犬も歩けば棒に当たる   作:政影

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アンケート1位Roselia(15/34)は番外編2の最後の方で書きます。


番外編2(シーズン1春)
番外編2-1:麻弥さんがみてる


「――というのがジブンの見解です」

 

「流石は大和さんね。その見識には恐れ入るわ」

 

「フヘヘ……湊さんにそう言っていただけると光栄です」

 

「それに引き替え、どこぞの店員ときたら……」

 

「これがモンスタークレーマーかな、『明石』?」

 

「にゃー」

 

 ある日の放課後、ジブンは湊さんと一緒にワンコさんのアルバイト先の一つである猫カフェに来ていました。

 薄々感づいていましたが、湊さんもジブン同様かなりの猫好きで話題が尽きません。

 ワンコさんは普通の店員以上の知識はあるものの、湊さんにとっては物足りないようです。

 

「まあまあ、ここまで話が弾んだのも湊さんが初めてなので、勘弁してあげてください」

 

「大和さんがそこまで言うなら仕方ないわね」

 

「ありがとう、麻弥さん」

 

「いえいえ。それにしても猫と意思疎通出来ているようで羨ましいです」

 

 実際、ワンコさんが呼びかけると必ず鳴いて反応しますし、困ったことがあるとワンコさんに知らせているようです。

 

「うん、みんな賢いから」

 

「にゃう」「にゃー」「にゃん」「にゃう~ん」

 

 ワンコさんの呼びかけに一斉に答える猫達……流石です。

 

「……にゃーんちゃん、かわいいねー」

 

 猫がこぞって鳴く様子を見た湊さんの蕩け顔が想像以上です。

 ライブでの圧倒的なオーラを放つ彼女と同一人物とはとても思えません。

 

「……はっ! 何でもないわ」

 

「お気になさらずに続けてください」

 

 我に返って顔を真っ赤にする湊さん、あーワンコさんがぞっこんな理由がよく分かります。

 普段気を張っている分、気を抜いた時のギャップが激しいのでしょう。

 イメージを大事にするアイドルに近いものを感じます。

 

「そ、そう言えば、一年生の頃のワンコは演劇部を手伝っていたらしいわね?」

 

「はい、その節はお世話になりました」

 

 急な話題転換、突っ込むのは野暮でしょう。

 

「本人は『指示待ち犬なんで適当に使って』なんて言ってましたけど、毎回こちらの指示以上の結果を出してくれました」

 

 今からでも正部員に欲しい人材です。

 

「そう、ワンコらしいわね」

 

 優しく微笑む湊さん、まるで保護者のようです。

 

「何の話?」

 

「あら、もう仕事はいいの?」

 

 ワンコさんがやってきて腰を下ろします。

 

「雨のせいでお客さんの入りが悪くて暇」

 

「にゃう」

 

「それは仕方ありませんね」

 

 ワンコさんに抱っこされている猫を撫でると目を細めます……最高に可愛いです。

 他の猫達も暇を持て余しているようでジブン達の周りに集まってきました。

 ……湊さんの表情がまた凄いことに。

 

 

 

 

「大和さん、ワンコの面白い話はないかしら?」

 

「そうですね……」

 

 ここは一発、湊さんがワンコさんに惚れ直す位のエピソードを披露しますか。

 

「あれはとあるホールでの出来事でした。初めて使う会場だったため、どことなく普段とは違う緊張感が漂っていましたね」

 

 今更ですが割と設備が老朽化していたもちょっと気になっていました。

 

「上演中に突然、舞台袖から伸びていた照明を吊っている金属製のワイヤーが解けかかり、あわや大惨事というところでした」

 

 あれ以来安全確認はかなり厳しくなりましたね。

 

「ワンコさんは解けかけてトゲトゲになったワイヤーを軍手のまま掴むと、ジブン達が応急修理を完了するまで呻き声一つ上げることなく支えきりました」

 

「……やるわね」

 

「実はあんまり覚えてない。気付いたら両手に巻かれた包帯が真っ赤に染まってた」

 

「まるで別人のように凛々しかったですね。あ、普段も格好可愛いいですけど……まさか多重人格だったりして」

 

「…………」

 

「…………」

 

 ジブンの発言に黙り込むお二人。え? え?

 

「ワンコ、バレバレじゃないの!」

 

「ふぃだいでふ、ふきにゃしゃん」

 

「私の悶々とした日々を返しなさい!」

 

 ワンコさんの両頬を左右に引っ張ってお怒りの湊さん。

 ジブン、何かまずいことを言っちゃいました?

 

 

「もう麻弥さんに話しても良い気がしてきた」

 

「そうね」

 

 解放された頬をさすりながらワンコさんが呟きます。

 

「何の事ですか?」

 

「実は――」

 

 

 

「――なるほど、本当に多重人格でしたか」

 

 当てずっぽうの発言が当たっていてごまかし笑いしかできません。

 

「信じてくれる?」

 

「勿論です。……という事は日菜さんとの剣道で見せた最後の動きも」

 

「そうかも。記憶飛んでたし」

 

 考え込むワンコさん、自分でも気付いていなかったようです。

 比べると失礼かもしれませんが、好きな話題になるとつい語りすぎてしまうジブンと結果的にそんなに変わらないような気もします。

 どちらのワンコさんにも助けていただいたわけですし。

 

「大和さん、申し訳ないのだけれどワンコの様子が変だった時は、フォローを手伝ってくれないかしら?」

 

「ええ、ジブンで良ければ」

 

「麻弥さんがそう言ってくれると心強い。彩さんも麻弥さんが気を配ってくれるおかげで、今のパスパレがあるって言ってた」

 

「フヘヘ……言い過ぎだと思いますけど、そう言ってもらえると感激です」

 

 パスパレに入る決意を後押しした内の一つ、少しでも恩返しをしないといけませんね。

 

 

「二年生、というより湊さんと知り合ってからワンコさんは変わりましたね」

 

「そう?」

 

「前までの危なっかしさ、というか行き過ぎた前のめり感が薄まった気がします」

 

「そうなの?」

 

「……温かい家庭に拾われて、周りを見る余裕が出来たのは確か」

 

「なら良かったわ」

 

「まあ、手の掛かるご主人様のお世話で手一杯」

 

「ちょっと躾が足りなかったようね。覚えていなさい」

 

「うん、楽しみにしてる」

 

 お二人の掛け合いに頬が緩んでしまいます。

 ワンコさんとこんなに心の距離が近いのは湊さんくらいでしょう。

 

「やっぱり麻弥さんの笑顔は可愛い。パスパレに勧誘した千聖さんに感謝」

 

 その言葉と共にワンコさんの陽だまりのような香りに包まれます。

 

「ちょ、いきなり抱きつかないでください! 湊さんもいつの間にか猫に夢中になっていないで何とかしてください!」

 

「ん……あと三十分は動けないわ」

 

 膝の上猫を乗せてご満悦の湊さん、こちらのことは興味が無いようです。

 

 

 

 

「そうだ、麻弥さんへプレゼントが」

 

「ふへ?」

 

 ようやく放してくれたワンコさんがそう言うと、私の頭に何かを被せました。

 

「あら、イリオモテヤマネコの猫耳ヘアバンドね」

 

「ちょ、ジブンには似合いませんって!」

 

 こういうのは彩さんか日菜さんの担当でしょうに。

 

「沖縄の方言で『マヤー』とは猫の事、つまり大和麻弥さんは大和猫さん」

 

「ワンコさん、何言ってるのか分かりませんよ!」

 

「それは気付かなかったわ。大和さん、撫でてもいいかしら? むしろ撫でさせなさい」

 

「湊さん、目が怖いです!」

 

 ジリジリと迫りくる湊さん、このあと滅茶苦茶撫でられました。

 

 

 ……芽生えた感情にはそっと蓋をしておきます。




感想、評価、誤字報告などありましたらよろしくお願いします。


<備考>

大和麻弥:猫と一緒に狭いところに収まるのが好き。

湊友希那:猫を前にすると他の事はどうでもよくなる。

ワンコ:猫は大事な同僚。

猫達:接客のプロ。

番外編2で扱ってほしいバンドは?

  • Roselia
  • Afterglow
  • Poppin'Party
  • Pastel*Palettes
  • ハロー、ハッピーワールド!
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