東方魔剣術少年   作:mZu

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第57話

ぽっかりと空いた森の隙間からは太陽の光が降り注いでいる。魔法の森と呼ばれる異質な霧が出ているこの場所では、奇妙な色をしたキノコや枝をくねらせた木々が僕たちの上には包囲網のように配置されていた、下にも周りにもそして本来なら上にも。

 

少しだけぬかるんだ紫色をした霧を吸い込んでいると思われる土が僕の足元をすくい取る。それだけではなく、何となく動きづらい。僕の前には白いガサガサな髪をしている顔面蒼白の大剣を背負った人形遣いが立っている。

 

「なら、やることは一つですね。」

 

「もう遅いわ。」

ケプリさんは僕の目を見ながら咆哮する。そして大剣を振り回しながら人形が常に僕のことを狙っていた。

 

左横から来るケプリさんの斬撃は僕の身は余る威力をしていた。足元がぬかるんで滑ることもあり、ふらっ、とした僕は人形への反応が遅れた。あと少し、遅ければ貫かれていたのかもしれない。右肩を貫かれかけたがない何とか大丈夫らしい。小さな刺し傷はした。意外にも鋭い一撃で正直驚いているが、大した傷にはならないと思う。そう思いたい。

 

「俺の力にはまだまだ追いつけないようだな。」

 

「それは捨ててます。それにお父さんに利用されて終わりですよ。」

 

「それもそうか。こっちもいつも受け流されているような気がする。」

 

「そうでしょう。だから、僕は速度で勝負します。まだ技は発展途上の段階なんですよ。」

僕はぬかるんだ土の上を走り抜けた。泥が衣服にまとわりつく事も特に気にすることなく。

 

「ん?」

ケプリさんはあまりにも早いのか、そんな声を漏らす。

 

相打ちだった。間に人形を挟んだケプリさんはそれを取り替えるように僕の攻撃を受け止めた。ちょうど腹あたりを真っ二つに斬ったからか中に入れ込まれていた綿が飛び出している。そして命を失ったかのように地面に落ちて、土に汚れた。その間、僕は動きを止めていた。

 

「何をよそ見している。」

 

その時に、はっ、としたがそれはあまりにも遅かった。

 

ケプリさんの一撃はとても重たい、それに加えて人形の波状攻撃がとても厄介だった。これならお父さんにも通用するのだろうか、それともかなりの数を用意しないと間に合わないのか。

 

僕は双剣で止めて勢いを殺すために地面を転がった。それから立ち上がる。腕は折りたたんで逆手持ちで居続けた。

 

「完全に防御に徹するつもりか。」

ふむ、と少し納得したような困ったような表情をしていたがそもそも人形を使って集中を分散させればいい。それか、自分の攻撃の追加として扱うのか。それかその両方か。一番最後の手だとかなり困る。

 

「別に。様子見です。」

 

「そうか。それなら俺はここで待つ事にしよう。」

ケプリさんも待つらしく、お互いに動きのない感じになった。それでも相手の事は僕は見ている。いつ、何を仕掛けてくるのか、分かったものではない。

 

暇だとは思わないが何処かそんな気持ちをあふれて出してきそうになった頃、ケプリさんが動いた。僕に向けて前進させた人形だが、それは僕は軽く止めただけだ。まるで一点を狙うかのように動かしていたが止めてしまうと何でもない人形へと成り果てる。何が込められているのか、そんな所だろう。

 

しかし、何かが可笑しかった。元からやる気のないように感じる。そしてこちらへ攻撃を仕掛ける気がないようにも思える。これは、僕は思った時には少し遅かった。

 

僕の目の前で爆発が起こる。とても規模は小さいものだが、致命傷を与えるのには丁度いいくらいなのだろう。僕はそれをまともに受けた。

 

が、ただやられる訳でもない。双剣で放った一撃は思わぬところに当たった。ケプリさんは両手の甲を隠している。その隙間からは少しだけ赤色の液体が見えていた。

 

僕は地面の寝転がりながら変な疲れに襲われていた時だった。何か実感のない疲れと言うのか、初めて行う仕事の時のように思える。

 

「これはどういう事だ。」

 

「これが僕が磨き出した答えです。」

 

「届かなければ飛ばせば良い、着想は悪くない。その手もあるのか。」

 

「ということはケプリさんはその為に人形使い方をしているのですか?」

 

「まぁ、そうだ。」

 

「お互い大変なんですね。」

 

「色々とあるものだ。いや、それは良い。今日は引き分けで終わらせよう。なんとなくここで戦っているわけにもいかないだろう。」

 

「何か予感があるのですね。」

 

「アリスの紅茶を飲んでから帰るといい。美味しいぞ。」

僕の事については何も答えなかった。真剣勝負を好むケプリさんには見透かされたらしい。

 

「折角なので、頂きます。」

 

「そうか。」

ケプリさんとはいつも勝負を行なっている。偶に森の中であっては地理の理を使って勝ち、お互いが相手の場所を訪れる時でもどちらかの訓練場で手合わせ。目があったら街でも手合わせ。傍迷惑な事はしたが今まで直接迷惑かけた事はなかった。僕としてはそれが何となく楽しいものだった。お父さんとは一方的なイジメになりやすい。

 

淡い赤色をしている紅茶の入ったティーカップと簡単な茶菓子を食べながらお互い何をしていたのか話し合う事にした。

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