鋼鉄で出来た異形…。
私はあの存在に見覚えがある。
いや、実際に私が見たのではなくシンの記憶の中で見たというのが正しいでしょう。
あの鋼鉄の異形の名は【ザザムザー】。
シンが敵対していた組織がシン達の様な人種に対抗するために生み出され
初めての戦闘でシンを命の危機に陥れた兵器。
この世界では存在することがありえない異物。
そして、私が再び現世に呼ばれた最大の理由…。
「あ、あれは一体なんなのです!?」
「織斑くん!鳳さん!聞こえますか!?」
「一夏!!鈴音!!!」
ホウキ達の反応を見るにはこの世界ではまだ認識されていない異形の兵器。
アリーナに居る者達は酷い状況でした。
アリーナのバリアが破られ、逃げ惑う生徒達…。
腰が抜けて立つことが出来ない生徒達…。
目の前の出来事が信じられずに気絶した生徒達…。
周囲のパニックの波に飲まれて生徒達の避難指示が出来ない教員達…。
そして、私は管制室を抜けてマユ達がいない第2ピットを目指していました。
幸い、ピットの方面には人がいなかったために移動は苦になりませんでした。
早々にピットへ辿り着いた私はリリィを装着し、中への突入の妨げとなる障壁を
永久に遥か黄金の剣【エクスカリバー・イマージュ】で貫き、フィールド内に突入しました。
「永久に遥か【エクスカリバー】…黄金の剣【イマージュ】!!!」
ドガアアアアアアアンッ!!!!
「イチカ!リンイン!!加勢します!!!」
あの異形と戦闘を繰り広げていたイチカ達もかなり消耗しています。
あのままでは殺されてしまう。
そして、アリーナのバリアを容易く貫く程の火力を持つのならピットにある防壁程度では
やすやすと貫通してしまう。
もしあの攻撃がマユ達のいるピットへ撃ちこまれたら…!
だから早々にあの敵を撃破せねば…!!
第6話「侵略者と侵略者に抗う者」
◆ Side 鈴音
なに…この嫌な気配…。
アリーナのバリアを貫通する程の火力を持つこのバケモノはずっとあたし達を見ている。
あいつが撃ってくる砲撃が一発でも当たればあたし達は死ぬ…。
だけどあたし達は逃げられない。
なんでか知らないけれどピットに続く扉は完全に閉じられている。
それに逃げたとしても矛先が観客席に居る人達に向けられる。
だからあたし達は逃げられない…。
「一夏」
「わかってる。こいつは俺達で食い止める」
一夏も同じことを考えてたか…。
ならやることはひとつね。
こいつはあたし達で食い止める。
あたしも一夏もかなり消耗しているけどやるしかない。
「OK。行くわよ、一夏!!」
「ああ!」
『!』
ズギャーンッ!!
「っと!」
「当たってたまるかよ!!」
どうやらこいつは射撃の精度がかなり低いようね。
一対一ならともかくこっちは消耗しているといっても二対一だ。
これならやりようがある!
少なくとも観客席に居る人の避難が終わるまではもたせられる!
「一夏!あたしがあのデカブツの注意を引くからアンタは雪片二型で叩き切って!」
「わかった!失敗するなよ?」
ガキンッ!
「誰に言ってるのよ?あたしはアンタよりもベテランなんだからね!」
「そいつは頼もしいな!」
あたしは双天牙月を連結させてあのデカブツに投擲する。
あのデカブツはセオリー通りに横へ避けるけれどそれが命取りよ!
双天牙月はブーメランとして使える!
そしてあたしはウイング部分をパージして突っ込む!
あのデカブツはあたしに砲撃をするけどこういった砲撃は前に進めば当たらない!
「うおおおおおおおおお!!!」
一夏も良いタイミングで突っ込んできた!
投擲した双天牙月も良いタイミングで戻ってくる。
このまま懐に飛び込めば!!
ここまで近づけばあの砲撃は使えない!!
あのデカブツの顔に一発ぶん殴る!!
『!』
ブォン…ガァンッ!!!
「グハッ!!」
「カハッ!?」
な、なにが起こったの…?
気が付いたらあたしと一夏は大きな何かにはさまれていた。
どういうこと…?
あいつは射撃武器しか持っていなかった。
ならあいつはどうやってあたし達をはさんだ…?
『!』
そうか…。
こいつは射撃武器の裏側にクローを隠していたのね…。
これじゃあ、あたし達が気付かないわけね…。
ミシィッ!!
「ぐあああああああ!!」
「ああああああああ!!」
あのデカブツがあたしと一夏をクローで握りつぶそうとしている…。
考えられない痛みがあたしと一夏を襲う。
痛い!!痛い!!痛い!!!
このままじゃあたしも一夏も握り潰されちゃう。
もう…ダメ…。
絶望に染まりかけた時、あたしが知るうえでは最高の援軍がやってきた。
「永久に遥か【エクスカリバー】…黄金の剣【イマージュ】!!!」
ドガアアアアアアアンッ!!!!
「イチカ!リンイン!!加勢します!!!」
アルトリア…。
あたしが知る中で現在の専用機持ちで最強の使い手。
急な敵の出現にバケモノも驚いたのかあたしと一夏を放り投げて距離をとった。
さっきのクローでだいぶシールドエネルギーが持って行かれたけれどまだいける。
さあ、仕切り直しよ!!
◆ Side 真優
IS学園 第1アリーナ 第1ピット アンノウン襲来から15分後…
一夏も鈴音もアルトリアも凄い。
一時危ないところもあったけどアルトリアが援軍として駆け付けた後は
完全とはいかないけれどなんとか持ち直した。
鈴音は残った大きな青龍刀を使いこなして一夏とアルトリアを援護しているし
一夏も武装が一つしかないハンデを実力で乗り越えている。
アルトリアにいたってはアンノウンから撃たれている砲撃も完全に見切っているし…。
私も専用機を手に入れたらあんな動きが出来るようになるのかな…?
…ううん。あれは専用機の性能じゃなくてアルトリア達の努力の賜物だ。
私もあの境地に至ることは出来るのだろうか?
「真優。君の専用機を届けに来たよ」
「慎二おじさん!」
ここに慎二おじさんが来た…。
つまり私の専用機をわざわざ運んでくれたのだろう…。
アンノウンの襲撃でここは危険なはずなのに…。
慎二おじさんの後ろにはあの時リリィが納められていたコンテナと
同じ大きさのコンテナが設置されていた。
「はいは~い!お待たせ~!!」
「貴女は…」
「私の本名に関してはノータッチでお願いね~」
「ドクター、コンテナを開けてくれ」
「あいよ~。それじゃあご覧あれ!間桐シリーズの二番機の姿を!!」
グゥイーン…ガシャンッ!
「これは…」
「間桐シリーズとデュノア社合同製作シリーズの二番機!
衛宮真優だけの専用機。真優と共に遥か高きソラを駆ける僕達の最高傑作のISさ!」
コンテナの脇から篠ノ之博士が出てきた。
慎二さんと言い篠ノ之博士といい度胸があるなぁ。
前に会った時よりも二人のテンションが高いのは目元に見える濃いクマのせいだろうか…?
アルトリアの時と言い本当にお疲れ様です。
篠ノ之博士が慎二おじさんの指示に従ってコンテナを開けてくれるとコンテナの中には…
暗い灰色の甲冑が鎮座していた。
このISが慎二おじさん達の全てが注ぎ込まれた私の専用機…。
私は【解析】を使ってこのISが辿った過去を見た。
このISは遥か高き宇宙【ソラ】を目指す私の為に慎二おじさん達が
自分達の持っている全ての技術を駆使し、何が起こるかわからない宇宙でも
安全に活動するために様々なオプションが搭載されている。
そして私がまだ名前も知らない私の専用機に触れた瞬間、様々な情報が流れ込んできた。
目の前にあるこのISはただの専用機じゃない。
このISと同じ姿の巨大な兵器が私の脳に映し出される。
その兵器はとある士官学校を卒業した少年に委ねられた。
自身の兄の操り手によって自身の担い手と共に謀殺されかけ
姿の見えない暗殺者の襲撃を撃退しながらも
混沌と深淵と大地の名を司る兄達と共に様々な訓練を耐え抜いた。
しかし、その兄達は敵の手に奪われ自身の敵として立ち塞がった。
それからも数多の激戦を潜り抜けてきた。
世界の存亡をかけた破砕作業の防衛に従事し
後退不可能な状況で勝利不可能と思われた海上戦を単騎で覆し
もう一人の兄と出会い
虐げられた力を持たぬ民を救い
成功率が限りなく低い作戦を完遂させ
新たな仲間と出会い
圧倒的な力を持つ告死天使に敗北し
奪われた大地の名を持つ兄を取り戻し
深淵の名を持つ兄を自身の手で討ち、もう一人の兄弟と仲間達が告死天使によって討たれ
破壊者の名を持つ巨大な敵と激突し
混沌の名を持つ兄が告死天使の配下によって討たれ
告死天使と激闘の果てに打ち倒し
役目を果たした後、自身の新たな弟達に自身の担い手とその仲間達を託し、
自身の担い手に看取られながらその生涯に幕を閉じた。
そして、このISと同じ姿の兵器の担い手は若かりし頃のシンだった…。
「っ!?」
「真優ちゃん!?」
「ちょっ!?大丈夫!!?」
「大丈夫…沢山の情報が一気に入ってきたからちょっと驚いただけ」
兵器として産まれたこの偉大な戦士は兄達の死を乗り越えながら
自身よりも遥かに強大な力を持つ告死天使を打ち倒し、
自身の相棒であるシンに最期を看取られながら息を引き取った。
いつの間にか私は涙を流していた。
ただの機械と言えばそれだけかもしれない…。
でも、私はこの偉大な戦士の生き様に涙を流さないことなんて出来なかった。
そんな私を心配そうな目で慎二おじさんと篠ノ之博士が見ていたけどもう大丈夫だ。
寧ろこのまま泣き続けていたら私と共に戦ってくれるこの偉大な戦士に失礼だから。
「そうか…。名前は決めたかい?君の相棒となる機体だから君が名付けたほうがいいだろ?」
名前か…
私が名前を付けるのならもう名前は決まっている。
「名前…。うん、決めた。私の相棒の名はインパルス…【インパルスガンダム】」
「衝撃ねぇ…。うん。いいんじゃないかな?」
「ガンダムというのはOSの頭文字から取ったのかい?」
「うん。G.U.N.D.A.Mって繋げたら【ガンダム】って読めるでしょ?」
「なるほどね~。インパルスガンダム…。うん、良い名前なのだ!」
私の四人目の相棒の名前は…【インパルスガンダム】。
兵器としてのISの登場で女尊男卑が蔓延るこの世界に大きな新たな衝撃を与えるISだ。
インパルスはこのISと同じ姿を持った兵器の名前にあやかり、
ガンダムはこのISにあったOSの
Generation Unrestricted Network Drive Assault Module
(ジェネレーション・アンレストリクテッド・ネットワーク・ドライブ・アサルト・モジュール)
「無制限のネットワーク駆動世代の強襲モジュール」の頭文字である
G.U.N.D.A.Mを組み合わせて語呂が良かったから付けた。
今、アルトリア達は私達を守るために戦っている。
そして私にも一緒に空を飛んでくれる相棒がいる。
ならばやることはひとつだ。
「…慎二おじさん、篠ノ之博士。私、行きます」
「………正気か?まだ初期設定なんだぞ」
「うん。でもこのまま見ているなんて出来ないから。それに…」
「それに?」
「私は慎二おじさんと慎二おじさん達が全てを注ぎ込んだインパルスガンダムを信じているから」
私もアルトリア達に加勢する。
ISを戦いに使うのは嫌だけどインパルスもこのまま見ているなんて望んでいない。
確かにインパルスはまだ一次移行していない。
だけど私は信じている。
慎二おじさん達が自分達の全てを注いだインパルスを…。
だから、私は行くんだ…。
「…どうするんだい?オーナー。止めても無駄そうだけど?」
「…はあ。なんでこんなところはあいつに似てしまったんだか」
「慎二おじさん…」
「…ああ!行って来い!!ただし!必ず生きて戻ってくるんだぞ!!」
「…うん!」
どうやら私の思いが慎二おじさんに届いたらしい。
慎二おじさんは私が必ず生きて帰ってくることを条件に私も出撃することを許可してくれた。
私はインパルスを装着するとバトルフィールドに繋がるカタパルトに向かった。
「カタパルト接続。進路クリア。いつでも行けるよ~」
「…衛宮真優、インパルスガンダム!行きます!!」
私はインパルスを装着した足をカタパルトに接続すると大きく深呼吸をして
アルトリア達がしているように自分の名前と相棒の名前を宣言し、カタパルトから射出された。
待っていて…今度は私が助ける番なのだから!!
◆ Side 箒
IS学園 管制室 真優が出撃する直前…
「鎮圧部隊は第3ピットから突入に備えろ!」
『了解!』
「上級生は山田先生とハッキングの解除に当たれ! 」
『わかりました!』
「オルコットは観客席で奴に隙が出来たところを狙撃しろ!」
「了解ですわ!」
私はなんて無力なのだろうか…。
一夏達の助けになることができず、ただこうして見ているだけしかできない。
千冬さんは教師陣と上級生の指揮をし、
セシリアは一夏達を援護するために狙撃ができる観客席へ向かい、
山田先生は三年生の精鋭を集めてハッキングの解除に取り掛かっている。
この中で私だけがなにも出来ていない。
私は…このまま見ているだけしか出来ないのか…?
「ああ!?織斑先生!!第1ピットのカタパルトが勝手に作動しています!!」
「なにっ!?」
第1ピット?あそこには真優がいたはずだ!
なのになぜ今になって作動している!?
…まさか!?
「衛宮さんが専用機を装着してフィールド内へ突入したようです!!」
「っ!」
山田先生の悲鳴にも似た報告が聞こえた私はいつの間にか管制室から出ていた。
確か第1ピットには試合で使われる予定だった打鉄があったはずだ。
例え訓練機でも動かしさえ出来れば!!
5分後…
「ついた!」
「ん?君は…」
「すみません!間桐社長!ここにある打鉄を起動させて真優の援護に行きます!」
あれから5分ほど全力疾走してなんとか第1ピットに辿り着いた。
全力疾走をしていたせいで少し息が上がっているが問題はない。
第1ピットには真優に専用機を届けにきていた間桐社長が居た。
平時ならちゃんと挨拶をしていたが今はそんな暇はない。
私は私を呼びとめる間桐社長に謝りながら打鉄に乗り込み、打鉄を起動させた。
「…箒ちゃん?」
今、二度と聞くことが出来ないと思っていた声が聞こえた。
私はその声がする方向へ振り向くとそこには…
ISの生みの親であり、【白騎士事件】の後に消息を絶ち、世界中に指名手配された
私のたった一人の姉…篠ノ之束が姿で立っていた。
「姉さん…?」
「大きくなったね…箒ちゃん」
目元にある濃いクマを除いて姉さんは私の知っているあの時の姿のままであった。
でも、なぜ姉さんがここに居る?
姉さんは世界中から指名手配されているはずだ。
まるで間桐社長と共に真優のISを届けに来たような…
「箒ちゃんが考えているとおり、今の束さんは間桐グループのIS開発チーム【セイバーチーム】
の開発主任として働いているんだよ」
「セイバーチーム…もしかしてアルトリアのリリィも?」
「そうだよ。うちのチームでのコードネームは【Aセイバー】って呼んでいるけどね」
「そうなると真優のISも…って、そうだ!私は真優の援護に…」
なるほど、アルトリアの専用機であるリリィが姉さんの主導で開発されたのなら
あの規格外の性能に納得がいく。
…はっ!?
いかん!姉さんとの再会の嬉しさで忘れかけていたが私は真優を援護するために
この第1ピットへ来ているんだった!!
「…箒ちゃん(ヨヨヨ」
なんだか姉さんが悲しそうな顔で私を見ていたが今はそんな暇じゃない!
早く真優の救援に向かわないと…。
って、まだ立ち上げが…
ん?もう動けるようになっている…?
「一応設定は箒ちゃんに合わせてあるから気兼ねなく動かせるよ」
「え?」
「箒ちゃん。僕の姪の真優のことを…よろしく頼んだ」
「…はい、必ず守りきります!」
「進路クリア、いつでもいいよ」
「篠ノ之箒、打鉄!参る!!」
流石姉さん…私と会話をしている間に調整を済ませてくれていたのか…。
これなら何の問題もなく出撃できる。
間桐社長は出撃する私に真優を守ってほしいと頼んできた。
もちろん、私は真優を守るつもりだ。
真優の奴はここ一番で絶対に【うっかり】をやらかすからな!
待っていろ…真優!!
◆ Side 真優
IS学園 第1アリーナ バトルフィールド 真優出撃直後
「くぅっ!!」
これがカタパルトから射出される時のG…!
気を抜いたらすぐに気絶をしてしまいそうだ!
だけど私は無事にフィールド内へ射出され、一夏達のすぐ近くまで辿り着いた。
よかった。みんな生きている。
だけど一夏と鈴音はこれ以上の戦闘は辛そうだ…。
「マユ!?どうしてここに!?」
「ただ見ているだけだなんて私には出来なかったから…」
「ちょっと待ちなさい!アンタの機体はまだ初期設定のままよ!?」
「正気かよ!?」
やっぱりアルトリア達は私が出てきたことに驚いているみたいだね。
まあ、無理もないか。
今のインパルスはまだ初期設定のまま…。
アルトリアや一夏のように試合ならまだしもこれは命のやり取りだ。
そんな状況に一次移行も出来ていない私が来たのは正気じゃないと思ったのだろう。
もちろん私は正気だ。
そしてあのデカブツ…ザザムザーの攻略法を見つけた。
「私は大丈夫。だから一夏と鈴音は休んでて…」
「「真優!!」」
「アルトリア、援護をお願いできる?」
「…わかりました。私の命に代えても貴女を守り抜きます」
「はは。それは頼もしいなぁ。…それじゃ、いくよ!!」
本当にアルトリアは頼もしい。
だからこの戦い、絶対に負けられない!
アリーナに居るみんなの為にも…
私と一緒に戦ってくれるアルトリアの為にも!
「【解析開始】…」
「マユ、あのザザムザーは前面に強力なバリアを張ることが出来るようです。
おそらく私の最大火力でもいとも簡単に防ぎきるでしょう」
私はザザムザーに対して【解析】をすると様々な情報が私の頭の中に流れ込んできた。
あのザザムザーが作られた経緯。
製作者の思い・設計思想・スペック…。
その全てが私の頭の中に流れ込んでくる。
なるほど、私が【解析】で大きな隙を作っているのに攻撃してこないのは
このザザムザーを動かしているのが人ではなくAIによって動いているからか。
どうやらこのAI、動いているモノのみを攻撃するルーチンが組まれているみたいだね。
なら、付け入る隙は十分ある。
それに、アルトリアも何らかの経緯であのザザムザーを知っているらしい。
ならば尚のこと心強い。
おそらく私が考えていることが分かるから。
「OK。つまりはそのバリアを張れなくすればいいんだね」
「ええ…。っ!マユ、貴女の機体の色が…」
「どうやら一次移行が完了したみたい。【投影開始】…」
ん?どうやら一次移行が完了したみたいだね。
どうやら出撃前の調整や【解析】をしている間に最適化が完了したようだ。
装甲の色も暗い灰色から鮮やかな青と白に染まっていた。
それにさっきよりも更に一体感が強くなった気がする。
更に私は私自身へある情報を【投影】する。
「よし、行くよ!アルトリア!!」
「はい!」
ゴォッ!!
『!』
ズギャアァァンッ!!ズギャアァァンッ!!ズギャアァァンッ!!
私とアルトリアはザザムザーとの距離を一気に詰める。
ザザムザーも迎撃の為に射撃兵装を連続で一斉射撃するけど動きが見える!
私が突撃する前に行ったのは私自身にインパルスの記憶にあったシンの動きを
必要な内容だけ同調させ、一次的に戦闘能力をはね上げた。
今の私はインパルスガンダムを操縦していたシンの動きそのものを
完全とはいかないけど再現している。
一機で多数の敵を相手にしたシンの動きならザザムザーを倒すことが出来るはず。
これなら…いける!
「インパルスなら…こういう戦い方が出来る!!」
ドシュッ!ドシュッ!ドシュッ!!
『!』
ブゥン…
しめた!
私の狙い通りザザムザーはバリアを展開して視線が私へ釘付けになっている。
今、ザザムザーは私のことしか見ていない。
ならばチャンスだ。少しでも長くザザムザーの注意を私に向けさせる!
『!』
ズギャアァァンッ!!ズギャアァァンッ!!ズギャアァァンッ!!
「当たらない!そしてこれはお返しだよ!」
ドシュッ!ドシュッ!ドシュッ!!
『!』
バシュッ!バシュッ!バシュッ!
『!』
「そうだ!もっとこっちだ!こっちに来い!!」
『!』
ザザムザーは執拗に私に砲撃をしてくるけど余裕で回避できる。
そして私はビームライフルを連射しながら私は少しずつ後退しながらザザムザーを引き付ける。
私はあくまで囮、本命は!!
『アルトリア!今だよ!!』
『良いタイミングです。この場所なら全力で放つことが出来る!』
私は念話でアルトリアに攻撃の指示を出した。
今、私とアルトリアはザザムザーを挟む位置に居る。
そしてザザムザーは背後への防御手段を持っていない。
私が指示を出すと同時にアルトリアは自身の力を自身の新たな愛剣へ込め、
最強の一撃をザザムザーに向けて放つ!
「永久に遥か【エクスカリバー】…黄金の剣【イマージュ】!!!」
ズバアアァァァァァァァァァァッ!!!
『!?!?!?』
イマージュから放たれる黄金の光がザザムザーを飲み込む。
ザザムザーの射撃兵装と同じく、アリーナのバリアを易々と貫通する程の威力を持つ。
例えザザムザーが異世界の技術で生まれた兵器だろうとアルトリアの一撃を受けたら
ひとたまりもないはず…!
『………(グググ』
…なっ!?
アルトリアの一撃を受けてまだ動くの!?
でもダメージはかなり大きいらしく、動くので精一杯なのだろう。
私はインパルスの拡張領域に登録されている剣を呼び出す。
…これで終わりにする!
「エクス!!カリバー!!!」
ザクゥッ!!
『!?』
エクスカリバー…。
アルトリアの愛剣である約束された勝利の剣と同じ名の剣をザザムザーの中枢部に突き刺す。
これでザザムザーの動力源を貫いた。
動力源さえ潰せば…!!
ガシッ!!
「きゃっ!?」
「マユ!?」
まだ…動けた!?
ザザムザーは私の右足を掴みながら微動だにしないけれど不穏な音を出している。
こいつ…私を道連れにこのまま自爆するつもり!?
アルトリアは私を助けるために全速力で近づいているけれど距離が遠すぎる。
私も抜け出せなくもないけどザザムザーが自爆するまでに脱出するのは無理だ。
よく見たら動力炉から少し離れた場所にエクスカリバーが刺さっている。
あはは…まさかここ一番で【うっかり】しちゃうなんてなぁ。
お母さんの血、恐るべし…。
「まったく…。お前はいつも大一番でミスをするな」
『そうですわね。織斑先生の指示通り観客席に移動しておいて正解でした』
「え?」
暢気にお母さんの血筋の恐ろしさを考えているとこの場に居るはずのない人の声が聞こえた。
箒…?それにセシリア…?
『狙い討ちますわ!』
ドシュゥンッ!!
「はあっ!」
ザクゥッ!!
セシリアは観客席から狙撃してザザムザーの中枢部にレーザーを直撃させ、
箒は持っていた接近戦ブレードをザザムザーの中枢部へ突き刺し、
中枢部を完全に破壊されたザザムザーは今度こそ機能を停止した。
完全に力を失ったことで私を掴んでいたクローの力が緩み、私はなんとか抜け出せた。
確か二人とも管制室に居たんじゃ?
「第1ピットのカタパルトが開いていると聞いて全力で走ってきたんだ」
『わたくしは織斑先生の指示で真優さんが【うっかり】をしてしまった時のために
いつでも狙撃できる観客席へ移動したのですわ』
「あ!そういえば第1ピットにはクラス対抗戦に使われる予定だった打鉄があったし、
観客席はバリアが壊された上に隔壁が作動していなかったんだっけ」
なるほど…。
ザザムザーが襲撃してきた時にフィールドのバリアは破壊されて
障壁もハッキングされていたから隔壁も閉じられることが無かったんだよね。
だからセシリアは観客席で狙撃できたんだ。
ピットの方も篠ノ之博士がハッキング返しをして第1ピットのカタパルトを復旧した。
箒は初期設定のままで出撃した私を心配して後を追って来たらしい。
しかも間のいいことにクラス対抗戦に使われる予定だった打鉄があったから
そのまま出撃してきたみたい。
セシリアも私がミスをした時に備えて観客席でいつでも狙撃出来る様に移動していた。
「そういうことだ。思わぬ遭遇に少し来る時間が遅くなったが結果オーライだったな」
『そうですわね。ですが真優さんもくれぐれも気をつけてくださいね?』
「あはは…面目ない」
…どうやら箒は篠ノ之博士に会えたみたい。
箒の表情を見る限りだと喧嘩はしていなかったみたいだね。
セシリアも私が失敗した時の為にわざわざ危険な観客席まで移動してくれていた。
本当に面目ない…。
自信満々で出ていったのにピンチになって最後は箒とセシリアに助けてもらった。
お母さんもそうだったけどこの【うっかり】は最早呪いの域だ。
そういえば箒の実家は神社らしいしお祓いをお願いしてみようかな…。
…たぶん、効果がなさそうだけど。
「皆さん!無事ですか!?」
ラファール・リヴァイヴを装着した山田先生と教師陣が来た…。
つまり、ハッキングを何とかすることが出来たのだろう。
ふぅ…なんとか無事に終わった。
最後にミスをしちゃったけど箒のおかげでなんとかなった。
…あ、そういえばクラス対抗戦がムチャクチャになったけどどうなるのかな?
ま、それは後でわかるか。
今は無事に戦いに勝ったことを喜ぼう…。
◆ Side シン
IS学園近辺 アンノウン襲撃から40分後…
迂闊だった。
奴等が活動を開始するのが大体臨海学校あたりに行うのだと思っていたが
奴等が既にここまで技術の復元を進めていたとは…!
幸いなことにまだ完全な再現が出来ておらず、無人機にしたために本来の性能を出せない。
しかし、実戦経験が無い一夏君と鈴音君では長くはもたない。
そして、弱点がわからなければIS程度の兵装で破壊は不可能だ。
俺も援護に向かいたいところだが奴等も馬鹿じゃない。
しっかりと後詰も用意していた。
ガキィンッ!!
「男のくせによくここまで刃向うわね!!」
「なに、この程度の危機を乗り越えられねば生きていけないのでね」
「ホンットに生意気!!」
第1アリーナへの襲撃に合わせて大量の無人機と指揮官機のISを送り込んでいた。
よくもまあこんな数を用意できたものだ。
無人機も火力だけならISを上回り、競技用程度ではすぐに無力化されるだろう。
だが、今回は無人機が仇になったな。
無人機は動きが正確だ。
しかし、正確な動きというものは逆にパターンを読みやすい。
それに俺が使用しているAISB【アンチ・インフィニット・ストラトス・ブレード】で
破壊可能なら数が多くても人間が操縦するのと違って動きが単純だから処理は簡単だ。
これなら30機のウィンダムを1機で全て撃墜する方が苦労する。
俺の戦闘データが目的の可能性もあるがそれでも問題はない。
ガァンッ!キィンッ!ズガァッ!!
「どうした?俺を殺すつもりなのだろう?」
「この!男ごときがぁ!!」
データを取られる前に無人機を破壊し、この女にも大した手札を見せていない。
たとえ戦闘データをとられていたとしても大したデータが手に入らないだろう。
ちょうどいいくらいに奴のシールドエネルギーを削れた。
頭に血が上っている敵はそのことに気付いていない。
次の一撃で終わらせる。
ドスッ!!
「え…?」
ポタポタ…
「なんで絶対防御が発動しない…?」
「シールドエネルギーが切れればISなどただの棺桶。
戦闘時にエネルギー残量を気にしていなかった貴様のミスだ」
AISBがテロリストの心臓を貫いた。
絶対防御がある限り奴に傷をつけることはできない。
ならば絶対防御が発動できなくなるまでシールドエネルギーを削ればいい。
ISの絶対防御は元々宇宙に漂うデブリから搭乗者を守る緊急防御システムだ。
その性質ゆえにエネルギーを馬鹿食いするからかなりのエネルギーが必要になる。
ある程度減らせば貫通させることなど容易い。
もしあのISが軍事用ならば装甲で身を守れただろう。
だがあのISは競技用だ。全身に装甲をまとっているわけじゃない。
ISスーツを着ていたとしても防げるのは精々拳銃の銃弾だけだ。
AISBを防げるほど防御力が高くない。
「いやだぁ…わたしは死にたくない…死にたくないよぉ」
「残念だが俺は貴様のようなテロリストを慈悲で生かすほど甘くは無い。
恨むのなら自身の所業と不幸を恨め」
俺はテロリストの命乞いを無視して貫いた対軍事用ISのブレードを引き抜いた。
俺の目の前には外道に手を染めたがゆえに命を失った哀れな女の亡骸がある。
外道に手を染めねば死なずにすんだものを…。
第1アリーナの方向から爆音が聞こえた。
どうやら向こうも片が付いたようだ。
さて、後は哀れな外道の亡骸とこの鉄屑の後始末だが…丁度いい奴がいたな。
「はぁい♪元気にしていたかしら?シン・アスカ」
「生徒会長か。ちょうどいい、ここの後始末を手伝ってもらうぞ」
「え?ちょっ!?まっ!!(ズルズル…」
俺は俺に話しかけてきた更識楯無を無理矢理後始末に参加させた。
おそらく最初から俺の戦いを見ていたのだろう。
ならば見物料としてここの後始末を手伝う位はしてもらわねばな。
「一応、私は生徒会長なんだけどなぁ(ブツブツ」
後始末を始めると更識楯無は俺に文句を言いながらもしっかりと後始末をしている。
割と律儀な少女だ。
なら、相応の報酬は出さなければならない。
この少女が現状で欲しているものを。
「生徒会長。今からこの鉄屑について説明する」
「………かなりヤバメの情報みたいね。
って、このISは3年前にイタリアが盗まれたISじゃない!?」
どうやら俺から少しでも情報を得ようと思っているのだろう。
ならば好都合だ。
こいつも日本での発言力が非常に強い部類に当たる。だから都合がいい。
日本でも有数の地位にある者に世界が危機にあると認識させることができるのだからな。
さて、柄じゃないが語るとするか。
この世界の影で蠢く欲望にまみれた醜き愚か者共の悪意を…。
どうも、明日香です。
今回は真優の専用機のお披露目、箒と束の再会、ザザムザーとの激闘、世界の裏で動く者という内容をお送りしました。
この話を節目に物語は原作から離れていくことになります。
世界の裏で暗躍する者達の正体は物語が進む度に明らかになっていきます。
さて、次回はある意味原作ISの物語から大きく離れるきっかけになるイベントが起こります。
では、次回をお楽しみに!ノシ
※今回登場したインパルスガンダムの経歴とシンが戦闘時に使用していた武器の一つについて
本作のインパルスの経歴
セカンドシリーズの一機として製造される。
↓
機動戦士ガンダムSEED DESTINY ASTRAY参照
↓
機動戦士ガンダムSEED DESTINY フリーダム撃破まで参照
↓
フリーダム撃墜時に発生した爆発によってインパルスの中枢である
コアスプレンダーのフレームに非常に大きなダメージを負う。
↓
コアスプレンダーのフレームは修復不可能と判断され、パイロットであるシンに見届けられながらジブラルタル基地の工廠にて解体される。
↓
ルナマリアの乗っているインパルスのコアスプレンダーはシンの戦闘データを基にOS周りを改良された二代目のコアスプレンダー。
シンが持っていたAISBについての設定(※後に設定集へ移植予定)
AISB【アンチ・インフィニット・ストラトス・ブレード】
ISが台頭してまだ間もない頃、ISの軍事使用を恐れたフランスの軍部に対IS用の武装の開発を命じられたデュノア社が製造したAIS【アンチ・インフィニット・ストラトス】シリーズのひとつである刃渡り1m程のブレード。
特殊なフィールドを刀身に発生させ、ISの装甲と絶対防御ごと叩き切ることができ、非常に頑丈で取り回しがしやすく、ある程度鍛えた人間なら誰でも使えるという傑作品であったがモンドグロッソの開始とISの優位性が失われることを恐れたフランス政府の一部高官の圧力によって世に出ることが無く他のAISシリーズと共にデュノア社の倉庫の中で眠っていた。
そして、シンが現界し、自身の武器を買い求めていた際に間桐グループ社長である間桐慎二の伝手で存在を知られ、他のAISシリーズ共々全てシンに購入され、以降シンの愛用武器となっている。
尚、フランスの政府高官の圧力に不満を持った開発者の一人が日本に亡命し、日本で独自に発展させて作り上げて作りだしたのが最強のブリュンヒルデと名高い織斑千冬の愛刀であった雪片であり、実はこのAISB、雪片シリーズのご先祖様である。
ちなみに、他のAIS開発チームのメンバーも不穏分子とみなされて裏で抹殺されそうになっていたがデュノア社社長の機転によりセンサー関連で業務提携を組んでいた間桐グループに移籍し、アルトリアの専用機であるセイバー・リリィを開発したセイバーチームとして新たなISの開発に勤しんでいる。