妖怪の山と呼ばれているらしいこの山の西側、そこにはひっそりと存在を隠すようにされていた小さめな湖がある。その場所にまたひっそりとした基地のようなそうでも無いような建物が建っていた。
その場所ではどうやら異変と呼ばれるものが起こっている最前線らしく初めて会った時とはまた違う表情を見せている霊夢は血眼になりながら探していた。その結果としてオンボロと言っても過言では無い秘密基地らしい場所へとたどり着いたというわけである。
「此処が月の兎の基地なのね。」
霊夢が言う。僕には分かるが何か嫌なことが起ころうとしているのは明白であるので半ば楽しみつつ、少し警戒してみることにした。後少しは好奇心というものである。
「お待ちしていました。清蘭から話は聞いてるよ。面白い奴が居たって聞いたけど、何処で見覚えのあるわね。」
橙色の服装をしている少女でハンチング帽を被っているブロンズのボブカットの髪型をしている。ズボンは黄色と白色のストライプのある少し膨らんだパンプキンのような形で靴は履いていない。清蘭さん同様にウサギの耳がある。
「アンタら、なんて知らないわよ。」
知り合いなのかと思ってみたがそうでもないらしい。それとも交友関係が広くて忘れてしまったのか。博麗の巫女というのは知らないがきっと偉大な存在であることには間違いないと僕は考えた。
「昔、月の都に来たことあるでしょ?」
月に都がある、という事自体知らないのにそこに言ったことがあるなんて聞くとは思わなかった。色々と聞きたいことはあるが今は抑えておく。
「ま、まあね。」
「月に都なんてあるんですね。行ってみたいです。」
軽い気持ち、ということではないが聞きたいという欲求が勝ってしまった。
「月の兎にはあまり馴染みはないけどそこそこ栄えていたよ。」
「へぇ。そうなんですね。勉強になります。」
「と言うわけで手加減なしで遊ぼうよ。月の流儀に度肝を抜くと良いよ。」
僕には何がなんだかは分からなかった。しかし、霊夢の近くに居るものとしては先頭というのは避けて通ることはできなかった。
真っ赤なベリー類の色をしたものとそれを白くさせたものが宙に浮き始めた。緑色なら見たことはあるがこれが何かは全く分からなかった。
しばらくして螺旋状に浮き上がった後、僕たちの元へと向かってきた。そこまで弾の速度は速いわけではないが面倒であることには変わりない。
僕には状況が全く分からないが取り敢えず避けておいてこの場から離れることにした。生憎というか、木で囲まれた場所なので何となく事が終わるまでは隠れておくことにしたが少しだけ気になるので頭だけは出した。
「遊びなんて見くびられたものね。」
何処かしらか出してきた赤い札を手の中に持ってそれを相手へと投げつけた霊夢さん。それに対抗するように相手も先ほどの弾を発生させていた。不思議な力によって生み出されたとしか思えないがあまりにも平然に使うのでどう反応を示したらいいのかは全く分からない。けど、これも試練なのだろう、と僕は感じ取ることにした。そうでもしないと劣等感に苛まれる。
「勝っても負けても関係ないからね。遊んでくれたらそれでいいよ。」
と相手は言っている。清蘭さんがテレパシーで伝えた相手であるのは確か。それと月の兎で月の都から来たというのは聞いたがそれ以外のことは何も分からなかった。僕は静かに木と同化しているしかなかった。
「どういう意味かはこれが終わったら聞いてあげるわ。」
会話をしている、そのはずだが僕は違和感を感じざるを得なかった。その間にも戦闘の流れが刻一刻と変わり続けている。どちらもさほど変わりはないが断続的な霊夢の札と相手の継続的な弾がいい感じに噛み合っているというのは言える。まだ本領は発揮していないのだろう。霊夢さんを期待して僕はそう感じることにした。
赤色の弾を出していた相手が今度は透明に近い白色の弾を出し始めた。それは満月のようなもので円形をしているまとまりのある動きをしている。そこから散りばめられたようにカラフルな色弾がある撃ち出されている。その比は先ほどのものではない。しかし、札の投げる量と速度を速めた霊夢さんの前には特に意味をなすものではなかった。当たる前にすり抜けるように交差した札が相手の元へと近寄っていく。それは影から襲いかかってくる凶刃のようで見ていた僕が冷や汗をかいた。何もかもが霊夢さんの前では無意味にも感じる。僕はそう感じたときにはもう終わっていた。
「終わったんですかね?」
僕はひょっこりと顔を出していた状態のまま、霊夢さんに聞いてみることにした。
「いいえ、まだでしょうね。」
霊夢さんは僕のことは見てくれなかった。戦闘中に振り向いてくれるほど警戒心の薄い人とも思っていないのでそのことは特に気にしない。
「後一つだけ見ていってよ。」
目の前に立っていたその人はカラフルな弾を周りに広げていた。それは異常な量で点滅しているかのように目では追えない量だった。それでも霊夢さんは果敢に挑戦していた。きっと何も考えていない、と言うことではなく、感覚でここまで来たのだろう。
「頑張ってくださいね。」
僕は霊夢さんに一言かけて、元いた位置に戻った。きっとお父さんには小心者と笑われるのだろうが深く考えるのは辞めてここでは様子を見ておくことにした。しかし、お父さんよりかはまだ優しいような気はする。きっと毒されているのだろう。
案の定、返答が返ってくることはなかった。別にそれでも構わない。霊夢さんは目の前のことに集中している。相手のカラフルな何か分からない弾を避けながら自分の得手であろう札を投げつけて応戦している。まだ知らないことはたくさんあるのでまた後で聞いていることにしよう。
僕が見ている限りでは、まだ余力を残しているように感じる霊夢さんは左右から包むこむように札を展開、そして行動範囲を狭ばめて動きを取れづらくなるように軌道を変えていた。ここで本領発揮、と思ったが少し笑みをこぼして遊んでいる、と感じるのは僕だけだろうか。
「少しは手加減してほしいものね。」
どうやら終わったらしい。なんだかんだ、圧倒していた霊夢さんの勝ちでこの遊びは幕を閉じた。
「ああ、地上にもかなり強い奴がいたもんだ。こっちには食べ物も沢山あるし、生まれたかったね。」
その人は少し諦めたように言っているが健闘していたので別に落ち込む必要もないのかもしれないと思った。
「結局のところ、状況がまだつかめていないのよね。」
「我々は幻想郷の浄化に来ただけだから何も知らないよ。行って判断してみるといいよ、月の都。」
「どうやって?」
僕は何故か口から出たその言葉を止めることができずにいた。とうしてなのかは理由を自分が聞きたい。
「通路があるのよ。そこから行けるわ。」
平然と答えた霊夢さんは堂々とした態度で僕の前で立っていた。
「そんな簡単に行けるんですね。」
「で、来るの?来ないの?」
霊夢さんが語気を強めて言ってくるので僕は少しだけたじろぎながらも行く、と伝えた。かくしてよく分からない世界で事件に巻き込まれた僕はひょんな事から次へと向かうことになったのだが正直なところよく分からないうちに事が進んでいく。