IS~衛宮の娘は遥か高き宇宙を目指す~   作:明日香

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※6/20にサブタイトル変更しました。


第15話「発動!輪転する勝利の剣!」

遂にこの日が来た。

トーナメントを順調に勝ち進んだ私達は今、準決勝まで進出した。

そして相手は圧倒的な強さを誇るアルトリア達のチームだ。

二回戦からはその圧倒的な実力で次々と相手チームを屠って来た。

接近戦においては部類の強さを誇るアルトリア。

狙撃だけでなく接近戦もこなしてみせるセシリア。

打鉄の特性を完全に理解し、ありとあらゆる場面で二人をサポートする更識簪。

完璧といっても過言ではない布陣。

まさしくこの学年別トーナメントの参加チームの中で最も強いチームだ。

私達は今からそのチームと戦うことになる。

 

 

「いよいよだな…」

 

「ああ…」

 

「そうね…」

 

 

一夏も鈴音も身体が震えている。

私も全身が震えている。

私達は試合の対戦相手であるアルトリア達を恐れている。

それは当然だ。

相手が最強のチームであり、勝算は殆どないといっても過言じゃない。

だが…。

 

 

「勝とうぜ。箒。鈴」

 

「ああ!」

 

「ええ!」

 

 

私達だって戦うのなら勝つ気概で臨む。

試合とは始まってみなければ結果はわからないものだ。

だからどのような相手だろうと私達は勝つ気概で行く。

それが、私達なのだからな!

 

 

「篠ノ之箒、打鉄!参る!!」

 

 

第15話「発動!輪転する勝利の剣!」

 

 

◆ Side 簪

 

 

IS学園 第1アリーナ 第2ピット

 

 

「いよいよ準決勝ですわね」

 

 

二回戦が終わった後、私達は順調に勝ち進んで準決勝まで進出した。

ここで私達は決勝に進むまでの最大の壁にぶち当たった。

準決勝の相手は織斑君、篠ノ之さん、鳳さんの近接戦闘よりのチームだ。

一番厄介なのは一撃必殺の零落白夜を持つ白式の操縦者である織斑君。

次に厄介なのは打鉄を完璧に使いこなしている篠ノ之さん。

鳳さんは龍砲さえ気をつければなんとかなるけど持久力の高さが非常に厄介。

持久戦に持ち込まれたら私達が不利になる。

今まではみんながみんな短期決戦に持ち込もうとしてきたから楽に勝てたけれど

私達の機体は一様に持久力が低い。

ここが山場になる…。

 

 

「一夏さんの相手はアルトリアさんにお願いします」

 

「わかりました」

 

「簪さんは箒さんをわたくしは鈴音さんの相手をしますわ」

 

「わかった…」

 

 

これは妥当な采配…。

私では織斑君と戦うには火力が足りないし、セシリアさんとの相性は最悪だ。

だから織斑君と交戦経験があって勝利しているアルトリアさんならば勝機がある。

次にセシリアさんと鳳さんの相性だけどはっきり言ってセシリアさんの方が不利だ。

だけどそれはあくまで機体の特性の話。

あのシンって人の地獄のような訓練を耐え抜いたセシリアさんなら

機体の相性程度では技量でカバーできると思う。

そして私は篠ノ之さんの相手をするけど勝率は五分だ。

なぜなら篠ノ之さんは打鉄の特性を身体で理解している。

対して私は打鉄の全てを頭の中に叩きこんである。

どちらに軍配が上がるのかは私では予測できない。

ただ、強いて言うなら篠ノ之さん…適正詐欺すぎる…。

 

 

「さて、参りましょうか」

 

「それじゃあ先に行くね」

 

「「はい」」

 

 

そろそろ試合が始まる時間だ。

あらかじめ打鉄に搭乗していた私はそのままカタパルトに足を向ける。

 

 

「更識簪。打鉄。出ます」

 

 

カタパルトに着くと足が固定され、それからすぐに私はバトル・フィールドへ射出された。

バトル・フィールドの中へ入ると正面から見える観客席で姉さんがいた。

今日も姉さんが私の試合を見てくれている。

だから…負けない!

 

 

◆ Side 一夏

 

 

IS学園 第1アリーナ バトル・フィールド

 

 

「こうして貴方と剣を交えるのはこれで二回目ですね」

 

「…ああ」

 

 

カタパルトからバトル・フィールドへ射出された俺達の目の前に一年生最強のIS乗りがいる。

剣を構える彼女から放たれる風格は正に【王】そのもの。

クラス代表決定戦の時にも戦ったことはある。

彼女が放つ王気【オーラ】はまさに強者たる者が放つそれだ。

身体が震える…。

この感覚だけはどれだけ修行しても慣れることはない…。

もし生身で戦えば俺が彼女に勝てる道理はない。

だけど…今、俺と彼女はISバトルという同じ土俵に立っている。

ならば…俺にも勝機はある。

 

 

ピ…ピ…ピ…ブーッ!

 

 

「はあ!!」

 

「おおおおおッ!!!」

 

 

ガキィンッ!

 

 

試合開始のブザーが鳴ると同時に俺とアルトリアの得物が激突する。

いける…。

シンさんのアドバイスで刀身の長さを1.5倍に改造したこの雪片参型は俺の手によく馴染む。

これなら…やれる!

 

 

ギリギリギリ…

 

 

「やりますね。イチカ。また随分と成長したようです」

 

「いつまでもアルトリアに負けたままでいるのは…イヤだからな!」

 

 

ガァンッ!

 

 

アルトリアは心の底から俺の成長を喜んでくれている。

だが、今日は喜ばせるだけでは終わらない。

俺は今度こそアルトリアに勝つ。

そのために血反吐を吐くような特訓にだって耐えてきたんだからな!

 

 

カァンッ!キィンッ!カァンッ!!

 

 

「それに、その剣も貴方によく馴染んでいるようです」

 

 

キィンッ!カァンッ!キィンッ!!

 

 

「ああ。そのために倉持技研の人達に頭を下げて作ってもらったんだからな!」

 

 

俺の雪片参型とアルトリアの黄金の剣が高速で激突し合う。

今の俺は身体中全ての神経をフルに使って雪片参型を振るっている。

そうでもしなければアルトリアと打ち合うことなんてできないからだ。

 

 

キィンッ!キィンッ!カァンッ!!

 

 

「なるほど。アリーナでずっとIS用のブレードを振っていたのはこの時の為だったのですね」

 

 

カァンッ!カァンッ!キィンッ!!

 

 

「そうでもしないとアルトリアには追いつけそうになかったからな!」

 

 

もちろん、こうやって振り続けていられるのもシンさんに課せられた特訓をこなしていたからだ。

ISの筋力補助を最低限にしてIS用のブレードを生身で振って少しでも筋力をつける。

目標は千冬姉みたいに生身でISブレードを振るえることだ。

この特訓を始めたのが2週間前だから付け焼刃だけど効果は覿面だ。

今までの俺ならばこの時点で疲労が出始めているけど今はそんなことはまったくない。

それにシンさんからアルトリアの専用機であるセイバー・リリィの弱点を聞いている。

 

 

『いいか、一夏君。確かにアルトリアは強い。正面での打ち合いなら俺でも負ける』

 

『シンさんでも勝てないんですか…?』

 

『まともに戦えばな。だが、ISバトルでなら勝機がある』

 

『え?』

 

『アルトリアのISは反応速度を極限まで重視した結果ひとつ、大きな弱点がある』

 

『弱点?』

 

『そうだ。あいつのISは防御力が極限まで低くなっている。それを補うための武装もあるが

一夏君の実力があればその武装を使われるよりも先にアルトリアのISにダメージを与えられる』

 

 

セイバー・リリィの弱点…それは防御力の低さだ。

セイバー・リリィはアルトリアの反応速度に追いつけるまでの調整をした結果、

反応速度以外の性能が著しく低下し、特に防御力は致命的なまでに低い。

俺がアルトリアに勝てる可能性はそこだ。

 

 

キィンッ!カァンッ!カァンッ!!

 

 

「貴方はこの日が来るまで努力を怠らなかったのですね…」

 

 

カァンッ!キィンッ!キィンッ!!

 

 

「ああ!だから…今回は俺が勝つ!!」

 

 

ズガァンッ!!

 

 

だけどただ打ち合っているだけではアルトリアに攻撃を当てることなんてできない。

俺がアルトリアに勝てる可能性を持っているのはあの“奥義”だけだ。

だから俺は思い切ってアルトリアから距離を取る。

アルトリアは遠距離を攻撃する手段はない。

だからアルトリアは俺を追ってくる。

チャンスは…今しかない!

 

 

イメージBGM:Fate/stay nightより 約束された勝利の剣-Kenji Kawai ver.-

 

 

「奥義…(チャキッ」

 

「っ!」

 

 

耐性を立て直した俺は零落白夜を雪片参型の刀身に走らせ、“奥義”の構えを取る。

シンさんの特訓のおかげで俺は師匠の“燕返し”をほぼ完全に再現できる。

だけど、それではアルトリアには届かない。

だから師匠の“燕返し”に千冬姉のあの技を重ねた俺だけの奥義をアルトリアにぶつける。

アルトリアも俺が何をしようとしたのか気がついたらしいけどもう遅い。

今のアルトリアは回避も防御もできない。

ここは…俺の距離だ!!

 

 

「零落白夜…瞬【またたき】!!」

 

「!?」

 

 

俺の新しい奥義…零落白夜・瞬【またたき】は師匠が俺に教えてくれた燕返しと

千冬姉が使っていた零落白夜を組み合わせた俺だけの奥義。

同時に放たれた異常なまでの攻撃力を持った“4つ”の斬撃が敵の逃げ場を無くし、

逃げ場を無くした相手は逃げることが叶わずに斬撃をまともに受けるという【禁じ手】だ。

 

 

「ぐ…」

 

 

ただし、今の俺でも一週間に一回しか使うことができない。

これで敵を倒せなければ俺の負けは確定する諸刃の剣でもある。

確かに手応えはあった。

確実に当たった…と思いたい。

やべ…意識が…。

 

 

「まさか私が負ける日が来るとは…強くなりましたね。イチカ」

 

 

俺の意識が途絶える直前にアルトリアの声が聞こえた。

どうやら俺はアルトリアに勝てたらしい。

アルトリアに勝てたとわかった瞬間、気が緩んだ俺はそのまま意識を闇に放り投げた。

へへ…やったぜ…。

 

 

◆ Side セシリア

 

 

IS学園 第1アリーナ バトル・フィールド

 

 

「アルトリアさん!?」

 

 

ありえないことが起きてしまいました。

あのアルトリアさんが一夏さんとの一騎打ちで敗北してしまった。

同時に一夏さんも行動不能になったようですがわたくし達はアルトリアさんが

負けるはずがないと思っていただけにわたくし達の精神的なダメージは非常に大きい。

 

 

「おっしゃあ!!」

 

 

対してわたくしが相手をしている鈴音さんの士気は著しく向上しています。

その証拠に鈴音さんの攻撃が先程よりも苛烈になっています。

このまま受けの姿勢のままではジリ貧になってしまう。

それだけはなんとしても避けなければなりません。

 

 

「きゃあ!」

 

「簪さん!」

 

「さあ、後はお前だけだ!セシリア」

 

 

こちらが動揺した隙を狙われて簪さんも撃破されてしまいました。

状況は最悪…。

お二人のコンビネーションの良さは脅威になるうえにお二人とも

ブルー・ティアーズとの相性は最悪です。

仕方ありません…できれば決勝戦まで隠し通したかったのですが奥の手を使いましょう。

 

 

「リミット解除!」

 

 

ブルー・ティアーズに施されたリミッターが全て解除され、わたくしを束縛していた

枷が完全になくなり、身体が一気に軽くなりました。

リミッターを施していた理由はこの力に依存し、慢心しないための戒めだからです。

ですが、今ならばこの力を依存せずに戦いに臨むことができます。

 

 

イメージBGM:Fate/Zeroより 約束された勝利の剣 Zizz version

 

 

「さあ、踊りましょう!わたくしとブルー・ティアーズと…ガラディーンで奏でる円舞曲を!!」

 

 

切り離されたブルー・ティアーズがわたくしの声と共にそれぞれが命を持っているかのように

空を駆け、わたくしも右腕の装甲を解除して拡張領域に格納してあった

わたくしの相棒である一振りの剣を取り出し、鈴音さんとの距離を詰めます。

 

 

「ちょっ!?」

 

 

この剣はオルコット家の伝承によるとかの太陽の騎士であるサー・ガウェインの愛剣である

転輪する勝利の剣【エクスカリバー・ガラディーン】だといわれています。

本物かどうかはわたくしではわかりませんがわたくしが幼少の時から

ずっとこの剣と共に過ごしてきました。

ですからこの剣はわたくしの半身といっても過言ではありません。

 

 

「せぇい!!」

 

 

コォン…

 

 

「んなっ!?」

 

 

わたくしが振るったガラディーンは鈴音さんの青龍刀を熱されたバターのように両断し、

自身の得物がいとも簡単に破壊された鈴音さんは動揺で動きが硬直しました。

この隙を逃がすほどわたくしは余裕がありませんので一気にきめさせていただきましょう。

 

 

「せやあっ!!」

 

 

ズバァッ!!

 

 

「きゃあああああああああああっ!!!」

 

「鈴音!!」

 

「これでフィナーレですわ!!」

 

「なっ!?しま…」

 

 

ガラディーンによって両断された鈴音さんの甲龍のシールドエネルギーは0になり、

絶対防御以外の機能が停止して完全に沈黙しました。

これで、残りは箒さんの打鉄だけです。

このまま一気に撃破させてもらいますわ!!

 

 

「この剣は太陽の映し身、転輪する勝利の剣!エクスカリバー・ガラディーン!」

 

 

ズガアアアアアアアアアアアアンッ!!!!!

 

 

「うわああああああああああっ!!!!」

 

 

わたくしの叫びと共にガラディーンの刀身が紅蓮の炎を帯び、

紅蓮の炎を纏ったガラディーンは箒さんの打鉄をブレードごと両断し、

箒さんの打鉄のシールドエネルギーは0になしました。

これで…わたくし達の勝利ですわね…。

 

 

『し、勝者!チーム・オルコット!』

 

 

シュー…

 

 

「はあ…」

 

 

試合終了のブザーがアリーナに響き渡りました…。

勝ったとわかって安堵のため息を吐いたわたくしはブルー・ティアーズの各所から

おびただしい量の湯気が立ち上がり、シールドエネルギーの残量を見て冷や汗を掻きました。

ブルー・ティアーズのシールドエネルギーの残量は3…あと一発でも攻撃を受けていたら

わたくし達が負けていました。

なんとか勝てたのは良いのですがこれでこちらの手札は全て出してしまったのは痛いですわね…。

ですが、出し惜しみして負けてしまっては元も子もありません。

とりあえず今はピットに戻るとしましょう…。

 

 

◆ Side 一夏

 

 

IS学園 第1アリーナ 医務室

 

 

「ん…ここは…」

 

 

俺が目を覚ました時、俺はアリーナにある医務室のベッドに寝かされていた。

身体中が痛い…。

やっぱあの技の反動はシャレにならない位にでかい。

こりゃ、明日の試合はあの技を使えないな…。

 

 

「一夏!」

 

「箒…?」

 

 

俺がそんなことを考えていると俺を呼ぶ声がして声をした方を見ると

そこには眼に一杯の涙をためた箒が座っていた。

…どうやら俺のことを心配してくれていたらしい。

まったく…箒を泣かせたくないと思って強くなったのにこれじゃあ本末転倒だな…。

 

 

「すまない…せっかく一夏が活路を開いたのに負けてしまった…」

 

「いいんだ。俺は今回の試合に満足している」

 

 

そうか…俺達は負けてしまったのか…。

だけど、自然と悔しさはなかった。

寧ろ俺は満足している。

たぶん、このトーナメントにおける俺の目的…『アルトリアに勝つ』という目的を果たせたからだろう。

あの時、俺はアルトリアに勝つことができた。

箒達との努力を認識することができた。

それが、たまらなく嬉しい。

だけど、箒は泣きそうな目で俺を見ている。

俺の為に泣いてくれているのだろうけど俺は箒の涙を見たくない。

なら、俺のするべき行動はただひとつだ。

 

 

ぎゅ…

 

 

「一夏…?」

 

「ありがとう。箒」

 

 

身体は痛むけれどそれを無視して箒を抱きしめる。

それが今の俺が箒にしてあげられることだ。

箒の心の痛みに比べれば俺の身体の痛みなんて無いも同然だ。

だからこの程度の痛みは耐えられる。

 

 

「「ん…」」

 

 

そして、そのまま俺は箒と口づけする。

千冬姉がいたら怒られるけどここには俺と箒以外いないのだからこれくらい問題ないはずだ。

箒の顔が赤くなっている。たぶん、俺も赤くなっている。

箒の胸から箒の鼓動が伝わってくる。

温かい…。

こんなにいい娘と恋人でいられるなんて俺は幸せ者だな…。

 

 

◆ Side 千冬

 

 

IS学園 第1アリーナ 管制室

 

 

「いや~今年のトーナメントはどんでん返しの連続ですね!」

 

 

準決勝の第一試合はオルコットのチームの勝利に終わった。

しかし、試合内容は私を含めた観客の予想を大いに裏切る内容だった。

私の隣にいる山田先生など教員であることを忘れてはしゃいでいる。

私も顔には出していないが胸の高まりを抑えられないでいた。

一夏があのペンドラゴンに一騎打ちで勝利した。

それだけその事実が衝撃的だった。

贔屓目に見ても一夏ではペンドラゴンに勝てる道理が無い。

技量も経験も機体の性能も何もかもが一夏の方が劣っている。

だが、あいつはその道理をこじ開けた。

他でも無い一夏自身の手で…。

私にとって一夏は私が守るべき弟だった。

しかし、少し見ないうちに一夏は大きくなっていた。

その事実は私にとって嬉しくもあり、私の弟が遠くに行ってしまったような寂しさもあった。

ふふ。本当に、子供の成長とは早いものだな…。

 

 

「これは次の試合も楽しみですね!」

 

「ふふ。そうですね。山田先生」

 

 

ならば私もあいつの姉として恥ずかしくない人間にならなくてはいけないな…。

 

 

◆ Side セシリア

 

 

IS学園 第1アリーナ 休憩室

 

 

「………(キュー」

 

「「はあ…」」

 

 

とりあえず、準決勝はわたくし達の勝利という形で終わりました。

凄まじい激闘だったために簪さんは椅子に座るなりそのままねむりこけてしまいました。

まあ、箒さんの猛攻をずっと防いでいたのですから仕方が無いですわね…。

そして、こちらが払った代償は非常に大きいです。

アルトリアさんのセイバー・リリィの弱点がばれたということ。

状況が状況だったとはいえわたくしの鬼札の正体がばれてしまったということ。

この二つがばれたということは決勝戦で戦う相手はすぐに対策をとってくるでしょう。

ですからわたくし達も簪さんが起きたら決勝に備えて作戦会議をしましょう。

さて、もうひとつの問題の処理にかかりましょうか。

 

 

「それにしても貴女が転輪する勝利の剣を持っていたとは…」

 

「この剣の正体がわかるということはやはりアルトリアさんは…」

 

「はい。私は…嘗てブリテンを収めていたアーサー王です」

 

 

アルトリアさんはわたくしが持っている剣を知っている。

つまり、アルトリアさんはサー・ガウェインと関係がある人物だと思っていましたが

まさか本物のアーサー王だったとは…。

いえ、名前を聞いた時からなんとなくは勘付いていたのですが。

 

 

「そうですか…」

 

「…驚かないのですか?」

 

「少し驚いていますがアーサー王伝説にはまたアーサー王が復活する記述があります。

 それがアルトリアさんだった。ですからそこまで驚くようなことではありませんわ」

 

 

正直、アルトリアさんがかのアーサー王であることには驚きましたが

だからといってアルトリアさんが変わるというわけではありません。

あくまでアルトリアさんはわたくしの友人。

それ以上でもそれ以下でも無いですわ。

 

 

「………本当にセシリアは大物ですね」

 

「それとガラディーンに関してはこの試合が終わった後でよろしいですか?

 真優さん達の試合を見たいですから」

 

「わかりました。私もマユがシャルル達とどう戦うか気になりますからね…」

 

 

と、もうひとつの問題であったガラディーンに関する質問は真優さん達の試合が終わってからにしましょう。

この剣の話はとても長くなりますからね。

今から説明をしていたら真優さん達の試合が終わってしまいます。

今は真優さん達の試合に集中しましょう。

頑張ってくださいね…真優さん。

わたくし達は先に決勝戦でお待ちしていますわ…。

 

 

◆ Side チルノ

 

 

IS学園 第1アリーナ 第2ピット

 

 

「………」

 

 

休憩室のモニターからアルトリア達の試合を見ていたあたいはその試合内容を見て固まった。

同じ土俵に立っているとはいえ一夏がアルトリアに勝てた。

アルトリアは確かに強い。

だけど、無敵というわけじゃない。

ならばあたいでもアルトリアに勝てる要素があるということだ。

自然と拳を握る強さが強くなる。

そして、セシリアが試合の最後で取り出したあの剣の正体を星の記憶が教えてくれた。

だからあたいは真優とラウラにセシリアが持っている剣の正体を話した。

 

 

「…セシリアの持っていたあの剣。あたいが持ってる約束された勝利の剣の姉妹剣だ」

 

「え…?」

 

「なに…!?」

 

 

あの剣は本来存在しない筈の星が生み出したもう一つの星の聖剣。

約束された勝利の剣の姉妹剣『転輪する勝利の剣【エクスカリバー・ガラディーン】』だ。

本来ならサー・ガウェインにしか真名を解放できないのにセシリアは真名を解放して見せた。

これはなんの因果なのだろうか?

いや、これが世界の導きだというのかな…?

真優とラウラもセシリアが持っている聖剣の正体を知って驚きが隠せないようだ。

 

 

「待て。何故チルノはあの剣の正体を知っている?それに、何故あの聖剣を持っている?」

 

 

うん。やっぱりラウラはあたいが約束された勝利の剣を持っているのか気になるみたいだね。

でも、今は話すことができない。

たぶん、あたいの正体を話してもわからないだろうから…。

 

 

「それは…今日の試合が終わったら話すよ」

 

「………わかった」

 

 

だけど、そんなあたいの考えとは裏腹に今日の試合が終わったら話すと言ってしまった。

…もしかしたら二人ならあたいの話を理解してくれるかもしれないと思ったのかもしれない。

…ああもう!

言ってしまったんだからこの試合に勝ってさっさとあたいの事を話そう!

難しいことはあたいのことを全部真優とラウラに話してから考える!

よし!これでいこう!!

そのためにもシャルル達に勝たないとね!

さあ、行くよ!!

 

 

 




どうも明日香です。
今回は準決勝の第一試合がメインの話となりました。
今回、ISバトルで一夏はアルトリアに勝つ事が出来ました。
これで一夏は自分の強さを認めることができるでしょう。
アルトリアが負けたことで不満はあるかもしれませんが相性で負けてしまったと認識してもらえれば幸いです。
そして、セシリアがなぜガラディーンを使えた理由は物語が進めば解明されていくでしょう。
さて、次回は真優達とシャルル達が激突する準決勝第二試合です。
楽しみにしていただければ幸いです。
それでは、失礼します。

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