ミッドチルダのとあるスポーツセンター、その入口の柱のそばで一人の女性が本を片手に、そろそろ来るであろう少女たちを待っていた。
「お待たせノーヴェ!!」
と、何時ものように元気な声が聞こえてきて女性……ノーヴェ・O・スカリエッティは持っていた本を閉じて顔を上げる。
そこにはヴィヴィオを筆頭に5人の少女が歩いてやって来ていた。
「いいや、こっちも今来たところだ。コロナとリンネ、エイラと……それとリオだっけか、ヴィヴィオから話は聞いてるよ」
「はい、これからよろしくお願いします!!先生」
「先生じゃねぇって」
ノーヴェは恥ずかしがるように否定するが、
「でもいつも教えてもらってるよね」
「うん、先生だよね」
「ええ、ノーヴェさんはとても良い先生だと思いますよ」
「隣に同じくだね~」
ヴィヴィオ含むノーヴェとの付き合いの長い四人が先生コールを続けて言う。
「ふ、ノーヴェは人柄が良いからな。教師や指導者には向いてると私は思うぞ」
「ち、千冬さんまで!?」
さらには少し遅れて到着した自身の義姉……管理局武装隊特殊空戦部隊所属の織斑千冬までからかうように言ってのけ、ノーヴェの表情は羞恥でいっぱいいっぱいだった。
「たまに練習やスパーに付き合ってるだけで、先生ってことじゃ」
「それを先生って呼ぶんじゃないの?」
「そうだなヴィヴィオ、ノーヴェは立派な先生だな」
普段のスーツ姿ではなく、ラフな私服姿で頭を撫でる千冬に、ヴィヴィオはどこかくすぐったそうにしていた。
「と、とにかく5人は早く着替えてこいって、こっちはこっちで準備するから」
そう言いながらも、ノーヴェの表情はどこか嬉しそうだったと、義妹を見ながら千冬自身もクスリと笑うのだった。
「けど意外だよね~」
「?何が」
着替えてる最中、リオが不思議そうに言葉を漏らす。
「いや皆が格闘技習ってるって不思議だな~って、私以外のみんなってどちらかと言えば文系のイメージだから。はじめてヴィヴィオと会ったのも無限書庫だったし」
「えへへ、文系だけどこっちも好きだもん」
「私はそこまで上手くないけど」
ヴィヴィオはそう言い、コロナは謙遜するが、リオとしては少し疑いの目だった。
「でもそれ以上に、リンネさんはもっと文系のイメージだよね。あと端からでも分かるお嬢様って感じ。エイラさんに至ってはそもそも運動しているイメージが無いです」
「えぇ、そんなイメージあります?」
「リンネの場合は天然のお嬢様みたいな雰囲気あるからね~。外見だけは」
「エイラ?何か言った?」
なんでもな~いとうそぶく友人に苦笑しつつも、そんなとりとめのない話は続いていく。
「でも、私としてはエイラとリオさんが羨ましいです。自分専用のインテリ型デバイスを持ってるなんて」
「確かに、うちのママも……」
『基礎を勉強し終えるまで自分専用のデバイスなんて必要ありません』
「って、結構厳しくて」
「私も一夏さんから」
『少なくとも、最低限の技術をノーヴェ達から学び終えるまでは、デバイスはむしろ邪魔になるから要らないよ』
「って、言ってました」
「さ、さすが管理局のトップエース二人のお言葉」
さすがのリオだけでなく、その人ことを聞いた他二人も同様に苦笑していた。
「でもやっぱり、自分専用のデバイスってカッコいいですよね」
「うん!!カッコいい!!」
そうかな~と照れるリオだったが、その左手にはちゃっかり自らのデバイスであるソルフージュを握っていて、まるで某水戸の御老公のように掲げていた。
「ところでエイラ、ちゃんと準備は……」
リンネは愕然とした、今脱いだエイラの体のその一部に、そして自分の同じ場所を見て……
「あれ?どうしたのリンネ?」
「エイラ、あとで全力のスパーに付き合ってください」
「まさかの処刑宣告されちゃったよ!?」
思わぬ一言にエイラは驚愕するが、リンネからしたらそれどころじゃない。
(ヴィヴィオさんと一緒に練習したアレなら、アレならまだ私の方が……)
リンネのために補足しておくと、若いうちに筋肉を付けすぎたりすると、たまに体の成長速度が遅くなる事があるが、まだ一応予断はあるとここに明記しておくとする。
「お、来たな」
着替え終え練習場へとやって来ると、既に準備を終えたノーヴェさんと千冬さんの二人が居た。
「お待たせしました、ノーヴェさん」
「いや、大丈夫大丈夫……」
と、その時上のギャラリーから声が聞こえてきて、何事かと思うと、
「あれって、確かスカリエッティラボの人達ですよね?」
「ていうより、ナンバーズ組勢揃いしてるし」
茶髪眼鏡のクアットロさんを始め、ディエチさん、ウェンディさん、チンクさん、そしてトゥーレさんの5人がそれぞれ私服姿でそこに居た。
「面白そうだから見学だそうだ」
「まったく、トゥーレは一夏の秘書だろうに、こんなところで油売ってて良いのかよ」
何やら千冬さんとノーヴェが苦笑いしてるが、ヴィヴィオさんも全員といろんな意味で繋がりがあるからか、同じく苦笑いをしていた。
「さて、それじゃあまずストレッチ、その跡は各自基本の型の練習な」
しかし、すぐに切り替えたノーヴェさんがそう指示し、私達は格闘技……ストライクアーツの練習を始めるのだった。
「ヴィヴィオ達、楽しそうッスね」
「うん、みんな生き生きとしてる」
見学しながらウェンディとディエチがそんな感想を述べる。
「私としては陛下が格闘技を始めたときは少しどうかと思ったんですけど……その心配は杞憂だったようね」
クアットロも普段の作り笑いじゃなく、自然な笑みになりながら少女5人の姿を見守る。
「姉上の心配ももっともですが、ヴィヴィオはヴィヴィオでしっかりと友が出来てるので、安心するべきかと」
「そうだね、けど……クアットロって案外心配性なんだ」
チンクの一言に続けて、末妹のトゥーレが苦笑しながら問いかける。
「失礼ね、これでも一応更正してるし、何より陛下には色々と……まぁ、負い目みたいなものもありますし」
「でもヴィヴィオは気にしてないと思うけどね」
「こっちが勝手にそう思ってるだけよ。そんなことよりトゥーレ、貴方そろそろ戻らないと一夏君に……」
そう言いかけたが、クアットロはその途中であることに気付いて言葉を止めた。
「クアットロ、何のために一夏が今日居ないのか忘れてないよね」
「そうだった……最近実験に急がしすぎて頭が回ってないのかしら」
「束さんと簪さんに混ざって黒魔法的な実験ばかりしてるからでしょ。事務やってる私から見ても異常な光景だからね」
ディエチからも口撃され、クアットロはたまらずノックアウト。
「……今度有給でも使おうかしら」
「有給使ってシャマルさんと一緒に四葉としての活動するんですね、分かります」
「……姉上、あとでお話があります」
あぁぁぁんまぁぁぁりだぁぁ!!と、最近ネタキャラ化が進んでるクアットロであった。
オマケ スカリエッティラボの1日 ②
「なぁトーマ、男二人だけってなんか新鮮だな」書類整理しながら
「そうですね、リリィも簪さんや本音さん、フーカちゃんと一緒に買い物行ってますし」報告書書きながら
「束さんは束さんで地球のほうで色々やってるからな」
「ですね……あ、そろそろお昼ですけど一夏さんは?」
「鈴が弁当作ってくれてるからな、トーマは?」
「俺はスゥちゃんが作ってくれましたから」
「リリィじゃないのか?」
「……前に料理食べたらEC的な意味で暴走して、スゥちゃんに鎮圧されました。物理的に」
「お、おう……」
何とも言えない男たちの日常だった。