予選からして10年以上に渡った大会は、数多の物語を生みながら、決勝戦を迎えたのであった。
批判などはなにとぞお手柔らかにお願いします……!
――戦国武闘会は、もう決勝だって?
――あぁ、シデン・ギャラクシーにグレイテスト・シーザー。サムライにナイト、それぞれの代表だ。互いの勢力の威信をかけた戦いになるだろうさ。
――なるほど。そりゃあやべえことになりそうだ。その時が楽しみだぜ。
――ははっ、違いねえ。
とある洞窟で、ひたすら剣戟の音が響いていた。
僅かな風切り音と共に襲いくる無数の凶弾を、二筋の光が弾いていく。
弾かれた凶弾は宙をまい、光を受けて輝きを放つ。さながらそれは、ひとつの芸術であった。
その背中に、声をかける者が1羽。
「シデンの旦那、例のクロスギアが完成したっピ。」
ギン、という音の響きを残し、剣舞が止まる。
音の主は背を向けながら、重々しく口を開いた。
「……そうか、遂にか。」
音の主、シデン・ギャラクシーは、その手に掴んだ双剣をゆっくりと納め、振り返った。
鍛冶場には、珍しく多くのサムライが集っていた。いつもは騒がしく、落ち着きのない者も居たが、今回は沈黙を保っていた。
その理由こそ、サムライ共の視線の先。
禍々しい黒い大剣であった。
「シデンの旦那が来たっピよ!道を開けるっピ!」
ルピアの一声がかかる。
サムライ共は押し合いながら道を開けていった。
出来たのは、黒剣へと繋がる一本道。
シデン・ギャラクシーは堂々とした足取りで剣に近づいていった。
「これは……。」
手に取った瞬間、ふと声が零れた。
剣にはとてつもない力があったのだ。宿敵を討ち果たして尚も余りある――世界を破壊しかねない程の力であった。
にわかに周囲が沸き立つなか、シデン・ギャラクシーは思考をめぐらせる。
(これでは……この世界もただでは済まぬぞ……)
(世界を壊してまでの勝利に、意味はあるのか…?)
剣はなおも、黒く輝いていた。
とある豪華絢爛な宮殿、その美しい中庭では、そこに似つかわしくない銃声が響いていた。
四方八方を舞う標的を銃口が追い、或いは追わずとも、曲がる凶弾によって撃ち抜かれてゆく。
逃したと思われた標的も、瞬きの間に剣閃が走る。
無数の標的が全て地に落ちた後、ナイトの筆頭、暗黒皇グレイテスト・シーザーは不満げに呟いた。
「……駄目だな。」
ーーこの程度ではヤツには及ばぬ。
グレイテスト・シーザーはそう考えていた。
ナイトとサムライ、互いに長年の宿敵である。
だからこそ、その力量は良く分かっていた。
いかにナイト筆頭としてのプライドがあるとはいえ、油断は許されぬのだ。
「シーザー皇。」
考えに頭を巡らせていたその時、不意に声がかかる。
「至高の魔銃が完成致しました。」
現状のシーザーにとって、何より待ちわびた報せであった。
「おお!遂にか!」
声をあげたシーザーは、その伝えを聞くなり、足早に中庭を後にした。
「これが……至高の魔銃か……」
豪奢な台座に飾られたそれは、その台座以上に、まばゆい輝きを放っていた。
銃というには余りにも異様な形状であった。
だが、黄金の身、立ち上るオーラ、そのどれもが至高の武器であると何より裏付けている。
「ーーフッ」
「間違いなく至高の銃だ。良くやった。」
「ありがたきお言葉。」
ーーこの銃ならば、ヤツなど敵ではない。
ーー待っていろ、シデン。
黄金は、妖しく輝いていた。
ーーーーそして時は、来た。
「さあさあさあさあ!どれほどのヤツがこの戦いを待ち望んだのか!」
「10年以上にも渡った第100回戦国武闘会。いまついにその最後!」
「最大の決戦、ついにその火蓋が切られようとしています!」
ーー会場が湧く。
サムライらの、勇ましい鬨の声。
ナイトらの、高らかな号砲の音。
その全てをその身に受けながら、向かい合う2つの影があった。
片割れは、サムライの代表。
神速の剣閃と無敵の防壁を併せ持つ、聖なる龍。
超聖龍シデン・ギャラクシー。
あと一方は、ナイトの代表。
必中の魔弾と鮮やかな剣技を併せ持つ、暗き龍。
暗黒皇グレイテスト・シーザー。
一方は、どこか思いつめた表情で。
一方は、不敵な笑みを浮かべて。
最後にして最大の戦いは、今まさに始まろうとしていた。
「それでは!第100回、戦国武闘会決勝戦を始めます!」
「3!」
ーー互いに、敵を見据える。
「2!」
ーー互いに、武器を構える。
「1!」
ーー掛け声と同時、シーザーの右手、その黄金が一瞬強く輝いた。
「ッ!拙い!」
「0!」
ーー眩い黄金が走った。
会場のあらゆるクリーチャーが、その眩さに咄嗟に目を閉じる。
ーーそして数瞬遅れ、空気を裂く轟音が、旋風を巻き起こし鳴り響いた。
「いったい何が起こったんだよ!」
「目がくらんで何も見えぬ!」
「飛ばされるッ!飛ばされるッピ!」
突然のことに、皆が皆とまどっていた。
だがその喧騒も、少しずつ収まっていく。
会場が静けさを取り戻した時、そこにあったのは……
大きくえぐれた地面。消失した会場の一角。
そして、その直線上、地平線まで続く空白であった。
「……避けたか。」
静けさの中、大空よりシデン・ギャラクシーが舞い降りた。
「シーザー……!今のは……!」
「ふん、我らがナイトの技術の粋よ。」
「世界を壊しかねんぞ!」
「そんなこと、知ったことか。」
「この凄まじい力を振るわんで何とする。力とは振るわれる為にあるものよ。」
また、銃口が輝いた。
「くそッ!」
生まれる新たな空白。パニック状態の会場。
この戦いはもはや、武闘会の様相を呈していなかった。
「フハハハハハハ!好いぞ!圧倒的なまでの力!これこそ我に相応しい!」
グレイテスト・シーザーは、全てに破壊を振りまき始めた。
幾つも走る黄金、鳴り止まぬ轟音、吹きやまぬ旋風。
その威力は恐ろしく、超獣世界全てを大きく揺さぶった。
「これでは、このままでは世界が崩壊するぞ!」
シデン・ギャラクシーは数多の黄金を避けながら、思考をめぐらせていた。
「アレを使うしか、無いのか……?」
思い浮かぶのは、禍々しき黒剣。
アレからは、あの黄金に勝るとも劣らないオーラを感じた。
「だが、しかし、この状態で振るうと世界が持たぬ……!それでは本末転倒だぞ……!!」
ーーしかし、このままという訳にも行かぬだろう。
突然、声が響いた。
「何…?」
巨躯が、風雲と共にその姿を現す。
「拙者はドルゲユキムラ。全てのシノビを統べる者よ。」
「なるほど、シノビのか。
だが、それでどうしろと言うのだ!」
「世界の崩壊を止める役目、我らシノビが仕ろう。」
「何だと!?そんな事をしたら……。」
「無論、承知の上也。元より我らシノビ、命をかけることに何の躊躇いもなし。」
「……そうか。ならば、任せていいんだな。」
ドルゲユキムラは静かに頷く。
シデン・ギャラクシーはそれを一瞥し、グレイテスト・シーザーの元へと飛び立った。
「フハハハハハハ!」
「止まらぬぞ!我こそが最強よ!」
シーザーは、未だ銃の乱射を続けていた。
止むことない圧倒的なエネルギーの前に、ついには空間が歪み、世界が悲鳴をあげ始める。
「シイイイィザアアアァ!!!」
そこに、弾丸を潜り抜けたシデンが飛び込んだ。
「シデンか!」
シーザーは銃撃を止め、ゆっくりとシデンへ向き直る。
「丁度いい。お前を葬ったそれを、我が最強を示す祝砲としようではないか!」
一際光が強く輝き、銃身にエネルギーが充填されていく。
今までの乱射ではない、溜めの一射。
溜められていくエネルギー量は、これまでの比ではなく。
その破壊力は、想像の外にあるだろう。
「だが、撃たせぬ。」
シデンは、禍々しい黒剣を抜刀した。
持つだけでも感じるそのエネルギーは、世界を壊すモノであると、改めて感じさせてくれる。
ーーシノビらよ、すまぬ。
この剣を振るう余波は、とてつもなく大きいだろう。歴戦のシノビとて、無事では済むまい。
だが、それでも。
「この剣は、振るわねばならぬ」
シデン・ギャラクシーは、黒剣を高く掲げた。
数多のナイトらが、グレイテスト・シーザーを守ろうと殺到してくる。が。
「ハアアァァァ!!」
世界を裂く斬撃の前では、何の障害にもなりはしなかった。
「まさか……この私が……!」
そう最後に遺し、グレイテスト・シーザーは消滅した。彼を守ろうとしたナイト共々。
「終わった……か。」
呆然と、立ち尽くす。
あれだけの力を振るったのにも関わらず
世界は、崩壊していなかった。
「ユキムラ殿、誠に、感謝致す……!」
第100回戦国武闘会
優勝者 「超聖龍シデン・ギャラクシー」
今ここに、永きに渡った戦いの、幕が降りた。