あれから僕は永遠亭で朝食を食べていた。和食というものでご飯と豆腐の入った味噌汁、様々な野菜の漬物。味、というほどのものはないがほのかに漂う香りを楽しむものなのだろうと思った。僕の舌にはまだ合わないようだが、それでも良いのだろう。異色とはこういうものなのだから。
そして、僕は永琳さんは鈴仙さんに別れを告げた後、幻想郷の西側にある建物のところへと向かっていた。その場所は霧に囲まれた場所で目の前には大きな湖のある場所。その中の孤島に立つ聞くからに怪しいところだ。其処の主人は見た目は子供だが、年齢は遥かに僕よりも上である。ある種の帰還報告というのか、そのつもりで来ていた。
「帰るのが遅くなりました」
緑色のチャイナドレスを身に纏い、赤色の髪を丸みのある帽子から溢れているその人は門番である美鈴さんである。彼女は睡眠をとりながらも周りに意識を向けることができ、敵意などを察知して瞬時に対応する。どうやら能力のおかげであるらしい。
「良いですよ。私は気にしていませんので。さぁ、中へ入ってください。咲夜さんが紅茶を用意してくれると思いますよ」
この通り、優しい口調で度量のあるどうして人の下につくのかは分からない人物だが、その事は口出しは僕はしにくい。
「そうだと良いんですけど」
軽く受け流してその場は抜けることにした。
○
「お帰りなさい」
銀髪の青色を基調とした服装をしている白色のカチューシャと前掛けを腰のあたりに巻いている。黒色のヒールを履き、太ももにはナイフを持っている。
「咲夜さん、久しぶりです」
「無事で何よりよ。お嬢様の元へ向かいなさい。私が後で色々と持っていくわ」
妙に優しいような気がするがそれがどうという事はなく、僕はそのまま三階へと向かった。玄関を開けた先に広がるエントランスにある螺旋階段を右側に進み、少しだけ歩いたところに細い階段がある。どうやら偶に賊が入り込むらしいのでこのように準備しているらしい。
僕は場所を知っているのでサラリ、と戸を開けて階段を登ることにした。
窓のない暗い廊下をろうそくがこぼす光を頼りに歩いていくこと部屋が10個分。僕は其処の扉を三回叩いた。そうすると、中から幼い声で入室を許可する声がしたので扉を開けて中に入ることにした。本来なら高貴な種族であり、夜の帝王という二つ名がある程だがある程度こちらに合わせるために昼間に起きている、らしい。
「よく戻ってきたわね。さぁ、座りなさい」
そう勧めてきた短めの青髮を白色のナイトキャップの中に入れている薄いピンク色のドレスを着た少女がそのように言った。背中には黒い翼があり、吸血鬼という種族を特徴づけていた。
「何か変じゃないですか?」
素朴に思ったのだが、とてもその事が気になった。
「何もおかしな所はないと思うけれど」
「本当にそうですか?」
「ええ。気にすることは、まぁないわ。それよりも貴方は何か霊にあやかる事は出来たのかしら?」
「いえ、全くですね」
「そうでしょうね。私の能力でそれは見えていたわ」
「それならどうして、向かわせたのですか?」
「それは決まっているじゃない。旅をさせたかったのよ。いろんな意味でね」
紅魔館と呼ばれれるこの館の主人であるレミリア・スカーレットはそのように軽く言うのだが、それがどうしても不思議で仕方がなかった。
「それで成功したんですか?」
レミリアさんの妄言はそこそこにして僕は今回の件をどのように捉えているのか聞いてみることにした。然程何かあるとは思っていないがそれでも気になるものはある。
「大成功よ。無事に帰ってきたじゃない」
「そうですか」
「それとね、実は父親がこの場所に訪れたわ」
「どうして?」
「久しぶりに来たから挨拶回りと誰かを案内していたわ。白い肌の私に似た種族の人のようだったわね」
「そうですか。それで何か言っていましたか?」
「私のことを弱虫な主人と紹介されたわ。それと元気に過ごせているかとか、他愛もない事よ」
「本当にそれだけなんですか?」
「いいえ。貴方を探しているらしいわ。あまりにもやりすぎた、と言っていたけど何があったのかしら」
「あの人に背中を貫かれています。それと地獄の女神との戦いに干渉されました」
「前者は聞いていたわ。相当苦しめられたようね。それでも後者は貴方の主観でしか物言いはしていないのかしら」
「邪魔されたのは事実ですよ」
「そうね、事実だと思うわ。それでも他者から見たらどちらが正義だと思うかしら」
「それは一体どういう意味ですか?」
レミリアさんの言いたい事が理解出来なかった僕は少し体を起こして聞いていた。その意味としては本当に何なのか。
「まだ理解できないのも仕方がないわ。ゆっくりと時間をかけて理解するといいわ」
「それで、僕の事は何か言っていましたか?」
「背中の事しか言っていなかったわ。不器用な人よね」
「僕にはまだ分かりません」
「そう。今日はもう話す事はないわね。退室するのもいいし、まだ話し足りないなら私が相手するわよ」
レミリさんはそのようにきっと好意で言ってくれたのだろうが僕にはどうしても素直に受け取ることはできなかった。
僕は別に、とだけ言い残してこの場から立ち去ることにした。