少女達と白い犬の物語   作:バロックス(駄犬

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次の投稿まで時間が掛かりスギィ!プレイ中の大神もクリア間近だぜ!


釣りゲー、穴掘り、飛脚との競争、モグラたたき、人間輸送、経絡秘孔突き、
本篇ストーリーだけでなくミニゲームも楽しめて、奥が深い、それが大神(ダイマ)


杏と球子、釣りが巡りあわせた奇跡

―――愛媛県。

 

 

「……むむむ」

 

 どこにでもありそうな湖。

 その桟橋に小さな椅子を置いてちょこん、と座っている一人の少女が居る。

 

 

 クリーム色の長髪はじっとしている為か微動だにしないが、それでも小さく風が吹けば風鈴のように小刻みに揺れている。

 色白の肌とワンピース姿を誰かが見たら、その風貌はどこかの小説に登場するヒロイン、もしくはお嬢様を思わせるだろう。

 

 

 しかし、その少女はお嬢様でもなければ、小説のヒロインでもない。

 

 

 伊予島杏は一般家庭に生まれた、ごく普通の少女だった。

 

 

「ここらへん、かな?」

 

 杏は真剣なまなざしを全く揺れ動かない水面へと注いでいる。

 彼女の手には一本のオレンジ色に塗られた釣り竿があるだけだ。

 

 

 ならば釣りをしている最中なのか、と問われればそれは間違いである。

 杏の持っている竿は確かに湖へと伸ばされているが、肝心の『糸』が竿の先端から垂らされていなかった。

 そもそも釣りでワンピース姿など、その姿はアウトドアを楽しむものとは到底思えない。

 

 

 『エア釣り』。

 

 イメージを最大限に膨らませ、脳内でイメージの魚と格闘を繰り広げる。 

 杏の脳内では今まさに、ポイントを見定めて針を垂らして獲物を待っている最中だ。

 

 

 だが、釣竿に糸も針も無い状態でイメージだけの『エア釣り』に一体どんな意味があるのだろうか。

 答えは簡単である。杏は、ただ釣りの雰囲気を楽しんでいるだけだった。

 

 

「なにやってるんだろう私……」

 

 ふと、我に帰って空を見上げる。

 太陽が真上に姿を現し、その直射日光が麦わら帽子の少女へと降り注いでいた。

 そのせいか、肌が少しだけひりひりしている。日焼け止めは塗ってはいたが『エア釣り』を初めて数時間が経つ。長時間経てば日焼け止めの効果も薄まるか。

 

 

 

 伊予島杏はアクティブな行事があまり得意ではなかった

 

 

 それは彼女自身が幼い頃から病弱だったこともあり、それが原因で出席日数が足りず、五年生をやり直すという、小学生にして留年というスペクタクルをやってのけたことも原因だろうか。

 だが、それが今の『エア釣り』となんの関係があるのか。

 

 

 人は誰しも、心の内に抱いている未練というものを捨てきれないものである。

 伊予島杏にはまだ、アウトドアへの憧れと言うものが存在しており、それを捨てきれないでいたのだ。

 

 

 窓の外から、グラウンドを元気いっぱいに走り回る同級生を見ては、羨ましくも思い、その度に『自分には無理だ』と勝手に諦めていた。

 だが、何でも諦めてしまうのは良くない、と一念奮起し思い切ってアウトドアな何かをやってみたいと思ったのである。

 

 

 

 そんなこんなで始めようと思ったのが釣りだ。

 静かに水面を眺め、獲物が食いつくまではじっと待ち、ヒットの瞬間の見えぬ魚影との格闘、水面から飛び跳ねる魚の姿を想像した杏は単純にその光景を自身に当てはめて心を躍らせたのだ。

 

 

 

 しかし、問題がある。杏には釣りとしての知識が無い。

 

 

 いつ、どんな時に竿を引けばいいのか、

 餌の種類とか、

 どのポイントで釣りをすればいいか、

 基本的な部分の知識が圧倒的になかった。

 

 

 それに、この釣りは自分の両親には内緒で来ている。

 両親に黙って危険な遊びをしている罪悪感を感じながら釣りをして、もし水面に落ちた時のことを考えては恐怖し、怖気づいた。沈んだ自分を助けてくれる人は今誰もいないのだと。

 

 

 流石に溺れて死にたくはない、そう思った杏は思いついたのである。『エア釣り』を。

 

 

 これなら実際に魚を釣るわけじゃないし、その場にじっとして、脳内だけで魚と格闘していれば済むのだから、水面に落ちて溺死するという事故は起きないと言ってもいい。

 完璧ともいえるこの作戦に、杏は身震いする。 これで事故ってしまったらどれほど間抜けなのか。

 

 

 しかし杏は思うのである。

 今こうして無駄な時間を過ごしている自分こそが間抜けなのではないかと。それは先ほど自分が我に帰ったときに抱いた虚無感が教えてくれた。

 

 

「……帰ろうかな」

 

 これ以上、こんな所で意味のないことを続けても、自分にとって何も得ることはない。

 そう思い、杏が椅子から立ち上がった時だ。

 

 

『ワンッ』

「ひゃうっ!!な、なに!?」

 

 真後ろでの突如発せられた声に驚きながら杏が振り向く。

 そこには、白い犬がいた。

 

「い、犬……? な、なんでこんなところに?」

『ワウッ』

 

 尻尾をブンブンと振る白い犬は口を開けてこちらを眺めていた。

 杏はそれが自身に危害を加えるものだと思ったのか、身体を震わせて、

 

「い、いやぁ……わ、わたし、食べても美味しくなんてないよぉ……!!」

 

 大型ともいかないくらいだが、それなりにその犬は大きい。

 そんな生物が目の前で鼻息を荒くして、健康的な犬歯をこちらに向けている。それだけでも、杏の恐怖心を煽るのには十分だった。

 

「こ、こないでください!」 

 

 杏が涙目になりながら縮こまるが犬はそんな杏に近づいて、

 

『クゥン……』

 

 杏の髪をその鼻でくんくん、と嗅ぎ始めた。

 これはいよいよ食べられるのか、と覚悟を決めた杏。

 

 

 するとそこへ、

 

 

 

「こぉ~らぁ!!」

 

 

 怒号とともに、桟橋を駆ける足音を杏は聞いた。

 思わず顔を上げると、白い犬と怒号の正体であろう誰かが向かい合っている。

 

「その子から離れろォ!それ以上近づいたら、タマが許さないぞ!」

 

 身長は杏より下だ。明らかに。

 野性味あふれる瞳と、その勇ましい声からして杏は、

 

 

 なんて勇敢な『男の子』なんだろうか、と思ってしまった。

 

 

『アウ?』

「なにトボけた顔してんだぁ! そんな顔しても、タマは絶対に騙されないぞ!!」

 

 

 首を傾げている犬に対してその少年は犬になったように歯を剥き出しにして威嚇する。

 

 

なんて勇敢な子だろう。

自分より体格が上の動物に全く物怖じせずに立ち向かっている。

 

自分にはない強さ、それを持っている少年を杏は眩しく思った。

 

「覚悟しろぉ! ドォラァ!」

 

 犬に果敢に突っ込んで行くタマと自称する少年を見ては、

 

 

自分にもあんな元気があれば、

自分にもあんな勇気があれば、

 

 そんな気持ちを抱かずにはいられない。

 羨望と嫉妬の眼差しを。

 

『ワウッ』

「グホゥッ!!」

 

 威勢よく啖呵を切った少年だったが犬の頭突きが腹に直撃し、桟橋の上をゴロンと転がった。

 体格差の不利有利は否めない。

 

「ちょ、ちょっと! 大丈夫!?」

 

 勢いよく転がった少年に杏が声を上げる。だが少年は転がりながらもその勢いを利用して真上へと飛び上がった。

 

 

「大丈夫だ!問題ない!タマは無敵だ!」

 

 何と言う身体能力か、

 ゴムまりのように跳ね上がった少年はそう言いながら桟橋へと着地する。少年は再び犬と相対するが、

 

「って、こっち見ろよオイ!」

 

 何故か目の前の少年を無視して犬は杏の方へ近づいた。

 

「ヒッ!?」

 

 犬は少年など眼中にないのか真っ直ぐこちらへと向かってくる。

 問答無用に杏のほうから襲うつもりか、思わず身構える杏だったが、

 

『ハッ……ハッ…ハッ』

 

 と、息を吐く犬は杏ではなく、『竿』の方を見つめていたのだ。

 何故竿を? と不思議に思う杏、しかし次の瞬間。

 

 

「えっ!? な、なにっ!?」

 

 

 竿を持っていた腕が水面に向かって引き込まれる感覚に襲われた。

 両足に力を入れて踏ん張り、桟橋からの落下は免れたが杏は自身の竿を見て、驚いた。

 

「う、ウソでしょ!?」

 

 『糸』が引いている。魚が掛かった証拠だ。それは誰にでも分かる。問題なのは、

 

 

「なんで竿に糸が付いてるの!?」

 

 

 事故を回避する為に竿に通していなかった糸がある。

 

 

 『そこにあるはずのないものがある』、その事実に杏は困惑する。

 竿に真っ直ぐ垂らされた糸は水面で激しく揺れ動き、桟橋の杏を引き込まんと暴れていた。

 

 

 それよりも、と杏は糸の先を凝視する。

 

 

 引きからして、かなりの大物だ。初心者でも分かる。

 だが、釣りの知識に乏しい杏にとってヒットした魚との格闘は未知の体験であり、非力なこともあってか少しでも魚が本気を出せば杏は湖に引き込まれてしまうだろう。

 

「どうしよう…どうしよう……!!」

 

 焦りが募り、恐怖が生まれる。

 未だに魚は抵抗を見せ、水面下で暴れまわっていた。

 だがその時、

 

「大丈夫か!」

「え……」

 

 

 杏の手に添えられる別の手がある。少年のものだった。

 

 

「魚釣りは、焦ったらだめだ。まずはこっちが落ち着いてからじゃないと……ほら、深呼吸して」

「う、うん……! すぅー、はぁー……すぅー、はぁー」

 

 言われた通りに呼吸を整えると次第に気持ちが落ち着いてきた。

 視界が先ほどまでよりも広くなり、肩に入っていた余計な力も抜け、リラックスしている状態である。

 

「よーしいいぞ! これなら……相手は大物だ! 二人で釣るぞ! いけるな!」

「う、うん!」

 

 快活な声につられ、杏は思わず返事をする。初対面だが、少年の言葉には誰かを動かす力があるのか、自然と杏は少年の言葉に答えていた。

 

「なーに!難しいことは気にするな!タマがついてる!」

 

 少年は光のような笑みを浮かべて、

 

「タマに任せタマえってな!」

 

 そう言ったのだった。

 それから数十分ほどして、 

 

 

「そこだぁ!思いっきり引っ張れぇ!」

「えーい!」

 

 タマと呼ばれる少年の合図と共に、杏が竿を思いっきり引く。

 水面から飛び上がるように姿を見せた魚は宙を舞って、杏たちが居る桟橋に落下した。

 

「よっしゃあ!やったな!おっきいのが釣れたぞ!」

「うん……うん!!」

 

 未だに地面で跳ねまくっている魚を二人して眺めて杏は感動を含めた笑みを浮かべる。

 こんなに魚釣りが大変だとは思わなかった。

 最初は身体が湖に引き込まれないか不安で不安でたまらなかった。

 だがその分、こうして釣り上げた時の感動はそれを打ち消す程に大きいものだった。

 

「なんだよー、なんで泣いてんだよ? そんなに嬉しかったのか?大物釣れたのが」

「だ、だって! わたし、自分でもこういう事が出来るなんて思わなくて……」

 

 いつの間にか泣いていたのか、そんな杏を見て、大げさだな、とタマは笑った。

 

「しかし、お前はまだ釣りの奥深さを知らないッ そんなんじゃプロの釣り師になれないぞ!タマが教えてやる!」

 

 タマは言った。

 

「釣りの楽しさってやつをさ! アタシの名前は土居球子! お前は?」

 

 

 杏は思う。この子に会えて、良かったと。

 この子のお蔭で、自分はアウトドアの楽しさを知ることが出来たと。

 新たな自分に出会うことが出来たのだと。

 

 

「私は…あんず、伊予島杏」

 

 杏は自身の名前を告げるとともに、

 この土居球子とめぐり合わせてくれたであろう神様に『ありがとう』と感謝したのだった。

 

 

 

「あれ? そう言えばあの犬は?」

「そう言えば……」

 

 

 気づけば、先ほどまでいた白い犬の姿が見当たらない。

 もう帰ってしまったのだろうか。そう思った杏が湖の奥、何かに気付く。

 

「あ、あそこ!」

 

 杏が指し示す先に、白い犬がいた。

 だが二人は驚愕する。白い犬がいた場所は地面ではなく、水の上だったことに。

 

 

 泳いでいる訳でもない、なのに沈んでいる訳でもない。

 平然と、ごく自然に、それが当たり前かのように犬の身体は水の上に『浮いている』。

 

 

 二人が良く見れば、犬は大きな葉に乗って浮いていた。

 

 

「な、なんか草っぽいのに乗ってるぞ!」

「あれは蓮の華の葉だよ! でもあんなおっきいの見たことない!」

 

 犬一匹が乗って沈まない程の蓮の葉など、この世にあるのだろうか、その大きさにも目の前の光景が未だ信じられない。

 しかし、その信じられない光景は続けて起こる。

 

 

 白い犬が蓮の葉から水面へと飛び込もうとすると、その先の水面に新たな蓮の葉が浮かび、犬はそこに着地したのだ。

 犬がそこから跳ぶたびに水面に蓮の葉が浮かび、犬はそれを足場に水面を渡っていく。

 

 

 それはまるで犬が自身の真下に蓮の葉を浮かばせているかのような光景だった。

 

 

 犬の身体にも次第に変化が見られた。

 純白の毛並みが輝きを放ち、 

 その顔から身体に掛けて紅い隈どりがみられ、背には鏡が浮いている。

 空の雲の隙間から差し込まれた一筋の光が犬の身体を照らせば、白銀の毛並みが一層輝きを増し、杏と球子の瞳を奪った。

 

 

「キレイ……だな」

「うん……まるで神様みたい」

 

 二人は頷く。

 そして水面の上にいる、どこか神々しさを放つその犬は杏たちを一度見て、

 

『ワンッ』

 

 そう一吠えすると湖を蓮の葉を足場にして、駆ける様にその場から去っていったのだった。

 

 

 この日のことを、伊予島杏は一生忘れないだろう。

 

 初めて釣りをしたことを、

 見知らぬ子に助けられたことを、

 神様みたいな存在をこの目で見たことを。

 

 

 

 

 

 

――-そして、伊予島杏が迎える運命の日。バーテックス襲来。

 

 

 白い異形を前に怖気づいていた杏は一人の人物に窮地を救われる。

 二人は顔を見るや指でお互いを指さし、 

 

 

「あー!お前はあの時の!」

「もしかして、湖で助けてくれた!」

 

 盾を手にした者は無い胸を張って言う。 

 

 

「そうだ!タマだ!」

「男の子!」

「オイィイィィ! タマは女の子だァァァア!!」

「えええええええ!?」 

 

 

 そんなやり取りの後で、すぐに仲良くなった二人。

 

 本来なら、この運命の日を迎えるまで出会う事はなかった二人。。

 だが、そんな二人を巡りあわせたのも、少女達を見守っていた神様が引き起こした奇跡なのかもしれない。 

 

 




のわゆ本篇前に杏とタマが出会ってるけど、あんま問題なし。神様の力にかかれば、運命なんて捻じ曲げて差し上げます(偶然)

杏の持っている『糸の無い釣竿で釣りをする』、というのはゲーム大神の設定をそのまま持ってきています。

残るはぐんちゃんとたかしーの二本。出上がり次第、あげますゆえ。
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