東方魔剣術少年   作:mZu

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第56話

綺麗に整えられた参道を通りながら、僕達は北へと向かっていた。周りは妖怪の山よりも鬱蒼とした場所であまりその方角へと進みたくはないはず、だが、僕は何と無く向かってみる事にした。特に理由はない。ただ、居るとするならこの辺りだろうと目星は付いているだけだ。

 

里乃さんと舞さんは何処か寂しそうな表情をして付いて行きたそうにしているがそれは僕は友人と会うのにぞろぞろと連れていけないと断った。二人は渋々ながらもそれを承諾して北へと向かった。僕はその後ろ姿を眺めた後で踵の向きを変えて東側へと進む事にした。

 

道なんてものはなく、太陽の明かりも灯らないような中で、僕は薄暗い木の下を歩いて抜けていく事にした。幻想郷には魔法の森と呼ばれる場所があり、その場所には奇妙な形をした木やキノコが生えているという噂だ。パチュリーさん曰く、魔法のために必要な素材が多く手に入りやすい場所であるらしい。当の本人はそのような魔法の類は苦手らしく、別の理由もあって行かないらしい。

 

「しかし、誰かの家でもあれば良いのですが。最低飛んで探しましょうか。」

飛んでいくのにはとてもではないが木の枝が邪魔して通りにくい。その上、雰囲気なんてものがぶち壊しになってしまう。この薄気味悪い、何処から何が現れるのか分からないドキドキ感を楽しみながら僕は更に東へと足を進めていた。

 

しばらく歩いていたのだが、どうやら土の感触が変わったらしい。少しだけ湿った土でへばりつくような粘り気のあるものでその周りにあるのは曲がりくねった木の枝や緑色の茸をしているキノコ。そして紫色の煙のような霧に覆われた場所で視界を軽く遮っていた。それだけではなく、何か重たい空気も流れている。不気味というのか、まるでおとぎの国にでも入り込んだかのような気がしてならない。僕はその先を急ぐ事にした。思ったより、此処には居たくはない。

 

口を塞ぎながら歩いていく僕は何となく喉に引っかかるものがあり、咳き込んでみたが何か出るような様子はなく、空も同然だった。単純にこの周りにある煙を吸いすぎたのかもしれない。僕は周りを見ながらそう感じた。何処からこの煙が現れているのかは分からないがきっとキノコから現れているのだと僕は推測した。だからこそ、僕は木々の真ん中を歩いていたがあまり効果はないらしい。こんな危険な場所にわざわざ住むとは思えないが更に東へと進む事にした。

 

すると、八角の塔と黒色の屋根のある家が合体住居へとたどり着いた。この辺りには霧はなく、上は晴れていて太陽の光がしっかりと入り込んでいた。その家の前には家庭差延でもしているのか、見たことのない野菜なのか、魔法に必要な材料なのか分からないものを栽培していた。多分後者なのだろうが、見た目で判断するわけにも行かない。僕はそう思いながら玄関を軽く叩いた。誰か居そうな予感はしたがまさかの人物だった。

 

サラサラとした透き通るような金色の髪で赤いヘアバンドをつけているクリクリとした青い目が特徴的な人で人形のような顔立ちをしていた。正しく、その人は人形だ、なんて言いたいがそれは違うのだろう。

 

「道に迷ったの?さぁ、入りなさい。」

心優しくも快く僕を家の中に招き入れたその人は白いケープを羽ばたかせている。そして白色の触り心地の良さそうなスカートを腰の動きで軽くあげていた。そして腰に巻いているリボンが舞い、同様に首元に付けているネクタイのようなものまで。茶色のブーツが床に当たる音を出しながらその人は中へと入っていく。僕はその人に続いて中に入ってみる事にした。

 

そうすればそこには先程僕を迎え入れてくれた人によく似た人形が趣味の悪い置き方で飾られていた。生気のない作り物の目が下の方を向いている。そして中心に置かれている淡白な明るい色をした木材に白色の布をかぶせたテーブルを凝視していた。

 

僕はその光景に一瞬だけ体が硬くなり、向こうの好意を無駄にしないようにそろり、そろりと入っていく事にした。

 

「名前は?」

 

「ヒカルです。」

僕は答えた。僕の右側にはには顔を伏せて何かの作業をしている人が居た。何処かで見たことのある髪の色をしているが幻想郷に白髪は幾らでもいるだろうと思いながら気にすることはなかった。魔女だと思えば何とも思わない。

 

「ヒカル?わざわざ何をしに来た。」

何故だか知らないがその人は僕に喧嘩を売られたように態度を悪くしていた。一体僕が何をしたのだろうか、それは疑問であるが顔を見た瞬間にすぐに分かった。

 

「ケプリさん、此処にいたんですか。」

ごわごわとした白髪で白色の血色の悪い皮膚の色をしているが至って健康的なこの人は先程僕を迎えてくれた人によく似た服装をしていた。スカートの真ん中に切れ込みがあるので膨らみのあるズボンとして着用しているのだろう。

 

「少しの間、居候させてもらっている。人里への人形劇の手伝いがてら此処で人形を作っているんだ。」

 

「それで今も作業をしているのですね。」

 

「まぁ、そうだな。お前は此処に何をしにきた?」

 

「何もないですよ。ただ、誰かは居るだろうと思っただけです。」

 

「お目当は見つかったのか?」

 

「目の前に居ますよ。」

 

「そうだろうな。」

ケプリさんは右腕を軽く上げる。それに吊られていた人形は自立したようで僕の方へと簡易的な鉄の槍を持ちながら突進してきた。僕は上半身を大きく動かしてその場から逃げた。後ろでは少し物音がしていた。

 

「いきなりですね。」

僕は椅子を蹴飛ばしながらケプリさんの方を向いた。椅子を蹴ったのは故意である。そこは忘れないでほしい。

 

「いつも通りだろう。何か問題があるか?」

 

「いいえ。何もないですよ。」

 

「二人とも、外でやって来て。」

 

「「はい!」」

そんなこんなでどうしてなのか、ここで会ってしまったのでケプリさんと戦闘を行う事になった。別に望んでなどいないがこうなったからには仕方がないのだろう。

 

「これでは回数はどれくらいになるか?」

 

「数えることは百で辞めました。」

僕はここの家の扉を開けながらちょっとした事に期待を膨らませていた。そのせいか僕の手は今にも柄を握りたそうにしているのだが、それを抑えるために理性が働いているが、いつまでも本能が現れないということはないだろう。

 

「そうか。これで二百と十一を数える。その勝敗は言うまでもない。」

 

「僕が百と六の勝利をおさめた!」

 

「戯言も甚だしい。それは俺の戦績だ!」

ケプリさんの白銀の刀身をした大剣が僕の黄色の刀身をした双剣を受け止める。力は拮抗。

 

ガン、と岩を砕いているかのような音が周りには響いた。

 

僕は一回弾いて後ろへと下がった。魔法の森なのだろうが、ここの土は少しだけぬかるんでいる。少しだけ足が食い込む。

 

「その事はもう良いじゃないですか。」

 

「どうせ、遊びとでも言うのか。」

 

「その通り。」

僕はまっすぐ進んだ。その先には必ず何かがある。そう思えると何となくこの足も付いて行きやすい。

 

「その手は見切っている。」

ケプリさんは自分の右側から大剣を振るう。僕が今からしようとしていたことは正しくそれに斬られるような動き方。だからこそ、今回は寸前で止めた。

 

背中から追う大剣を嘲笑いながらケプリさんの後ろへと回った。そして双剣を振るう。が、そう上手くはいかなかった。僕の前を二人の人形が横切る。先程見たような見た目をしている。金色の髪、青色の目、そして青色のワンピースに白のシャツ、腰と首もとには赤いリボンを結んでいる槍のような突起物を持った戦闘用の人形。

 

「人形遣いだなんて。可愛くなりましたね。」

 

「お前こそ、魔法は使えなかったのではないか?」

 

「それはもう克服しましたよ。」

僕の返答にケプリさんは大きく笑う。

 

「ならば、やってみようではないか。人形と魔法、どちらが強いのか。」

 

そんな二人の会話を聞いていたアリスはどのように反応するべきか迷った。

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