可愛らしいなんて言われたら言い返す言葉もない。
「此処は命蓮寺であっていますか?」
「ええ。何か気になる事でもあったの?」
優しく聞いてくれる、まるで母親のような包容力のあるその言葉遣い。流石と言うべきなのだろうか?
「少し事情がありまして。」
「まぁ。これからどうするの?」
つまるところ、帰ってこられたと捉えられたのか、それともまた別の理由なのか。もし前者なら神子さん同様にかなりの洞察力があると思う。
「一応、家に帰る事にします。」
「そうね。心配していると思うわ。」
優しい笑みをこぼしてくれたその人は僕の事を実の子供かのように扱ってくれる。聖人なのだろう。
「そうですね。そのつもりです。」
「そうすると良いわ。後ろの人は貴方のお知り合いなの?」
後ろにいるとすれば毎回見分けのつかない二人がいると思う。僕は確認することなくはい、と答えた。
「でも、一人だけかなり睨みつけているのよね。何かしたかな?」
「ん?どういう意味ですか?」
僕は何となく後ろを向いてみる事にした。
「あ、紫苑さんの妹さん?でしたっけ。」
「そうよ。」
かなり不貞腐れた言い方をしているが流石に間違えるような事はなかった。その人は長い金色の髪をしている人でかなり豪華な装飾品をつけていた最悪最凶姉妹の妹の方、女苑さん。今では、すっかりと質素なものだった。
「久しぶりですね。」
「よくそんな口がきけたものね。」
女苑さんはかなり僕に対してご立腹のようで何か違うものを見ているような気分になる。それほどに何かやらかしたかのかと思い出してみるがあまり思い出せない。単純に霊夢さんの助っ人として来ただけなので何か私怨を買うような事はないはず。あるなら、敵として、だが今更な気もしない訳でもない。
「何かやりました?」
「姉さんが不幸に見えないのよ。何かしたでしょ?」
「僕には身に覚えがありません。」
「誤魔化しても無駄よ。」
女苑さんの怒りはあまり治る事はなく、更に吹き上げているような気もする。
「どうしましょう?」
視線で訴える事にした、此処の主人に。
「取り敢えず謝りましょう。」
「僕には何も分からないです。気持ちの籠らない言葉でしか伝える事はできません。」
「そうよね、どうしましょうか?」
こう僕と一緒に悩んでくれる点も優しさを感じる。
「どうもこうも、姉さんをたぶらかしたのはあんたでしょ!」
「永遠亭に連れていっただけなのに。怪我人を治そうとして何か悪い事でもありますか。」
僕は疑問にもならず、怒りで言葉をあげるようなことも出来なかった。
「それよ。そんな事をしなければこうはならなかったはずよ。」
「女苑さん、まずは落ち着きましょう。」
「聖には言われたくない。」
これは私たちの問題なの、と聖さんを突っぱねる女苑さんは何処か獰猛な獣のようであった。そして何が原因であるのかが全くと言って理解できなかった。何をどうしたら良いのか、僕の中では演算は出来ないようである。
「ともかく、本人に聞かないと話は進みませんね。」
「まぁ、そうよね。」
「今は居ないわよ。」
「なら、今は保留にしましょう。」
僕はこの話を一刻も早く終わらせたくて半ば強引に提案をした。面倒な上に何の話か分からない。人を間違えられて話しかけられたようになっている。あの時、気づくとかなり気まずい。
「解決しそうにないものね。まぁ、仕方がないわ。」
女苑さんがそう言うのでそういう事にした。聖さんも特に問題はないらしい。
「僕はこれで。」
踵を返して此処から出る事にした。何となく思い出されて話がこじれるのも良くないし、僕は少しだけ急ぎ足で帰る事にした。
「姉さんはあんな奴をね。」
「嫌っているのですか?」
「違うわよ。私から離れていくのが怖いのよ。」
「怖い?良い人そうですし、丁度良かったのでは?」
「ものは捉えようよね。」
「そうですかね。」