龍骸   作:ランブルダンプ

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TS

「はぁ……クソっ!死にかけてたとはいえ、こんなチンケな義体しか残ってねぇのかよ……」

 

脊髄のコネクタを引き抜いて床に投げ捨てる。

 

「歩行モジュールと戦闘モジュールを自動調整、元の義体とのデータリンク開始」

 

全裸の身体をおこし、歩行の調整がある程度終わってから手術台から床に足をつける。

 

「冷たっ!?感度センサー性能良すぎだろ……セクサロイドかこれ?」

 

見た目は小柄な黒髪の少女だが、その見た目と乱暴な言葉遣いが奇妙な雰囲気を放っている。

 

「取り敢えず着るもの……とこの声なんとかしてぇな」

 

少女は両目を閉じ、空中で指の軌跡を描く。

暫くその状態が続いたが、顔をしかめて目を開ける。

 

「デフォルトの設定しかないのか……」

 

そう残念そうに呟くと、ぺたぺたと裸足を鳴らして部屋の中を歩き回る。

 

「ガキ用の服、ガキ用の服……お、これとかいいな」

 

手に取ったのは袋詰めされた漫画のキャラクターが描かれたTシャツ。

ラベルには「20--8.4.1D 民間サンプル」と書かれている。

 

「上着……適当に白衣でいいか」

 

地面に落ちてる血塗れで息絶えている医者の白衣を剥ぎ取って着た。

 

「さて、稼働データの調整も終わったしさっさとここ爆破して出ていきますか」

 

 

少女はかつての自分の義体から厚底のブーツを取ってから、その脱け殻の右手に装備されている銃を操作し、急いでその場から離れていった。

 

後に残されたのは腹に大穴を開けた男性型の義体とその手術台の回りに転がる何人もの白衣を着た死体。

 

数分後、爆炎が全てを飲み込んだ。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

『よぉ!何かポカしたみてぇじゃねぇか!識別IDが変わってんぜ!』

「うるさい、少し派手なダイエットしただけだ」

『ほーん、んで今度のは少女型か!可愛い声してるじゃねぇか』

「現地でこれしかなかったんだよ」

 

無線から聞こえてくるのは同じ雇われ組のデイン。

こいつも義体なのでちょくちょく容姿が変わっていまいちつかみ所がない。

この間、獅子舞の義体で戦場に出てきた時は真面目に精神やられたのかと疑った。

今はロボットスーツの姿をしている。

 

『現地ってほとんど人間しか居なくないか?』

「あぁ、だから依頼人が欲しがってた義体を使ってんだよ」

『んー?それちょっと不味くねぇか?向こうさん「絶対誰にも中に入れるな」って言ってなかったっけ?』

「だからさっさと回収してくれ、気づかれる前に乗り換える」

『はいよ』

 

この際デインが適当に用意した義体でも構わない、さっさとこの身体を乗り換えて依頼完了だ。

 

 

 

 

 

そうなるはずだったのに。

 

 

 

 

「あれ?これお前の精神データ認識してガッチリ噛み合ってて外れねぇぞ」

「は??」

 

冗談じゃないとデインの持ってる端末を奪い取って確認すると、確かに彼の言う通りだった。

 

「もし外れたら?」

「人間が脳味噌8割掻き出されてまだ自意識が残ってる生き物だったら良かったんだがな」

「Oh……」

 

崩れ落ちる俺に、デインがそっと肩に手をかけてきた。

 

「大丈夫、俺の秘蔵TS娘同人誌圧縮データ贈ってやるから」

「頭沸いてんのか」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「オーケー、作戦を練ろう」

「作戦って?」

 

取り敢えず貰ったTS娘の同人誌を読みながら話を聞く。

身体に精神が引っ張られるってマジですか??

 

「依頼は失敗だ」

「そりゃそうだな」

「ワンチャンお前を拘束して無理やり精神引き抜いて、廃人化したお前をナマケモノの義体に入れて俺が面倒を見るって手もある」

「ねぇよ」

 

なんなんだ、獅子舞といいその義体のレパートリーの多さは。

 

「ならプランBだ」

「ふむ」

「このまま依頼人を殺す」

「馬鹿なの?」

 

任務失敗して逆に殺しに掛かるってただのやべー奴だぞ?

 

「なら最後はこれだな」

「選択肢が少ないなぁ」

「このまま二人別々に逃げる」

 

……お?まともな案だ。

 

「理由は?」

「お前だって分かってるだろう?この精神と物質が二分されてる時代に逆行して無理矢理くっつけてるその義体は異常だ」

 

確かに。

 

「俺もお前も何度も義体に意識を移してきたし、闇市場でその技術使って稼げるくらいには長けてる。それなのに分ける手口すら分からないのはおかしい」

「それで逃げるのが得策か」

「依頼人に正直に話すのもいいかもしれんが、まず間違い無く廃人にされるぞ。俺もそれを知ってしまったからには命が危ないしな」

「だよなぁ……」

 

 

 

 

それから数時間後、先ほど爆破された施設から遠く離れた街のカラオケの部屋にて、少女とロボットの二人組が鬱憤を晴らすように大声で歌っていたという。

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