IS~衛宮の娘は遥か高き宇宙を目指す~   作:明日香

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第12話「学年別トーナメント開催!前編」

 

「凄い賑わいだな…」

 

「ああ…」

 

 

周りから歓声が聞こえる。

まるでワールドカップのスタジアムに来たような錯覚を受ける位の賑わいだ。

俺と箒はその賑わいに圧倒されていた。

世界的に有名とはいえひとつの学校の大会の賑わいってレベルじゃねぇぞこれ!?

 

 

「そりゃこの大会は世界中が注目しているんだから当然よ。

 ここで優秀だと判断された選手はそれぞれの国の代表になることだってあるわ。

 二人にわかりやすいように言うならこの大会はモンドグロッソの予選みたいなものよ」

 

「「なるほど」」

 

 

アリーナの賑わいに圧倒されている俺と箒に同じチームのメンバーである鈴が

俺達にわかりやすいように説明してくれている。

モンドグロッソの予選…なるほど。言い当て妙だな。

つまりこの大会はISを操縦する俺達にとってモンドグロッソへ行くための

自身の将来を懸けたトライアルということか…。

 

 

「まあ、いつもは二年生や三年生の方ばかり注目しているけど今年はいつもと違うからねぇ」

 

「確か日本、イギリス、中国、フランス、ドイツの代表候補生が参加するんだもんな」

 

「まあ、お偉いさんが一番注目しているのはアンタ等とアルトリアだろうけど」

 

「「デスヨネー」」

 

 

本来なら二年生と三年生にばかり注目がいっているらしいが今年は違うらしい。

ISの先進国と言ってもいい四ヶ国と最も人口が多い中国の代表候補生が一堂に会している。

それだけでも注目することに値するのにそこへ俺とシャルルという

男性でもISを動かすことができた完全なイレギュラーに束さんの妹である箒、

そして、歴代最強の生徒といっても過言ではないアルトリアが出場しているんだ。

そりゃ嫌でも注目されるよな…。

 

 

「あと、これは不確定情報だけど世界一の“あの”大富豪も観戦に来ているらしいわ」

 

「もしかして名前も姿も住んでいる場所もわかっていない“あの”大富豪か!?」

 

 

ん?箒と鈴は誰のことを言っているんだ?

俺はテレビを見るのはニュースだけだからそういった有名人のことはあまり知らない。

だけど箒の表情を見る限りだと、とてつもなく有名な人なんだな。

姿も顔も住んでいる場所もわからないっていうのは変だと思うけどな…。

でもそんな有名人が来ているってことはこりゃ、本当にこの大会は注目されているんだな…。

 

 

「ん。どうやら開会式が終わったようね」

 

 

どうやら開会式が終わったらしい。

同時にアリーナの中央にトーナメント表が映し出される。

確かホログラムっていったか?

改めてみると凄い技術だよなぁ。

お、どうやら俺達の対戦相手が表示される。

…とりあえず一回戦から当たりたくなかった二組とは当たらなかったか。

まあ、俺達の出来る限り頑張るとするか!

 

 

第12話「学年別トーナメント開催!前編」

 

 

◆ Side ラウラ

 

 

IS学園 第1アリーナ 観客席

 

 

「ふえ~…凄い人数だね」

 

「今回の学年別トーナメントは注目株が揃っているからな…。

 これだけ人が多いのも当然だ」

 

 

現在私と真優とチルノの三人は明日まで試合がないため今は観客席で待機している。

どうやらチルノはこれだけの人数が集まっているところを見るのは始めらしい。

まあ、ここまでの観客が集まるというのも非常に珍しい。

理由として考えられるのは私を含めた代表候補生が5名いるということと

アルトリアという織斑教官に匹敵、いや、凌駕するIS乗りの出現、

その業界ならば知らぬ者は一人もいない出資者“G”がここに来ているという情報、

そして、今回の大会が一般の者にも観戦することができるという要因が重なったためだろう。

だが、それを差し引いても今年の一年生の質は非常に高い。

…それ故に心配なことも多々あるのだがな。

 

 

「あ、箒達のチームが勝った」

 

「専用機が二機もいてしかも三人共下手な国家代表よりも良い動きをするからな。

 だが、相手をしていた連中もかなり筋が良い」

 

「どっちも動きがすごかったもんね…」

 

 

どうやら第一試合が終わったようだな。

勝者は…織斑一夏のチームか…。

彼らのチームは近接、中距離の戦闘に特化したチームだ。

相手もチームは攻防バランスのいいチームだったが一点突破の彼ら相手では部が悪かった。

もし彼等と当たらなければかなりいい成績を残せただろう…。

まさしく間が悪かったな。

最後の最後で機体の性能差が出てしまった。

代表候補生でも専用機持ちでも無い生徒ですらあのレベルなのだから恐ろしいものだ。

 

 

「そういえばチルノはラファール・リヴァイヴで出場するの?」

 

「うん。こっちの方が動きやすかったから」

 

 

ちなみに私達のチームの編成は

チルノ――ラファール・リヴァイヴ

真優――インパルスガンダム

私――シュヴァルツェア・レーゲン

チルノのリヴァイヴは普段登録されている全ての武装を失くし、

代わりにチルノが普段から腰に下げている剣と打鉄の近接戦ブレードを装備した

完全な接近戦特化型の機体だ。

私の私見だが近接戦闘のセンスはおそらくアルトリアに匹敵するだろう。

真優のインパルスガンダムは強固な装甲に高い機動力を持ち、

装備によって全てのレンジに対応できるマルチレンジのエキスパートといえる機体だ。

正直アルトリアよりも彼女の方が相手にしたくないな。

そして、私の愛機であるシュヴァルツェア・レーゲンは遠距離戦闘に特化した機体だ。

新しく搭載されたAICで相手の動きを止め、レールキャノンで敵を撃破するスタイルだが

このレールキャノンはすぐにパージできるから接近戦にも対応できる。

正直、私にしてみればAICもレールキャノンも邪魔な荷物に過ぎない訳だが…。

だが、この編成の中で戦うのならおそらく私が一番倒しやすいだろう。

しかし、我ながらかなり高水準の戦力が整っているな…。

ほとんど事故に近い形で結成されたチームだがうまく行けば優勝も夢ではないな。

さて、今日は私達の出番はないのだからゆっくり観戦させてもらうか…。

 

 

◆ Side セシリア

 

 

「そろそろ出番ですか…」

 

 

どうやら第五試合が終わったようですわね…。

わたくしとアルトリアさんは組む相手がいなかった簪さんを引き入れて参加しています。

ちなみに簪さんは本来のほほんさんと組む予定だったらしいのですが

そののほほんさんがクラスの方とチームを組んでしまってあぶれてしまったようなのです。

今にも泣きだしそうだったのでアルトリアさんと話し合った結果、

簪さんを最後のメンバーとして登録しました。

あの時、簪さんが凄く嬉しそうにしていましたけどご友人が少ないのでしょうか…?

これを機に仲良くなれるといいですわね…。

と、出撃する準備ができました。

 

 

「…準備できたよ」

 

「私も大丈夫です」

 

「そうですか…。では、参りましょうか」

 

 

どうやらお二人も準備は出来たようです。

相手は無名のチームですが油断も慢心もいたしません。

自身の慢心が敗北に繋がることをわたくしは身を持って知っています。

無名の中にも、とてつもない資質を持った方がいるはずですからね。

どんな時でも油断と慢心は禁物です。

 

 

「お先に、更識簪。打鉄、出撃する」

 

 

先に簪さんがカタパルトからバトル・フィールドへ射出されました。

おそらくカタパルトでアリーナのバトル・フィールドに射出する理由は

歩いて入るよりも飛んで入場した方が格好良いという理由で行っているそうです。

所謂入場の演出ですわね。

 

 

「次は私が…アルトリア・ペンドラゴン。セイバー・リリィ、参る!」

 

 

簪さんが射出されてしばらくするとカタパルトのランプが赤から青に戻りました。

次はアルトリアさんの番ですね。

アルトリアさんがカタパルトの上に乗ると簪さんと同じように

バトル・フィールドへ射出されました。

さて、最後はわたくしですわね。

 

 

「セシリア・オルコット、ブルー・ティアーズ…参ります!」

 

 

実はわたくし、こういった演出がとても気に入っています。

この演出を考えた人とは面白い話ができそうですわ。

なにせ、この射出される瞬間こそ心が躍るのですから。

もし、向かう先が戦場でしたらまったく心境は違うのですがこの場での戦いはスポーツです。

余計な感情を持たずに楽しんでいきましょう。

さあ、参りましょう!

 

 

IS学園 第1アリーナ バトル・フィールド

 

 

カタパルトからバトル・フィールドへ射出され、景色が鋼鉄に包まれたピットから

人工芝が生い茂るバトル・フィールドに変わりました。

わたくしの隣にはセイバー・リリィを纏ったアルトリアと打鉄を纏った簪さんがいます。

相手は…ラファール・リヴァイヴ3機ですか。

特殊な能力はありませんが使い手によっては非常に厄介な相手ですね。

 

 

「フフフ…」

 

「…?」

 

 

ピ…ピ…ピ…ブーッ!!

 

 

…何か様子が変ですわね。

さっきから相手のチームの皆さんは不気味に笑っています。

いったい何がおかしいのでしょうか?

なにやら嫌な予感がしますわね…。

試合開始のブザーが鳴った瞬間、とてつもない悪寒を感じました。

 

 

「っ!?散開!!」

 

 

ヒュインッ!!

 

 

わたくしは自分の直感を頼りにお二人に指示を出して散開しました。

その直後に先ほどまでわたくし達がいた場所へ大量のロケット弾が通り過ぎて行きます。

気がつかなければいきなり負けていましたわ…。

…そして、相手がどんな装備をしているのか気になって相手チームの装備を見ましたが

わたくしはその行動を少し後悔しました。

なぜなら…

 

 

「これは…!」

 

 

相手チームの持っている武器はどれも重火器…。

しかも連射が効くものばかり。

しかもラファール・リヴァイヴは量産機であるにも関わらず装備可能な武装が

全部で10もあるという量産機にあるまじき拡張領域をもっています。

そんな機体に重火器ばかりを装備した機体で編成したのがこのチームなのでしょう。

そして、なによりも厄介なのは…。

 

 

「ヒャッハー!!相手チームは消毒だぁ!!!」

 

「今宵ばかりの弾幕演舞。どうぞ楽しんでいってください」

 

「Hey!Are you OK?Let’s party!!」

 

 

このチームの方は全員トリガーハッピーだということです。

しかも非常に良い笑顔で次々と乱射してきます。

…ああ。簪さんが恐怖のあまり泣きそうになっています。

アルトリアさんも顔色がかなり悪いですわね。

まあ、それもそうでしょう。

アルトリアさんのセイバー・リリィは反応速度を重視しすぎたために

装甲が殆ど紙と言っても過言でない程に装甲が薄いのです。

少しでも足を止めればあっという間にシールドエネルギーが0にされるでしょう。

このままではじり貧になることは避けられませんわね。

仕方ありませんわ…。

いきなり手札を見せるわけにはいきませんがこの状況ではそう言っていられません。

 

 

「ブルー・ティアーズ!」

 

 

ドシュンッ!ドシュンッ!ドシュンッ!

 

 

わたくしはブルー・ティアーズをわたくしの周囲に展開させると

展開したブルー・ティアーズで次々と飛んでくるミサイルの雨を迎撃しました。

迎撃されたミサイルは爆発すると同時に誘爆してわたくし達の視界を覆います。

それと同時に相手チームの標的がアルトリアさんではなくわたくしに集中しました。

おそらくブルー・ティアーズを展開している時はわたくしが動けないという弱点を

しっかりと調べてきたからなのでしょう。

ですが、その情報は既に意味を成しません。

 

 

「その隙…いただきますわ!」

 

 

ズキュンッ!!

 

 

「なっ!?」

 

 

ドガァーンッ!!!

 

 

「きゃあっ!?」

 

 

直感を頼りにブルー・ティアーズを操り“ながら”わたくしは爆炎を駆け抜け、

すれ違いざまに敵のミサイルランチャーをスターライトMk-Ⅲで撃ち抜きました。

無論、ミサイルランチャーにはまだまだミサイルが残っていたので誘爆を起こし

一撃とはいかないものの、大ダメージを与えることができました。

 

 

「そこ!(シャキンッ」

 

 

ズバァッ!!

 

 

「これでトドメですわ!」

 

 

ドガァッ!!

 

 

さらに、爆発をもろに受けたことで大きな隙が出来た一機をインターセプターで

シールドエネルギーの消耗が最も激しい顔を斬りつけ、トドメに大地へ蹴り落としました。

 

 

「うぅ…」

 

「まずはひとつ…」

 

 

大地に叩きつけられただけならまだ動けたでしょうが

あのリヴァイヴは先ほどの誘爆で大ダメージ受けていました。

もう彼女がこの試合で戦闘に参加することは不可能でしょう。

これで一機撃破です。

ですが一機撃破しただけで喜んではいられません。

残りの二機も速やかに撃破しなくては…

 

 

「そ、そんな…あの情報は嘘だったの!?」

 

「嘘ではありませんが少し古かったですわね」

 

 

わたくしがティアーズを展開したまま高機動戦闘を行えると想定していなかったのでしょう。

残りの二機のうち一機が動揺のあまりに動きが硬直しています。

あまりに隙だらけです。

このまま一気に撃墜させていただきましょう。

 

 

ズキュンッ!ズキュンッ!ズキュンッ!ズキュンッ!

 

 

「あ、あばばばばばば…」

 

 

展開したブルー・ティアーズで瞬時に相手の周囲を取り囲むと

そのまま攻撃の指示を出し、相手の逃げ場を無くしていきます。

おそらく今の彼女はブルー・ティアーズの攻撃から避けることに必死でしょう。

だから、わたくしへの注意が散漫になっています。

わたくしはスターライトMk-Ⅲに追加されたチャージモードにモードを変更し、

ブルー・ティアーズの攻撃を回避することに集中している一機の真下へ潜り込みます。

 

 

「狙い撃ちますわ」

 

「ひょっ?」

 

 

ズキュゥンッ!!

 

 

「あ…」

 

 

ドガァーンッ!!

 

 

「あべしっ!」

 

 

そして、チャージが完了したエネルギー弾を敵機に撃ちこみ、

反応が遅れた彼女はエネルギー弾の大爆発とブルー・ティアーズの弾幕が殺到し、

彼女が操っていたラファール・リヴァイヴのシールドエネルギーは0になりました。

これで二機目…あとは一機ですが…。

 

 

「Present for you!」

 

 

ガガガガガガガガガガガガガガガガッ!!

 

 

「くっ…」

 

 

あれは…厄介ですわね。

味方が撃墜されてもまったく動揺せず、ただ、本能の赴くままマシンガンを乱射しています。

彼女が張る弾幕は非常に厚く、遠距離への攻撃手段がほとんどないアルトリアさんは

彼女相手にかなりの苦戦を強いられているようです。

ですがあれだけマシンガンやミサイルを乱射したのです。

そろそろ弾切れを起こすでしょう。

 

 

カチッ!!

 

 

「Oh…」

 

「もう…落ちて…!!」

 

 

ドガァーンッ!!

 

 

案の定彼女が使っていた全ての火器が弾切れになると彼女の後ろからまだ涙目の簪さんが

4つのハンドグレネードを投擲し、彼女の目の前で爆発させました。

第爆音と共に大きな火球が彼女のラファール・リヴァイヴをあっという間に包み込み、

彼女は悲鳴を上げる間もなく気絶しました。

…わたくしもあまり人のことが言えませんがかなりえげつない攻撃ですわね。

 

 

『勝者、チーム・オルコット!』

 

 

IS学園 第1アリーナ 第2ピット

 

 

なんとか一回戦を突破することができましたわ…。

まさか一回戦からこれほどまで苦戦することになるとは…。

相性が悪かったとはいえアルトリアさんの爆発力を生かせなかったのが痛かったです…。

まあ、このチームの弱点に気がつくことができただけまだいいでしょうが…。

今、わたくし達の弱点は…

 

 

「活躍できなかった活躍できなかった活躍できなかった活躍できなかった活躍できなかった活躍できなかった活躍できなかった活躍できなかった活躍できなかった活躍できなかった活躍できなかった活躍できなかった活躍できなかった活躍できなかった活躍できなかった活躍できなかった活躍できなかった活躍できなかった活躍できなかった活躍できなかった活躍できなかった活躍できなかった活躍できなかった活躍できなかった活躍できなかった活躍できなかった活躍できなかった活躍できなかった活躍できなかった活躍できなかった活躍できなかった活躍できなかった活躍できなかった活躍できなかった活躍できなかった活躍できなかった活躍できなかった活躍できなかった活躍できなかった活躍できなかった」

 

「怖かった怖かった怖かった怖かった怖かった怖かった怖かった怖かった怖かった怖かった怖かった怖かった怖かった怖かった怖かった怖かった怖かった怖かった怖かった怖かった怖かった怖かった怖かった怖かった怖かった怖かった怖かった怖かった怖かった怖かった怖かった怖かった怖かった怖かった怖かった怖かった怖かった怖かった怖かった怖かった怖かった怖かった怖かった怖かった怖かった怖かった怖かった怖かった怖かった怖かった怖かった怖かった怖かった怖かった怖かった怖かった怖かった怖かった怖かった怖かった怖かった怖かった怖かった怖かった怖かった怖かった怖かった怖かった怖かった怖かった怖かった怖かった怖かった怖かった怖かった怖かった怖かった怖かった怖かった怖かった」

 

 

「………」

 

 

お二人のメンタルの弱さですわね…。

アルトリアさんは早々にセイバー・リリィを解除したと思ったら

ピットの隅っこで「の」の字を書き始めましたし、簪さんはアルトリアの隣で

体育座りをしながらハイライトを失くした眼で壁を見ています。

確かこれが俗に言う『お豆腐メンタル』でしたっけ?

簪さんはともかくアルトリアさんは相性が悪かったのですからそんなに落ち込まなくても…。

とにかく、お二人はもう少し気を強く持ってもらわなければ…。

トーナメントはまだ始まったばかりですからね

 

 

◆ Side チルノ

 

 

IS学園 第1アリーナ 観客席

 

 

「凄い…」

 

「ビットを操りながらあんな動きを…」

 

 

セシリア達の一回戦はセシリア達の勝利に終わった。

セシリア達の戦闘で会場は歓声に包まれている。

それほどまでにさっきの試合は手に汗握る名試合だったとあたいは思っている。

セシリア達もそうだけど負けた人達の動きも凄かった。

だから観客席で見ていた人達は熱狂にも近い状態になっていた。

こんな試合なんてたぶん早々に見られるものじゃないだろうから…。

 

 

「以前に私が手に入れていたデータではビットを操りながら動けなかったらしいが

 どうやらその弱点は既に克服されているようだな…」

 

 

あたいと真優がセシリア達の試合に圧倒されている隣でラウラが冷静に分析している。

でもラウラの頬には冷や汗がつたっている。

前に真優から聞いた話だとセシリアはビットを展開している時は

あんな高機動戦闘をすることはできなかったらしい。

だけど、今のセシリアはその弱点を克服している。

おそらくラウラは対セシリアとの戦闘をシミュレーションし直しているんだろね。

ただ、これだけは言える。

 

 

「おもしろくなってきたね」

 

「ああ」

 

「うん」

 

 

おもしろくなってきた。

相手が強ければ強いほどやる気が出てくる。

自然と拳に力が入る。

フリーパスとかにはまったく興味がなかったけどあたいはセシリア達と戦いたい。

全力で戦ってセシリア達に勝ちたい。

そんな想いがあたいの中で渦巻いている。

隣に立っている真優もシミュレーションをしているラウラも言葉には出していないけど

二人の眼にも闘志の炎が宿っている。

 

 

「そうと決まれば部屋に戻って作戦を練るぞ」

 

「OK」

 

「わかった」

 

 

生憎学年別トーナメントが行われている間はアリーナを使うことができない。

だけど部屋に戻って戦術を練ることはできる。

なら、すぐに部屋に戻って考えないとね。

だって、セシリア達と戦うのなら決勝まで進まなきゃいけないから。

だから…セシリア達も決勝まで負けないでね!

だって…勝つのはあたい達なんだから!!

 

 

◆ Side シン

 

 

IS学園近辺 PM.09:00

 

 

「どうやらアルトリア達は無事に勝ったようだな」

 

『ええ。とはいっても彼女じゃなくてあのイギリスの子の活躍によるものだけどね』

 

 

IS学園の近辺で警護をしている俺に生徒会長から連絡が入った。

どうやらアルトリア達は無事に一回戦を突破したらしい。

アルトリアの機体は反応速度“だけ”を極限まで強化した機体だ。

それ以外の性能は正直どの国の量産機よりも遥かに劣る。

まさにデータ取りの為に製作された機体だな。

それでもアルトリアがあそこまでの強さを誇るのは本人の能力によるものだ。

それ故に相手の数が増えると一気に不利になる。

まあ、そのためのチーム戦だったのだろうが…。

 

 

『…ねぇ』

 

 

唐突に生徒会長が俺に話しかけてきた。

なんとなくだがその声は暗さを含んでいる。

何か悩み事でもあるのか?

とりあえず話を聞いておくだけは聞いておくか。

 

 

「なんだ?」

 

『貴方ってISのことが嫌い…?』

 

 

生徒会長が俺に出した問いかけは俺が初めて篠ノ之博士と出会った時と同じ質問だった。

ISのことが嫌い…か。

そんなことを聞く理由は俺が撃墜しているあのIS“もどき”の残骸と

それを操っていた物言わぬ骸になった者達を見ているからだろう。

俺が撃墜したIS“もどき”の大半は原型が無くなるまで破壊されている。

これを見てISが嫌いだと思わない方がおかしいだろう。

まあ、一応彼女にも話しておいた方がいいな。

そう思って俺は口を開く。

 

 

「そうだな…確かにISは今までの世界を崩壊させるには十分すぎる強さを持っていた。

 それによって多くの人の人生が狂わされたということも事実だ」

 

 

確かにISはこの世界を大きく歪ませるきっかけとなったものだ。

それによって決して少なくない人の人生が狂わされた。

多くの男性はISの存在に忌避し、開発者である篠ノ之博士に憎悪を抱いているだろう。

 

 

『なら…』

 

「だが、それはあの事件を起こし、ISという存在を歪めた者達の罪だ。ISの罪じゃない」

 

『え…?』

 

 

だが、その憎悪を向けるべき対象はISでも篠ノ之博士ではなく。

ISという存在を兵器という存在に歪ませた者へ向けるべきだ。

決してISやISを開発した篠ノ之博士に向けられるものではない。

ならば、俺がISを嫌うというのは筋違いだ。

 

 

「それに私は寧ろISという存在に好感を持っている」

 

 

俺はISという存在自体は寧ろ好感を持っている。

ISがもたらしたものはなにも害悪だけではない。

ISに使われているセンサーの技術はより遠くの宇宙をみることができるようになった。

ISに使われているパイロット保護機能の技術は医療の現場で多くの人を救っている。

ISに使われている拡張領域の技術は人々の生活を便利にしている。

そして、IS自身も災害が起こった時、多くの人々を救っている。

そう。ISは人類の発展に貢献し、解け込んでいる。

 

 

「私が嫌っているのはそのISの意味を履き違えた馬鹿者だけだ」

 

『そう…』

 

「これで納得していただけたか?」

 

『ええ。十分よ』

 

 

どうやら生徒会長は俺の回答に納得したようだ。

だが、その声はどこか不満を持っている。

しっかりと問いに応えたつもりだったのだがな…。

何か彼女に不満があるような回答があったのか?

…いや。違うな。

彼女は俺の答えに納得している。

では何故不満があるんだ…?

だめだ。まったくわからん…。

今度アルトリアに相談してみるか…。

なんだか凄く怒られそうな気がするがな…。

 

 




どうも明日香です。
今回はセシリア大活躍の学年別トーナメント編の前編となりました。
尚、本作では原作と違って一般の客もこのトーナメントの観戦に来ています。
そのため本家のモンドグロッソではないにしろかなり盛り上がっています。
今で言うとワールドカップの予選にあたるような位置付けになります。
さて、次回は真優達の第一回戦をお送りします。
それでは、失礼します。

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