「あれ、一夏?」
管理局の技術部、そこに向かう途中で声を掛けられた俺は振り返ってみると、そこには金髪に執務官の黒い制服を着た女性……フェイト・T・ハラオウンがそこにいた。
「フェイトさん?どうしたんですかこんなところに」
「それは私の台詞なんだけど……あ、もしかしてリンネちゃんのデバイスの件かな?」
「てことはそっちはヴィヴィオのデバイスですか。そっちもマリーさんに頼んでたんですね」
そうだよ、と肯定する彼女と共に並び目的の場所まで向かう。
「けど一夏ならリンネちゃんのデバイスは、それこそスカリエッティラボの方で手掛けるかと思ったんだけどね」
「いや実は俺もなのはさんも、ヴィヴィオとリンネのデバイスを俺のところで作ろうと思ったんですけどね……ちょっとマッドなのが二人居るんで、ここは安全を考慮してマリーさんのところに」
何せ束さんとクアットロが凄いやる気出そうとしてたからな。下手したら準ロストロギア級デバイスなんて事になったら目も当てられない。
「あはは……けどマリーさんの所ってことは……」
「まぁ先代のスカリエッティことジェイルさんがいますけど、あの人ならそこまでぶっ壊れた性能じゃなくて、ちゃんとパーソナルに合わせた性能にしてくれますから」
もっともマリーさんと合わさって何やら技術部の一室が大変なことになったと聞いたときはちょっとドン引きしたけど。
「まぁ……そうだろうけど」
「そう言えばヴィヴィオの事で思い出しましたけど……リイスさんがあの傷害事件の事でもしかしたらヴィヴィオが狙われる可能性があるって」
「傷害事件……どういうこと?」
どうやらフェイトさんの耳には入ってなかったみたいだ。
「事件っていうかどちらかというと決闘に近いもので、なんでも腕の良い格闘家やら武道家に街頭試合を申し込んで」
「倒してるってこと?」
「そうです。しかも名乗ってる名前が『ハイディ・E・S・イングバルト』……古代ベルカの覇王を自称してます」
その事で納得したのか、フェイトさんはなるほどと頷く。
「つまりヴィヴィオ……聖王に何かしらの因縁がある相手ってこと?」
「そうかもしれません。というかリイスさん曰く自分の受け持ちにその本人が居るかもって」
「St.ヒルデの中等科に?」
ええ、と俺は呟く。
「まだ確証は無いらしいんでデータは貰えませんけど、一応探りは入れてみるって」
「……個人的にはアインスには普通の教師としていてもらいたいんだけど」
「あれでもヴォルケンリッターの1人ですから。普段は食い道楽に目覚めた新米教師ですけど」
「ふふ、アインスが聞いたら怒るよ?」
仕方ない。だって最近のプライベートだと大概おはぎやら大福やら羊羮やらと、何かしら食べてるイメージしか無い(なお和菓子系なのは完全にリイスさんの好み)。
というか八神家エンゲル係数のトップがアインスさんだが、基本的に八神家では自分のみが食べるものは自腹で買うルールらしく、そこまで負担にはなってないという(なお二位はアイス消費の意味でヴィータさんなのはご愛敬)。
「ところで一夏くん、二人のデバイスの性能ってどんな感じなの?」
「純粋な
特にヴィヴィオの場合は魔力防御の能力値が紙同然だからな。ノーヴェが教えてるのがカウンタヒッターらしいし、できるだけ防御に寄せた方が得策だ。
「へぇ~でもこれで二人もオフトレで一緒に一夏と模擬戦できるね」
「そうですね……はい?俺?」
なんかメンバーに追加されてるんですが
「だって一夏もノーヴェと一緒にコーチしてるでしょ?だったらついてくるべきだと思うな」
「いやいやいや、こっち今は研究職なんで……」
「もうなのはとはやてと一緒にチーム分けしてるし、それに鈴さんからは一緒に行くって連絡もらってるよ」
マジか……と項垂れる俺は悪くないと思いたい。
というのも、去年もその件のオフトレに参加した訳なのだが、大人組の模擬戦にて、千冬姉となのはさんという世界最強クラスコンビに2on1をされて、挙げ句最後は同じチームだったはやてさんとティアナ、そして相手のなのはさんとフェイトさんによる
「はぁ……またあの世紀末な最終戦争を食らう目になるのか」
「その事だけど一夏、今回のにスカリエッティラボの面々も連れてきてくれないかな?」
「……道連れですか?」
「違うよ!!今回ははやての方もシグナムとヴィータ以外全員来られるみたいだから、人数も多いし4チームにしようって、なのはが」
なるほど、考えてみればちびっこ組が現在5人、大人組が俺、千冬姉、なのはさん、フェイトさん、はやてさん、リイスさん、シャマルさん、ザフィーラ、スバル、ティアナ、エリオ、キャロ、そしてオフトレの場所ことカルナージに住むルーとちびっこ組の引率である師匠のノーヴェ14人(なおアギトとツヴァイに関しては融合機なのでカウントしない)。
単純に計算しても19人で、だいたい1チーム6~8人前後で行うため、3チームでは切りが悪いのでさらに人数を、ということか。
「でもラボで行けそうなのは俺を除くとトーマ、クアットロ、簪ぐらいだしな……束さんは一応副所長だから離れられないし……」
「フーカはどうなの?確かラボでの実験で試作機を色々と振り回してるって聞くけど」
「アイツはまだ専用のデバイス持ってませんし、どちらかというとフーカは格闘技系の方が向いてるんで、来ても見学ですかね……」
「そっか……あ、でもザフィーラが期待の選手が教えてるのに居るって言ってたけど」
「あー、ミウラのことか」
前に八神家に行ったときに会ったあのオレンジっぽいピンクの髪の子の事を言ってるのだろうが……。
「ミウラはその……とても言えないレベルでお馬鹿だから無理かもしれない」
「えっと、勉強ができないってこと?」
「できないどころか、はやてさん曰くテストが毎回毎回ヤバいらしくて、あのリイスさんが家庭教師して漸く赤点回避らしいです」
「そこまで!?」
というのもリイスさん……リインフォース・アインスの現在現役のSt.ヒルデの中等科新米教師……専門科目は
「まぁはやてさんとかも居るし、にこにこと毒舌を言いながら教えるはやてさんの姿が目に浮かぶな……『ミウラの学習能力はちょうぽんこつなんやろうか』とかなんとか」
「そ、そんなこと……ていうかはやてのモノマネ上手じゃない?」
「六課組のメンバーのモノマネならある程度できますよ。なのはさんなら……っと通信メッセージ……なのはさんから?」
はてさて内容は
『一夏くん、少し……頭冷やそうか』
とんでもない脅しだった。
「え、ちょ、どっかで聞いてるのなのはさん!?」
「もう、オフトレのときに痛い目にあっても知らないからね」
「……いつもオフトレのウォームアップでバテてるフェイトさんに言われても」
「ば、バテてなんか無いから!!」
いやどう見てもバテてます、そう言いながらマリーさんの元へ向かうのだった。
オマケ リインフォース食い道記 ①
「ふんふん♪」
「ありゃ?何作っとるのアインス?」
「あぁ主、道場の皆のおやつに白玉ゼリーをと思いまして」
「そかそか……けどアインス、その金魚鉢並みに大きい器はなんなんや?」
「?私個人で食べる物ですが」
「いや大き過ぎやろ!?いくらうちの冷蔵庫が業務用並みに大きいからって限度があるで!?」
「いえ、これぐらい普通に食べれますよ?あ、主も一緒に食べますか?」
「食べますか?やないわ!!アインスは私を太らせたいんか!!」
「……知ってますか主」
「なんやいきなり」
「和菓子はですね……太りにくい食べ物なんですよ」
「ほんまか!!」
暫くしてはやてはアインスと共に和菓子を食べては体重計に乗って歓喜してる姿があったとか、はたまた逆だったとか。