妖怪の山の頂上、少し前に幻想郷の外から現れたそれは今でこそ定着している。そこそこの人気のある場所であり、今でも参拝客は絶えない。
大体の目当ては神様と直接話して触れることができる点にあるだろう。そして威厳というのも何も出さずに気さくに話を聞いてくれたりするのもポイントが高い。
「神奈子様、伝えたい事が。」
先程山の麓で見た金属製の蜘蛛が妖怪の山の植物を枯らしていることを伝えた哨戒天狗。
それを聞いて神奈子様、と呼ばれた注連縄を背中にそして腕や腰、足首にまで付けている紫色のショートヘアーをしている赤い服装をしている人に伝えた。
「よし、分かった。一回、紫に話してみる。引き続き、動きがあるまで監視を続けていてくれ。」
「はい。」
哨戒天狗はその言葉を述べてすぐにその場から居なくなった。それは参拝客を押しのけるような程だったがそのざわつきは神奈子が止めた。
「早苗、少し相手にしていてくれ。詳しくは後で話す。」
「はい、分かりました。」
緑色の髪をしている元気そうな少女が答える。
「紫、少し話したいことがある。」
踵を返して神殿の中へと入っていく神奈子と交代するように参拝客の相手を始めた早苗は一種の不安を覚えながら目の前のことに集中していた。
「何よ?」
「妖怪の山で何やら異変が起きている。異界からの襲撃かもしれない。」
「もしかしてまた現れたの?分かったわ、霊夢に向かわせてみるわ。いつも通りでお願いね。」
「了解した。」
神奈子は其処で言葉を失くす。そして紫はその場から居なくなった。
一方、その頃ヒカルは妖怪の山の麓に来ていた。本人は全くそのことには気づいていないが南西の辺りに付いていた。其処らへんは土地が平らに等しいのであまり山として認識している人は少ない。それがこれから初めて来る人からすれば余計にそう感じる。
「一体、此処は何でしょうか?」
薄暗い森という印象ではなく、岩場のような場所で山という印象は全く受けない。だが、多分山なのだろう。周りには視界の通らないほどの密度の木が生えている。
「と言うか、此処はどこだろうか。」
「いや、そもそも僕が来て良いところなのか。」
僕はふと考えてしまった。そして大きな音がしている。それは一定間隔でペタン、と言う尻餅をついた時に出る効果音のような音がしている。だけど少し軽い音だと思う。
僕は取り敢えず気になるので少しずつ見てみる事にした。その為には音に近づくように耳を澄ませて音がどこから出てるか予測を付けてから足を動かすことにした。
よく考えてみればそれをしてみても良いだろうか。何となく僕はその事を考えると足を止めて何処かへ向かった方がいいと思えた。
いや、しかし興味という甘そうな果実に手を伸ばしてみたいと思うのは人間なら分かってもらえるはず。
僕はもう気になるので歩いて気付かれないようにペタン、ペタン、と音の鳴っている方へと向かってみることにした。
といっても歩いて何秒か、と言うよりかは視界の通し方を変えてみると案外簡単に見えてしまった。
その場所には青色の巻き髪をしている髪型で頭の上には白いウサギの耳をしている。薄い青色の服装でスカートの部分には透明なレースが施されている。金色で星や月のマークが付いているがその意味合いは特に分からない。そして大きな樫で杵の中にあるものを叩いていた。その時にやっと謎の音の正体が分かった。兎に角話しかけてみることにした。
「何しているんですか?」
僕はついに話しかけた、いや話しかけてしまったの方が合っているだろうか。
「餅つきだよ。もしかして知らないのかな?」
その人は少し口を隠しながら僕に向かって指をさして小馬鹿にしてきた。しかし、此処で強気に出ても仕方ない。
「はい、知りません。なので色々と教えて欲しいです。」
「え?そうなの。分かったよ。この私が教えてあげるよ。」
その人は胸を叩いて私に付いてこい、と言っているかのような行動を起こした。僕は特にそのことについては何も言わない。
「名前を言っていませんでした。僕はヒカルと言います。」
「私は清蘭。好きに呼んでくれていいよ。」
清蘭さんはちゃんと僕に対して名前を教えてくれた。それだけでも十分である。
「清蘭さん、早速始めましょう。」
僕は元気に言ったところで精蘭さんが樫を振り上げると杵の中に入っている白いものを打っていた。僕はじっとその様子を見ていた。