艦隊これくしょんー置いていく者、置いて行かれる者ー   作:きいこ

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ポケットモンスターソード・シールドの発売が楽しみです、新ポケモンやダイマックスなどの新要素も気になります。ダブルパック買って男の子と女の子でプレイする予定。


第3話「瑞鶴の場合3」

一切の光の存在も許されない暗闇の中を、瑞鶴はただひたすらに走っていた。

 

 

その暗闇はどこまでも果てしなく続いており、どこへ進んでいるのか、本当にどこかへ進んでいるのかという疑問を抱かせる。

 

 

なぜ自分はこんな所にいるのか、自分はどこへ向かおうとしているのか、そもそもなぜこんなに焦燥感に煽られて走っているのか、いくら考えても答えは出てこなかった。いや、とっくに出ているはずなのに脳がそれを認識することを拒んでいる…といった所だろうか。

 

 

「うわっ!?」

 

 

その時、瑞鶴は何かに足を取られて転んだ、一体何が、と瑞鶴は足元を見る。

 

 

「ひいぃっ!?」

 

 

そこにはおもちゃのスライムを思わせるゲル状のモノが絡まっていた、そのスライムは深海棲艦の装甲のような色をしており、まるで新種の深海棲艦のようであった。

 

 

スライムは瑞鶴の足を這うようにせり上がり、瑞鶴の身体を覆い尽くそうとしてくる。

 

 

「止めろ!来るなぁ!」

 

 

瑞鶴はスライムを引き剥がそうとするが、スライムはそれに抵抗するかのようにさらに複雑に絡みつき、その一部が瑞鶴の口の中へとねじ込まれる。

 

 

「ーっ!?」

 

 

あまりの出来事に瑞鶴はパニックになる、スライムに味の類は感じなかった(感じる余裕が無かったのかもしれない)が、何とも言葉では言い表せない不快感が瑞鶴を襲う。

 

 

『ず…い……か…く』

 

 

「っ!!」

 

 

すると、先ほどまで不定形でしかなかったスライムがいつの間にやらヒトの上半身のような形を形成しており、自分の名前を呼んでいた。

 

 

(…う…そ…)

 

 

瑞鶴はその声を聞いて、その姿を見て目を剥いた、何故なら…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『瑞鶴…どウしテ…私ヲ…』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『オイテイッタノ…?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その声は、その姿は、あの日沈んだ赤城そのものだったのだから…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ハッ!?」

 

 

瑞鶴は勢い良くベッドから飛び起き、慌てて周りを見渡す。

 

 

「…夢…?」

 

 

汗だくになり、呼吸も荒い状態で瑞鶴はさっきまでの夢の内容を思い返す。

 

 

「うっ…!」

 

 

その瞬間、夢の中で赤城のスライムに体内を弄られた時の感覚がフラッシュバックし、猛烈な気持ち悪さと吐き気に襲われる。

 

 

「オヴォぇぇ…」

 

 

瑞鶴は猛ダッシュでトイレに駆け込み、胃の中身を全てぶちまける、昨日食べたモノはほぼ全て消化されており、出てくるのは僅かな胃液だけ、それが余計に瑞鶴をえずかせる。

 

「ったく…とんだところで再会したわね、赤城先輩…」

 

 

瑞鶴はそんな自虐的なおふざけを呟くが、トイレから出てこられるようになったのはそれからしばらくしてのことだった。

 

 

 

 

「ず、瑞鶴さん…?なんだか少しやつれてるような気がしますけど、大丈夫ですか…?」

 

 

「えぇ、大丈夫よ、少し夢見が悪かっただけ」

 

 

間宮が瑞鶴の顔色を心配しながら朝食のトレーを渡すが、瑞鶴は適当にごまかしてトレーを受け取る、何せあんな夢を見た上に胃の中をリバースし、いつもの起床時間より1時間以上早く起きてしまったのだ、朝っぱらから精神的疲労MAXである。

 

 

「…今日の出撃大丈夫かな、まだ少し頭がぼーっとするし眠いし…」

 

 

 

最悪別の艦娘に変わってもらおうか…などと考えていたとき、金剛が瑞鶴の前に座る。

 

 

「おはよう、何だか顔色が優れないみたいだけど、大丈夫なの?」

 

 

金剛は間宮同様瑞鶴の顔色が優れない事にずくに気づき、心配そうに顔を覗かせる。

 

 

「いや…何だかあまり眠れなくて、少しぼーっとしちゃいまして…」

 

 

「…そうよね、昨日あんな事があったばかりだものね、何なら今日の出撃任務の旗艦、私が変わるわよ?他の空母艦娘にも声をかけてみるけど…」

 

 

「いや…流石にそこまでしてもらうのは…」

 

 

瑞鶴は申し訳無さそうに首を横に振る、確かに出撃任務にあたって万全のコンディションでないのは確かだが、本を正せば自分に責任があるため、金剛の好意に甘えづらい。

 

 

 

「全く、朝からいい御身分ね」

 

 

すると、朝食のトレーを持った加賀が瑞鶴たちの側に立ち、射抜くような冷たい視線を向ける。

 

「あなたが赤城を見捨てたせいで航空戦力に欠員が出てるのよ、その分()()のあなたが頑張るべきなのに寝不足で休むなんて、甘いんじゃないかしら?」

 

 

「加賀先輩…」

 

 

加賀の淡々とした言葉の羅列に瑞鶴は縮こまりそうになる、加賀の言っていることは瑞鶴ももちろん理解しているし、赤城の分まで自分が頑張らなければならないというのも分かっている、しかしこうして面と向かって、しかも加賀から言われてしまうと心に来るモノがある、あの悪夢を見た後なら尚更だ。

 

 

「…ちょっと加賀、それは言い過ぎよ、瑞鶴がどれだけの思いであの決断をしたか…」

 

 

「金剛、あなたは瑞鶴の決断を随分と美化しているようだけど、赤城を見捨てたのは結局は瑞鶴の旗艦としての能力が足りなかったからよ、赤城を助けられるだけの工夫を凝らしきれなかったあなたの力量不足、だからあなたは赤城を見捨てた、違う?」

 

 

「加賀…!あなたね!」

 

 

金剛は加賀に掴みかかる勢いで食ってかかったが、瑞鶴はそれを片手で制した。

 

 

「…加賀先輩の言うことはもっともだと思っています、でも私はあの決断が間違っていたとは思っていませんし、後悔もしていません、これだけは何があっても曲げるつもりはありません」

 

 

瑞鶴は加賀の目を見てはっきりと伝える、それを聞いた加賀は特に表情を崩すことは無かったが、やがて溜め息をひとつ吐き…

 

 

「…あなたの事を旗艦に相応しい優秀な艦娘だと思っていたけど、買い被りだったみたいね」

 

 

そう言い残し、瑞鶴たちから一番遠いテーブルの席に着いた、その様子を一部始終見ていた他の艦娘たちは内心ハラハラしていたが、すぐにいつもの談話モードに戻っていった。

 

 

「気にすること無いわよ瑞鶴、加賀は赤城を失って気持ちの整理がついてないだけ、そのうち分かってくれるわよ」

 

 

「…だといいんですけどね」

 

 

瑞鶴たちは席に座り直して朝食を再開したが、加賀から言われた言葉は瑞鶴の心にトゲのように刺さり続けていた。




次回「弱る心」

アストラルチェインも気になります。
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