IF日本国召喚~憲法改正後の日本が転移しました 作:RIM-156 SM-2ER
「・・・・・どれくらい残っているんだ・・・・」
ギムの町中を進むロウリア王国軍歩兵部隊約700。その指揮を臨時で取っているハーベルトは疲れた様子でそう言った。
圧倒的な数の暴力で配備数の少ないギムの町の南側からギムを奇襲攻撃し後方から敵部隊を叩くという作戦だった。ギム南方を守るのは200名以下の小部隊。敵の主力を誘引した状態で2万という大軍で攻め込めば多少の犠牲はあろうとも、ギムの町に侵攻できると考えていた。だが実際は2万の軍勢の内約3000名が戦死、敵は堅い箱のような物の中にこもってしまい、数名しか戦死していない。そんな思いをしてようやく突破できたのは約800名ほど。疲れるのも無理はなかった。
それに拍車をかけたのが先ほどから食料や金品を略奪し疲れた体に一息つかせようと民家を家探ししているのだが、扉を開いた瞬間謎の爆発が起こるということが多発し、最初は800いた兵士の内23名が死亡し、60名弱が怪我で戦闘不能となってしまっていた。
「くそっ!!たったの700か!」
ハーベルトは拳をギュッと握ると自分の太ももにたたきつける。
すると斥候に放っていた兵士が戻ってきた。
「隊長!!」
「どうだった?報告をしろ」
「はい。この先にございます広場に敵が陣地を展開しているのを確認いたしました」
敵――平たい箱の上にさらに棒の付いた箱のようなものが乗っており、棒の先端から強力な爆裂魔法や光弾が飛んでくる”あれ”を想像し、ハーベルトは冷や汗をかいた。あの何かが1体でもいれば、700程度の軍勢でどうにかできる相手ではないからだ。
「敵の陣容は?」
「はい。歩兵ばかりでござました。めぼしい武器というと短槍を構えておりました」
未知の兵器を持っている可能性はあるが、短槍が主武器であり、
もし被害が出ても、我が軍は今も着々と町に侵入している。その部隊の到着を待てば十分に対処可能だと思った。
だがハーベルトは未だに躊躇していた。何の
すると斥候が追加でこう報告した。
「広場には多数の住人がおりました・・・・。中にはよい女も混じっておりました」
ハーベルトは斥候の言葉を聞いてにやりといやらし笑みを浮かべた。
ロウリア王国軍に置いて占領地の女性へ対する性的暴行はよくある話だ。というか兵士たちは略奪によって得られる金品と強姦によって得られる快楽、そして一部の兵士は血を求めて戦っているといってもよい状況だ。ハーベルトもそんな兵士の一人。よい女性が混じっていると聞けば襲わない手はない。それどころか、顔の良い女を上官に差し出せば覚えめでたくもなるだろうと考えた。
「ご苦労だった。貴様も少し休め。10分後にココを出発する。それと兵士には”捕らえた女は好きにしてよい”と伝えておけ」
「はい」
斥候は隊の中に消えていった。
ハーベルトはいやらしい笑みを浮かべたまま空を見上げた。当初は被害が出るかもしれないと慎重だった彼はもうそこにはいなかった。敵が寡兵であり尚且つ装甲車がいないというだけで楽観視をし始めた。いや、それどころか守備隊のことなど頭に無かった。学のない彼は目の前にあるであろう快楽のことで頭がいっぱいだったのだ。
いや、彼だけではない。彼の指示を聞いたロウリア王国軍兵士全員が同じであったであろう。
――――――――
「押さないでください!荷物は最低限にしてスペースを確保してください!子どもがいる方は絶対に手を離さないでください!」
小銃を背負い迷彩服に身を包んだ憲兵の腕章をつけた兵士が大声でヘリに乗る避難民に呼びかける。
その間、不埒な人間や不審な人間がいないかどうか周りでは3個小隊約120名の歩兵が小銃を片手に警備している。
すると指揮を執っている憲兵小隊長の元に通信兵が駆け寄ってきた。
「小隊長!!司令部から連絡です!!」
慌てた様子の彼を見て憲兵小隊長は嫌な予感がした。
「どうしたんだ?」
「南方警戒隊が敵主力の総攻撃を受けた模様です!その際、何百人単位の敵兵が町に侵入したと!!」
「ッ・・・!ちょっと待て!西に総攻撃が来たんじゃないのか!?」
「それが、そちらは囮だったようだと」
憲兵小隊長は嫌な汗を垂らした。未だに3000人以上の住人の避難が完了していない。かなり広い広場であるココに避難を待つ住人を集め、ここから避難する住人を町の郊外に着陸するヘリまで誘導している。幸いにもこの広場は司令部がある領主館の近くにあり司令部との連絡が取りやすく、町の東端付近にあるためココからヘリの発着場まではあまり時間がかからず避難もスムーズに進んでいたが、町に敵兵が侵入した今、敵は領主館を目指してくるだろう。そうすれば領主館に隣接するこの広場にも敵が殺到してくるのは目に見えていた。
「まずい!!生田少尉に指示を出してくれ!!この広場に繋がっている道を全てふさげ!!それと司令部に連絡して3個歩兵小隊の増援を要請してくれ!ヘリ発着場とそこまでの道を死守する戦力が必要だ!憲兵隊は避難住民を護衛しつつヘリ発着場まで案内するんだ!!いそげ!!」
「はい!!」
通信兵はすぐさま背負い式の野戦通信機を使って連絡を取る。護衛の3個小隊は北、南、西のメインストリートにクレイモアを仕掛けると万が一に備えて用意してあった鉄条網を使ったバリケードを設置し、さらに土嚢を積み上げて機関銃や無反動砲を設置する。
「小隊長!!司令部より連絡!!増援として1個中型輸送中隊と2個歩兵小隊を送るそうです!」
「輸送とはいえ1個中隊もか!ありがたい」
輸送中隊といえども遊撃旅団の輸送大隊は危険な最前線までの物資運搬などが仕事であるため、小銃や対戦車火器、近SAMなどの火器も配備されており、本職の歩兵部隊ほどではないがある程度の戦闘はこなせるのだ。今回、司令部には予備戦力として1個歩兵中隊、2個歩兵小隊が残っていた。だが歩兵中隊は司令部防衛のため動かすことが出来ず、歩兵2個小隊しか増援として送ることが出来なかった。だがそこに避難民をエジェイまで避難させる地上部隊としてギム―エジェイ間を往復していた部隊の内、第3即応独立輸送大隊所属の1個輸送中隊が到着したのだ。
戦力不足にあえいでいた司令部は輸送中隊に避難民護衛任務を下命したのだ。
「輸送中隊はヘリ発着場及びこの広場からヘリ発着場までの道のりを警戒するように伝えてくれ!増援の2個歩兵小隊は避難民をヘリ発着場まで案内する時に護衛するんだ!!」
「了解!!」
通信兵と話している憲兵小隊長の元に凶報が舞い込んだ。
「岩崎少尉!!西から敵歩兵接近とのこと!!数およそ700!!」
司令部からの通信だった。小型ドローンで西からやってくる敵兵を発見したのだ。
「くっ・・・・!戦闘態勢だ!!以後の本隊の指揮権は生田歩兵小隊長に譲渡する!!」
憲兵小隊長は治安維持部隊長の自分では戦闘指揮は不可能だと判断し、3個歩兵小隊の小隊長の中で最も軍歴の長い小隊長に指揮権を譲渡した。
「了解!!憲兵小隊は分隊ごとに役割を分ける!!酒巻分隊は避難民の誘導!!清川分隊は北方を警戒し敵別働隊に注意!!下田分隊は南方を警戒しろ!!歩兵小隊は全て西方に向かえ!!敵別働隊が来たらその都度迎撃隊を送ることにする!以上」
その場にいた全員が歩兵小隊長の指示に従った。120名近い兵員は6列に分かれる。メインストリートといっても狭い道。全員を展開させるのは不可能だ。そのため部隊を伏せ撃ちの1列目と膝撃ちの2列目、そして無反動砲などを操作する3列目と、後詰の部隊に分けた。
「全員、白兵戦に備えて着け剣しておけ!!」
兵士たちは腰の銃剣を抜くと小銃の先に持っていく。カチンという小気味よい音を立て銃剣がセットされた。
アサルトライフルや機関銃のコッキングレバーが引かれ、無反動砲には榴弾が装填され発射の用意がされる。装甲車から取り外してきた躑弾銃の引き金に指が掛けられる。
兵士たちは敵兵の多さに不安になりながらも後ろにいる住人たちは守らなければならないと心を奮い立たせる。
すると曲がりくねった幅の広い道の向こうからガシャガシャという金属と金属がすれる音と多数の足音が聞こえてきた。
「き、きた・・・・・」
今回初めて戦闘を行う若い兵士が不安げにそうつぶやいた。そしてついにロウリア王国軍764名が姿を現した。
「「「「うぉおおおおおおおおお!!」」」」
槍を構え、勇ましい声とともに突撃してくるロウリア王国軍の歩兵。一瞬、余りの迫力に若い兵士たちは圧倒されてしまった。だが指揮を執る歩兵小隊長はそれに負けぬ迫力のある声で叫んだ。
「射撃開始!!!」
ついにギム防衛戦の中でも最後の戦いである「ギム領主館前広場攻防戦」の幕が切って落とされた。
いかがでしたでしょうか。
パ皇戦・・・・・いつになるんでしょう・・・。はやく行けるように頑張ります。
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ではまた次回さようならぁ
次回 第22話 ギム撤退戦(好転の兆し)
お楽しみに
日本が転移した時に海外にいた日本人はどうしよう?
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いつの間にか日本に現れている。
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取り残されてしまう。