犬も歩けば棒に当たる   作:政影

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歌詞使用の規約改定に今更気付いたので使ってみました。

お誕生日おめでとうございます。


その他-5:湊友希那誕生日(シーズン1-10/26)

「まずは忙しい中集まってくれた事に感謝するわ」

 

 場所は羽沢珈琲店の奥まった席。

 羽沢さんにお願いしてこちらから呼ぶまでは注文も待ってもらっているわ。

 そして集まったメンバーをじっくり見る。

 奥沢美咲(10/1)、白金燐子(10/17)、上原ひまり(10/23)、市ヶ谷有咲(10/27)、そして私、湊友希那(10/26)。

 全員が十月生まれ、つまり――

 

「ここに十月会の結成を宣言するわ」

 

「まんまじゃねーか! ……です」

 

「ふふっ、良いツッコミね、市ヶ谷さん」

 

 流石は花咲川にその人ありと言われるだけあるわね。

 リサも見習ってほしいわ。

 

「じゃあオクトーバーフェストとかセイントオクトー「ストップ!」」

 

 私の発言を奥沢さんが遮る。

 彼女もまた「ポピパの有咲」と双璧をなす「ハロハピのミッシェル」として有名なツッコミ職人ね。

 

「ちょっと権利関係がやばそうなのでそれはちょっと……」

 

 何だか難しい話ね。

 

「皆の名前から一文字ずつ取るとかどうですか?」

 

「ナイスアイデアよ、上原さん」

 

 その発想、Afterglowのリーダーだけあるわね。

 さっそく広げたノートに全員の名前を書いてみる。

 

 

 うえはらひまり

 いちがやありさ

 みなとゆきな

 おくさわみさき

 しろかねりんこ

 

 

 なんという偶然かしら……。

 

「『まりなさん』、悪くないわね」

 

「どうしてそうなった……んですか?」

 

「あ、縦読みだ」

 

「海外の指揮者に……マリナーさんという方が」

 

「博識ね、燐子」

 

「光栄……です」

 

「いやそういう問題じゃ」

 

「でも、まりなさんにはとってもお世話になってるし、いいんじゃない?」

 

「ひまりちゃんがそう言うなら……」

 

「あたしもそれでいいです」

 

 どうやら全員の同意が取れたようね。

 では改めて――

 

 

「弦巻邸で行われる十月生まれ合同誕生日会で『まりなさん』として何かするわよ」

 

 

 パチパチパチパチ!

 

 

「それにしても友希那さんがそういう事を言い出すなんて意外ですね」

 

「そうね……着ぐるみで空を飛んだり、盆栽コンテストに出品したり、水着コンテストに出たり、大食い大会に挑戦するあなた達に勇気をもらったからかしら」

 

「……う、頭が」

 

「ちょま!?」

 

「……恥ずかしかった……です」

 

「ダイエット……もう嫌……」

 

 あれ? 何故か皆意気消沈しているわね。

 

「と、に、か、く、何をするか決めるわよ。まずは市ヶ谷さん」

 

「わ、私ですか!? 普通に感謝の言葉を言えばいいんじゃ」

 

「へ~、三大ツンデレの市ヶ谷さんがねぇ」

 

「ちょ、奥沢さん!」

 

「……真っ赤な市ヶ谷さん……食べちゃいたい」

 

「感謝の言葉は大事よね。次、上原さん」

 

 燐子が小声で何か言っていたようだけど気にせず話を進めるわ。

 

「はいっ! ハロウィンも近いので皆でお菓子を作って渡したいです」

 

「料理は苦手だけど……やってみる価値はあるわね」

 

「奥沢さんは妹さんにいつもおやつ作ってあげてるんで大丈夫ですよ」

 

「そう、頼りにさせてもらうわ。リサを唸らせてあげましょう」

 

「ちょ、ハードル高すぎです!」

 

 やるからには頂点を目指さないと、ね。

 

「わたしは……多分友希那さんと一緒……演奏したい……です」

 

「そうね。私も最高の歌を届けたいわ」

 

 改めてを担当を確認する。

 DJ、キーボード、ベース、キーボード、そしてボーカル。

 

「ギターは僭越ながら私がやるとしてドラムが足りないわね。最悪打ち込み」

 

 

 ガタッ!

 

 

「話は聞かせてもらいました!」

 

「あ、あなたは……大和さん!?」

 

 私達のテーブルに近付いてきたのは、クラスメイトで私も一目置くドラマーの大和麻弥さんだった。

 彼女がどうしてここに……もしかして!

 

「ワンコの仕業かしら?」

 

 もしそうならお灸をすえなければいけない。

 今回の事は私達でやり遂げなければいけないからだ。

 

「フヘヘ、それは違いますよ」

 

「……わたし……です。十一月生まれの大和さんなら……セーフかなって……」

 

「燐子、あなただったのね……まさか、この展開を予想してたなんて」 

 

「……はい……友希那さんのおし、後ろ姿を……いつも見てますので」

 

「ふふっ、頼りになるメンバーね」

 

 最初はあんなに引っ込み思案だったのに。

 他校の生徒にお願いできるようになるなんて自分の事の様に嬉しいわ。

 

「奥沢さん、今不穏な発言が」

 

「市ヶ谷さん、聞かなかった事にした方がいいと思う」

 

「燐子さん素敵!」

 

 他の人達も問題無さそうね……。

 

「しまったわ!」

 

「どうしました!?」

 

「……大和さんを加えたから新しいバンド名を考えないと」

 

『………………』

 

 

 結局「まりなさん×まやさん」に決まった。

 演奏する曲は時間がないので一曲のみ、合同ライブでやったアレよ。

 基本それぞれのバンドのボーカル部分を担当、私と燐子はパート分けしないと。

 キーボードも分けないと、DJは……奥沢さんなら何とかするはずね。

 

 さあ張り切っていくわよ!

 

 

「……ところで奥沢さんは何かしたいことはなかったの?」

 

「あー、凄い個人的な事なんですけど、ミッシェルにならずに演奏したいなって」

 

 座ったまま困ったような笑みを浮かべる彼女を後ろから抱きしめる。

 そうね、自分を自分として見てもらえないなんて辛すぎる……。

 

 ますます気合が入ったわ。

 

 

 

 ――そして当日。

 

 

 

 黒服さんにイブニングドレスに着替えさせられ皆の祝福を受ける「まりなさん×まやさん」のメンバー達。

 流石弦巻家ね、サイズがぴったりだわ。

 青薔薇をモチーフにした紺色のドレス、赤薔薇の赤いドレスの燐子と並ぶと更に映えるわね。

 でも……

 

「奥沢さん、何と言うか、その」

 

「大丈夫です、友希那さん。あの四人が大きすぎるだけなので!」

 

「そ、そうね、私達が平均サイズよね!」

 

 口ではそう言ってみたものの自分の胸に手をやりつつ四人を盗み見ると引け目を感じてしまう。

 

「友希那さん、美咲ちゃん誕生日おめでとう」

 

「あら、ワンコありがとう」

 

「ワンコさんありがとうございます」

 

 少しおめかししたワンコ、燐子からもらったチョーカーが何となく犬の首輪に見える。

 控えめな胸に詰め物をしないのは良い事よ。

 

「奥沢さん、元気が出てきたわ」

 

「そうですね。流石ワンコさん」

 

「……視線が生温かい気がするけど、誕生日なので聞かないでおく」

 

 相変わらず無駄に察しがいいわね。

 

 

 

 

 そうこうしているうちに私達が演奏する時間が来た。

 準備期間は短かったけど私達なら……出来るわ。

 まりなさんも見に来てくれていることだし。

 

 

「『ピコっと!パピっと!!ガルパ☆ピコ!!!』いくわよ!」

 

 

「ぴぴっ! ぴっ! こーん!」

 

 

「はじめのはじめのジャンプで」

 

 良い出だしよ、市ヶ谷さん。

 

 

「君との距離を縮めて」

 

 持ち味を出しているわね、上原さん。

 

 

「照れくさいお顔ヘグッと接近戦♪ ハグっとギュっとしちゃうよ!」

 

 

「年中無休の絆で」

 

 歌もいいわね、大和さん。

 

 

「心配事はサヨナラ」

 

 素敵よ、燐子。

 

 

「史上最強の笑顔で開幕だ! 始めよう」

 

 

「あんびりぃ~ばぼ~!」

 

 素顔のあなたも輝いているわ、奥沢さん。

 

 

 

「好き!好き!大好き~!!!!!」

 

 普段なら絶対口にしない言葉でも歌でなら。

 

 

「ぴっ! こーん! ぴっ! こーん!」

 

 

 

 

「やりきった……わね」

 

 肩で息をする私の言葉にメンバー達が最高の笑顔を返す。

 Roselia以外でこんなに気持ちよくやれるなんてね。

 

「友希那さん、アレやっていいですか?」

 

「アレね。いいわよ」

 

 上原さんが燃えているわね。

 アレと言えばAfterglow名物の――

 

「はい、それじゃあ……えい、えい、おー!」

 

『………………』

 

「え、何で誰も言ってくれないんですか!?」

 

「美竹さんが『言うなよ、言うなよ』ってアイコンタクトしてきたからよ」

 

「ちょ、湊さん何勝手な事を! ……まあいつも通りで面白かったからいいですけど」

 

「蘭も酷いよ~」

 

 上原さんのがっかりした声に会場が沸く。

 

 ふふっ、悪くない、わね。

 

 

 

 

「夜風が気持ちいいわね」

 

「うん」

 

 合同誕生日会の後、帰り道をワンコと歩く。

 はしゃぎ過ぎて火照った体、十月の風が丁度よく感じる。

 

「どうだった……かしら?」

 

 流石にやり過ぎてしまったかと少々不安になった。

 ライブとは別にお菓子も配った……出来はリサ曰くまあまあ。

 久しぶりに人前で演奏したギター、紗夜は私の努力次第でツインギターも夢じゃないと。

 ちょっと大人びたデザインのドレスもあこには大絶賛された。

 

 

 ちゅっ

 

 

「……言葉に出来ない位良かった」

 

「……ありがとう」

 

 頬が熱い。

 私の顔は真っ赤になってそうね……暗い夜道で良かったわ。

 

 

「ちょっと寄り道してく?」

 

「? まあちょっとなら」

 

 ワンコの提案に賛成すると手を繋がれる。

 普段通る事のない路地裏をどんどん進んでいく。

 怖さはない、むしろ何が待っているかというドキドキだけね。

 

「到着」

 

「ここは!?」

 

 たどり着いたのは空地、だけどそこには――

 

 

「にゃー」「にゃーん」「にゃにゃ」

 

 

 二桁に届きそうかというにゃーんちゃん達、ここは天国!?

 

「猫の集会を見れるなんて……」

 

「そろそろ開催時期かなって。友希那さんツイてる」

 

 ワンコに倣い少し離れた場所にしゃがむ。

 驚かせたりしたらいけないわ。

 

「……素敵な誕生日プレゼントだわ」

 

「それは何より」

 

 意外と近くにあった非日常。

 十七歳になった私を何が待ち受けているのか、全くもって予想できない。

 でも私には信頼できる大事な人達がいる。

 

 独りだった頃と比べると弱くなった、と言われるかも知れない。

 

 だけど弱くなった以上に強くなったという確信があるわ。

 今日だって一人じゃ為し得なかった事を皆で成し遂げたのだから。

 

 

 さあ、今まで見た事の無い新しい景色を見に行きましょう。

 

 

 

 

 存分に猫の集会を見学したせいで帰宅が遅くなり、二人揃って両親に怒られたのも新しい景色かしら?




感想、評価、誤字報告などありましたらよろしくお願いします。

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<備考>

湊友希那:ワンコがユキの抜け毛で作ったミニユキを贈られご満悦。

奥沢美咲:こころから羊毛フェルト用の羊一頭を贈られたが丁重に断った。

白金燐子:あこから際どい下着を贈られた。

上原ひまり:Afterglowのメンバーからスイーツ詰め合わせを贈られまた太った。

市ヶ谷有咲:香澄からプラネタリウムのペアチケットを贈られる。

大和麻弥:後日ワンコに猫の集会に連れて行ってもらった。

下記の中で一番好きな話は?

  • 今井リサ誕生日(8/25)
  • 紗夜視点(一寸の光陰軽んずべからず)
  • 白金燐子誕生日(10/17)
  • 今井リサの弟
  • 湊友希那誕生日(10/26)
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