犬も歩けば棒に当たる 作:政影
『戸締りには気を付けるのよ?』
「分かってる。それより楽しんできてね」
『そうね。可愛い娘達からのクリスマスプレゼントを楽しませてもらうわ』
「はい、コーヒー」
「ありがとう」
お母様との電話を終えソファーに座った友希那さんに特製激甘コーヒーを渡す。
好みの分量は把握しているので前に自分でも飲んでみたけど悪魔的甘さ。
将来病気にならなければいいけど。
「親にディナー付き宿泊券を贈るなんて考えもしなかったわ。ありがとう」
「うん、友希那さんもバイト頑張ってくれたおかげ」
「……良い経験には……なったわ」
私の代わりに羽沢珈琲店でバイトをした友希那さんの仕事振りは……。
フォローしてくれたつぐみちゃんには頭が上がらない。
それでも最後には接客も掃除も皿洗いもこなせるようになった友希那さんは凄いと思う。
曲作りにも生かせるといいな。
「ワンコの方が大変だったでしょ?」
「う~ん、どうだろ」
私はその間弦巻家のバイト。
飛んだり、潜ったり、打ち上げられたり、熊は東に狗は西に。
……美咲ちゃんなら使いこなしてくれる筈。
「何にせよお疲れ様」
「♪~」
優しく撫でられると疲れが一気に吹き飛ぶ。
我ながら単純な性格だとは思うけど、悪くない。
ピンポーン
「リサが来たみたいね」
「ですね」
立ち上がり玄関に向かう友希那さんの後に続く。
さあクリスマスはまだ終わらない。
「お邪魔します♪」
「にゃー」
リサさんと抱きかかえられた猫のリキが入ってくる。
さっき別れたばかりだけど直したメイクは気合十分。
「にゃん♪」
「お、ユキもお出迎えありがとう」
「にゃ」
降ろされたリキにいつの間にか来ていたユキが早速じゃれつく。
子猫同士可愛いな。
「じゃあそろそろ私も出かける」
「全く、今日位休めばいいのに」
「稼ぎ時なので。今日は帰らないから戸締りお願い」
「ワンコ、がんば~」
「リサさんも、ふふっ」
「ちょ、何笑ってるの!」
出際にリサさんを煽る。
まあこれ位は許されるでしょ。
二人と二匹に祝福を。
「ありがとうございました」
自動ドアからお客さんが出ていき店内は私一人になる。
今日のコンビニバイトはリサさんもモカちゃんもいないのでちょっと寂しい。
まあクリスマス手当が出るので文句は言えないけど。
「んーっ、はー」
軽く伸びをして体を解す。
先程まではひっきりなしにお客さんが来てかなり忙しかった。
飲み物、お菓子、弁当、雑誌、電子マネー、下着……避妊具。
クリスマスを満喫している人もそうでない人も色々だ。
まあ私もここ数日色々あったか。
先週末は弦巻邸で五バンド合同クリスマスパーティー。
昨日二十四日はRoseliaと湊家のクリスマスパーティー。
今日二十五日は終業式の後でクラスの打ち上げ兼クリスマスパーティー。
……キリスト教徒でもないのこれだけ騒ぐとイエスさんに申し訳なさを感じる。
バイト終了の二十二時まで後少し。
とりあえず目の前の仕事を全うするだけ。
ガー
「いらっしゃいませ……燐子さん!?」
「来ちゃい……ました」
新たなお客さんは燐子さんだった。
確かにこの後燐子さんの家に泊まりに行く予定だったけど、迎えに来たのは予想外。
悪戯っ子のような笑顔に思わず口元が緩んでしまう。
「お待たせ」
「はい……」
店長に仕事を引き継ぎ店を出る。
買ったミルクセーキをお迎えのお礼に渡す。
「はぅ……」
吐息を漏らし缶に頬擦りをする漆黒の髪に純白のコートを纏った美少女。
……何かエロイな。
「寒かったでしょ?」
「はい……でも待ち遠しくて」
その言葉に思わず抱きしめてしまう。
凄く愛しい。
この場で押し倒したくなる衝動が生まれる位に。
「つ、続きは……家で」
「そ、そうだね」
……かなり恥ずかしい。
多忙の所為でたがが外れかかってるのかも。
左手で燐子さんの右手を取り歩き出す。
もうすぐクリスマスも終わり。
雪が降ったらロマンチックなのかもしれないけど、こうして歩く分には晴れてる方が良い。
燐子さんが風邪をひいても困るし。
「ワンコさんの手……温かいです」
「ありがとう。燐子さんの手はすべすべ」
「ふふっ……」
道中の会話は少なかったけど気まずい感じはしなかった。
むしろ心が休まったというか。
一緒にいると安心できる。
「お風呂……入りましょう」
「あ、はい」
白金邸に着くなりドアップで迫られた。
たまにアグレッシブに攻めてくるのが楽しい。
先に脱衣所で服を脱ぎ浴室へ入ると見慣れた大きな湯舟。
アレも大きいけどコレも大きい。
「お背中……流します」
「ありがとう」
自分で洗おうとすると悲しい顔をされるのでされるがままに。
お返しに後で念入りに洗ってあげるから。
燐子さんの長い髪を洗うのって傷つけないように注意が必要だけど楽しいな。
「傷……増えてます」
「どこかで引っ掛けたかな?」
「………………」
「ごめん、気を付けるから」
「……絶対……ですよ」
「うん」
後ろにいるから顔は見えないけどきっと悲しい表情。
何とかしないと、ね。
「ふぅ、生き返る」
「お疲れ様……です、ふふっ」
ちょっと年寄り臭い発言だったのか笑われてしまった。
湯船の中で肩を寄せ合う。
幸せ。
「友希那さんはリサさん、紗夜さんは日菜ちゃん、あこちゃんは巴ちゃん、燐子さんは私。見事にばらけたね」
「わたしで……良かったんですか?」
「燐子さんがOKしてくれなかったら最悪野宿」
「……馬鹿」
私の発言がお気に召さなかったのか左の耳たぶを噛まれた。
「友希那さんの方が……」
「相変わらず恋心なのか家族愛なのか友情なのか分からないし。燐子さんもリサさんも紗夜さんもあこちゃんも好きだよ」
「…………」
「恋愛なんて本とかテレビとか別の世界の出来事って割り切ってたツケかな。優柔不断系主人公の気持ちがよく分かった」
「…………大馬鹿」
「ちょ、痛いって」
痕が残りそうな位強く噛まれる。
燐子さん、たまに情熱的。
「私がワンコさん……を攻略します」
「……うん、受けて立つよ」
引っ込み思案な彼女からの宣戦布告。
返事は平静を装ったけど心臓が早鐘を連打。
除夜の鐘には早いし百八じゃ足りそうにない。
「……どうぞ」
「いただきます」
お風呂上がりに燐子さんが用意してくれたおにぎりに手を付ける。
ここ数日チキンとケーキばかりだったけど、ここにきてまさかのおにぎり。
「お口に……合います?」
「うん。丁度お米が食べたかったから嬉しい。もしかして燐子さんお手製?」
「はい……冷めているので自信が」
真っ赤になって俯く彼女。
もう十一時過ぎなので冷めていて当然。
それに嫌いじゃない。
「パリパリの海苔に熱々の白米もしっとりとした海苔に冷えた白米も好き」
「ありがとう……ございます」
具の鮭も良い塩加減だし梅干しも良い浸かり具合。
それに私だけの為に握ってくれたと思うと猶更。
「お茶……です」
「ありがとう」
絶妙のタイミングで出された緑茶も嬉しい。
熱すぎず温すぎず適温。
茶葉の香りがさらに食欲を誘う。
「ご馳走様」
「お粗末様……です」
私の食べっぷりを見て控えめなガッツポーズ。
私がそれに気付くとまた真っ赤に。
「で、では……私の部屋に」
「うん」
腹ごしらえは十分。
さあ熱い夜の始まりだ。
「ギリ凌いだ。次の大技まで三十」
「大丈夫……これで」
深夜の一室に少女が二人きり……ネトゲだよ。
燐子さんの部屋にはいつからか私専用のゲーミングPCが設置。
いつもなら紗夜さんとあこちゃんもログインしている時間帯だけど今日は流石にいない。
「やりました……鎧袖一触」
「流石燐子さん。安定して狩れる」
私の前衛職「サムライ」で敵を引き付け、燐子さんのウィザードで一網打尽。
シンプルだけど真横でプレイしている分連携は完璧。
燐子さんと私の仲だしね。
「ふあぁ……失礼」
ちょっと眠気が。
明日、いや日付が変わったから今日から冬休みだから徹夜も辞さないつもりだったのに。
「ふふっ……今日はここまで」
「……うん」
ちょっと意識が朦朧としてきた。
PCの電源を落としてベッドに向かう。
「今日は……一緒」
「……うん」
誘われるまま燐子さんのベッドに。
良い匂い。
それに柔らかい。
「んっ……もっと優しく」
「……うん」
「ワンコさん……可愛い」
薄れていく意識の中、聖母を見た気がした。
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<備考>
ワンコ:今年の恩は今年の内に。
白金燐子:たまにアグレッシブ(意味深)
湊友希那:リサ、こんなものじゃないでしょう?
今井リサ:トーゼン♪ まだまだ行くよ、友希那!
湊夫妻:ワンチャン授かり。
下記の中で一番好きな話は?
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今井リサ誕生日(8/25)
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紗夜視点(一寸の光陰軽んずべからず)
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白金燐子誕生日(10/17)
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今井リサの弟
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湊友希那誕生日(10/26)