IS~衛宮の娘は遥か高き宇宙を目指す~   作:明日香

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第14話「学年別トーナメント開催!後編」

懐かしい夢を見ている。

私達の周囲には屍の山が築かれている

そして、私自身も致命傷を負っている

次々と死んでいく騎士達

私の息子<娘>の悲痛な叫び

そんな息子<娘>に対して今の私では想像できない程冷たい声で返す私

宝剣によって斬られた私と槍によって貫かれた私の息子<娘>

その光景は今でも忘れない…いや、忘れてはならない。

カムランの丘の戦い…

私の罪の象徴…

私の…

 

 

『……………さん。………リアさん!アルトリアさん!!』

 

「ん…?」

 

 

誰かが私を呼んでいる。

私が意識を声のする方向へ向くと…

 

 

「はぁ。ようやく気がつきましたわね…」

 

「大丈夫…?」

 

 

心配そうな顔で私を見るセシリアとカンザシがいました。

周囲を見るとここはアリーナにある選手用の休憩室のようです。

ああ、思い出しました。

二回戦を突破した私達はイチカ達との戦闘を想定した作戦会議をしているところでした。

まさか居眠りするとは…不覚です。

 

 

「アルトリアさんが居眠りするなんて珍しい…」

 

「そうですわね。疲れているのですか?」

 

「いえ、決して疲れているわけでは…」

 

 

今まで居眠りすることが無かっただけに二人はかなり心配しているようです。

私も自分が居眠りしてしまったことが不思議でなりません。

それにしてもアリーナの賑わいは凄いですね。

 

 

「そういえばそろそろ真優さん達の試合が始まる」

 

「…アルトリアさんも居眠りしていたことですし気分転換に真優さん達の試合を見ましょう」

 

「わかった」

 

「ありがとうございます」

 

 

マユの試合が始まる!

ならばなんとしても試合を見なければ…!そう思ってセシリアを見ると

セシリアは溜息をつきながらマユの試合を見ることを許可してくれました。

 

 

「それじゃあ、モニターをつけるね」

 

 

カンザシがモニターの電源を入れるとモニターにはバトル・フィールドの中央で待機する

マユ達の姿が映りました。

そろそろ始まりますね…。

それにしてもなぜ、今になってあの時の夢を見たのでしょう?

何か不吉なことが起きなければ良いのですが…。

 

 

第14話「学年別トーナメント開始!後編」

 

 

◆ Side ラウラ

 

 

IS学園 第1アリーナ 第1ピット

 

 

今、私達は試合に備えて第1ピットに待機している。

二回戦に入ってからは数が半分になったためトーナメントの進行が早くなり、

既に私達の試合を除いた全ての試合が終了している。

なぜ私達の試合が始まっていないかというと私達の前の試合が原因だ。

 

 

「さっきの試合は凄かったね」

 

「うん。モニター越しだけど凄い迫力があったもん」

 

 

私達の前の試合の組み合わせは全機ラファール・リヴァイヴの拠点攻撃仕様、

そして、全員がトリガーハッピーという最悪の組み合わせだ。

重火器を大量に装備したトリガーハッピーが揃えばどうなるか…応えは簡単だ。

ミサイル、ロケット弾、グレネード弾が飛び交う地獄の完成だ。

結果としてバトル・フィールドは見るも無残な惨状になり、復旧が完了されるまで

私達は待機という事態になってしまった。

ちなみに試合の結果は全機爆発に巻き込まれて全滅、両チーム失格となった。

ちなみに相討ちになったチームはここだけではない。

全部で8チームが相討ちで敗退している。

まったく激戦という次元ではないぞ。このトーナメントは…。

 

 

『バトル・フィールドの修復が完了しました。次の試合の選手は出撃の準備をしてください』

 

「あ、どうやら出番のようだね」

 

「そのようだな」

 

 

どうやらバトル・フィールドの修復が完了したらしい。

相手は…ラファール・リヴァイヴ2機に打鉄が1機か…。

…なにか凄く嫌な予感がするな。

言葉で説明することは難しいがこの予感の的中率は100%だ。

なにも起きなければいいが…。

 

 

「ラウラ。真優はもう出撃したよ」

 

「む。すまない。先に行っていてくれ」

 

「わかった。…チルノ、ラファール・リヴァイヴ。いくよ!!」

 

 

どうやら私が思っていた以上に思考の海に溺れていたようだ。

やれやれ…最近どうも思考の海に溺れることが多いな。

ここが戦場ではないから気が抜けているのだろうか?

思考停止するのは論外だが戦場での迷いは死に直結、試合ならば敗北に直結する。

ここは戦場ではないし、ましてや命の奪い合いではない。

だから迷う必要はない。

さあ、行くとするか。

 

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒ、シュヴァルツェア・レーゲン。出撃する!」

 

 

カタパルトから射出される。

射出される時は余計な思考を吹き飛ばしてくれる。

周囲の景色がカタパルトレーンからバトル・フィールドに移り変わる。

バトル・フィールドの中央には真優達が待機している。

さあ、はじめるとするか。

今、私が考える必要があるのは“どうやって相手に勝つか”それだけだ。

 

 

◆ Side チルノ

 

 

「っと、お待たせ」

 

 

あたいがバトル・フィールドの中央まで辿りつくと先に出撃していた真優が待っていた。

装甲が深緑で真優の慎重よりも長い大砲を二つ背負っている。

確かあれはブラストシルエットっていうパッケージだったかな。

あれ、すっごく動きにくそうだなぁ。

 

 

「すまない。待たせたな」

 

 

そんなことを考えていたらラウラもこっちにやってきた。

真優のブラストシルエットもそうだけどラウラのISも凄く動きにくそう…。

もしあたいに専用機がくるのだとしたら動きやすい機体がいいな。

あたいが今使っているリヴァイヴもウイングパーツと背中のスラスターだけ展開しているし…。

なんというか全部身につけていたら身体の感覚が変になるというか…。

っと、そろそろ試合開始だね。

気を引き締めないと…。

 

 

「っ!?」

 

 

あたいは言葉には言い表せない寒気を感じた。

その寒気はあたい達の相手から放たれている。

とにかく嫌な予感がする。

いったい相手は何を考えているの…?

 

 

ピ…ピ…ピ…ブーッ!

 

 

「「ああああああああああああああああああ!!!」」

 

 

試合開始のブザーが鳴った瞬間、あたい達は度肝を抜かれた。

相手チームの打鉄2機がダメージを鑑みずに突っ込んできたからだ。

そんなことをしてもすぐに撃墜されるのになんでこんなことを?

それに武器も持っていない。

ん?よく見たら打鉄の腰の部分にある物って…もしかして!?

 

 

「あれは…対IS用グレネード!?しかもあんなにも沢山!?」

 

 

あたいはさっき関した寒気の理由がわかった。

こいつ等…あたい達と相討ちになるつもりだ!

機動力を重視したあたいはともかく機動力が低い真優とラウラが危ない!

なんとかして迎撃しないと…。

 

 

「っ!」

 

 

ガキィンッ!

 

 

「おっと、悪いけどアンタもあいつらの道連れになってもらうわよ!」

 

 

なんとかして特攻を止めようと思ったけど残ったリヴァイヴがあたいに切りかかってきた。

すんでのところでなんとか防御できたけど打鉄との距離が話されてしまった。

マズイ!いくら二人が専用機だといっても限界がある!

もしあのまま二人があの打鉄に取りつかれて自爆されてしまったら…

勝ち負けの問題じゃない。

最悪死人が出てしまう!!

 

 

ギャリギャリギャリッ!!

 

 

「アンタは本当に人間なの!?仲間をあんな風に使うなんて!!」

 

「仲間…?違うわね。私以外はみんな敵よ!」

 

 

あたいは鍔迫り合いになっているリヴァイヴの操縦者の顔を見る。

そして気がついた。

こいつの眼は正気じゃない。

こいつの眼には今まで見たことが無い程に狂気で歪んでいる。

だからこんな仲間を…いや、人を使い捨ての駒だと考えられるんだ。

一体何がこいつをここまで突き動かしているの!?

 

 

「『何でこんなことをする?』っていいたげね」

 

「そうだよ!いったい何がアンタ達を…」

 

「織斑君とデュノア君よ」

 

「は?」

 

 

こいつは何を言っている…?

 

 

「このトーナメントで優勝すればどちらかと交際できるのよ!」

 

「は…?」

 

 

『このトーナメントに優勝すれば一夏かシャルルと交際できる』だって…?

 

 

「だからライバルは少しでも減った方がいいでしょう?」

 

 

なんだそれは…。

そんなことで自分達が死ぬかもしれないこんな馬鹿げたことを考え付く…?

そんなことのためにこいつ等はそんなことをしている…?

 

 

「それに、そこまですれば二人は喜んでくれるはずよ」

 

 

こいつの理由を聞いた瞬間…あたいの何かが切れた。

 

 

「ふ・ざ・け・る・なあああああああああああ!!!!!!」

 

 

ズガァンッ!!

 

 

そんなことのために平然と人殺しに手を染める?

ふざけるな。

一夏には箒がいるし、シャルルもそんなことをされてまで付き合いたくはないはずだ。

なのにこいつはそれが正しいものだと勘違いしてそれを相手に押し付けようとしている。

ふざけるな。

こんな奴の為に真優とラウラを傷つけさせはしない!

だから…こいつはここで叩き斬る!!

 

 

「な、なによこいつ!?急に動きが…」

 

 

あたいが吹き飛ばした敵はアサルトライフルを構え、両肩にミサイルランチャーを展開し、

大量の弾丸とミサイルで弾幕を張っている。

あたいに近づかれる前に撃破しようとしたのだろう。

だけどこんな弾幕はあいつらの弾幕に比べれば薄い。

勢いを殺さずに接近するなんて造作もない。

 

 

「落ちろ!落ちろ!!落ちろ!!!落ちろ!!!!落ちろおおおおおっ!!!!!」

 

 

ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガッ!!!!!!

 

 

瞬時加速を連続で使いながら一気に間合いを詰める。

ここで…落とす!!!

 

 

「お前が…落ちろ!!!!」

 

 

ズバァッ!!

 

 

「ぎゃああああああああああああああっ!!!!」

 

 

恐怖で顔が歪んだ敵を両断して気絶させる。

あとは…

 

 

「「ひぃっ!?」」

 

 

特攻仕様の打鉄が2機…。

2機の打鉄はスラスターを全開にしてあたいから逃げている。

少し距離はあるけど…逃がさない。

 

 

「逃がすもんかあああああああああっ!!!」

 

 

リヴァイヴを倒した時と同じ要領であたいは連続で瞬時加速を使って追いかける!

これなら距離があってもあいつらに追いつける。

ここで…斬る!!

 

 

「はああああああああああああ!!!!!」

 

 

ズバァッ!!

 

 

「ひぎゃああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ………」

 

 

ドガアァァァァァァンッ!!!

 

 

先に追いついた1機をブレードで両断する。

あたいが両断して通り過ぎると同時に後ろで爆音と打鉄に乗っていた奴の悲鳴が聞こえた。

これで残り1機。

だけどまだ距離が離れている。

なんとかして追いつかないと…。

 

 

「ひがっ!?」

 

 

そう思った瞬間、残りの打鉄の動きが急に止まった。

これは…ラウラの停止結界!?

 

 

「ようやく捕らえたぞ…。真優!!」

 

「わかった!」

 

 

思わずラウラがいる方向へ向き直ると両手を打鉄に突き出しているラウラと

ミサイルランチャーとレールキャノンを打鉄に向けている真優の姿があった。

 

 

「ターゲットロック…フルシュートッ!!!」

 

 

ドドドドドドドドドドドド!!!!!!

 

 

真優の叫びと共にブラストシルエットに搭載されている全てのミサイルと

レールキャノンの弾頭が発射され、動きを強制的に停止させられている打鉄に殺到した。

 

 

「い…いやああああああああああああああ!!!!!」

 

 

ドガアアァァァァァァァァァァァァンッ!!!

 

 

もちろん、停止結界に囚われている打鉄に逃げる術はなく、殺到したミサイルと

搭載していた爆弾の引火によって発生した業火は打鉄を包み込んだ。

見るも無残な惨状になった打鉄が空中で解除される。

っと、いけない。

 

 

「よっと…」

 

 

あたいはすぐにリヴァイヴを飛ばして空中に投げだされた打鉄を使っていた子をキャッチした。

うん。目立った外傷もないし気絶しているだけみたいだ。

こういう時、絶対防御はありがたいよね。

この機能を発明してくれた篠ノ之博士に感謝しないと…。

 

 

『勝者、チーム・エミヤ』

 

 

最後の打鉄が撃墜されると試合終了のブザーが鳴った。

よかった…みんな無事に二回戦に突破することができた。

とと、安心した瞬間、身体が一気に重くなってきた。

今日はよく眠れそうかな。

さあ、明日に備えて今日は早く寝よっと!

 

 

◆ Side アルトリア

 

 

IS学園 第1アリーナ 休憩室

 

 

「あの動きは…」

 

「ありえない…」

 

 

マユ達の試合はマユ達の勝利によって幕を引きました。

ですが、セシリアとカンザシの表情は勝敗よりもチルノの動きに動揺していました。

…そこまで驚くことなのでしょうか?

あの動きなら私も問題なくできますが…。

 

 

「…?そこまで凄い動きなのですか?」

 

「アルトリアさん。それ、正気で言っているの…?」

 

 

私がそう思って質問したら私が正気なのかと聞かれました。

まったく、失礼ですね!私は正気ですよ!

だからなぜチルノのあの動きが信じられないのかがわからないのです。

そう思って質問したのに何故私が狂人だと思われなければならないのでしょうか?

 

 

「…アルトリアさん。瞬時加速は非常に相手の距離を瞬時に詰めることができます。

 ですが使用者の負担が非常に大きい技術です。これはわかりますね?」

 

「ええ。それくらいは知っていますよ」

 

 

そんな私を見かねたセシリアが私に補足してくれますが何が言いたいのかよく分かりません。

セシリアの隣にいるカンザシは『まだわからないの?』と言いたげな顔をしています。

その眼は馬鹿にされているというより憐れんでいるような眼なので怒るに怒れません。

セシリアも何を伝えたいのかはっきり言ってほしいものです。

 

 

「瞬時加速の連続使用による加速・方向転換・回避の動きはクイック・ブーストと呼ばれる。

 この動きはさっきの彼女のように驚異的な機動力で相手を追い詰めることができる。

 ただし、操縦者へ掛かる負担が非常に大きくてこの動きをした時に掛かるGは

 ISの保護機能があっても50Gを超える。そんな動きを連続で使うことは危険。

 良くて骨折、最悪再起不能になる。だからあの動きを苦も無くできた彼女は異常」

 

「…なるほど」

 

 

カンザシの説明でようやく二人がチルノの動きを見て動揺していた理由がわかりました。

私の場合は守護者という存在であるためあの動きをすることは問題ありません。

ですが彼女達は訓練を受けているとはいえ普通の人間です。

だから、あのような動きをしてしまっては無事で済む訳がありません。

二人が動揺していたのはそういうわけだったのですね…。

確かに、話を聞く限りだと非常に危険ですね…。

それなのに当のチルノは少し疲労しているだけでした。

まあ、私も問題なくできますが公式の場で使うのはやめておきましょう…。

 

 

◆ Side 楯無

 

 

IS学園 生徒会室

 

 

「うわぁ…」

 

「これは…」

 

 

生徒会室で第二回戦を見ていた私達は最後の最後まで驚かされた。

チーム戦なのに大量の相討ちがあったこともそうだったけど本当に今年の一年生は強すぎ…。

剣術ならば織斑先生以上のセンスを持つ一夏君と箒ちゃん、

超人的な反応速度と一夏君と箒ちゃん以上の剣術の技量を持つアルトリアさん、

ビットを使いながら高機動戦闘をやってのけるセシリアちゃん、

量産機なのにアルトリアさんとセシリアちゃんの動きに合わせられる簪ちゃん、

山田先生ですら扱えないほどにピーキーな性能を持つストライクを扱えているシャルル君、

圧倒的な火力を使った力押しで次々と相手を撃破するシャルロットちゃん、

状況に合わせて的確な指示を戦闘中に出せるラウラちゃん、

そして、極めつけは量産機にもかかわらず驚異的な機動力を見せたチルノちゃん…。

うん。どれもバケモノばかりね。

 

 

「ねぇ虚ちゃん」

 

「なんでしょうか?」

 

「私、今年のエキシビジョンマッチに出たくないんだけど…」

 

 

ちなみに学年別トーナメントの優勝者には特典として学食のデザートのフリーパス以外に

その年の生徒会長と戦うことができるという特典がある。

ちなみにこのエキシビジョンマッチで生徒会長に勝てばそのまま生徒会長に就任できる。

私もこの方法で一年生の頃から生徒会長に就任した。

去年の生徒会長と同じ脅威…いいや、それ以上の恐怖が私の身に降りかかるなんて…。

正直今すぐにでも逃げたいです…。

 

 

「ダメです」

 

 

まあ、無理なんだけどね…。

まだ一夏君と箒ちゃんとラウラちゃんとシャルロットちゃんが相手なら勝つ見込みはあるけど

それ以外は無理。

アルトリアさんとチルノちゃんなんて論外よ!

なによあの変態機動!

あんな動きをする人に勝てるわけないじゃない!

あんな子達と戦うなんて公開処刑もいいところじゃん!

寧ろ命の危機を感じる!!

 

 

「大丈夫です。お嬢様。お嬢様ならば生きて戻ってこれますよ…たぶん(ボソッ」

 

「たぶん!?今『たぶん』って言ったよね!?」

 

「気のせいでしょう。さあ、行きますよ。お嬢様(ズルズル」

 

「イヤダーッ!シニタクナーイッ!!シニタクナーイッ!!!シニタクナーイッ!!!!(ジタバタ」

 

 

わたしは めのまえが まっくらに なった !

どうあがいても絶望ってこういう時のことを言うのね…。

うん。知りたくなかった。

マジでどうしよう…。

もしここで生徒会長を辞めさせられたらあの人との契約も切れてしまうだろうし

そんなことになればIS学園の安全を影から守ることが不可能になってしまう。

うう…どうしてこうなった…。

 

 

◆ Side シン

 

 

IS学園 学生寮 シンの部屋

 

 

「ふぅ…今日も異常は無しか」

 

 

俺は今、普段の日課になっている夜の見回りを終えて俺の自室に戻って来た。

最近は奴等がここを襲撃してくるということが無く、俺としても大分楽になっている。

奴等が諦めたと思いたいがおそらく奴等はここを襲撃する戦力を集めているのだろう。

それも、並みのISでは傷をつけることすら叶わない程のバケモノを引っ提げて。

俺の予想が正しければ次に奴等が投入してくる兵器は…

 

 

コンコン

 

 

次に奴等が使ってくるであろう兵器が何なのか予想がついた瞬間、ドアをノックする音がした。

 

 

「誰だ?」

 

『ラウラです』

 

 

俺の部屋にやって来たのはラウラだった。

普段、規則を重視しているラウラが規則を破るとは珍しい。

そうなると俺に何か報告しなければならないことがあったのか…?

とりあえず中へ入れた方がいいな。

 

 

「鍵を開けた。入ってくれ」

 

『はい。失礼します』

 

 

俺が部屋の鍵を開けると俺の部屋に入って来たラウラの表情は固い。

ラウラがこんな表情をする時は大抵その出来事に対して心底腹を立てている時だ。

どうやら余程の事態が今日の試合でおこったようだな…。

とりあえず話を聞くか。

 

 

「…何があった?」

 

「私達のチームの試合でATAを搭載した自爆特攻仕様の打鉄が投入されました」

 

「なっ…!?」

 

 

ラウラから聞かされた報告を聞いた俺はラウラが言った言葉が信じられなかった。

ATAだと?

ISのコアが各国家に広まった直後にアメリカで開発された外付けのシステムのことだ。

自国のISが鹵獲された時を想定して鹵獲される前にISコアを自爆させるシステムだが

ISの操縦者達やIS委員会の反発が酷く、封印された筈のシステムだ。

無論、膨大なエネルギーを持つISコアが自爆すれば都市一つを消し飛ばすことなど容易だ。

なぜそんな危険なものが搭載されているISが学生の大会で使用されている?

 

 

「織斑教諭への報告は?」

 

「済ませました。ですが、今は動くことができないと…」

 

「やはりか…」

 

 

おそらく訓練機にATAを搭載したのはこの学園の者だろう。

でなければこうも容易くATAなどという危険物を搭載することなど不可能だ。

ラウラに報告された織斑教諭も薄々勘付いているだろう。

だが、今の彼女の立場ではIS委員会の一大拠点であるこの学園に反発するのは厳しいだろう。

彼女はこの学園に雇われている立場だ。

もし彼女がここで反発すればIS委員会は何の躊躇いもなく彼女の首を切る。

そうなってしまえば彼女が一夏君を守る術が完全に無くなってしまう。

IS委員会の手から一夏君を守る必要がある彼女はここで手を出すことはできない。

今はATAを使われないことを祈るしかない。

それに奴等が次に使ってくる兵器のこともある。

………最悪、俺が表舞台に立つ必要もあるかもしれないな。

 

 

◆ Side 千冬

 

 

IS学園 第1アリーナ 準決勝

 

 

「いよいよ準決勝ですね!」

 

「ええ」

 

 

ラウラがこの学園の訓練機にATAが搭載されているという報告してきてから二日が経った。

ラウラの報告を受けてすぐに全ての訓練機を検査したがATAを搭載されている訓練機は

発見されず、そのまま大会は続行されている。

幸い、準決勝に至るまでATAが使用されることもなく。

大きなトラブルは起こっていない。

 

 

「今日はこの大会の目玉と言っても良い組み合わせですよ!」

 

 

ATAのことを知らない山田先生は暢気なものだ。

今から行われる準決勝の対戦カードに興奮しているようだ。

片や最強クラスの実力を持つペンドラゴンを主力としたチーム・オルコット、

片や世界で初の男性操縦者である一夏を主力としたチーム・オリムラ。

実力ならばオルコットのチームの方が段違いに高いが勝負は始まってみなければわからない。

私もATAの件が無かったら山田先生のようにこの試合に熱中していただろう。

まったく、私も貧乏くじを引かされたものだな。

だが、今は今の私にしかできないことに専念するとしよう。

それが今の私の役目だからな…。

 

 

 




どうも明日香です。サイキンハナシガミジカクナッテイル…
今回は真優達の二回戦と一部の女子生徒達の狂気との遭遇という話になりました。
ちなみにこの女子生徒達がどうなったのかは御想像にお任せします。
さて、次回は時を少し進めて準決勝の第一試合…アルトリア達と一夏達の激突になります。
どちらが決勝戦への切符を手にするのか…?次回を楽しみにしていただけたら幸いです。
それでは、失礼します。


以下、今回登場したATAの解説


ATA 【ASH TO ASH】

ISのコアが世界各国で配布された時期にアメリカで開発された外付けのシステム。
ISの軍事投入に際し、敵側に自国のISを鹵獲される前にとあるコードをISコアに打ち込むことでISコアを自爆させ、情報漏洩とISのパイロットが叛逆することを防ぐと同時に周囲の敵を消滅させる強力な爆弾にするという目的で製作された。
莫大なエネルギーを持つISコアが自爆すれば大きな都市一つを余裕で消し飛ばすほどの威力を持ち、ISを展開していてもこの爆風に呑まれれば待っているのは【死】のみである。
しかし、貴重なISコアを破壊される事に反発したIS委員会とあまりにも危険すぎると判断したアメリカ軍の上層部によって開発は中止され、
製作された7機のATAはIS学園内に封印されている。


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