早朝、もう日は出ていた頃、急遽として幻想郷の管理者はある場所へと訪れた。草木も眠っているようなそんな時間に訪れた場所、それは幻想郷の最東端に位置する神社の巫女に話があるからだ。
そこに居るのは代々、幻想郷の管理者と共にあらゆる厄災から守ってきた巫女が居る。ただし、弾幕ルールが採用されてからその殺し合いでの実力というのは落ちてきているのは言うまでもない。
「おはよう、霊夢。よく眠れたかしら?」
紫色のドレス、カールのかかった金色の髪を白色のふわりとした帽子から覗かせている。口元を金色の扇子で隠して空中の異空間から上半身だけを出していた。
「アンタが来るまでは目覚めは良かったわ」
赤色の服装、黒色の髪を後ろで結んでいる赤いリボンをつけている少女、博麗 霊夢は不機嫌そうにその人を睨みつけた。
「それは悪かったわね」
控えめに笑っている姿には上品さも感じられる。ただし、此処では蔑んでいるようにしか見えなかった。
「そう思うなら来ないことね」
「そう言わないの。今日はね、幻想郷に凶悪な侵入者が現れたわ。紅魔館もやられたそうよ」
その言葉に霊夢は眉を上げた。元々妖怪退治を生業としている彼女はそう言う話にはすぐに食い付く。そして動けばかなりの活躍をする。それまでは何もしない。ただ、今回は管理者直々に頼み込むほどの有事であるらしく霊夢も少しばかりは構えていた。
「そんな奴が入ってきていたなんて。知らなかったわね。それで紅魔館はどんな様子なの?」
「咲夜、レミリア、パチュリーがやられたそうよ。それと紅魔館内部はかなり綺麗だったわ。それも血飛沫ひとつ上がっていないそうよ」
「それは随分と強そうね」
霊夢は神社の隅にある小屋の縁側に座り込みながら無愛想に答えた。実際は少しだけ悩んでいる。思っていたような事ではないが幻想郷の危機であることは変わりなさそうだった。
「そうなの。だけど、目的が何か分かっていないわ」
「そう。取り敢えず軽く探してみましょうか」
霊夢は重い腰を上げた。そして武器である札とお祓い棒、これには何方にも神力がかかっていて妖怪は勿論、人間にも効果がある。
「そうして頂戴。私も今回は協力するわ」
「そんなこと言って、大丈夫よ」
霊夢の勘は当たる、それは本人も言っているが周りも少なからず認めている。仕方ないのだ、認めざる得ない状況が多過ぎる。
「気を付けてね。後ろには特に」
ある意味では怖い話である。
○
それから何刻か後、魔法の森でも動きはあった。久しく外に出る機会はなかったがそれでも生活を営んでいた二人。彼女らは人里で人形劇を行っている。その機会は一月に一回程度なのだがそれでも盛況のうちに終わる。今日もその予定だった。
金色の短い髪、青色の髪留め、青色のドレスを着ている人形のような見た目をした少女。その横で荷物を運ぶ白髪、白い顔をした細身の男。二人は今では人形の製作だけではない関係を築いている。
「さ、皆を喜ばせるわよ」
茶色のブーツを鳴らしながら元気満々に言い放った少女に少しだけ遅れをとる男性。やる気はあるのだが、少女のように分かりやすい訳ではなかった。そこは災いと言えようが彼女の前には関係なかった。
「少し抑えた方が良さそうね」
「そこは好きにしてくれ」
一見、無愛想に見える返事に金髪の少女は楽しそうに笑みをこぼして歩き出した。人形劇を行う二人のいつもの会話である。男性も決して任せている訳ではないが表ではまだ出てこれる程技術は磨かれていない。今はこうして、師匠とも呼べる人間に従うしかないようだ。
「それにしても今日は静かな気はするわ」
「不穏ではある」
「そう言う話で終わるとは思えないけれど」
「それは言葉の綾だろう」
「事実かもしれないわよ」
少女は心配そうに上目遣いで男性の方を向いていた。その蒼色の瞳は男性も目を背けるほど。その眼差しには魔性の魅惑があるのかもしれない。
「取り敢えず、今はやる事をやろう。その後で何か変わった事があればその時に対応するしかあるまい」
「そういう意見、流石よね」
「辞めろ、此方を見るな、アリス」
アリス・マーガトロイド。金髪の少女の名前だ。そんな彼女についていくのはケプリというある男性と同じく修行の身である。
「辞めないわよ、その顔好きだもの」
「毎回、君という者は。懲りずに言い続ける」
「まぁ、それよりもこの人里よね。何かに怯えているわよ」
楽しそうな表情から一転、険しい表情を見せた。今までは冗談だと言わんばかりのその言いぶりは流石にケプリも怖かった。確かにいつもと変わらない人里、なんていえる状況ではないがこの変わり様は最早別人である。
「もしかすると中止になりそうだな」
「やる気はないの?」
そのケプリの言葉に即座に反応したアリスはまたも上目遣いであった。単純に目を見て話そうとするとそれだけの身長差がある、だけなのだが。
「逆だ。だからこそ沢山の人に見て欲しい。それも楽しい、と思ってもらえるものにしたいと思っている」
「それで良いのよ。クヨクヨしているとこっちが不安になるわ」
「物は言いようだな」
取り敢えず二人は人形劇をやるようだが、皆は二人の知らない不安で押し潰されそうになっていた。大凡、太陽の出ている昼頃にこの感じではこの先が思いやられる。
言葉ではそう言いながらも二人の中では不安があった。そんな中、話しかけてきた人が居る。その人は人里で自警隊を組んでいる人で寺子屋で子供達に色々な基礎教養を教えている。名を上白沢 慧音。
「やっと見つけたぞ。お前が犯人だな」
身に覚えのない言われ方にその場で足が止まった二人は更なる慧音の追及を受けることになった。
「その白い肌、身長は違うが話は聞かせてもらおう」
「これは生まれつきだ。それに何か人に迷惑をかけた覚えはない」
「本当か?」
その疑いに疑いをかけたような目は二人を話してくれなさそうになかった。ケプリは目を使ってコンタクトを取るとアリスは仕方なさそうに顔を下に向けた。
「俺は隣にいるアリスと人形劇に向けて色々な準備をしていた。大体は行動を共にしている」
「それは本当なのか?」
「確かにそうよ。私があまり外に出ないのは知っているでしょう。まさか、顔が白いだけで疑うなんて正気を疑うわよ」
「確かにその通りだ。今日のところは帰った方がいい。私のように話しかけてくる人が何人居るか分かったものではない」
その言葉と事情を聞いた二人は仕方なく踵を返すことにした。ここまでの努力は水の泡になったが無意味に巫女によって退治されるよりかは幾分かマシだ。