犬も歩けば棒に当たる   作:政影

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主要人物出し切るまで番外編2は続きます。

※誤字報告ありがとうございます。


番外編2-4:バラエティクールギフト

 ワンコ先輩と初めて会ったのは休日の満員電車だった。

 

 イベントが重なったのか普段からは想像できない混み方!

 体の小さいあこは四方から押され息苦しかった。

 だんだんと気分も悪くなる。

 そんな時。

 

「ちょっと失礼」

 

「え、あ」

 

 急に抱き寄せられたかと思ったら壁際に移動させられた。

 移動させた張本人はあこを守るように壁に手を付き隙間を確保してくれる。

 

「後何駅?」

 

「ふ、二駅です」

 

「頑張れる?」

 

「はい!」

 

「うん、頑張ろう」

 

 眼帯が特徴的なおねーさんは目的地に着くと人混みをかき分けあこを扉まで誘導、そのまま電車で行ってしまった。

 お礼、言えなかったなぁ……。

 

 

 

 

 再会したのはそれから数日後、これが運命石の扉の選択!? とか思っちゃった。

 

 お姉ちゃんに連れられて行った羽沢珈琲店、そこでつぐちんと一緒に働いていた。

 

「こ、この前はありがとうございました!」

 

「ああ、巴ちゃんの妹だったの。あの後大丈夫だった?」

 

「はい、何とか」

 

「それは良かった」

 

 優しく微笑むと共にこっそりクッキーをおまけしてくれた。

 

 小声で「練習で作ったものだからあんまり期待しないで」と言われたけどとっても美味しかった。

 

 おねーさんはワンコ先輩というらしい。

 心の中で「地獄の番犬」の称号を付けちゃった。

 

 

 

 

 ある日クラスメイトにあこの言動が子供っぽいと馬鹿にされ、その愚痴をワンコ先輩にこぼした。

 

「……あこって子供っぽいのかなぁ」

 

「逆に聞くけど、どんな人が大人っぽいかな?」

 

 ワンコ先輩は掃除の手を止め静かに尋ねてきた。

 

「う~ん、おねーちゃんとかワンコ先輩とか?」

 

「巴ちゃんはともかく私はまだ子供だよ。将来やりたいことも見つかってないし、毎日何とか生きてるだけ」

 

「えー、そんな事ないと思うけどな~。こう、バリバリに生きてるオーラがバーン!」

 

「ありがと」

 

 あこの言葉に素っ気ない返事と共に微かに笑みを浮かべる。

 

「あこもカッコイイ大人になりたいな~」

 

「自分の理想を追い求めるあこちゃんは十分カッコイイよ」

 

「本当!?」

 

「うん、私も見習わないと」

 

「えへへ、ワンコ先輩にそう言ってもらえると嬉しいよ!」

 

 嘘偽りを感じさせないその言葉に、さっきまでのモヤモヤした気持ちは飛んで行った。

 

「それとは別に勉強も頑張ろうね。巴ちゃんが心配してた」

 

「あっ、はい……」

 

「時間が合えば見てあげるから」

 

「ありがとうございます!」

 

 ワンコ先輩って教え方が丁寧だから好き……分かるまで解放してくれないけど。

 

 

 

 

「それでおねーちゃん達は反対だって!」

 

「流石にネットで知り合った相手と一人で会うのは危険」

 

「むー、RinRinは大丈夫だよ!」

 

 あこの熱弁にグラスを磨きながら困ったような表情を浮かべるワンコ先輩、絶対分かってくれると思ったのに。

 

「私達はあこちゃん程その人の事を知らないしね」

 

「それはそうだけど……」

 

「何かあったら悲しい」

 

 直接会った事は無いけど、大切な戦友が疑われて悲しい。

 じっとワンコ先輩を見つめると「やれやれ」といった感じで店の奥に行きすぐに戻ってきた。

 

「……最終的に決めるのはあこちゃんだから、私にできるのはこれを渡す位」

 

 そう言ってあこの目の前に置かれた黒い重量感のある物体。

 

「スタングレネード、所謂閃光手榴弾」

 

「えっ、えー!」

 

 思わず椅子から転げ落ちそうになった。

 映画やゲームでしか見たことのない存在が目の前に。

 

「使い方は簡単、ピンを抜くだけ。抜いたらすぐに目と耳を塞いで」

 

「……本物?」

 

「前のバイト先で貰ったコピー品だけど威力はそれなり。大の大人でも無力化できる」

 

 ゴクリと唾を飲み込む。

 嫌な汗が流れる。

 

「頑張れ」

 

「…………」

 

 幸運な事にそのスタングレネードは使われることなく、あこの家のインテリアの一部になっている。

 

 

 

 

「色々……あったんですね」

 

「うん、ワンコ先輩はとってもカッコイイ!」

 

「ありがと」

 

 羽沢珈琲店のカウンターで思い出話に花を咲かせるあこ達。

 りんりんも興味深そうに聞き入っていたみたい。

 

「その時の相手が燐子さんで本当に良かった」

 

「ほら、あこの言ったとおり問題なかったでしょ?」

 

「わたしも……あこちゃんと出会えて良かった」

 

 りんりんの言葉に胸がキュンとする。

 あの時のあこの選択に花丸をあげたい。

 

「そう言えばダンス部の方にはもう顔出さないんですか?」

 

「あれはリサさんに助っ人を頼まれただけ。毎日だとバイト中に体力が尽きる」

 

「えー、ダンスなら三人で同じステージに立てると思ったのに~」

 

「あこちゃん……私の体力も考えて……」

 

 りんりんの笑顔が引きつってる。

 

「体力とか抜きにすれば、燐子さんは社交ダンスとか似合いそう」

 

「あこもそう思う! ドレス姿のりんりんとタキシード姿のワンコ先輩とか超カッコイイ!」

 

「…………あり、かも」

 

「私としては男装した燐子さんとあこちゃんが踊っても絵になると思う」

 

「あ、それいい!」

 

「その時は……わたしが衣装を作るね」

 

 超超カッコイイりんりんの衣装で優雅に踊るあこ達……血がたぎるっ!

 きっとりんりんが本気を出せば体力だってダンスだって何とかなる、筈。

 

「まあ、その為にも」

 

「勉強……再開だね」

 

「うー、追試なんてー!」

 

 数日後に迫った追試対策の勉強。

 追試が終わるまで紗夜さんにはバンド練習への参加が禁止された。

 

 ……あこが超超超カッコイイあこになれるのはいつになるのかな?




感想、評価、誤字報告などありましたらよろしくお願いします。


<備考>

宇田川あこ:まずは追試から。

白金燐子:まずは体力作りから。

ワンコ:まずは常識から。

番外編2で扱ってほしいバンドは?

  • Roselia
  • Afterglow
  • Poppin'Party
  • Pastel*Palettes
  • ハロー、ハッピーワールド!
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