東方七変化 作:セラチン1号
なお、作者に歴史の知識は余りございません。ネットで調べたり人に聞いた知識が主だったりしますので、ツッコミどころがございましたらやんわりお願いします。
―――――――ん?ねぇ勇儀、何か流れてくるよ?
―――――――そりゃ川なんだから、何か流れてくるもんだろう?
―――――――それはそうなんだけどさ、いやあれ、狐じゃない?
―――――――狐?ああ、そりゃいい、じゃあ今晩は狐鍋だ。
―――――――狐は狐でも“子”狐だけどね。腹の足しにもなりゃしないよ。
―――――――そうかい。そりゃ残念だ。
―――――――……ん?
―――――――お?
―――――――この子狐、僅かにだけど…。
―――――――……ああ、間違いないね。妖狐だ。
―――――――へぇ……ねぇ、勇儀。
―――――――ああ、丁度いいかもねぇ。鬼に手下なしじゃ、拍も付かないってもんだよ。
―――――――はははっ、じゃあ、決まりだね。
―――――――あぁ、この子狐。
私達で、育ててみようか。
◆◇◆◇◆
時は平成、世は平和。そういえなくなった昨今。
俺という人間は、現在進行形で摩訶不思議な体験をしていた。
「ほーら、粋狐ー、御飯だよー」
「おい萃香。狐が虫なんて食べるのか?」
「さあ?でも妖獣なんだから食べれるんじゃない?」
俺の目の前で幼女と美女が、まるで初めて赤子を世話するような会話を繰り広げている。別段これ自体は珍しいことではない。なんなら、ちょっと最近ご出産した近所の若妻さんのお宅に訪問すれば、見れるかもしれない光景だ。
しかし、しかしだ。
俺の知っている女性、ひいては人間という生き物には、あんなご立派な角はついていらっしゃらない。百歩譲ってコスプレだとしても、周囲の風景がその答えに待ったをかける。
青々とした木々。生命力あふれる土の香り。生を謳歌する動植物。
はい、どう見ても森、もしくは山です。こんな山奥の誰も居ないところでコスプレに精を出す日本人は流石にいないだろう。居ないと信じたい。
ついでに言うと、幼女…萃香と呼ばれていた方が、ノースリーブのシャツにロングスカート、そして手には何やら重りのようなものを鎖につないで、あと腰に瓢箪を装備している。大して美女…勇儀と呼ばれていた方は、体操服のような服に、こちらもやはりロングスカート。そして手には大きな盃を持っている。
さて、そんな奇天烈を通り越して清々しさ感じる奇抜な格好をしている二人に囲まれている俺なのだが、状況の整理が全くと言っていいほどできていない。
まずここはどこだ? 森? 山? だとしても俺はこんなところに訪れた記憶は全くない。ついでに、格好はともかく、こんな美幼女、美女と面識もない。
そしてどうやら俺は、このアングルからして、地面に寝そべっているようだ。つまり眠っていたという事なのだろうか。美幼女はともかく美女に上から覗き込まれての起床……イイ。
ではなく、つまり俺は眠っているうちに、こんなよくわからない森だか山だかに連れてこられ、今目を覚ましたのだろう。
そこから導き出される結論、それは―――――
「キュ!?キュゥゥウウ!?!?(俺誘拐!?誘拐されてんじゃねぇか!?)」
………。
…おい待て、なんだ今のキュートな声は。
いやいや、ちょっと待ってほしい。流石にこう、大の大人が出す声じゃないだろう今のは。
「キュ」ってなんだ。そんな萌えをあざとく狙いましたみたいな声、流石にみっともなさすぎるだろう。
ああ、これはそうだ。きっと目の前の美幼女、美女の声に違いない―――――
「おおっ、鳴いた鳴いた!威勢のいい子だねぇ」
「衰弱しきってた割に活きがいいじゃないか。将来有望だねこりゃ」
ハイ違いました。というかこの二人、さっきから普通に言葉喋ってたよねっていう。
となるとあれ、俺の声なのか?いやでも俺、確かに普通に言葉を話してたはずなんだが…とにかく、いつまでも寝転がっているわけにもいかないよな、うん。
「……キュ?」
あれ、おかしいな。確かに立ち上がったはずなのに…こう、こう。
視点が、ほぼ変わらないんだが。
「おっ、立った立った!ふーん、中々愛嬌はあるじゃないか」
「首傾げてこっちを見てるねぇ。あー、まあいきなり知らない“鬼”が目の前にいりゃこうなるか」
「それもそっか。ほれほれ、伊吹萃香姉さんだよー」
そういって俺の顎をウリウリとしてくる幼女。
いやちげぇよ。名前が気になったとかそういうのじゃないんだよ。いや確かに重要なことではあるけどそうじゃないんだよ。ええいやめろ、顎を触るんじゃない! 犬か猫か俺は!
「はっはっは!抵抗もしないか。こりゃ結構ほかの生き物に慣れてるねぇ。私は星熊勇儀さ。どれ、酒でも飲むかい?」
そういって俺の頭を乱雑にわしゃわしゃーと撫でながら盃を近づけてくる星熊勇儀とかいう美女。ええい、やめろやめろ! 俺は未成年だ! こんなもん誰が飲む―――――
そう、手で盃を押しのけようとした瞬間に、気づいてしまった。気づいたというよりかは、見てしまったという方が正しいかもしれない。
それは腕というより足に近く。足のすべてが毛でおおわれており。何より未発達ながら、獣のような爪が生えていた。よくよく見れば、腕…というべき場所にも毛がふさふさと生い茂り、触ったら大層肌触りがいいことを連想させる。そして、何よりも―――――
―――――盃の中で、波紋を揺らす酒。その酒に、一匹のまだ幼い子狐の顔が映っていたのだ。
「……キュッ?」
首をかしげると、同時にその酒の中の狐も首を傾げる。
手…いや、前足を前に出している姿も、今の俺の状態とさして変わらないだろう。
……。
………。
…………は?
「……キュゥ…」
俺の脳は、そんな状態の俺についに理解の範疇を超えてしまったのか、ゆっくりと意識を飛ばしていった。
――――――これが後に、俺が母と、姉と、そして“この鬼畜ども”と呼び慕うことになる、2匹の偉大な鬼との、初めの邂逅だった。
今回の登場人物
子狐(粋狐(すいこ)) 主人公
現況
ここはどこ?私は子狐?
伊吹萃香(いぶき すいか) 鬼 ロリ枠兼お姉さん枠
現況
子狐拾った。よっしゃ飼いならしたろ。
星熊勇儀(ほしぐま ゆうぎ) 鬼 美女枠兼姉御役
現況
相方がなんか張り切ってる。面白そうだしちょっと付き合ったろ。
以上今回出てきた人物たちです。
因みに作者、昔から色々な二次創作の作品を読み漁っていたので、もしかしたら無意識のうちに色んな作品の影響を受けてるかもしれません。
まあだからなんだ、という話なのですが、拙い文章ながら頑張ります。