静かな風の流れる竹林の中、それを断ち切るように走っていた。咲夜さんを背負いながら走っていくのは結構辛いものがあるがそれを言うものではないとは思っている。
それほどに一大事というものであり、その為に僕は走っていた。礼などを欠いて僕は永遠亭へと入り込んだ。ここは誰もが来る事ができる場所ではあるが毎日のように通う訳ではない。
よくお世話になっているので何となくそんな気がするだけだ。
「どうしたのよ?」
ほとんど音もなく襖を開けたのは医者だった。この永遠亭で凄腕の医師としてその名を馳せていたら良かったほど。個人的な理由もあり、あまりそのようなことはしていないそうだ。
「実は咲夜さんが倒れていまして。原因が分からないんです」
「分かったわ、早く連れて来なさい」
永琳さんは軽く手を上げただけでその場で踵を返して中に入った。襖は開けたままで何かの準備をしているようだった。僕は咲夜さんをここまで連れてきた疲労感はあったがその部屋まで中庭を通り預ける事にした。その時に首筋だけが赤い事を伝えて自分から襖を閉める事にした。見ていいのかと言われるとそういう事ではないと思う。夢はあるけど。
塀の外には竹林が広がっていて何も、誰もいないことを示していた。大きな池には赤く塗られた橋があり、少しだけ気晴らしを行うこともできそうな気もする優雅な空間が作られていた。見たことはないのだが、池の中には鯉なんかが住んでいるのだろう。
何かやる事がないというのはとても気になった。別に紅魔館に向かっても良いのだが、今のところは咲夜さんのことが何かと心配になる。帰るに帰れないという感じになっていた。僕は立ち上がって永琳さんのいる襖を優しくはないが壊すようなほどではない強さで叩いた。
「話を聞いて欲しいんですが良いですか?」
僕は聞いた、そうやって多分邪魔しているのだろう、と思いながら聞いた。
「ええ、どうぞ」
返答は意外にもあっさりとしたものだった。それだけに僕は呆気にとられた。お父さんに鍛えられているのかもしれない。
「紅魔館に行きたいんですが任せていいですか?」
僕はそうやって襖を一枚挟んで聞いた。返答はあっさりとしたものだと思ったが違った。
「それは辞めなさい。鈴仙が後で戻ってくるから二人で行きなさい」
怪訝とした表情だった。僕としては一言伝えたかっただけなので何か問題があったのかと思っている。永琳さんの表情は安堵と緊張の二つを持ち合わせていた。
「それは如何してですか?」
「多分失血による意識の朦朧、と気絶……。何だけど首筋に二本の刺し傷があるわ。それは丁度口の大きさと変わらないわ」
態とらしく永琳さんは此処で言葉を止めた。咲夜さんはこの部屋の寝床で横になっている。そして近くには赤い液体の入っている何かがあり、管に繋がれて咲夜さんに流れていた。血、なのだろうがそれで良いのだろうか。
「口の大きさ、という事が誰かに噛まれたのですか?」
「そう考えるのが正しいと思うわ。それは誰なのか分かっていないのだけどね」
永琳さんはとてもよく頭が回るらしく、そこまで辿り着いているようだった。ただ、僕には誰かから血を啜る必要があると思う人は二人いる。レミリアさんとフランさん。彼女は吸血鬼であり、血を欲する種族だと認知している。だが、レミリアさんは大量の血は飲めないので少量を紅茶に溶かしていると聞いている。フランさんは如何なのだろうか。あまり分かっていない。それ以外に誰かと言われると誰も思いつかない。
「僕にも心当たりはありません。血を飲めない人といらなさそうな人は知っていますが」
「私もそうだと思ったけどあの姉妹にそれは要らないわ」
どういう意味なのかは分からないが永琳さんは知っているらしい。
「まず、状況を確認してもいいかしら。紅魔館に争ったような様子はあった?」
「特に紅魔館にはそのようなものはないと思いますけど。一階しか見ていないので判断は難しいです」
「倒れていたのは二階なのよね。私も行って様子を見たいけど戦闘は苦手なのよ。鈴仙が帰り次第、貴方と一緒に向かわせるわ」
「頼もしいですね」
僕はそう言って永琳さんは苦笑してする部分が回転する椅子から離れて咲夜さんの顔色を伺っているところで話は終わった。実際のところ、何が絡んでくるのだろうか。僕にはさっぱりだ。