犬も歩けば棒に当たる 作:政影
カニーナ※犬
「ワンコと二人きりでクッキー作りなんて久しぶりだね~」
「うん、師匠のリサさんに成果を見せる時」
腕まくりをしてやる気満々のワンコ……すっかり丸くなっちゃって。
去年初めて見た時は一匹狼みたいだったのに。
今日はワンコにお願いされてアタシの家でクッキー作り。
確かに最初に教えたのはアタシだけど、バイト先の羽沢珈琲店でもつぐみと一緒に作ってるって話だし。
そんなに教えることは無いかな~。
「どうかした?」
「弟子の成長っぷりに感無量ってね。そう言えば友希那は?」
「作曲してるからクッキーが出来たら呼んでとのこと」
「あはは、相変わらずだね~」
最近色々な事に興味を持って行動しているみたいだけど、料理はまだ苦手かな?
まあアタシとワンコの腕前を信頼しているから、と思えば悪い気はしないけどね。
「後は冷蔵庫で休ませてオーブンで焼くだけかな?」
「リサさんのクッキーのレシピは奥が深い。友希那さんへの愛を感じる」
「いやー、そう言われると照れるね」
ワンコの言葉はストレート過ぎて時々胸がざわつく。
アタシには真似できないから、かな?
「ちょっとレシピを撮らせて」
「オッケー♪」
最近ガラケーからスマホに乗り換えたワンコ。
友希那から友希那のお父さんにお願いしたら、即携帯ショップに連れて行かれたらしい。
もう完全に湊家の一員だね。
……連絡とかスムーズにできるしアタシ達にとっても良かったかも。
「さて、リサさんに質問、いい?」
使い終わったスマホを机の上に置くとワンコはアタシの方に向き直る。
「改まって何かな? 他のお菓子のレシピとか?」
ワンコの普段と変わらない声色にアタシは何にも考えずに言葉を返す。
「それはそれで聞きたいけど、今日は別の事」
「何だろう?」
「麻弥さんや日菜ちゃん達に私に繋がりを持たせたのはリサさん、で合ってる?」
「……そっか、気付いたんだ。余計なお世話だった?」
「全然。むしろ今では感謝しかない」
「そっか……良かった」
我ながらお節介が過ぎると思い言われなければ黙っていよう、と考えていただけに胸のつかえが取れた気分。
当時のワンコは今と全然違って近寄りがたかったし苦労したよ。
「でも、本当に救いたかったのは私じゃないでしょ?」
「っ!?」
その言葉に一瞬胸がつまる。
「私は代替物?」
「違うよ! ……と言いたいところだけど、アタシにもよく分かんないや」
いつの間にかかいていた汗を拭い、静かに見つめるワンコに改めて向き合う。
頭の中はぐちゃぐちゃだけど胸の内を全て話そう。
一年の時に止めようと思ってたベースを細々とだけど続けていたのも、ワンコの一言が切っ掛けだったし……。
「放っておけない気がしたから……友希那に雰囲気が似ていたのは認めるけど」
「そっか。ちなみにワンコの愛称は?」
「昔、友希那と一緒に可愛がってた近所の犬から」
「やっぱり友希那さん絡み……大好きなんだ」
「あーっ、恥ずかしさで殺す気!? アタシ今井リサは湊友希那の事が大大大好きです!」
口に出したら後から後から思いが溢れだしてきた。
「音楽の事で疎遠になってからもずっと見てきたよ。ワンコには友希那を変える力になって欲しいとも思ったよ。これでいい!?」
「そうね。リサには辛い思いをさせてきたわね」
「ゆ、友希那!?」
背後からの声に振り向くとそこにはアタシの最愛の人が。
「スマホって便利。盗み聞きにはもってこい」
「そうね。安心してリサ、合鍵は事前に借りておいたわ」
「え、ちょ、まさか今までの会話」
「リサの思い確かに受け取ったわ」
「いやーっ!」
思わず顔を抑えてしゃがみこむ。
よりにもよって友希那に筒抜けだったなんて!
「ごめんなさい、リサさん。こうでもしないと本音を聞けないと思って」
「ごめんなさい、リサ。ずっと見守ってくれていたのに本当の思いに気付かなくて」
「う~、二人の優しさが恥ずかしさを倍増させるよ……」
何とか立ち上がると友希那が背中に手を回してきた。
「ゆ、友希那!?」
「若宮さん直伝の親愛のハグよ」
そう言うと友希那の腕に力がこもる。
よく見ると耳が少し赤い……アタシも頑張らないと。
友希那の背に手を回し抱きしめる。
アタシより華奢な体に愛しさが溢れてくる。
「友希那~」
「ふふっ、リサったら涙が零れ落ちそうよ」
「えっ」
友希那がアタシの涙を……舐め取った!?
「おー、良い画が撮れた」
「ワンコ何撮ってるの!?」
「リサまだハグ中よ」
「取りあえずグループチャットに投稿」
「ちょまま!?」
震えだすアタシのスマホ。
ハグ中の友希那をそのままにして画面を覗くと。
『(*ノノ)キャ』
『友希那さんカッコイイ!』
『今井さんおめでとうございます』
『キラキラドキドキです!』
『悪くない、です』
『るん♪ ってきた!』
『二人とも素敵だわ!』
その後もしばらくはみんなからのメッセージが止まらなかったよ……。
「『FUTURE WORLD FES.』に出たい?」
「駄目かな?」
Roselia揃っての練習前、アタシはそう切り出した。
「半分は私情、半分はRoseliaとして頂点を目指すために通らなければいけない道だから」
アタシの言葉に他の五人は顔を見合わせる。
アタシと友希那と友希那のお父さんの人生に大きく影響を与えたあの舞台に立ってけじめを付けたい。
「私からもお願いするわ」
「友希那……」
友希那はアタシの横に立つとそっと頭を下げる。
アタシも慌ててそれに倣う。
「私に異論は有りません。ギターを続けている中で一つの目標でしたし」
「そこでカッコイイ演奏が出来たら最高にカッコイイって事だよね、りんりん?」
「うん……一緒に頑張ろう」
「紗夜、あこ、燐子……」
三人の迷いの無い言葉に胸が熱くなる。
「全力でサポートする。最高の音楽を届けて」
ワンコの言葉に力強く頷く。
「みんな……ありがとう」
胸に続いて目頭が熱くなる。
最近、涙腺が緩みっぱなしかな。
「リサ泣いている場合じゃないわよ。それともまた舐め取ってほしいの?」
「その事は忘れて~!」
「お二人ともいちゃつくのは練習の後にしてください!」
「りんりーん」
「うん……後でいちゃつこう」
「大団円?」
相変わらずステージ上の姿からは想像できないRoseliaのドタバタな日々。
友希那、いや彼女達とバンドを組めたことは幾つもの偶然と幸運が重なった結果かもしれない。
でも……それに甘えず確かな絆としていきたい。
だってアタシはRoseliaのみんなが大好きだから、ね。
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<備考>
今井リサ:何気に重要人物。
湊友希那:リサルート突入?
ワンコ:筋を通した。
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麻弥さんがみてる
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レイニーブラック
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リサ・カニーナ