IS~衛宮の娘は遥か高き宇宙を目指す~   作:明日香

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※この世界のシャルロットは超がつくほどのブラコンです。



第13話「学年別トーナメント開催!中編」

 

 

僕がお兄ちゃんと一緒にセイバーチームの一員になってから2ヵ月が過ぎた。

偶然お父さんのお仕事をお兄ちゃんと一緒に見学していた時にちょっとした好奇心で

お父さん達が作られていたIS…ツヴァイとストライクに触れた瞬間、僕とお兄ちゃんは

未完成だったこの2機のISを起動させていた。

僕はまだ女の子だったからまだ良かったんだけどお兄ちゃんは男の子だったから

すごく問題になってしまった。

だって男の子のIS操縦者は今のところ日本にいる織斑一夏って子だけだったから。

もし世界各国の研究所が聞いたら絶対お兄ちゃんをモルモットにするに決まっている。

だからお父さんは業務提携しているあの企業に僕とお兄ちゃんを預けた。

 

 

「ひさしぶりじゃな。坊主にお嬢」

 

「ダニエル主任!?もしかして他にも…」

 

「うむ。他にもオーギュスト、エドガー、エリック、ジャック、セリアもおるぞ」

 

「凄い…黎明期のデュノア社を支えた天才達が一堂に集結しているなんて」

 

「ほっほっほ。それだけじゃないぞい」

 

 

そこで僕とお兄ちゃんは嘗てデュノア社を支えていた天才達と再会し、

 

 

「ハロハロ~。みんなのアイドル束さんだよ~」

 

「「え?ええええええええええええ!!!?」」

 

 

世界を変える発明をした世界最高峰の頭脳を持った天才『篠ノ之束』と出会った。

そして、僕達は天才達が集結したこの【セイバーチーム】の一員として働き始め、

そこで僕はツヴァイのデータ収集をお兄ちゃんはストライクのデータ収集を任せられている。

 

 

「いや~まさかあのじゃじゃ馬を乗りこなせる人材がいたなんてね~」

 

「うむ。この前依頼した元代表候補生では話にならなんだ」

 

「え?お兄ちゃんは普通に動かせているけどそんなに凄いことなの?」

 

「シャルル様がアレを動かせているのは単にシャルル様が持つ天賦の才によるものでしょう」

 

 

なんでも僕とお兄ちゃんが起動させたISはじゃじゃ馬といっても過言じゃない機体で

特にお兄ちゃんのストライクは凄くピーキーな仕上がりになっていて

日本の代表候補生だったIS学園の教員が扱った時は機体を制御できずに墜落したとか。

博士達によるとお兄ちゃんが僅かな訓練だけで性能を十全に扱えているのは

僕とお兄ちゃんが持っている天賦の才によるものらしい。

そうだとするとお兄ちゃんの妹である僕も凄く鼻が高い。

だって、僕の自慢のお兄ちゃんだもん!

それからが1ヶ月が過ぎて僕とお兄ちゃんはIS学園に入学することになった。

理由はツヴァイとストライクの後継機に当たるEセイバー…インパルスガンダムの

操縦者である真優のサポートとツヴァイとストライクの性能試験をするためだ。

そして、僕達は今、第一回戦の相手と対面している。

だけどお兄ちゃんと組んでいる僕に敵はない。

さあ、はじめようか。

僕とお兄ちゃんの優勝を邪魔する人には…落ちてもらおっか…。

 

 

第13話「学年別トーナメント開催!中編」

 

 

◆ Side 箒

 

 

IS学園 第1アリーナ 観客席

 

 

無事に一回戦を突破した私達は観客席でデュノア達の試合を見ている。

いや、試合という言葉という生易しいものではない。

私達の眼の前で繰り広げられているものは…

 

 

「なんだあの動きは…」

 

「あ、圧倒的すぎる…」

 

「確かに専用機は量産機よりも性能が高くなっているけどあそこまで差はでないわよ…」

 

 

完全なワンサイドゲームだった。

デュノア達の対戦相手は半狂乱になりながらアサルトライフルを乱射しているが

射線上にいるデュノアには一発も命中していない。

性能が圧倒的に違いすぎる。

いや、性能だけじゃない。

デュノア自身の動きも全く無駄のない非常に洗練された動きだ。

それでいて多くの人を魅了する機動で対戦相手を圧倒している。

 

 

「あれは天性の才能によるものね。まさしく天才と言ったところかしら…」

 

 

デュノアの動きを見ながら鈴音は頬に冷や汗を掻きながら私達に解説してくれる。

天才…選ばれた人間のみが持つ圧倒的な才覚を持つ者の総称。

なるほどデュノアにはぴったりの言葉だな。

デュノアはまるで踊るように相手の弾幕を掻い潜り、右手に持った光の刃で相手を切り裂いた。

それだけで相手の打鉄は機能を停止し、動かなくなる。

残りの2機は…。

 

 

「うわぁ。見事にハチの巣かよ…」

 

 

シャルロットが両手に持っているガトリングガンの洗礼を受けて撃墜されていた。

なんというか哀れだ…。

そして、撃墜した当の本人であるシャルロットはニッコリと笑顔を浮かべている。

彼女の笑顔は可愛らしいが眼の前の状況だけにその笑みは非常に恐ろしい。

観客席は熱狂している者と顔を真っ青にしている者で別れている。

それほどまでに圧倒的な強さだったからだ。

 

 

「決勝戦まで当たらないのが唯一の救いね…」

 

「「ああ…」」

 

 

鈴音の言うとおり決勝に行くまで当たらないのが幸いだな…。

正直あんなトリガーハッピーなどと戦いたくない。

おそらくデュノア達と私達との相性は最悪だ。

対戦したらハチの巣にされて負ける未来しか見えない…。

おそらくまともに戦えるのはアルトリア達のチームと真優達のチームだけだろうな。

…自分で言ってて悲しくなって来た。

このトーナメントが終わったらより一層鍛錬しよう。

せめてアルトリアと共に戦える位までな…。

 

 

◆ Side 真優

 

 

IS学園 第1アリーナ 第1ピット

 

 

「すっご…」

 

 

シャルロット達の試合の試合はシャルロット達の完勝という形で終わった。

だけど他のチームの人は士気が落ちるどころか寧ろやる気に満ちていた。

特に次にシャルロット達と試合をする人達なんかは眼をギラギラに輝かせている。

たぶん思わぬ強敵の出現に喜んでいるんだと思う。

 

 

「まさかこれほどとは…」

 

「あの二機の弱点は二人にとってあってないようなものだね…」

 

 

チルノとラウラは額から冷汗を掻いている。

セシリア達以外でこんな強敵がいるとは思っていなかったのかも。

だけど二人の冷汗はすぐに治まった。

他のチームの人と同じくやる気に満ちた表情をしている。

たぶんシャルロット達にライバル意識を持ったみたいだ。

もちろん私もアルトリア達がこの試合を見ているからこのまま負けるつもりない。

 

 

「どうやらこっちの出番が来たみたいだね」

 

「そのようだな」

 

 

どうやら私達の番が来たらしい。

モニターで対戦を見ていたけどどっちのチームも量産機にもかかわらず

セシリア達のような専用機持ちに匹敵する程の動きだった。

やっぱりここに来ている人達はみんな強い。

さっきまでの試合を見ながら私は改めて実感する。

ここは、世界でもトップクラスのIS乗り達が集まる場所だと。

 

 

「私から先に出るぞ」

 

「「わかった」」

 

 

先に準備が終わったラウラがカタパルトへ歩いていく。

うん。やっぱラウラ達はISの展開をする早さが段違いに早いね。

やっぱり適正ランクの高さが重要なのかな?

セシリアと鈴音とシャルロットとシャルルはラウラと同じくらいの早さで、

アルトリアに至っては三人よりもさらに早い。

一夏だって私よりも展開をするよりもずっと早い。

私も早く使いこなさないと…。

インパルスにはおじさん達の想いが詰まった機体なんだから!

 

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒ、シュヴァルツェア・レーゲン。出撃する!」

 

 

ガシュンッ!!

 

 

レーゲンを纏ったラウラがカタパルトからバトル・フィールドへ射出された。

やっぱりラウラはこう言ったのに慣れているのかな?

私の初陣の時はあまり意識しなかったけど結構速いんだね…。

カタパルトを使って入場するのはその方が格好良いからかな?

 

 

「よっと…。んじゃ、先に行っているね。真優」

 

「うん。私もすぐに行くね」

 

 

そんなことを考えているとチルノも準備が済んだようだ。

チルノもさっきのラウラと同じようにカタパルトへ歩いていく。

その左手には打鉄の標準装備である接近戦ブレードが握られている。

ラファール・リヴァイヴの使い手の中ではかなり異端に当たる装備だ。

でも、今のチルノはこの装備が妥当なんだと思う。

 

 

「チルノ、ラファール・リヴァイヴ。行くよ!!」

 

 

ガシュンッ!!

 

 

リヴァイヴを纏ったチルノもカタパルトからバトル・フィールドへ射出される。

あとは私だけだ。

装備は戦闘中にも変えられるけど今回はフォースシルエットにしよう。

今のところこのシルエットが最も使い慣れているからね。

 

 

「衛宮真優!インパルスガンダム、行きます!!」

 

 

カタパルトに足を固定した私はカタパルトからバトル・フィールドへ射出される。

本来ならここで強いGを感じるはずだけどISの機能であるPICがGを軽減してくれる。

まあ、そうでなきゃ若干16歳の私達がISに乗れるわけないもんね。

この技術を発明した博士は本当に凄い。

さあ、行こう。

チルノとラウラが待っている舞台へ!

 

 

IS学園 第1アリーナ バトル・フィールド

 

 

「二人とも、お待たせ!」

 

 

バトル・フィールドへ射出された私はチルノとラウラが待っている

バトル・フィールドの中央へ飛翔する。

うん。やっぱりこのシルエットが一番空中戦をしやすい。

機動性と運動性を重視したこのシルエットはもっとも無駄がない。

装備はインパルスの標準装備にビームサーベルと拡張領域に

接近戦用のブレードを足しただけだけど

それを補って余りある機動力と運動性能がある。

対ISとの戦闘はこのシルエットが最適の筈だ。

 

 

「どうやら相手も来たようだ」

 

 

ピ…ピ…ピ…ブーッ!!

 

 

しばらくすると私達の相手がこっちに飛んできた。

機体は3人とも打鉄を使っている。

装備は近接戦闘仕様が二人と中距離戦闘仕様が一人か…。

私達の編成とよく似た編成だ。

そして、試合開始のブザーが鳴った。

 

 

「っ!」

 

 

試合開始のブザーが鳴った瞬間、相手チームのリーダーと思われる子が

瞬時加速を使って一気に距離を詰め、接近戦用ブレードを振り下ろしてきた。

もちろんビームサーベルを抜く暇もないし、ブレードを展開するなんてもってのほか。

だから私は左手のシールドを構えた。

 

 

ガキィンッ!!

 

 

「はじめましてだな!エミヤマユ!!」

 

 

なんとか斬撃を防ぎきることができた。

スペックとしてはインパルスの方が上だけどそれ以上にこの子の気迫が凄い。

するとリーダー格の子は接触回線で直接私に通信を開いて私に語りかけてきた。

一体なんのつもりなのだろうか?

 

 

「貴女は…!?」

 

「グラディス・エーカー。君という存在に心奪われた女だ!!」

 

「はいっ!?」

 

 

…な、なにを言っているんだこの子は!?

私に心奪われた!?

私の記憶の中でこの子…エーカーさんが心奪われるようなことをしたつもりはない。

なのにエーカーさんは私に心奪われたと言っている。

私が一体何をしたというの…?

と、とにかく応戦しないと!

 

 

「はあっ!!」

 

 

ガァンッ!!

 

 

「おっと。なかなか気の強いお嬢さんだ」

 

 

シールドを持ったままエーカーさんをタックルで弾きとばした私は

エーカーさんが体勢を崩した隙を見計らって私もビームライフルを腰にマウントして

拡張領域に登録してあった接近戦用ブレードを右手に展開して

再び距離を詰めてきたエーカーさんが連続で放つ剣撃をブレードで受け止める。

 

 

ガキィンッ!

 

 

「貴女は私のどこに心奪われたというの!?」

 

 

ブレードとブレードがぶつかり合い、金属同士がぶつかり合った時に鳴る

独特の音がアリーナ全体に響き渡る。

ブレードで防ぎながら私は接触回線から私のどこに心を奪われたのかと叫んだ。

 

 

ガリガリガリ!

 

 

「ふっ。クラス対抗戦の際に襲撃してきたあの異形に立ち向かったその勇気と

 死と隣り合わせの状況でも果敢に戦ったその強き心も持っている!」

 

 

エーカーさんは私の問いかけに対してさも当然のように答えてきた。

どうやらあのクラス対抗戦の襲撃事件がきっかけらしい。

だけどそれなら私よりも私と共に戦ったアルトリア達に好意が行ってもおかしくない筈だ。

私はエーカーさんが言うような強い人間じゃない。

だけどエーカーさんはそんな私のことなどお構いなしに語り続ける。

 

 

「そして!凡人の域を出ない強さにも関わらず愚直に鍛錬を続けた末に、

 天才達と共に肩を並べて共に戦うその姿!これが惚れずにいられるか!!」

 

 

…よくはわからないけどエーカーさんは本気で私に惚れているようだ。

だけど、この人への返事は決まった。

 

 

「なら…私は全力で貴女と戦って勝つ!!」

 

「良く言った!エミヤマユゥッ!!」

 

 

エーカーさんは私を一人の人間として見てくれている。

ならば私も全力でエーカーさんと戦う。

手を隠すとかそんなまどろっこしいことは一切しない。

一回戦から手札を全て晒すなとシンから言われるかもしれないけどそんなことはどうでもいい。

アルトリア達以外で初めて私を認めてくれたエーカーさんへの礼儀だ。

だから私はあの時のようにあの力を使う!

 

 

「投影開始【トレースオン】!!」

 

 

一旦エーカーさんから距離を取り、私はあの時と同じようにあの力を開放する。

力を解放すると私の頭の中へ大量の情報が流れ込んでくる。

その中でこの状況で最も有効な情報を瞬時に導きだし、その情報を私の身体に投影させる。

それだけじゃない。

私は最も強い私のイメージをそのまま私の身体に投影させる。

そして、ブレードを拡張領域にしまい、近接戦闘用シルエット【ソードシルエット】から

エクスカリバーだけを展開させ、両手に持つ。

これで準備はできた。

 

 

「行くよ!!」

 

 

ズガァンッ!!

 

 

「ぬっ!?」

 

 

一気に距離を詰めて両手に一振りずつ持ったエクスカリバーを振り下ろす。

エーカーさんはブレードで防ぐけれど私は力まかせにエーカーさんを弾きとばす。

弾きとばされたエーカーさんは動揺しつつも瞬時に体勢を立て直した。

やはり彼女もかなりの訓練を続けてきた戦士だ。

 

 

「ふっ。ならば私も奥義をお見せしよう!!」

 

 

エーカーさんはそういうと左手にも近接用ブレードを持った。

おそらくあの状態がエーカーさんの本気の姿。

だが、そんなことは関係ない。

私は、全力でエーカーさんに勝つ!!

 

 

「はあああああああああああっ!!!!!」

 

「おおおおおおおおおおおおっ!!!!!」

 

 

瞬時加速を使って私とエーカーさんは一気に距離を詰め、

私はエクスカリバーをエーカーさんはブレードを渾身の一撃で振り下ろす。

 

 

「エクス!!!!」

 

「切り捨て!!!!」

 

「カリバー!!!!!」

 

「御免!!!!!」

 

 

私の全力を籠めた一撃がエーカーさんの渾身の一撃とぶつかり合う。

私達を中心に衝撃波が発生するけど今はそんなこと関係ない。

今、この瞬間に私の全てをエーカーさんにぶつける!!

 

 

ピシィッ!!

 

 

「なんとっ!?」

 

 

バキィンッ!!

 

 

エーカーさんが持っているブレードにひびが入り、

その罅があっという間にブレードの刀身全体へ広がっていく。

先ほどの衝撃に耐えられなかったのだろう。

エーカーさんのブレードは粉々に砕け散った。

このまま…押し切る!!!

 

 

「これで!!!終わり!!!!」

 

 

ズバァッ!!

 

 

「ふっ。流石、私の心を奪った乙女だ…」

 

 

そのまま私はエクスカリバーでエーカーさんの打鉄を両断した。

絶対防御を発動させたエーカーさんの打鉄は機能を停止する。

私とエーカーさんとの勝負は私の勝ちという形で終わった。

エーカーさんの顔は負けたにも関わらずとても晴れ晴れとしている。

互いに全力を出しあったのだから悔いが無いんだと私は勝手に思っている。

 

 

「今回は私の勝ちだね。エーカーさん」

 

「ああ。君の勝ちだ。エミヤマユ」

 

 

私はエクスカリバーを拡張領域に収納し、腰にマウントしてあった

ビームライフルを右手に持ち直し、少し遠くで戦っているチルノとラウラの許へ向き直る。

そう。まだ試合は終わっていない。

エーカーさんとの戦闘でシールドエネルギーがレッドゾーンに突入しているけどまだ動ける。

早くチルノとラウラと合流しないと…。

 

 

『勝者!チーム・エミヤ』

 

 

試合終了のブザーが鳴った。

どうやらチルノとラウラも相手を倒してきたらしい。

チルノとラウラがいる方へ向くとチルノとラウラは私にサムズアップしている。

その隣にはまるでギャグ漫画のように頭から地面に刺さっている対戦相手がいた。

なんというか…凄くシュールだ。

私の後ろにいるエーカーさんも苦笑いで地面に突き刺さった味方を見ている。

まあ、なんにせよ無事に勝ててよかった。

とりあえず今日はラウラのお説教は覚悟しなきゃいけないかな…。

うん。今のうちに言い訳を考えとこ…。

 

 

◆ Side 簪

 

 

IS学園 第1アリーナ 観客席

 

 

「これは…!」

 

 

今日の最後の試合を見ていた私達は衛宮さんとエーカーさんの一騎打ちに

視線を釘付けにされていた。

一瞬だったけど私達の視線を釘付けにするには十分すぎるほどの名勝負だった。

 

 

「あのエーカーさんに勝つなんて…」

 

「そこまで彼女は有名なのですか?」

 

「ええ。わたくし達代表候補生の中では非常に有名な方ですわ」

 

 

グラディス・エーカーという名前は私達代表候補生の中でも一際有名な人物だ。

アメリカ空軍のエースパイロットの夫婦の娘として生まれ、

戦闘機及びISの適正…特に空中での高機動戦闘の適正が異常なまでの高さを誇り、

13歳の時にアメリカの新たな国家代表としてIS研究所にスカウトされていた。

だけど彼女は『興が乗らん!』と言って研究所のスカウトを蹴ってアメリカ空軍に入隊、

彼女の両親や両親の部下達による地獄のような訓練を乗り越え、

今はこの学園の一生徒として在学している。

肩書無しの専用機無しの生徒の中ではエーカーさんは最強だ。

そんなエーカーさんと衛宮さんの戦いは名勝負だったんだけど…。

 

 

「ですが、マユと彼女の戦いは良かったのですが…」

 

「ええ…」

 

「なんというか…ごめんなさい」

 

 

エーカーさんのチームのメンバーである本音と一組の相川さんと

衛宮さんのチームのメンバーであるチルノさんとボーデヴィッヒさんとの戦闘は

『これはひどい』と言いたくなるようなものだった。

この4人の戦闘を3行でまとめるなら…

 

 

・試合開始直後にチルノさんがブレードで二人を一ヶ所に弾きとばす。

・ラウラさんが二人をワイヤーでまとめて巻き取って地面に叩きつける。

・二人揃って犬神家のように頭から地面に刺さって戦闘不能。

 

 

といった感じになる。

相手が相手だったから負けるとは思っていたけどまさかこんなにも早く負けるなんて…。

でもこれでわかったことがある。

チルノさんはなにかとてつもない切り札を隠し持っている。

それがなにかまではわからないけれど試合の勝敗を左右するほどのものだとわかる。

できれば決勝戦までには見ておきたいけどうまくいくかどうか…。

デュノアさん達のチームのこともあるし、今日は3人で対策を練った方がいいね…。

私だってこのトーナメントに優勝したいから…。

もし、私が優勝したら姉さんは誉めてくれるかな…?

 

 

◆ Side 千冬

 

 

IS学園 寮長室 PM09:00

 

 

「これで1年生の一回戦は全て終わりましたね!」

 

「ええ…」

 

 

先ほどの試合で今日予定されていたトーナメントの第一回戦の後半が全て終わった。

一般人も観戦することが決まった今年のトーナメントは色々と不安な要素があるが

幸い、今のところ大きなトラブルは報告されていない。

起こったトラブルと言えば生徒達が無断でトトカルチョをしていたくらいだ。

だが、ひとつ気がかりなところがある。

 

 

「それにしても今年の一年生の皆さんは凄い人達ばかりですね」

 

「まったくです。今年はIS学園史上最も優秀な生徒が集まった年でしょう」

 

「そうですね~。それじゃあ、失礼しました」

 

 

その気がかりとは今年入学してきた者達のIS適正の高さだ。

IS学園も設立されてまだ10年も満たない教育機関だが今年の生徒の質の高さは異常だ。

確かにこの学園には更識楯無をはじめとする非常に優秀なIS乗りが現れる場合がある。

だが、今年はその数が多すぎる。

特にペンドラゴンは教師陣を容易く打ち倒すだろう。

それほどまでに今年の入学生達の質の高さは異常だ。

寮長室から出ていった山田先生や他の教師陣は暢気に構えている節があるが、

クラス対抗戦の件もあってどうも胸騒ぎがする。

今更かもしれないが色々と警戒しておいた方がいいだろうな。

ふと、私は掃除されて綺麗になったデスクの上に乗っている写真立てを見た。

そこには仏頂面の私と上機嫌な束、そして私達の恩師である男性が映っていた。

だが、この写真に写っている男性には二度と会うことはできない。

あの日の出来事は今でも忘れることはできない…。

そう、あの日…

 

 

『ミサイルが…――さんの家に…?』

 

『織斑!返事をしろ!』

 

『わ、私は…私は…!』

 

『っ!織斑!!』

 

『え…?』

 

 

次々と降り注ぐミサイルから日本の人々を守るために私は未完成だった白騎士で出撃した。

だが、私一人とたった10機の戦闘機で2000発以上のミサイルを

全て撃墜できることはできず、撃ち漏らした一発のミサイルが

あの人の家族が住む家にミサイルが着弾した。

目の前であの人の家族を見殺しにしてしまったことに絶望した。

そしてあの人も私を狙った国連軍攻撃から私を庇ったせいで帰らぬ人になった。

あの日のことは何があっても絶対に忘れない。

そして、10年前のあの悲劇を繰り返させない。

それが目の前で人を見殺しにした私にできる贖罪なのだからな…。

 

 

 

 




どうも明日香です。
今回は真優達の試合と新たなオリキャラの登場、そして千冬の独白というお話になりました。
オリキャラに関してですが名字を見れば分かる通りあのキャラの娘です。
今回の登場を皮切りにちょくちょく出てくる予定のキャラですw
さて、次回は第二回戦の開始となります。
それでは、次回もお楽しみに!

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