犬も歩けば棒に当たる   作:政影

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サブタイトル詐欺。

ソレッラ※姉妹


番外編2-3:チャオ 氷川ソレッラ!

 コン、コン、コン。

 

「どーぞー」

 

「失礼します」

 

 あたし以外滅多に人が来ない天文部の部室にワンコちゃんが入ってきた。

 読みかけの先輩達の日誌を脇に置き、ワンコちゃんの方へ向き直る。

 

「で、あたしに話って?」

 

 昼休みに言われた「放課後、部室で話がある」の言葉を思い出す。

 ワンコちゃんに着席を促してじっと見つめた。

 多分、あの事だよね、ライブ。

 ちょっとお節介かもって思ったけど、Roseliaが成長すればおねーちゃんの為にもなるし。

 

「うん……その前に部室の掃除をしようか」

 

 少し声のトーンを落として周りを見るワンコちゃん、あたしは気にならないけど日誌やら備品やらが乱雑に置いてある。

 しょうがないから片付けるかー。

 

 

 

 

「おー、綺麗になったね」

 

「うん、上々」

 

 十分程度で部室が見違えるようになった。

 ワンコちゃんってこういうの得意だよね。

 まるでおねーちゃんみたいだ。

 

「じゃあ、改めて……私を見捨てないでありがとう」

 

「えっ」

 

 予想外の言葉と優しい笑顔にあたしは言葉を失う。

 

 おねーちゃんから避けられ、何もかもがつまらなかった日々。

 誰かから聞いたワンコちゃんの存在に少し興味を持ったので、近付いて色々と勝負を吹っかけた。

 普通の人よりは出来るけど、あたしには届かない。

 それでもワンコちゃんは逃げ出さなかった。

 その事がどれだけ凄いのかは、前よりは話せるようになったおねーちゃんから長々と説教された。

 

「あたしはあたしがしたい様にしただけだし」

 

「うん、でも途中で勝ち逃げしなかった」

 

「だってワンコちゃんが……あたしから逃げなかったから」

 

 他人なんてよく分からない上に、結局離れていくか距離を取るだけだし。

 近付いてくるのはあたしを利用したい人だけ。

 ……そんな風にその時は思ってたから、逃げ出さないワンコちゃんに少しるんっ♪ ってきた。

 

「ようやく振り返る余裕が出来たので、感謝の気持ちを伝えたかった」

 

「意外だなー、今でも嫌われてるかも、って思うし」

 

「嫌いじゃないよ、苦手なだけ」

 

「あはは~、また言われた♪」

 

 嫌いじゃないのに苦手とか意味が分からなくて面白いよね。

 普通の人は面と向かってそんなこと言わないだろうし。

 

 

 

 

「一つ聞いていい?」

 

「どうぞ」

 

 ひとしきり笑った後、ある質問をしてみようかと思った。

 ワンコちゃんならこの質問にどう答えるかな?

 

「人と人って理解しあえると思う?」

 

「……完全には無理かな。私は私、他の人じゃないし」

 

「そっか」

 

 割と即答、あたしと似た考えかな?

 

「でも好きな人を理解しようと思いを巡らせると、ここが温かくなる」

 

 ワンコちゃんは自分の胸に手を当てると、はにかんだような笑顔を見せた。

 その笑顔は二年生になってから見られるようになった笑顔で。

 

「あー、友希那ちゃんの事考えてるー」

 

「ふふっ、だから理解しようと努力する事は大事。私はそう思うな」

 

 前におねーちゃんにも同じような事を言われたよね。

 取りあえずあたしも真似て胸に手を当てる。

 千聖ちゃん、イヴちゃん、麻弥ちゃん、彩ちゃん……そして、おねーちゃん。

 

「本当だ! みんなの事を思うとぽかぽかしてきた♪」

 

「……日菜ちゃんって、パスパレに入ってから良い笑顔が増えた」

 

「そう、かな? ……うん、そうかも♪」

 

 ワンコちゃんの指摘にるんっ♪ ってする。

 こんな笑い合える関係になるとは思わなかったなぁ。

 もしかして二人で理解しようと努力したから?

 

 

 

 

「で、これからも勝負は続けるの?」

 

「うん、まだ二年近く学園生活があるんだから逆転の目はある」

 

「へー、まあ頑張ってよ。負けないけどね」

 

 部室を後にして校門へ向かう途中でも、会話は途切れなかった。

 二人きりでこんなに話すのって初めてかも。

 

「ワンコ、遅いわよ」

 

「え、友希那さん?」

 

 遅い時間帯で人もまばらな校門には、友希那ちゃんと……おねーちゃん!

 

「もしかして心配で待っててくれたとか?」

 

「か、勘違いしないでよ。ハンバーガーのワンニャンセットの要員確保の為に待ってただけよ」

 

「おねーちゃんも?」

 

「そ、そうよ、日菜。早く行くわよ」

 

 いつも必死で隠そうとしているのに、照れ隠しに使うなんてあたし達愛されてるなー。

 ワンコちゃんと顔を見合わせ思わず笑っちゃった。

 

「あなた達、そんなに仲が良かったかしら?」

 

「心配して損、いえ何でもないわ」

 

 怪訝な顔の二人を見て、悪戯心から思わずワンコちゃんに有無を言わせず腕を組む。

 驚く三人をよそにこれからのるるるんっ♪ ってする筈の日々にあたしは思いを馳せていた。




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<備考>

氷川日菜:少し気が楽になった。

ワンコ:ようやく言えた。

氷川紗夜:妹の突飛な行動に頭を痛めつつも満更でもない様子。

湊友希那:半分はガチでワンニャンセットの為。

番外編2で扱ってほしいバンドは?

  • Roselia
  • Afterglow
  • Poppin'Party
  • Pastel*Palettes
  • ハロー、ハッピーワールド!
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