悠久の時を過ごした僕は帰路につく事にした。別にアリスさんの家に居るのは構わないのだが、いつまでも居るわけにはいかないと言う自分なりの気遣いとそろそろ夕暮れ時になったから、というものだ。それと紅魔館の人たちにはどれだけの迷惑をかけているのかは全くと言って検討がつかない。だからこそ、早めに舞さんと里乃さんを帰らせてはみたがそちらの方が悪手だったような気がする。
要は早く帰りたくなった、と言うことだ。アリスさんに一礼して感謝の言葉を述べつつ、ケプリさんの次は全力で、という言葉には何も言い返せなかった僕は踵を返して怪しい雰囲気のある魔法の森なる場所を抜けることにした。
夕暮れ時とあり、段々と帰り支度をし始めた妖精のメイドが空で慌てている頃、僕はその下を悠々と歩いていた。と言うよりかは何となく帰れると言う安堵から来た疲労感で思うように足が進まなかっただけだ。
赤色の光を浴びながら、落ちていく夕日を見て何となく燃え尽きたような喪失感を感じた。理由なんてものは何もなく、何か心の中で引っかかるものがあり、どうしても取れなさそうだと感じた時にはもう遅かったような気がする。意識は朦朧としていて霧の湖を歩いていたはずの僕だが、その自信さえも無くなりかけていた。
何か嫌なものが来ているような気はしたが、だからこそ逃げたくもあった。それがどのような作用があるのか、何も分かったものではない。
「お帰りなさい、ヒカルさん。」
僕は誰かに話しかけられた。視界もぼやけている僕にとってそれが誰であるのかは分からなかった。しかし、身を預けても問題ないような気がして僕は前へと体を傾けてそのまま意識を閉ざすことにした。
「どこに行かれていたのですか。」
美鈴は背中に背負っている少年に聞いていた。しかし、返事なんてものはなかった。首に両腕を巻いてお互いを掴み合い、落ちないようにしている。だが、脚は美鈴さんに預けている。まるで親子のような姿をしている二人なのだが赤の他人ではある、知り合いではあるが。
「まぁ、あとで聞くことにしましょう。」
美鈴さんは半ば諦めた様子で霧の湖のほとりを歩いていた。妖精ならこの様子を見て何か一言くらい言ってきそうな気もするが今の時間帯は帰る事に忙しいらしく何も言われるようなことはなかった。
「咲夜さんもレミリアさんも心配しているんですから。」
「あともう少しで紅魔館に着きますので。」
「そこでゆっくりと体を休めてください。」
美鈴には背中に当たる感触で少年がどのようになっているのかが分かるようだ。
美鈴は紅魔館へと向かうべく、霧の湖のほとりを蹴って浮き上がると悠々と湖を超えていた。その時にその身で切る風によって赤色の夕日と同じような髪が遊ばれていた。