僕は一路、三途の河の近くまで急いだ。その道の途中の出店は全て無視していた。吹き飛ばすような勢いで僕は走っていたのだと思う。でも、これでお父さんに勝てるならもう何だっていい。僕はこの身を売ってでも勝てるのならば使ってやるつもりだ。動物霊というものだったがどのような姿をしているのか、そもそも僕に見えるのだろうかという事を少しだけ真剣に考えていたが辞めた。何故か考えるだけ無駄な気がした。
三途の川のその手前、賽の河原と呼ばれているらしいこの場所で一人倒れていた。僕がここに来た時にはもう手遅れであるらしく、その場で倒れていた。全身が真っ白ので腰の短めな袖の先にはピンク色に近い赤色のリボンが取り付けられている。腰にはピンク色の布を巻きつけている。上下が一体となっているスカート部分の裾には淡いピンク色で点々が付けられている。髪は白く、セミロングぐらいの長さで二房に分けられている。姿からしてここで何かをしているとは思うのだが、どうしてここにいるのかはさっぱりだった。
「大丈夫ですか?」
僕はつい心配になって話しかけてしまった。反応がなければ僕はどうしようか、なんて事を考えたがそれは杞憂であった。
「ん?あ、お前も暴れに来たのか?」
「いえ、別にそのつもりはないですが。」
僕はその人が話しかけてきた事については特に何か言えるような気はしなかった。それこそ何が起こるのかさっぱりである。
「あ、そう。なんかそんな気はするね。私は戎 瓔花。」
その人は明るく答えてくれたのだがどうして、ここで伸びていたのかはしっかりと聞いておきたかった。
「そうですか。僕はヒカルです。えっと、なんか動物霊なるものが来ているという話を聞いたのですが、この先ですか?」
「まぁ、そうだけど。ただで通すわけには行かない。この先には地獄という場所がある。そこで何とか出来るのか、試す必要がある。決してお前を追い返したいという気は一応あるが、その身が無事であるかを心配したい。」
「うーん、地獄ですか。とても危険な場所ですね。」
「そうだね。人間の君にはとても何とも出来ないと思うよ。」
「そうなんですか、ちょっと残念です。」
「ん?何か落ち込んでいるけど何か地獄に思い入れがあるのかな?」
「いえ、あまりないとは思うんですけど。」
ヘカーティア・ラピズラズリ。僕はその名前が脳裏から蘇ってきた。
「動物霊の力を貸して貰いたくて。どうしても倒したい人が居るんです。」
「それは応援したいけど、そんなに憎んでいる人なのか?それなら強引にでも追い返したいよ。」
「いえ、そんな事はないですよ。超えたい壁と言いますか。まぁ、そんな所です。」
「それなら仕方ないね。行ってみなよ。面白そうだ。」
その人は僕に地獄までの行き方を教えてくれた。だが、そこまで難解なものでもなさそう、と僕は思った。
「ほう、ここがお前から話を聞いた幻想郷か。」
一人の男が観光気分で現れたこの場所。この人を連れ出したのは言うまでもなくその隣の人だった。
「そうだ。」
後ろで一つに結んだ黒い髪とかきあげただけの前髪をしている。鋭くないが一応吊り上っている目つきをしている。灰色の着物を着てまるで観光気分で来ている。
「息子も先に行ってしまったが何処にいるのだろうか。」
「俺は特に心配していない。貴方も親ならどん、と構えてみたらどうだ。」
「あまり挙動に不審な点があると不安にさせるだろうからな。しかし、そこまで信じているのも素晴らしいものだ。」
「そんな魂ではない。さて、三途の川にでも言ってみようか。」
「そこはどういう場所だ。」
「あの世とこの世をつないでいる場所だ。」
「趣味の悪い紹介の仕方をしてくれる。」
「そうか。」
ちょっと面白おかしく言っている黒髪の男は自分の足で歩いて向かっていた。