第62話
地獄というのはそうおっかない場所でもない。歓迎ムードの服装をしている人も居るわけだし、もしかしたら意外と良い場所なのかもしれない。その予想は当たっていたような気もするがそうでもないような気はしている。
言わば、地獄としての形相はしているもの今いる場所は入り口なだけで深淵を覗き込もうとしている前の段階なのかもしれない。ここからが本番と言うのなら、それは仕方ないと思う。
まさに三途の河の岸、ここから地獄へと入っていく門の前へと近づいていく。
そこには一人、誰かが立っていた。その人は朱色のワンピースのようなものを着ていて裾には大小の丸が交互にさせている一本の帯のように巻きついている模様をしている。頭にはトサカのような赤い髪のようなものとクリーム色に近いと思うセミショートの髪型をしている。目は服の色に近いと思う。
「地獄へ行こうとしている者ですね。閻魔様からは話は聞いています。貴方の腕を試しなさいってね。」
「いや、待ってくださいよ。どういう意味ですか?」
「それだけ危険な場所なのよ。」
背後に生えている髪と同じ色をした羽を羽ばたかせていた。そしてそれが戦闘体勢であることを感じて、僕はすぐに剣の柄を握る事にした。
「まさかこうなるとは。僕には島獄に行きたい理由があります。ここで倒せば文句はありませんか?」
「血気盛んな若者だね。確かに閻魔様は通してもいいと言っていますが、私はそんな残酷なことは好みません。なので、ここで大人しく帰ることをお勧めします。」
その人は僕の頭上に飛び上がりながら黄色をした弾幕を張っていた。前に見たことのある中ではソコソコの量はあるものの、速さも不十分なもので何処か物足りないと思うにはとても容易いと思う。それだけ何とも思えないほどに僕の心は荒んでいたのかもしれない。あとで考えればそう思う。
「それなら自力で帰してみてください。それぽどの絶望をこの僕に見てください。」
「良いですよ。頑張りますので。」
その人の弾幕は段々と近づいてくる。そう思っている時点で僕はどれだけ余裕があるのかは言うまでもなかった。素早く抜いた剣で斬波を作り出す。そして鞘の中に納めた。
「何という判断力。しかも一撃で。分かりました。それほどの実力と覚悟があるのならば、もう止めません。業火に焼かれようとも、針のむしろに叩きつけられようとも、私は何もしません。」
「望むところです。それぐらいで済むのなら、また這い上がります。」
「そうそう、一つ忠告があるよ。貴方はまだ死ぬは惜しい人間です。どうか気をつけてください。」
「はい、分かりました。」
僕の言葉に萎縮しているその人は何処か小動物のようにも思えた。それがどうしても可愛らしいというわけではないが、あまり危害を加えようとはとても思えない。それにしても僕のどこに恐怖を覚えたのか。それを僕は考えながら地獄へと入り込んだ。